German PhysicsのDDDユニット(商品名称はトロバトール、吟遊詩人の意というらしい)について、何とか時間を工面してインタ-ナショナルオーディオショー(有楽町の国際フォーラム)のタイムロードブースにて試聴する時間が持てた。やはり、外見だけではなく音も魅力的なユニットであった。なお、この日の解説は菅野沖彦氏。ステレオサウンド氏にて述べていた自身の使用経験をベースに同社のスピーカの解説をしており、非常に有意義であった。(ちなみに同氏のこのような場での解説をお聞きするのは二回目、使われたCDも全体的に音楽の嗜好が合うのがうれしい)音場感は無指向性ユニットという特徴から期待しているものとは少し違い、現在の我が家のシステムとそう変わった感じは受けない。違うのは高域を含めた音の自然さ、である。音色としてはやや硬質なものを感じる部分は確かにあるが、音全体から高域が削がれたような感じは一切受けない。能率は余り高くないとの話であるが、ここが無指向性ユニットの能力の違う点であろうか、しっかりとした高域の実在感があり、これが音全体に行き渡っていて非常に自然な音に感じる。ただし、楽曲によっては多少高域が強いかな、と思わせる部分は確かにある。ただし、これはむしろ最近の録音の傾向のせいかもしれない。ボーカルについては、高域の強められた傾向は出ず非常に自然である。これを是非とも我が家で聴いてみたい。また、オーケストラも弦の雰囲気がかなり良い。庄司沙矢香のバイオリン協奏曲では、オケもソロも結構ゾクゾクくるような浮遊感覚があった。ピアノは逆にある種の硬質感が残ることがかえって望ましく、宮沢明子のショパン(これは本当に懐かしく、何度も聴いてきたアルバム。その中からバラード1番)も脳天がしびれるようなベーゼンドルファーの音である。輝くような高域の打鍵と低弦のうなりを伴う響きが曲と録音と聴きなれたイメージと相俟って、本当に魅力的であった。かように相反する印象を同時に持たせることのできる不思議なユニットである。正直これは欲しい。とことん確認できるまでは至っていないのであるが、このポテンシャルがあるし、ある種使いこなしのイメージも沸くので、問題なく買いと思う。ただし、高いので、現時点ではいつ手に入れられるものやら分からないが、新しいターゲットがあってこそのチャレンジである。(やっとこの章の本来のタイトルらしくなってきた)いつかは入手したいものである。
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