ドワーフクエスト
第三章 ミスリルホールの英雄
「ドワーフの大トンネル」


●大トンネル 第一層

*一行はアドバールの坑道に入り、進んできた。出発したのは朝だったが、坑道を抜けてトンネルへと辿り着いた時には、すでに時刻は夜になっていた。

スキールニル : ここか
スキールニル : アルどうした
スキールニル : なんか震えてるか?

エル: がくがくしてる

アル: 何だか寒気がする

フンディン: ?

スキールニル : 風邪でも引いたか?

フンディン: 風邪でもひかれましたか?

アル: そうかもしれないな

フンディン: それはよくないですよ

スキールニル : 寝相が悪いからなあ

フンディン: 温かくして安静にしていないと長引きます

アル: いや、こんなところでそれは無理だから

スキールニル : まあアルのことだから大丈夫だ
スキールニル : だが具合が悪いなら言ってくれ
スキールニル : 無理するのは危ないぞ

アル: あ、あぁ今のところ大丈夫

スキールニル : 今までとはわけが違う
スキールニル : ドロウに会うかもしれないからな
スキールニル : 気を入れないと

エル: 怖いな

アル: (ブルブル)

エル: (つられてブルブル)

フンディン: 先へ進みましょう


*トンネル入り口にいるアドバールの兵士を見つけ、フンディンは声をかける。

フンディン: 失礼致します

アドバール兵士 : 名前を聞こう

フンディン: これなるはフェルバールより参ったムンディン・アイアンビアードの息子フンディン
フンディン: それと私の連れであります

スキールニル : (相変わらず長いなコイツの名乗りは)

フンディン: 陛下、並びに鉱山長ダクダ・アムミル様の許しを得て
フンディン: ミスリルホールへのトンネルの通行をお赦しいただきたくお願い申し上げます

アドバール兵士: トンネルの状況は聞いてるな?

スキールニル : ミスリルホールが見れるのは楽しみだなあ

フンディン: はい
フンディン: かなり危険な状態にあるとか…

アドバール兵士: うむ…許しを得ているなら、あとはそちらの自由だが…

フンディン: それでは
フンディン: 失礼して入らせていただきます

アドバール兵士: よろしい。話は聞いている。通りたまえ

フンディン: お役目ごくろうさまです


*一行は先に進む。前方でトンネルは広くなっていて、何人かの工夫、それに兵士の姿も見える。

フンディン: ずいぶん厳重ですね

スキールニル : それはそうだ

フンディン: ええと
フンディン: ダクダ様に伺った話だと
フンディン: 突き当たるまで西…でしたね


*広間にいる工夫と兵士が何かトンネルについて話しているのをエルが聞きつけたようだ。

エル: おーい

アル: ん?

エル: こちらの人がさ

フンディン: どうしたのです?

スキールニル : 何かわかったのか

エル: 西に向かうには
エル: 三層までおりなきゃいけないって

フンディン: ??

アル: え〜

スキールニル : そりゃ大変だな

フンディン: どういうことですか??

アル: ダグダさんは2層をつかえって言ってたのに


*工夫と兵士は、ダクダの言っていた先日の作戦で起きた落盤の被害について話していたようだ。一行が近くで話しているのに気がついて声をかけてきた。

アドバール工夫: いや、降りなきゃいけないって話じゃないぞ

アドバール兵士: 先日の落盤は思ったより被害が大きく、まだ復旧してない場所がたくさんあるという話をしていたんだ

エル: ほう

フンディン: ???

アドバール工夫: このまま一層を西に進むのが本来の道だが
アドバール工夫: もし迂回する場合に
アドバール工夫: 二層の西に渡る橋が崩れてるから三層まで降りなきゃ駄目だなって話だ

スキールニル : なるほど

アル: 3層は比較的安全なのでしょうか?

フンディン: ふーむ…

アドバール工夫: 下層にいくほど、まだ調査の手も甘い。気をつけることだ

アル: はい…

スキールニル : 降りる道はどっちだい?

アドバール工夫: 降りるならあっちだが、まずは西に進んでみちゃどうだね


*工夫は下へと下っている道を指差したが、西への道は完全に塞がれているというわけではなさそうだ。

フンディン: そうします

スキールニル : そうしよう

フンディン: ありがとうございました

アル: ありがとうございました


*西へと一層を歩き出す一行。と、突然スキールニルが倒れた。

フンディン: ?

エル: お

フンディン: どうしたんだい、スキーニー
フンディン: 何も無いところでいきなり転んで

スキールニル : 受身だ

エル: どうした?すべったんだろう

アル: …

スキールニル : いやちょっと体をほぐしておかないと

エル: 隠さなくていいぞ

フンディン: (相変わらず強がり言っちゃって…)


●地下の橋

*トンネルを西へと進む一行の耳に、水の音が聞こえ始める。

フンディン: 水が
フンディン: 流れているようです


*やがて水の流れる轟音と、水気を含んだ空気にトンネル全体が湿っているような印象へと変わる。地下水脈が見えてくるところまで行くと、近くにいた工夫が一行に気がついた。

アドバール工夫: ん?この先を通るつもりか?

スキールニル : みりゃわかる

フンディン: そのつもりですが、何か問題がありそうですね。

アドバール工夫: 西側に進むにはここが一番早道なのは確かだ。以前までは主要な道だったわけだしな。

エル: ええ

アドバール工夫: ただ今は、落盤の影響で橋は落ちちまうし、雪解け水で地下水脈が増水してて危ないぞ。とりあえずの応急処置はしてあるって聞いたから様子を見に来たが、あれは地下水脈が落ち着くのを待ってちゃんと修理しなきゃ駄目だな。

フンディン: ええっ!

エル: フンディン、泳げるかい?

アドバール工夫 : まあ、進めないことはないがね…

エル: 泳げないよな

フンディン: 生まれてこのかた
フンディン: 水につかったことはお風呂のほかにはありません

スキールニル : 溺れ死ぬのはごめんだな

エル: ふむ

アル: 危険だな


*一行はもう少し近づいて、地下水脈と橋を確認してみる。

フンディン: 激しいですね

スキールニル : 落ちたら助からないぞ

アル: 本当に応急処置っぽい

フンディン: うっかりスキーニーが足を滑らせでもしたら…

スキールニル : お前とちがって俺は泳げるんだよ

フンディン: うーん
フンディン: どうしましょう?

アル: ふわああああ

スキールニル : 今何時くらいなんだろう

アル: 夜なのは間違いない

スキールニル : どこかで休んで下に下りたほうがよさそうだな

アル: とにかく戻ろう

エル: そうだね、疲れたな

アル: ここはジメジメしてて嫌だ

エル: うるさいしな
エル: 今日は休んだ方が良さそうだ

スキールニル : この層はまだそれほど危険じゃなさそうだし

フンディン: うーん…
フンディン: ちょっと渡ってみませんか?

エル: どうぞ

スキールニル : 止めないぞ別に

アル: おい
アル: 無責任に焚き付けるな

フンディン: ここをそのまま通れれば
フンディン: ずっと早くに先へ進めますよ

スキールニル : 本気なのか?

アル: フンディン
アル: お前だけならそれもいいだろう
アル: スキールニルは全身鎧なんだぞ

スキールニル : ロープとかそんなモンがいるぞ
スキールニル : さすがに

フンディン: ああ、ロープ!

エル: なるほど


*思い出して、荷物からロープを取り出してみる。

スキールニル : ロープもこの激流じゃ
スキールニル : 切れそうだな

エル: 備えあればうれいナシ

フンディン: ともかく少し休みましょうか

アル: 応急処置をしたときの鉱夫の人がいればなぁ

エル: すこしうるさくない所まで戻ろう

スキールニル : 流れが緩やかになればわたるのもいいかもしれないけどなあ

アル: 今の季節じゃ無理だろうなぁ


*ひとまず、一行は地下水脈の流れの音に邪魔されないところまで引き返した。

フンディン: ふう
フンディン: ここなら

スキールニル : 腕のいい魔法使いでもいれば
スキールニル : 楽なんだろうけど


*一行は荷物を降ろして4時間ほど休憩する。

フンディン: ふう
フンディン: そろそろ出発しましょう

アル: ふわあああ

エル: ふぁあ

エル: まだ夜中だな
エル: もう行くのかい?

フンディン: ええ

エル: ふう
エル: よいしょっと

スキールニル : 焦らなくてもホールは逃げないと思うがな

フンディン: 旅は夜明け前に立たなければいけないという伝統です

アル: (どこのだよ?)


●第二層

*結局一行は橋を渡るのはあきらめ、二層へ降りる道を選んだ。

フンディン: このあたりから二層ですね

スキールニル : 空気がだいぶ違う
スキールニル : 思った以上に降りてきたな

アル: そうだなぁ

フンディン: うわっ!

アル: ?

エル: ん?

アル: どうした?

フンディン: ネズミが出ました


*大きく凶暴なネズミの群れが通路から飛び出してきた!

スキールニル : 一歩右へ出ろ
スキールニル : ち

エル: たくさんだ

フンディン: ええいこの!


*さすがにもうネズミは問題にならない。簡単に追い払うことが出来た。

フンディン: ふう…
フンディン: 落盤の影響でしょうか?


*二層をさらに進み、話に聞いていた西へと向かう橋のところまでやってきたが、橋は完全に落ちていた。

フンディン: これが…

スキールニル : ここもか

エル: ふむぅ

フンディン: これではさすがに
フンディン: 通れそうに無いですね…
フンディン: ほんのむこうに見えるのに…

アル: 取り敢えず情報どおりだな

スキールニル : さらに降りるしかない

エル: フンディン、あぶないぞ

スキールニル : おい
スキールニル : 落ちても助けられんからな・・・


*水際まで近づいて調べているフンディン。

フンディン: わ!
フンディン: ぬ、ぬるぬる…

スキールニル : 散々ネズミの返り血浴びてるのに何をいまさら

フンディン: 違うよ
フンディン: 足場が水でぬるぬるだったんだ
フンディン: それで足を滑らせたんだよ


*仕方なく、一行はその場を離れて第三層に降りる道を探した。

●第三層

*一行は第三層まで降りてきた。

フンディン: ずいぶん下のほうまで降りてきました
フンディン: ともかく
フンディン: 西… へ向かえば良いのですよね


*と、歩き出す。

フンディン: ん?
フンディン: なにか動いた?

エル: 見えるな

フンディン: スキーニー
フンディン: ほらあそこ

エル: コウモリだ

フンディン: 見えない?

スキールニル : ああアレか
スキールニル : 蝙蝠だな

フンディン: なんだ、こうもりか

スキールニル : 襲ってくる様子はないな

エル: 刺激しないよう静かに通ろう

スキールニル : さすがに俺たち食うのは大変だろうからなあ
スキールニル : しかしでかい蝙蝠だ


*一行はこうもりを刺激しないように静かに通路を進み、角を曲がろうとした時…

エル: なんだあれ

フンディン: えっ??!


*角を曲がった先、西への橋の上に何かいる。

スキールニル : さすがにまずそうだな

フンディン: な、ななんあ、
フンディン: なんですか?!

スキールニル : 逃げろ

フンディン: あれは
フンディン: あんな生き物
フンディン: 見たことも無いですよ!

エル: 鶏に見えるが

スキールニル : いいからコイ

フンディン: スキーニー知っているの?

スキールニル : ミョルニルがあんな怪物のことを話してた
スキールニル : でも細かいことは忘れた
スキールニル : アル、エル、知らないか
スキールニル : なんか強い怪物だって聞いた気がするな


*エルが考え込む。(伝承知識で判定中)

スキールニル : 迂回路を最初に探そう
スキールニル : 無理なら下に降りるか
スキールニル : アレをやっつけるか

スキールニル : 一層の橋を渡るか
スキールニル : どれかだ

フンディン: 下には降りられないよ、スキーニー

スキールニル : 降りられないんだっけ
スキールニル : 降りてはいかんってことじゃなかったか

フンディン: 降りるわけにはいかないということだよ


*フンディンとスキールニルが話していると、エルが何か思い当たったようだ。

エル: もしかしたらアレ

フンディン: ?

エル: フックホラーかもしれない

フンディン: 知っているんですか、エルドリックさん?!

エル: もしそうなら、大変危険な怪物だ

フンディン: *ごくり*

アル: 援軍を頼むという選択肢はないのかな?

フンディン: それは難しい気がします
フンディン: 皆さんも持ち場を離れるわけにはいかないでしょう

スキールニル : さすがに俺たちで倒すのは大変そうだな
スキールニル : 今はまだいいだろう

エル: フンディンも食われちゃうぞ

スキールニル : 迂回できるかもしれない

アル: まぁそうだろうなぁ

スキールニル : 北へ続く道があったから

フンディン: 迂回路…

スキールニル : そっちへ行ってみよう

フンディン: 仕方ないですね

アル: それがいいと思う


*突然、こうもりが飛び出し、一行の周りをうるさく飛び回る。肌の露出しているところを狙っているようだ。

フンディン: ?
フンディン: いきなりなんです??


*武器を振り回してこうもりを追い払おうとするが、こうもりはスルスルと避けてなかなかしとめられない。

フンディン: まったく

エル: 物音を聞き付けてやつがくるかも
エル: さっさと行こう

フンディン: いいかげんにしなさい!


*エルの心配は的中した。しつこいこうもりに腹が立ったフンディンは、飛び回るこうもりを追って通路の角から出てしまった。フックホラーは、獲物を見つけた。飛び掛ってきたフックホラーの鋭い腕で、フンディンは切り裂かれた!

フンディン: うわあ!

エル: ほら、言わんこっちゃない!

スキールニル : フンディン逃げろ

フンディン: な、なななななな

エル: フンディンのバカ


*一目散に逃げ出す一行。

フンディン: アルドリックさん、はやく!

アル: 大丈夫追ってこないようだ


*そんなことはない。

フンディン: きているじゃないですか!!

*アルと、アルを気にしているフンディンから先行していたスキールニルたちだが、逃げこんだ通路にはネズミの大群がいた。大剣を振り回して追い払う。

スキールニル : クソ
スキールニル : でかいネズミだ


*アルとフンディンが追いついてきた。

スキールニル : 追い込まれちまったな
スキールニル : 急ごう
スキールニル : まずはアレをまこう


*走り出す一行。と、突然フンディンが立ち止まり、エルはフンディンにぶつかってしまった。

フンディン: !!!

エル: ・・・

フンディン: 前にも…

スキールニル : どうした

フンディン: アレがいるんだよ、スキーニー


*通路を抜けた前方の坑道にも、フックホラーが1匹うろついている。

スキールニル : なんだと
スキールニル : くそ
スキールニル : 話が違うじゃねえか

エル: 戦うしかない


*通路の両脇にある扉に気がついたフンディンは、扉を開けるがすぐに閉めてしまった。

スキールニル : なんかあったか?

フンディン: 大蜘蛛がいました


*だがその部屋も、すでにジャイアントスパイダーが巣を張っていた…

エル: とんでもないとこだな

フンディン: うう…

スキールニル : つまりどこへ行ってもとんでもないやつが待ってるわけか

エル: 戻る事も出来ないし

フンディン: やっぱり一層の橋を渡れば良かったんだよ…

スキールニル : それはどうかな
スキールニル : 渡れたかどうかわからないぞ

エル: 済んだ事を言わない

フンディン: そのとおりですね

エル: 過去を語るのは僕らの歌だけで十分さ

フンディン: なんとか道を決めなければ
フンディン: 戻りましょう

スキールニル : 蜘蛛とフックホラーが喧嘩でもしてくれればいいんだが

フンディン: そもそも戦ってもみる前から逃げ出したのはおかしかったんですよ


*意を決したフンディンは武器を構えて慎重に通路を戻る。

エル: おお
エル: あれ、誰だ・・・?

スキールニル : ん?

エル: フンディンらしくない


*通路を戻ると、すぐのところにフックホラーがいた。

フンディン: *ごくり*

*お互い目で合図すると、フンディンとスキールニルがフックホラーに突撃する。双子は後ろから援護の矢を飛ばす。

フンディン: くう

*フックホラーの鋭い爪で、フンディンは何度も重傷を負うがポーションと双子の治療、そしてオッドアイのおかげでなんとか持ちこたえる。ギリギリの戦いの末、フックホラーをなんとか倒すことができた。

フンディン: ぜえ…ぜえ…

エル: おお

スキールニル : ヤレバできるじゃないかお前

フンディン: ふう、ともかくなんとかなりましたね

スキールニル : 危ないとこだったな

フンディン: まったく


*少し休んでから、一行は橋へと向かった。

フンディン: ここは壊れていないようです

スキールニル : ここは安全にわたれそうだな


*足元を確かめながら、橋を渡る。

フンディン: ふう
フンディン: なんとか渡ってこられました
フンディン: ずいぶん時間が経った気がしますね
フンディン: そろそろ一休みしましょう

スキールニル : ああ

エル: そうだね

スキールニル : あの一戦はかなり焦ったな
スキールニル : 交代で休むか一応


*3時間ほど休憩を取った。

フンディン: ではそろそろ
フンディン: 出発しましょう


*第三層で西側に渡った一行は、上に戻る道を探す。途中こうもりの大群などと遭遇しながらも、第二層への道を見つけて進んでいった。

●第二層 西側

*第二層西側にあがったところで一行を待ち受けていたのはゴブリンだった。

フンディン: ??!
フンディン: ゴブリン?!

エル: しにやがれ!

フンディン: このお!


*問題なく、ゴブリンを撃退する。ここに住んでいたというわけではなく、移動中だったらしい。

スキールニル : ゴブリンくらいはどうってことないな

フンディン: ドロウと一緒に入り込んでいた連中の一部というわけですね

スキールニル : ゴブリンがどうのって話もあったな
スキールニル : 奴隷かな


*ドロウがゴブリンを奴隷にしているという話を聞いていたのだ。荷物などから、こちらがわに入り込んでさまよっていたゴブリンたちだろう。

●第一層西側

*一行は、ついに第一層まで戻ってきた。

フンディン: !
フンディン: またいます


*一層に戻ってすぐに、再びゴブリンと遭遇。撃退はしたものの、ミスリルホールにも近くなってきたこのあたりでゴブリンと遭遇するとは…

フンディン: ふう
フンディン: いきどまり…ですね


*ついに、一行は西への道の行き止まりまでやってきた…が。

スキールニル : あの岩はなんだろう

フンディン: ?

エル: かすかに光ってる気がする

スキールニル : ちょっと色が違わないか?

フンディン: ??
フンディン: どこかで似たような
フンディン: 岩を見たような…??
フンディン: 気のせいでしょうか

スキールニル : 蝙蝠のいたあたりにも
スキールニル : あった気がするな

エル: どちらにしろ行き止まりなんだ

フンディン: 少し他の場所を調べてみましょう

エル: 戻ろう


*別の通路を調べてみる。

スキールニル : アレみろよ

フンディン: ?

スキールニル : さっきのと同じ色だ

フンディン: ああ、これだ

エル: 似てるね
エル: 形も似てる

スキールニル : フンディン

フンディン: なんだい、スキーニー?

スキールニル : 入り口はどうやって
スキールニル : 見つけるんだっけ

アル: 見れば分かるって言ってたな

フンディン: ええと、斧と盾を…


*と、フンディンは合図を実際にやってみせようとする。

スキールニル : まてまて!

フンディン: ?

スキールニル : 一回しか試せないんじゃなかったか?

フンディン: うん

スキールニル : ここで試してハズレだったらどうすんだ

フンディン: ああ、なるほど
フンディン: それもそうだね

アル: 間違えたら戻ってもう一度になる

スキールニル : ようは他の岩と違う岩を探せばいいんだろ?

フンディン: もう少し他の場所を調べてみましょう


*さらに別の通路を探索する一行。その途中で…

フンディン: ん?
フンディン: いまなにかを

スキールニル : なんかいやな予感がした

フンディン: 踏んだような…

スキールニル : 何かの仕掛けだったようだぞ

フンディン: 気がしたんだけど、気のせいみたいだ

スキールニル : いやたぶん
スキールニル : 気のせいじゃないぜ

フンディン: でも何も起きないよ、スキーニー

スキールニル : 警報か何かかもしれないだろ

フンディン: 何も聞こえないみたいだけど…

スキールニル : ドワーフには聞こえない音もあるんだよ

フンディン: それじゃスキーニーにだって聞こえないじゃないか

スキールニル : 蝙蝠なんかには聞こえるかもしれないだろうが

アル: ?


*ちなみに、これはミスリルホールのドワーフが仕掛けた警報装置を踏んだのである。なのでミスリルホール側では誰かがここを通ったことが知れたわけだ。だが一行にはそれを知る術はない。ひとまず放っておいて先に進む。

スキールニル : まて
スキールニル : 何か音が

フンディン: ?
フンディン: 音??

スキールニル : した気がする

フンディン: 何の音だい?

スキールニル : 気のせいだといいんだけどな
スキールニル : 息遣いだ

フンディン: 息遣い?

スキールニル : 敵かも知れないぞ

フンディン: それはアルドリックさんとエルドリックさんが
フンディン: 息をする音とは違うのかい?

スキールニル : まあいい先へ行こう


*と、通路を曲がった先に…

フンディン: !

*ゴブリンの一団がいた。きょろきょろとしている様から、ここまで迷い込んできたのだろうと思える。

フンディン: こんなところまで入り込んでいたなんて…

スキールニル : やっぱり俺のいったとおりだったろ?


*ミスリルホールの入り口を守るためにも、放っておけない。一行はゴブリンを片付けた。そのまま入り口を探して進む一行だが…

エル: わ

フンディン: ??

エル: 蟲だ


*どこからか入り込んできたスティンキングビートルが一行に気がつき、強烈なニオイのガスを噴出した。

フンディン: なんだ??
フンディン: なんか
フンディン: とっさに鼻をつまんだけど
フンディン: 臭そうな気がするよ

スキールニル : くせえ!

エル: あのへんに毒ガスが

スキールニル : くせえ蟲だな


*ガスには参ったが、一行にとってはそれほどの脅威ではない。広間を占拠していた虫を退治し、行き止まりを調べてみる。

フンディン: ふう…

スキールニル : 蟲だらけか

スキールニル : 行き止まり
スキールニル : とおもったらあの岩か

フンディン: また岩です
フンディン: 特に変わったようには見えないですね
フンディン: やっぱり何かひっかかるのは
フンディン: 最初に見つけた岩…
フンディン: そんな気がします


*石に慣れ親しんだドワーフの感覚が、何かを教えてくれるだろう…

スキールニル : そうなのか

*フンディン、スキールニル、エルが岩を調べている間、広間の入り口の手前のあたりで一人立っていたアル。突然、アルの叫び声が聞こえた。

フンディン: !!

*振り向くと、巨大な蜘蛛が天井から垂れ下がり、その下にアルが倒れている。仲間たちが駆け寄ると、蜘蛛は天井に戻って逃げていった…

スキールニル : 天井をはって逃げてった

フンディン: アルドリックさん!

スキールニル : アル!

エル: わわ

フンディン: 大丈夫ですか?!
フンディン: しっかり

アル: うぅ…

スキールニル : 震えてるぞ
スキールニル : 大丈夫か?

フンディン: そんな…

アル: うぅ


*蜘蛛の毒が体内に入ったらしい。

スキールニル : おい歩けるか?

アル: だ…大丈夫

フンディン: 本当に大丈夫ですか?!

アル: じゃない…

スキールニル : とにかくあの蜘蛛が戻ってこないうちに行ったほうがいい

フンディン: ううう…
フンディン: 無理はせず
フンディン: 気分が悪くなったらすぐに言ってくださいね


*アルをかばうようにしながら、一行は最初の岩を目指して洞窟を戻る。

アル: 凄く…気分が悪い

エル: 兄者
エル: 荷物持ってやる

スキールニル : 毒か・・・
スキールニル : はやいとこホール見つけないと危ないな

フンディン: 水分を取った方が良いです
フンディン: のんでください

アル: ありがとう

スキールニル : 傷口はふさがってるし、毒もそれほど回らなかっただろうから
スキールニル : 無理しなければ平気だろう

エル: 後遺症が少しね

フンディン: ……

スキールニル : じっくり休めば直りそうだけどね

アル: そうも…いかんだろう

スキールニル : しんがりは俺が歩こう

フンディン: さっきの蜘蛛がいつ戻ってくるかわからないですよ
フンディン: ここでは休めません

アル: ふぅ

スキールニル : もう少しだ
スキールニル : がんばれ

アル: あぁ
アル: 悪いな

スキールニル : なにいってる

フンディン: そうですよ!

スキールニル : お互い様ってヤツだ

フンディン: つらいときはおたがいさまです

アル: そう言って…貰えると

エル: 本当にきつかったらおぶってやる

アル: 大丈夫


*一行は最初の岩に戻ってきた。

フンディン: これです
フンディン: やっぱりこの岩
フンディン: …だと思うのですが…

スキールニル : 確信はないのか?

フンディン: わたしはこの岩だと思うけれど

スキールニル : おやっさんは見ればわかるって言ってたけど
スキールニル : それって少なくともドワーフなら一目でわかるってことじゃないのか

フンディン: たぶんこれだ
フンディン: 間違いない

スキールニル : ・・・・
スキールニル : まあやってみろよ

フンディン: 見れば見るほど
フンディン: どこかで見たような気がするんだよ、スキーニー

スキールニル : ・・・ホントだろうな
スキールニル : どこで見たんだ?

フンディン: どこだったかな…あれは……


*思い出せない一行のためにここで解説。どこかで見た気がするというのは、フェルバール地下からルーヴィン山脈を越えたトンネルの出口を隠していた岩に似ているからだ。どこからどう見ても自然の岩だが、実は入り口を隠しているという隠し方などから、似ているように感じたのだろう。

フンディン: *ごくり*

スキールニル : 今度ばかりはお前を信じるしかないんだ
スキールニル : 任せる


*意を決して、フンディンは合図を使う。しばらく様子を見ていると、音もなく岩が少し動いた。それから、ドワーフが一人やっと通れる程度の隙間ができた。

スキールニル : おお?!
スキールニル : よしいってみようぜ
スキールニル : いつまでも開いてる保証はない


*一行はすばやく中に入った。全員が入ると、背後で岩は再び音もなく閉じた…

●ミスリルホール

フンディン: !

スキールニル : なんだか岩盤が少し変わった気がする


*隠し扉の先は、横に3人並べる程度の幅のまっすぐな通路になっていて、その両脇には鉄製の扉がある。扉にはクロスボウを撃つためのスリットが開けられていて、今は開いている。

スキールニル : 守りは厳重だなあ

フンディン: 入ってしまって良いのかな?

スキールニル : いいんじゃないの


*入っていいのか迷いつつも、アルの様子を見ているとゆっくりは出来ない。一行がゆっくり通路を進んでいくと、やがて大きく頑丈そうな扉の前に一人の戦士が現れた。

ミスリルホールの戦士 : そこで止まってください
ミスリルホールの戦士: どうやら同じドワーフのようですね


*一行は武器をしまう。

アル: こん…にちは

ミスリルホールの戦士: 名前を告げてください

フンディン: ここはブルーノー・バトルハンマー王のおわせられるミスリル・ホールとお見受けします
フンディン: 私はフェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディン
フンディン: 隣に控えるは我が従兄弟スキーニー
フンディン: そして友人であるアルドリック・エルドリック両ウッズタイガーと申します

ミスリルホールの戦士: この道をくるということはアドバールから?

フンディン: アドバール王陛下より認可を受け
フンディン: ミスリルホールの訪問を希望致します
フンディン: なにとぞご許可願えませんでしょうか

ミスリルホールの戦士: 目的を申し上げてください

フンディン: 目的…

スキールニル : (さすがうわさに聞くブルーノ王の兵士だ・・・全然隙がないなあ)
スキールニル : (すげえぜ)

フンディン: 話せば長くなる事ながら

ミスリルホールの戦士: 手短に
ミスリルホールの戦士: どうやら連れの方は具合が悪そうだ


*戦士の表情は読めないが、アルの様子を気遣っているようだ。

スキールニル : ああ
スキールニル : できれば中で休ませてくれないか?

アル: 蜘蛛の毒にやられまして…少々

ミスリルホールの戦士: 残念ながら、それは出来ません。
ミスリルホールの戦士: まずは手続きを。ミスリルホールは常に敵に狙われていますので

スキールニル : 手続きって・・・
スキールニル : そんなのあとでいいだろ! 俺の仲間は苦しんでるんだ

フンディン: 我らは現在、我が祖父・鍛冶師フンディンの遺産を探し求める旅の最中にあります
フンディン: かすかな残された情報から手がかりはミスリル鉱脈にあると突き止め
フンディン: その経路を追ってここミスリルホールへとたどり着いた次第です
フンディン: スキーニー!

アル: いいよ…スキールニル

フンディン: 少し黙っていてくれよ

スキールニル : *いらいらいらいら*

フンディン: まとまる話もまとまらなくなってしまうじゃあないか

アル: 俺は…大丈夫


*戦士は、特にスキールニルに対して嫌悪感などは見せない。

アル: 失礼いたしました

フンディン: ともかくそのような次第でして

ミスリルホールの戦士: よろしい。確認してくるのでここでしばしお待ちを

フンディン: はっ
フンディン: お手数をおかけいたします


*戦士は大扉の横の小さな扉から中に入っていった。

フンディン: すみません、アルドリックさん

スキールニル : *いらいらいらいら*

アル: ふぅ…
アル: いや、いいんだ

フンディン: もうすぐに入れていただけると思います

アル: 気にしないでくれ

フンディン: いましばらくの辛抱です

アル: これくらい…なんともないさ

フンディン: 水分を取っておいたほうが良いです

アル: ありがとう


*と、小さな扉から一人の若いドワーフが現れた。身なりはきちんとしていて、几帳面そうな雰囲気である。

アシモ: はじめまして

フンディン: はっ

アシモ: 私はホールのこの門を担当しているアシモと申します

フンディン: お初にお目にかかります、アシモどの

アル: はじめまして、アルドリックです

アシモ: 皆さんの名前はこちらでも聞いています

フンディン: おお!
フンディン: 左様でありましたか

スキールニル : じゃあ仲間を看てやって欲しい

アシモ: ミスリルホールへようこそ。中にご案内しましょう

フンディン: あ、ありがとうございます!
フンディン: いきましょう、アルドリックさん

アシモ: 中へ

フンディン: はい
フンディン: で、では失礼して


*大扉が音を立てて開く。さらにその向こうにも大扉があり、そしてそこを抜けるとそこは…

スキールニル : ここがミスリルホールか!

フンディン: はあ〜……

スキールニル : なんて美しいんだ


*ミスリルホールの造り自体は他のドワーフの地下都市と同じようだが、壁面を走るミスリル鉱脈の筋が、ここが豊かなミスリル鉱山であることを教えてくれ、さらに美しい模様となって訪問者の目を楽しませる。一行も思わずため息をついた。

アシモ: まずはゆっくり休める場所に案内しましょう

*そんな一行の様子に、アシモは少し誇らしげな顔を見せたが、任務を思い出して一行を部屋に案内する。

フンディン: かたじけない

アシモ: ミスリルホール滞在中はこの部屋を使ってください

フンディン: ありがとうございます

アシモ: 2-cです
アシモ: 間違えないように


*案内された区域は外からの客人、旅人のための場所で、通路に並ぶ扉には部屋番号が振られている。

アル: ありがとうございます

エル: うん

アシモ: 明日、また案内しましょう

スキールニル : すげえ

フンディン: お心遣い痛み入ります

スキールニル : いい部屋だな!


*入り口でアシモとフンディンが話しているのを気にせず、スキールニルは部屋に入ると宿の高級な部屋並の部屋に感嘆している。

フンディン: …スキーニー…
フンディン: 申し訳ない

スキールニル : おっとそうだったな

フンディン: 連れの者の無礼をお赦しください

スキールニル : アル、やすめるぞ

アシモ: いえ。

フンディン: なにぶん若輩者でありまして…

アシモ: ミスリルホールには賃貸の部屋はありません。すべて来客用ですから

スキールニル : お前と年は変わらん!

アル: ふう

アシモ: では、ごゆっくり

アル: 正直しんどかった…

フンディン: それではお言葉に甘えさせていただきます


*アシモは立ち去った。

スキールニル : なかなか上等なベッドだな

フンディン: ふう

アル: 悪いけど、ちょっと休ませてもらうね

エル: ああ

フンディン: ええ、無理はせず
フンディン: ゆっくり休んでください

フンディン: ふう
フンディン: ともかくなんとかこうして
フンディン: たどり着けたのはなによりでしたね

スキールニル : 一時はどうなるかと思った

エル: ふう

スキールニル : しかしすげえな
スキールニル : コレ全部ミスリルなのか
スキールニル : そりゃあ誰でもここを欲しがるな

アル: うわぁぁぁぁっ!
アル: !

スキールニル : どした?

アル: あっ…いや
アル: 夢見た
アル: ふぅぅ

スキールニル : あんまりいい夢じゃなかったみたいだなあ

アル: う〜ん
アル: 腹が破裂する夢

アル: *コキコキ*
アル: うん、楽になった!


*毒自体は、アルの体力を弱めたものの致命的ではなかったようだ。休んだことでアルは回復した。

アル: しかし…意外と早く着けたね

スキールニル : ああ

アル: ドロウにも会わずにすんだしね

スキールニル : フックホラーと戦う羽目になったけどな

エル: あれはすごかった

アル: あの時は怖かったなぁ
アル: てっきりフンディンの腕がもげたかと思った


*スキールニルとアルが話しているうちに、疲れたのかフンディンとエルは寝てしまっていた。二人も、やがて眠りについた。そして次の日の朝。

アル: おはよう

*すでにスキールニルは起きて素振りしている。

スキールニル : おりゃ!

フンディン: おはようございます

スキールニル : てい!
スキールニル : ふー
スキールニル : 素振り終了


*と、部屋をノックする音が聞こえる。

フンディン: はい

アシモ: 失礼

フンディン: おはようございま、す
フンディン: アシモどの

アシモ: おはようございます
アシモ: 具合も良くなったようですね

アル: えぇお陰様で

フンディン: おかげさまで大変ぐっすり眠ることが出来ました

アシモ: ミスリルホールを案内したいところなのですが

エル: ぜひ
エル: 見てみたい

アシモ: 実は仕事があって、一緒に歩くことができません

フンディン: それは…
フンディン: 残念です

アシモ: ミスリルホール付近にまで入り込んでいるゴブリンや危険な生き物がいるようなので

フンディン: !

スキールニル : あー確かにいたな

アシモ: それらを一掃する作戦があるのです

スキールニル : ここくるまでにゴブリンやら蜘蛛やらフックホラーを
スキールニル : やっつけたっけな

アシモ: ときに、皆さんはアドバールからトンネルでここまで来られた

フンディン: はい

アシモ: その道中のことをお尋ねしたい

フンディン: 今スキーニーも言ったように
フンディン: ゴブリンや蜘蛛

スキールニル : ネズミとか蝙蝠もいっぱいいたね

フンディン: それに下層にはフックホラーという不可思議な生き物も入り込んでいたようでした

アシモ: ふむ…

エル: たおしたぞ
エル: あ、もう一匹いたね

スキールニル : そうだったな

アシモ: ネズミや蝙蝠は問題ありませんが
アシモ: フックホラーは危険ですね…

フンディン: あまり知能の高い生物ではないようでしたので
フンディン: おそらくここへ入り込む道はわからないと思いますが…

アシモ: そうですね。しかしドロウがこちら側に入り込んでいるという噂もあります

フンディン: !

アシモ: ドロウには遭遇されなかったようですが。

フンディン: ええ、幸い

スキールニル : どこかに潜んでたかもしれないけどね

アル: その通り

スキールニル : あ・・・

フンディン: ?

スキールニル : いやなこと思いついちゃった

フンディン: ??

スキールニル : 俺たちがつけられてたらまずいじゃないか

フンディン: なんだい、やぶからぼうに

ミスリルホールの戦士: 失礼


*と、そこへ一人の兵士がやってきた。

ミスリルホールの戦士: アシモ殿

*兵士はアシモに耳打ちする。

ミスリルホールの戦士: 失礼した

フンディン: いえ、おかまいなく


*戦士は一礼すると、立ち去った。

アシモ: ふー…

フンディン: なにか急な知らせでもおありでしたか?

アシモ: 困った事になった…

スキールニル : (なんかあったらしいぞ)

アシモ: 予想はしてたことですが…

アシモ: ブルーノー王がドリッズドさんを探すとか言って、今回の作戦についてくるつもりのようです

アル: !

フンディン: !

アシモ: ずっと引き止めていたのですが限界のようですね…

スキールニル : へえ
スキールニル : アドバールの王とはまたタイプが違うみたいだな

アシモ: ドリッズドさんに関係ありそうなことは何かありませんでしたか?

フンディン: 確かドリップトというドロウが
フンディン: 鉱山を落盤させる際に囮になったとかなんとか

アシモ: そうです

スキールニル : おやっさんの話か

フンディン: きいたおぼえがあります

アル: その後はまだ行方不明だと…

フンディン: 私どもが存じ上げるのはそこまでです

アシモ: 参ったな…王には王座にいてもらわなくては
アシモ: しかし言い出したら聞かないお方だし…ぶつぶつ

スキールニル : 王でありながら友達を探しにいく
スキールニル : カッコイイな

フンディン: ……

スキールニル : そういう王もいていいんじゃないの?
スキールニル : 俺は好きだよ、うん

アシモ: いえ、指揮系統の問題があります
アシモ: 王に勝手されては困ります

アル: そんな王様なら仕えてみたいね

スキールニル : 最高指揮官が直接指揮するんじゃないのか?
スキールニル : 士気も大いに上がると思うよ

アシモ: あの方は我々と一緒には動かないでしょう…おそらく

スキールニル : ああ・・・そういう人なんだ

アシモ: いつ飛び出してもおかしくない雰囲気でしたしね

アル: それは…仕える側としては困るなぁ

スキールニル : 誰か信頼できる人が探しにいけばいいんだろうね
スキールニル : 王が信頼するやつがさ

アシモ: まあ、皆さんには関係のない事。
アシモ: そういうわけですので、簡単に説明しておきます。

フンディン: …
フンディン: は、はい

アシモ: ミスリルホールの中では、同胞であっても自由に立ち入りできない場所があります
アシモ: また、ガルムン地溝のほうには行かないように。

フンディン: ガルムン地溝…でありますか

スキールニル : ガルムン地溝?

アシモ: 落ちたら奈落の底です。

フンディン: それはどのあたりになるのでしょうか?

アシモ: この二層の南側にあります

アシモ: この二層は、来客用の部屋と、食堂があり
アシモ: 南側に回れば商店があります
アシモ: こちらを見て回られるのがよいでしょう

フンディン: わかりました

アシモ: では、失礼
アシモ: 詳しい話はのちほど

フンディン: ありがとうございます


*アシモは早足で立ち去った。

フンディン: ………

スキールニル : 面白い男だなブルーノーって
スキールニル : 実は王に向いてなかったりして

フンディン: どうしてそう思うんだい

スキールニル : だってさっきの話聞いたろ?
スキールニル : 人のいうこと聞かないっていうんだもん

エル: ブルーノー王は有名だよ

スキールニル : だが強いらしいなあ

エル: 捕らえた敵を息子にしたり

スキールニル : ますます面白い男だな

フンディン: ゴブリンを息子に??

スキールニル : 一度でいいからあってみてえ
スキールニル : 違うだろ・・・
スキールニル : なんだっけ

フンディン: もしかして…オークを息子に??

スキールニル : エルク族の戦士だっけ

フンディン: なんだい、それ?

スキールニル : むるすがー?
スキールニル : ふるすばー?

フンディン: ムロブシ?

スキールニル : そんな名前の人間だ

フンディン: へえ…

エル: ウルフガーって人だ

スキールニル : あーそれだ

フンディン: ともかくせっかくだし
フンディン: ちょっと出歩いてきます

エル: 俺も

スキールニル : 俺もみてまわるぞ

アル: 食堂、どこかな?


*一行は思い思いに二層を歩き回り、食堂や商店に並ぶ品物を見て回る。

スキールニル : ミートパイがうまい

アル: 焼き肉、焼き肉♪

スキールニル : アドバールのとどっちがうまいかな

アル: 俺はココの味付けが気に入ったなぁ

スキールニル : 俺もこっちのほうが好きだ

エル: ふう
エル: 入らせてもらえない所があったよ

フンディン: ……

スキールニル : それはあるだろうね

スキールニル : 結構いいもの売ってたな

フンディン: ……

エル: あと、人の私室に入っちゃってさ
エル: 怒られたよ

スキールニル : まあ気をつけないとな
スキールニル : あれ

フンディン: …*ぼー…*

スキールニル : アルのヤツどうした?

エル: 今商店にいる気がする
エル: 戻ってる気がする

スキールニル : そういうのわかるのか
スキールニル : 双子ってすげえな

エル: まあね

フンディン: ……

アル: どうもこの階層では情報は得られそうにないね

スキールニル : あー
スキールニル : 忘れてた

フンディン: ?

スキールニル : そういう目的があったっけね

フンディン: ねえ、スキーニー


*全員部屋に戻ってきたところで、それまで何か考え込んでいたフンディンが口を開いた。

スキールニル : あ?

フンディン: それにアルドリックさん、エルドリックさん

エル: ほいよ

アル: ん?

フンディン: トンネルに…戻りませんか?

スキールニル : は?
スキールニル : 何でだ

フンディン: ドリップトを探しに行こう

アル: 手伝いたいんだろ?

スキールニル : は?
スキールニル : 何でお前が探しに行くんだ?

アル: フンディンだからさ

フンディン: そりゃあ、こうしてお世話になった以上は
フンディン: 一宿一飯の恩は返すのが礼儀と言うものだよ

スキールニル : 王が喜ぶと思うのかそれで

フンディン: そうでなくたって、こうして皆さんが困っていると言うのに
フンディン: のほほんとしていられないよ

スキールニル : あの男は自分で探しに行きたいんだよ
スキールニル : そういうもんだよ

アル: しかし、俺達には見分けがつかない

フンディン: 会ってもいないくせに
フンディン: なんでスキーニーにそんなことがいえるのさ

スキールニル : あってないけどなんとなくわかるんだ

アル: 相手が嘘をついてても分からない

スキールニル : お前が見つけたらそれはそれで喜ぶだろう
スキールニル : でもたぶん自分で探したいんじゃないかな

フンディン: だからなんで会ってもいないのに
フンディン: スキーニーにそんなことがわかるんだよ!

スキールニル : 勘だよ

エル: ちょっと待った

フンディン: ?

エル: フンディン、間違ってるぞ
エル: ドリップトじゃなくてドリッズトだ

フンディン: そうなんですか??

アル: *はぁ*

フンディン: どこかでドリップトだと聞いたような覚えがあったのですが…

スキールニル : 俺ならそうだし

フンディン: (また適当なこと言って…)

エル: そんで
エル: 俺はフンディンが行くならついてくよ、面白そうだ

スキールニル : 正気とはおもえないな

アル: 俺達が邪魔になるとは考えないのか?

フンディン: 邪魔にはならないですよ

スキールニル : 4層に降りることになるかもしれないぞ

フンディン: だってわたしたちだけで行くんですから
フンディン: わたしたちがドリップトを見つけ出して
フンディン: 王様のところへ行く手引きをしてあげれば
フンディン: 王様も困らないし
フンディン: 王様が早く帰ってくればここの皆さんだって喜びます
フンディン: 誰も困りません

スキールニル : お前旅の目的があるじゃないか
スキールニル : あんなに急いで橋渡ろうとしたくせに

フンディン: それはそうだけど…

スキールニル : 今度は寄り道かよ

フンディン: だからって目の前で困っている人をそのままにしてはおけない

アル: まっ、とにかくフンディンがそう決めたのなら俺も一緒に行く

フンディン: スキーニーが…来たくないのなら
フンディン: 無理に来なくても良いよ


*スキールニルはそっぽを向いてしまった。フンディンが困っていると、スキールニルは自分の荷物を担ぎ上げる。

スキールニル : ・・・・って行くんじゃねえのか
スキールニル : 何もたもたしてんだ

フンディン: !


*フンディンはうれしそうだ。

アル: 置き手紙しておくか、一応

フンディン: そうしましょう
フンディン: ただ
フンディン: ひとつ問題が
フンディン: ここから出るにしても
フンディン: なんとか門番さんの間を抜けて
フンディン: 戻らないといけないのですが

スキールニル : 抜けりゃいいじゃん

フンディン: 普通に行ったら止められてしまうよ、スキーニー

スキールニル : じゃどうすんだ

エル: 確かに

スキールニル : そこまで考えておけよ・・・

フンディン: なにか策を考えなければ…

スキールニル : お前行き当たりばったりだなあ

エル: さっきさ
エル: コショウやらなんやらの詰まった袋を買った

アル: お〜い

フンディン: コショウ?

アル: 凄く危険な考えだぞ

フンディン: なんとか
フンディン: ことを荒立てずに
フンディン: 通り抜ける方法は…

スキールニル : 賄賂・・・
スキールニル : そんな金ないな

フンディン: スキーニー…?
フンディン: *本気で疑いのまなざし*

アル: 正直に話してみれば?

フンディン: うーん…

スキールニル : 馬鹿正直は得意技だろうが

フンディン: 男は黙って不言実行
フンディン: と昔父上に言われたことが
フンディン: 何かをするにしても
フンディン: 人知れず成し遂げて
フンディン: その時点で明るみに出るようにしなさいと
フンディン: それに余計な心配をおかけしたくないのです

アル: それが格好良いと思ってるなら間違いだと思うな

スキールニル : 立派な考えは結構だが
スキールニル : 少し現実的になったほうがいいぞ
スキールニル : あとことを起こす前に考えろ

フンディン: うーん…


*とか言われながらも、出入り口に向かうフンディン。仕方なく、仲間たちは後についていく。当然ながら、門で兵士に呼び止められた。

ミスリルホールの戦士: どちらに行かれる?

フンディン: トンネルへ参ります

ミスリルホールの戦士: 今、トンネルは危険な状態。あまりお奨めできませんが

フンディン: よく存じております

ミスリルホールの戦士: 引き止める理由もない。出入りは自由ですが
ミスリルホールの戦士: 合図だけ、覚えていってください

フンディン: 合図…

ミスリルホールの戦士: 現在、みなさんの合図は2.2.3.1
ミスリルホールの戦士: 忘れれば、決してホールへの道は開かれないでしょう

フンディン: 心得ました
フンディン: …それでは

アル: それでは


*旅人であるフンディンたちの通行を止める権利は兵士にはない。

フンディン: ふう
フンディン: すんなり通れましたね
フンディン: 案ずるより生むが易しとはこのことですね

アル: 案ずるより小野ヤスシってね

フンディン: ??

スキールニル : あ
スキールニル : ふと思ったんだが

フンディン: ?

スキールニル : 俺らより早く
スキールニル : ドリッズトがみつかったら
スキールニル : どうすんだ

フンディン: それならそれで何も問題はないよ

アル: それを知るすべは無いからね

スキールニル : 俺らが見つけるより早くブルーノが見つけるとか

フンディン: なにをわかりきったことを言っているんだい

スキールニル : 馬鹿だな
スキールニル : いつ帰るべきかワカランだろうが

フンディン: そうかな?

スキールニル : 無駄にトンネル歩き回るってか

アル: 夜になったら帰る…これ基本


*一行は、フンディンの意思に従って再びトンネルへと向かう。そこでの出会いが一行にもたらすものは…


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