ドワーフクエスト
第二章 アドバール城砦
「王と二つの道」


●そして朝

アル: ふわぁぁぁ

フンディン: おはようございます

アル: ………おはよう

フンディン: なんだかずいぶんぐっすり寝てしまったようで

エル: よいしょっと
エル: 疲れも取れたね

アル: スキールニル、いないな

エル: 新しい歌も出来たし

フンディン: おや?

アル: 探してくる

フンディン: どこへ行っちゃったんだろう

アル: …

エル: 今日は一段と早く訓練かな?

アル: もしかしたら帰ってこなかったのかも


*スキールニルを探して、皆は宿屋を出る。

フンディン: いないなあ

*フンディンが訓練場を通りかかると、訓練場の隅で横になっているスキールニルを見つけた。訓練場にはすでに教官や兵士が来ていて訓練を始めている。おそらく誰かがそこに寝かせてやったのだろう。毛布も掛けられている。

フンディン: おや?
フンディン: やっぱりスキーニーだ!
フンディン: こんなところで寝ちゃって
フンディン: 仕方がないなあ

フンディン: ほら、スキーニー
フンディン: 朝だよ
フンディン: 一晩中ここで寝ちゃってたの?

スキールニル : ・・・・
スキールニル : なんだお前か

フンディン: まったく
フンディン: ほら
フンディン: その様子だと昨日の夜ご飯も食べていないみたいだね

スキールニル : ・・・ん?なんだって

フンディン: 体壊しても知らないよ!

スキールニル : ・・・まあ確かにそうだな

教官: おはよう
教官: 訓練で夜明かしするのは、若い頃によくする過ちだな、若いの

フンディン: どうもうちのスキーニーがご迷惑をおかけいたしました
フンディン: すぐにつれて帰りますので…

スキールニル : でも必要だったんだよ
スキールニル : 少し仮眠を取るか

教官: その心意気は良し

フンディン: そんなこと言って、体を壊してしまったらもともこもないじゃないか

スキールニル : 過酷な状況に耐えてこその戦士だ

フンディン: はいはい、わかったから

教官: 太刀筋も最初にみたときよりは鋭さを増したようだ

スキールニル : 今太刀筋が・・・
スキールニル : 鋭くなったっていった?

教官: また来るがいい。若き戦士よ

フンディン: ほら、もう行こう

教官: 今は、仲間に従え

スキールニル : 仲間か・・・
スキールニル : (仲間か・・・それもいいか)


*双子とも合流し、広場で全員そろった。

スキールニル : さて今日はどうするんだっけ

フンディン: なんだかよくわからないですが
フンディン: とりあえずナクルどののところへ行きましょう
フンディン: 昨日の…
フンディン: ん、昨日…?
フンディン: ともかくパトロールの報告をしなければなりません

エル: そうだね、フンディン

スキールニル : ほらほらいくぞ

フンディン: スキーニー
フンディン: なんだかはりきってるなあ


●報告

*ナクルの部屋の扉をノックする。

フンディン: ナクルどの

ナクル : んー朝っぱらから誰だ

フンディン: フンディンであります

ナクル : む、入っていいぞ

フンディン: 失礼いたします


*一行は部屋に入る。

フンディン: おはようございます、ナクルどの

ナクル: おはよう

スキールニル : どうも隊長

フンディン: 昨日の巡回の報告に参りました

アル: お早うございます

フンディン: 我々はゴブリンやオークの…
フンディン: 散発的な行動を見かけましたが、彼らは組織立ってはおらず
フンディン: 特にそういった恐れも見受けられませんでしたので、ともかく排除して参りました

ナクル: わかった。上に通しておく。2.3時間したらまた来るといい

スキールニル : まあ無様な戦いだったが・・・得るところは大きかったな
スキールニル : では隊長またあとで

フンディン: それでは


*一行は退出した。

フンディン: ふう
フンディン: ……
フンディン: とりあえず
フンディン: わたしはイランディルさまのところへ行きます

アル: あぁ

フンディン: 何か新しく分かったことがあるかも知れませんし
フンディン: 皆さんはどうしますか?

エル: そうだなぁ

アル: 歌でも歌っているさ

エル: フンディンについてくかな
エル: いいだろう?

フンディン: それではくれぐれも
フンディン: こちらのかたがたの迷惑にならないようよろしくお願いしますよ


*などと話しながら歩いていると…

フンディン: !
フンディン: イランディル様


*ちょうど、向こうからイランディルが歩いてきた。

イランディル バングスティール: ん

フンディン: これは丁度良かった

イランディル バングスティール: やあ、お笑いグループの登場か

フンディン: 今まさにあなたにお会いに行くところでした
フンディン: オワラ・イグループ??
フンディン: (何かの呪文なのかな…?)

エル: 違う違う
エル: オワ=ライグ=ループだよ

スキールニル : 異世界の怪獣のことだ

イランディル バングスティール: まあ、いいよ。僕もいま帰ってきたところさ

フンディン: はい、ちょうどイランディル様にお会いに行くところでした

イランディル バングスティール: 来るかい?

フンディン: はい!


●イランディルの兄弟子心

*というわけで、一行はイランディルの部屋にやってきた。

フンディン: 失礼します

イランディル バングスティール: さてと…
イランディル バングスティール: で、なんのよう

スキールニル : 相変わらず散らかってんね

イランディル バングスティール: 君の脳みそなみにね

スキールニル : おわ


*背負った剣を本の山にひっかけて崩してしまうスキールニル。

フンディン: あっ!

スキールニル : 崩れちまった

フンディン: そんな長いもの振り回してるからだよ!
フンディン: ちゃんと元通りにかたすんだ

イランディル バングスティール: いいよ、どうせ自分でも何がどこにあるかわからないんだから!

フンディン: ……

イランディル バングスティール: ははは

スキールニル : 本人がいいっていってるぞ

フンディン: *はあー*

スキールニル : んじゃあ話してる間掃除しといてやろう

イランディル バングスティール: まあ、はやく用件を言ってよ。眠いんだ

フンディン: イランディル様
フンディン: 私のオッド・アイはどうなりましたでしょうか?

イランディル バングスティール: 君の?
イランディル バングスティール: ああ…君のだっけ

フンディン: はい

イランディル バングスティール: はい


*イランディルは、あっさりとオッドアイを渡す。もう調べつくして興味はないんだろう。

フンディン: あ、ありがとうございます

イランディル バングスティール: ちょっと着てみてくれない?

フンディン: はい


*言われたとおりにフンディンはオッドアイを着る。

イランディル バングスティール: ふーん

フンディン: ?
フンディン: いかが致しました?

イランディル バングスティール: 君、その鎧の真の力には気がついてないようだね

フンディン: 真の力??

アル: ?

イランディル バングスティール: ただ、着てるだけだ。

フンディン: 仰ることの意味が… よくつかめないのですが…

イランディル バングスティール: 守られてるだけで、その鎧の本当の力を使おうとしていない
イランディル バングスティール: …わからないか…

フンディン: 本当の力…?

アル: 飛んでいってオークの首でも落とすのかな?

イランディル バングスティール: きみ、ガーリン先生の弟子だよね?

フンディン: は、はい

イランディル バングスティール: 鍛冶職人になりたい?

フンディン: もちろんです

イランディル バングスティール: なら、ただ着ているだけじゃ駄目だ

フンディン: !

イランディル バングスティール: 道具は、その本質を理解し、使わないと
イランディル バングスティール: 本当の力は使いこなせない

フンディン: …本質……

イランディル バングスティール: その本質を見抜けなければ
イランディル バングスティール: それと同じものは作れないし、むろんそれ以上のものも作れるはずがないよね?

フンディン: それは…

イランディル バングスティール: 先生が君にその鎧を託したのは
イランディル バングスティール: ただ君を守らせるためじゃない。先生の変わりに、その鎧が君に教えてくれると思ったからじゃないかな
イランディル バングスティール: 鍛冶師として大切なことをね

フンディン: ……

アル: 哲学的な話だね

スキールニル : 何言ってるのかさっぱりだな

アル: 若者を悩ませるには充分だ

イランディル バングスティール: …ま、そのへん確かめたくて、それをもってフェルバールまで行ってきたんだけど

フンディン: フェルバールまで?!

イランディル バングスティール: ハンマーを振るうだけが鍛冶の修行じゃないよ
イランディル バングスティール: ふあ〜あ、もう眠いなァ…

フンディン: ………

イランディル バングスティール: まあ、そういうことで

アル: こんな時間から…

フンディン: *呆然としている

イランディル バングスティール: 君の先生は、良い先生だ。ある意味試練ってやつかもね

フンディン: ………
フンディン: 鎧の…本質……

イランディル バングスティール: アドバイスしすぎると怒られちゃうから、もう寝るよ
イランディル バングスティール: ささっ、もう出てって

アル: 朝の九時から…

フンディン: は、はい
フンディン: それでは…失礼致しました
フンディン: *ぼー…

アル: …


*イランディルはイランディルなりにフンディンの事を思っているのだ。一行はイランディルのところを後にした。

フンディン: …本質…

*考え事をしながら歩いているせいか、フンディンはよく躓いたり壁にぶつかったりする。

スキールニル : いちいち転ぶなよ・・・

アル: 大丈夫かな?

スキールニル : 年寄りじゃないんだから

エル: なんでころぶんだろな

アル: 曲がれ!

フンディン: わっ!
フンディン: いたた…

スキールニル : 前見て歩いてないんだよ

フンディン: ……ぼー…

アル: …

エル: 考え事してたって転ばないぜ、普通は
エル: なあ、兄者

アル: 普通は…な

フンディン: いた!
フンディン: はっ、こ、これは
フンディン: 失礼を致しました…!

アル: 英雄は違うんだよ

エル: なるほどなぁ
エル: 英雄の活躍を間近でみた吟遊詩人たちも
エル: 実際はこんなもんだったのかもナァ

アル: そうかもな

スキールニル : 詩人てのも大変だね全く


●最後の推薦

*再び、ナクルの部屋。

フンディン: ナクルどの
フンディン: 失礼します

スキールニル : どうも隊長

ナクル: さて先程の話だが

フンディン: *…ぼー…*

ナクル: 一応上には通しておいたが

フンディン: *ぼけー…

アル: 人の話を聞け

ナクル: 結果は正直よくわからん

アル: はぁ?

フンディン: …む?
フンディン: はっ、そうでした、ナクルどの

ナクル: 明日、城に行って直接聞いてくれ

フンディン: 先ほどの話は
フンディン: どうなりましたでしょうか?

アル: 明日?

ナクル: 二度も同じ話をさせるなよ

フンディン: ??
フンディン: 二度??

スキールニル : 隊長、コイツ頭打ったようで
スキールニル : 勘弁してやってくださいよ

ナクル: 明日、城に行って結果を聞け。以上だ。

フンディン: わかりました

スキールニル : じゃそういうことで

アル: はぁ

フンディン: ありがとうございました

ナクル: おっと、それと

フンディン: ?

ナクル: 仕事の報酬は出てる

フンディン: 報酬?
フンディン: 仕事?
フンディン: 何の仕事です??

アル: パトロールのことだよ

ナクル: 仕事には、報酬が支払われる

スキールニル : ありがたくもらっとこう

フンディン: パトロール??

アル: 駄目だコリャ

スキールニル : えーとフンディン
スキールニル : お前は黙ってろいいな

フンディン: ああ、パトロール!

ナクル: フンディンに…いや、エルドリックに渡しておく…

エル: はい

フンディン: 昨日のパトロールのことですね

エル: 50Gpもらったぜ

フンディン: もともと我らの働き具合をお見せするために申し出た仕事であるのに
フンディン: 報酬を頂いてしまうのは何やら申し訳ない気がいたします

エル: (ほんとは500だけれど)

ナクル: それと、これはおれからだ。はっきりと推薦を取れなくてすまん。受け取ってくれ

フンディン: とんでもありません、ナクルどの
フンディン: 過分なお心遣い、感謝致します

ナクル: 旅を続けるにも必要だろう
ナクル: アドバールに滞在するのもタダではないしな

フンディン: ありがたく頂戴しておきます
フンディン: それでは

スキールニル : 訓練場に勝手に寝泊りしてるから俺は平気ですよ

ナクル: それじゃあな

アル: それでは…

フンディン: それでは失礼致します


*一行は退出した。翌日まで時間がある。フンディンはそのまま宿屋に戻り考え事を始めてしまう。スキールニルはまっすぐ訓練場に向かう。双子はアドバールを見て回る。長いこと滞在しているがゆっくりと見て回る時間は今までなかったからだ。その日の午後はそれぞれ過ごし、そして次の日…

●謁見の日

アル: はっ…
アル: 朝か…

フンディン: いた!

アル: 危ないぞ

フンディン: ちょっとスキーニー

スキールニル : ん?

フンディン: 腹筋やるならもっと広い場所でやってくれよ

スキールニル : 狭いからこそきつくていいんだが

フンディン: つまづいたら危ないじゃないか

スキールニル : お前が鈍いんじゃないか

アル: エル、起きろ

フンディン: いたた…

アル: エル?
アル: おい…

エル: うう

アル: やっと起きたか

エル: 寝ちまった・・・


*一行は早速、城に向かう。

アドバール兵士 : またれよ

フンディン: 失礼致します

アドバール兵士: 名を名乗りなさい

フンディン: 私フェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します

アル: お早うございます

フンディン: こちらは私の同行者
フンディン: 推挙を賜り

スキールニル : (相変わらずなげえなあ)

フンディン: 陛下に謁見をお願い致したく参上した次第であります

アドバール兵士: よかろう。しばし待たれよ

アル: (どうやら鎧のことより王との謁見の方が気になるようだな)
アル: (良かった、良かった)
アル: (昨日みたいな様子だったらどうしようかと思ったよ)


*またされて1時間経過。

フンディン: *どきどき*

スキールニル : 待たせるなあ・・・

フンディン: まだ時間たってないじゃないか、スキーニー

スキールニル : *いらいら*

フンディン: 気が短いよ


*2時間経過。

エル: つかれたなぁ

スキールニル : 2時間

フンディン: そんなにたってるものか

エル: 兄者、新しい詩でも

スキールニル : やってられない・・・

フンディン: ほんの一二分だってば

スキールニル : 俺帰ろうかな


*3時間経過…

フンディン: *どきどき*

アル: おっ

アドバール兵士 : お待たせした

スキールニル : お

フンディン: いえ、とんでもありません
フンディン: ほんの数分のことです

アル: そりゃ嘘だ

フンディン: ??

スキールニル : 3時間だけどね

フンディン: またそんなでたらめばかり言って

アドバール兵士: フンディン・アイアンビアードは4名の推薦を得ている


*4名というのは間違いではない。遊撃隊長ゴトラン、鍛冶長イランディル、坑道長ダクダの3名はわかるが、あと1名は一体…?

フンディン: !

エル: ZZZ

スキールニル : おーい

アル: *ゆさゆさ*

アドバール兵士: あまり時間は取れないが、王との謁見は許可された

エル: ・・・はっ

フンディン: ありがたきしあわせ

スキールニル : そろそろ会えるらしいぞ

アドバール兵士: では、真っ直ぐ進むが良い

フンディン: はっ

アル: あまり緊張するなよ

フンディン: *どきどき*

スキールニル : 俺も入っていいのかな


*通路を真っ直ぐ進むと、謁見の間に通じている。入り口にいる兵士が扉を開くと謁見の間の中にはアドバール王と側近、そして近衛兵が周囲を固めている。

フンディン: し、しししし
フンディン: 失礼いたします!

アドバール王: どうした?早く入るが良い

フンディン: はっ!
フンディン: *かちこち*
フンディン: お、お初におめにかかります
フンディン: 陛下

アドバール王: (ふむ…神官長の推挙まで得た若者とはこやつか…)

フンディン: 私、フェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します

アドバール王: わしが現在のアドバール王だ


*アドバール王はまだ若い。煌びやかなフルプレートメイルに身を包んでいる。

アドバール王: ここは狭いが、外からの客というわけではないのでな。

フンディン: …4人?
フンディン: 先ほど私が四人の推挙を得たと仰いましたか、陛下?

アドバール王: さあ、なんなりと申せ
アドバール王: うむ、そうなっておる

フンディン: 恐れながらそれは何かの間違いではありませんでしょうか…?

アドバール王: いや?わしはそう聞いておるが?

フンディン: ???

側近: 間違いではありません、陛下

アル: 坑道長・鍛冶長・遊撃隊長…あとは?

側近: 坑道長、鍛冶長、遊撃隊長、神官長の推薦です

フンディン: 神官長どの??

アル: 神官長か

エル: あ、そうなんだ

フンディン: *首をかしげる*

アドバール王: まあ、よい。時間が惜しい

フンディン: は、ははっ!
フンディン: これはとんだご無礼を致しました

アドバール王: 用件を聞こう。フンディン アイアンビアード

フンディン: 実はこうしてはるばるフェルバールよりこの地に私どもが参りましたのは
フンディン: 我が祖父、大フンディンの足跡を求めてのことであります

アドバール王: ふむ?

フンディン: 我が父、ムンディンに聞くところによると
フンディン: 祖父上… 大フンディンは生前フェルバールの近くに住まわれており
フンディン: また先代の国王陛下とも
フンディン: お付き合いがあったとか

アドバール王: ふーむ…どこかで聞いたかと思うたが、王殺しの話か

スキールニル : 王殺し?!

アドバール王: ”王殺し”と呼ばれた斧を作った鍛冶師だな

フンディン: はい、そう聞き及んでいます

スキールニル : (ああ、あれか)

アドバール王: わしも先代から、一度だけその話を聞いたことがある

スキールニル : 物騒な名前だ

アドバール王: その斧を振るえば、その戦場の王が一人死ぬ…それは自分かもしれない
アドバール王: というやつだな

フンディン: はい
フンディン: その話…詳しくお聞かせ願えますでしょうか?

スキールニル : (そんな斧ならなくなってもいい・・・ってわけか)

アドバール王: よかろう…おそらくは書庫で調べたのだろうが
アドバール王: 残念ながら、その斧は失われてしまった
アドバール王: わしが聞いた話も、記録とほぼ変わらん

フンディン: はい、その話も書庫で伺いました

スキールニル : 言い伝えが本当ならそのほうがよさそうですね

アドバール王: それはどうかな…

スキールニル : 陛下のお命が危うくなるかもしれないじゃないですか

アドバール王: 先代が戦場であれを使った理由…わしにも少しわかる気がする

フンディン: それは一体…?

アドバール王: おそらく、先代は知りたかったのだろう
アドバール王: いや、納得したかったのかもしれん
アドバール王: 自分に王気があるからこそ、王となったのだと
アドバール王: 血に連なるから王になったのではなく
アドバール王: 王たるべくして王になったのだと
アドバール王: 試したかったのかもしれん

フンディン: それは…
フンディン: 斧に身をゆだねられて、ということでしょうか?

アル: (王様にも悩みは有るんだなぁ)

アドバール王: わしも思うときがある。自分は血の連なりによって、王になったのかそれとも…とな
アドバール王: 自分を試せる機会というのは、少ないものだ
アドバール王: 特にわしのような身分のものはな

フンディン: 陛下は…今のご自分に満足しておいでではないのですか?

アドバール王: むろんだ

フンディン: はっ!

フンディン: こ、これはとんだご無礼を!

スキールニル : なんだかわかる気がするなあ・・・

フンディン: ひらにご容赦ください…

アドバール王: そなたはないのか?フンディンよ。偉大な祖父の名が、そなたに鍛冶の道を選ばせたと?
アドバール王: 果たしてそれは自分の意思なのか、あるいは…と。
アドバール王: そなたの旅の目的は聞いておる。そなたは良い機会を得た。

フンディン: は…

アドバール王: わしにも…あの”王殺し”の戦場のような機会があればいいのだが…


*王のつぶやきに、側近は慌てふためく。

側近: 陛下!めったなことを…!

アドバール王: 心配するな。冗談だ…

フンディン: 陛下…

アドバール王: さてフンディンよ。そなたの旅は偉大な目的だとわしも思う

フンディン: はっ、恐縮であります…

アドバール王: 失われた一族の遺産を捜し求める旅であるな

フンディン: …はい

アドバール王: わしが思うに…そなたには二つの道がある
アドバール王: 一つは、イランディルから聞いたであろうミスリルを追う道
アドバール王: もう一つは…
アドバール王: なんと言ったかな、我が種族の偉大な賢者は?


*王は側近に問う。

フンディン: 賢者?

側近: はっ…フレッディル殿でありますか

アドバール王: うむ。サンダバールの我が友ヘルムの臣下フレッディルだな


*アルは聞いたことがある。フレッディル・ロッククラッシャー。愛称フレッド。ドワーフの賢者で北方で最も有名な賢者の一人である。専門は人間以外の種族の歴史や民俗で、セブンシスターズの一人ダヴ・ファルコンハンドの友人でもある。

アドバール王: 確かかのものは我が種族の歴史が専門だったはず
アドバール王: もしや何か知っておるかもしれん
アドバール王: わしの紹介ならば、ヘルム殿も悪くはすまい

フンディン: 恐れ多いことです

アドバール王: わしにできるのはその程度のことだ。

アル: (それでも大前進だ)

アドバール王: 困難な探索ゆえ、気が休まらぬこともあろう
アドバール王: だが、自分を試せる機会というのはそうそうあるものではない

フンディン: はっ…

アドバール王: 気をつけて旅を続けよ。フンディン・アイアンビアード

フンディン: 過分なお心遣い
フンディン: かさねがさね、恐縮であります、陛下

アドバール王: そなたの道にモラディンの加護を。

フンディン: 陛下の御世にも、同じく

側近: そろそろ時間です。陛下

フンディン: それではこれにてフンディン、失礼を致します

近衛兵: さあフンディンよ、あまり陛下を煩わせるな

フンディン: はっ
フンディン: またいつか、お会いできる日まで
フンディン: これにて


*フンディンたちは退出した。王は一瞬、少しうらやましそうにフンディンを見たが、誰にも気がつかれないうちに、すぐそれを押し殺した。

●二つの道

*一行は宿に戻り、今後の進路を話し合うことにした。

エル: ただいま

フンディン: ふう

スキールニル : なかなか面白い男だったな

アル: 王様のことかい?

スキールニル : ああいうやつは嫌いじゃない

アル: 少し…窮屈そうだったね

スキールニル : そうだな
スキールニル : それでこれからどうするんだ英雄

フンディン: ……

アル: 会ってみたいなぁ、フレッディル

スキールニル : 話聞いてないなコイツ・・・

フンディン: ……


*突然、フンディンは黙ったまま宿を出て行ってしまった。

アル: あら

スキールニル : まるで夢遊病者だな


*フンディンは一人、神殿にやってきた。モラディンに祈りを捧げていると、人の気配に振り返った。

フンディン: ……

ドワーフ: おっと、邪魔したかい、すまねえ

フンディン: ?
フンディン: おや


*粗野な印象を与える一人のドワーフが、道具を持って掃除している。

フンディン: 司祭様は今日はいらっしゃらないのでしょうか?

ドワーフ: んー、司祭って?

フンディン: ?
フンディン: こちらの寺院の司祭様です

ドワーフ: おれは掃除で雇われてんだ
ドワーフ: あー
ドワーフ: あのじいさまか?

フンディン: じいさま…

ドワーフ: いつもここで座ってるやつ

フンディン: たぶん、そうだと思います

ドワーフ: さあ、毎日いるわけじゃねえから
ドワーフ: 知らないね
ドワーフ: あのじーさま、何言ってんのかさっぱりだよな

フンディン: そうですか?

ドワーフ: そうだね

フンディン: とても聡明な方であると思いましたが

ドワーフ: まあ、たぶん、何言ってるかわかんねえから、本殿じゃなくてこっちにいつも一人でいるんだろうよ
ドワーフ: どうせそんなに偉い人じゃねえよ…おれみたいなのに気を使ってたらな


*フンディンは、祈りを終えて宿に戻ろうとする。

ドワーフ: あっ、そうだ

フンディン: ?

ドワーフ: あんたフンなんとかってやつ?

フンディン: フンナントカ?

ドワーフ: 名前だよ、鈍いな

フンディン: いえ、私はフンディン・アイアンビアードと申します

ドワーフ: じーさまから伝言で

フンディン: !

ドワーフ: 前を向いて、一歩一歩進みなさい。だって

フンディン: 司祭様…

フンディン: 掃除人どの
フンディン: 司祭様にフンディンがありがとうございましたと
フンディン: お伝え願えますか?

ドワーフ: 覚えたらな。じゃーな、おれ仕事あるから

フンディン: それでは


*フンディンは宿の仲間のところに戻る。

スキールニル : で

フンディン: さて、これからの道です
フンディン: 皆さんの考えはいかがですか?

スキールニル : 面倒だからお前が決めろよ

アル: それがいいと思う

フンディン: アルドリックさんとエルドリックさんは?

スキールニル : お前の試練だ

アル: 英雄が決めなよ

スキールニル : 進む道はお前が決めろ

アル: 迷っているのなら相談には乗る
アル: だけど決めるのは君が決めるのがいいよ

フンディン: 正直なところ
フンディン: 最初にお会いしたときはイランディルさまのことが信じられなくなっていたんです

スキールニル : それが普通じゃないのか?

フンディン: もしかするとこのオッド・アイもばらばらになって返ってくるかも知れない…と

アル: 今は違うんだね

フンディン: けれどそれは私の勝手な迷いだったことがわかりました
フンディン: そう考えると
フンディン: イランディル様の仰るミスリルを探す道…へ進むべきかとも思うようになりました
フンディン: けれど陛下の仰る通り
フンディン: フレッディル様ならば何か手がかりをご存知かも知れない…とも
フンディン: 思い、こうして迷っていたのです

スキールニル : 何だそんなつまらんこと悩んでたのか
スキールニル : 簡単だよ
スキールニル : どっちでも良いから決める
スキールニル : そっちがだめなら別な道
スキールニル : 簡単だろ?

フンディン: そうか!

アル: そうだね、まだ時間はある

フンディン: スキーニー、頭いいね!

スキールニル : どのみち手探り状態だから
スキールニル : まあそうするしかないんだけどなあ

エル: ま、でもイランディルに関しては
エル: 同じこと考えてたよ

フンディン: 今はそうは思っていませんよ

スキールニル : 俺はヤツはそんなに悪いヤツじゃないと思うぜ
スキールニル : ただちょっとなんというか
スキールニル : そうアホなんだ

エル: 悪いやつじゃないとは思うけどね

スキールニル : うっかり返し忘れたりはしそうだぜ


*フンディンは考え込み、そして数分後、顔を上げた。

フンディン: ミスリルを求めましょう
フンディン: どちらが正しい道かはわかりませんが
フンディン: 前へ進みつづければきっとたどりつく場所は同じ筈です

アル: よし、決まりだ

スキールニル : そんなモン行ってみなきゃわかんないからな
スキールニル : だからまあ行ってみるのがいい

フンディン: では今日のうちに旅支度を整えて

エル: はは

フンディン: 明日の早朝に出立しましょう


*行き先は決まった。

アル: 飯、飯

エル: フンディン、そうと決まったら今日はキミは酒無しだな

スキールニル : ああそうだな

フンディン: わたしはいつも飲んでいませんよ

エル: それならいつもどおり飲まないように

フンディン: その前に
フンディン: ダクダ・アムミル様のところへ
フンディン: お話しを伺いにいこうと思います
フンディン: ダクダ様ならきっとミスリルの鉱脈についても
フンディン: 何かご存知かも知れないと思いますので

スキールニル : 目的地というか・・・とりあえずどこを目指すのかだが

アル: そうだね

スキールニル : その辺ははっきり決まってるわけじゃないんだっけ

スキールニル : まあそうと決まったら
スキールニル : おやっさんに会いに行こうぜ

フンディン: とりあえず行ってみましょう


●ミスリルの道へ

*すでに時刻は夕方だが、道を決めた一行はダクダの元を訪れた。フンディンがノックするが、急いでいるスキールニルは扉を開けてしまう。フンディンはスキールニルを小突いた。

スキールニル : いてえな

*スキールニルはフンディンに後ろから蹴りを入れる。だがいつもどおりジャレているだけで本気ではない。

フンディン: なにする…

アル: 何やってんだよ?

フンディン: 失礼致します
フンディン: ダクダ様

ダクダ アムミル: おい、人の部屋の前でケンカするな

スキールニル : ああごめんよおやっさん

アル: (そんなだからお笑いグループって言われるんだ)

フンディン: し、失礼しました!

ダクダ アムミル: 騒がしいやつらじゃな

フンディン: その…
フンディン: 入ってもよろしいでしょうか?

ダクダ アムミル: かまわんよ

フンディン: では

スキールニル : あ

フンディン: お邪魔します

スキールニル : 酒持ってくるんだったな

フンディン: 実は本日こうしてお邪魔致しましたのは

ダクダ アムミル: うむ

フンディン: 先日お伺いした我が祖父大フンディンの件で
フンディン: 明日、アドバールを発つことになりました

ダクダ アムミル: ほう…そうか、陛下からフンディンに坑道の通行許可を出せと言われておる

フンディン: 坑道の…?

ダクダ アムミル: うむ
ダクダ アムミル: ミスリルについて考えてみたがね

フンディン: おお、すでにお話しを伺っておられましたか

ダクダ アムミル: ミスリルは奇跡の石だ。アドバールだけでなく他の都市でも
ダクダ アムミル: めったに見つかるもんじゃない

フンディン: はい…

ダクダ アムミル: すぐに尽きてしまったり、移動するって噂もあったくらいだ

フンディン: 移動する?
フンディン: 鉱石そのものがひとりでに…ですか?

ダクダ アムミル: まあ…わしは信じちゃおらんがね
ダクダ アムミル: それくらい珍しいってことだ
ダクダ アムミル: 品質の良いミスリルを安定して供給できるのはこのフェイルーンでは唯1箇所しかない

フンディン: !

ダクダ アムミル: わしの知る限り…だが
ダクダ アムミル: その名のとおり…ミスリルホールだよ。

フンディン: ミスリルホール!

スキールニル : 見てみてえな

ダクダ アムミル: 伝説に歌われた都市。ただの伝説だと思っておったが、ブルーノー王が探求のすえ見つけ出した
ダクダ アムミル: ”ホールの仲間”の話くらいは聞いたことがあるじゃろう

スキールニル : そういや双子がそんな歌歌ってたっけ

ダクダ アムミル: ミスリルホールの地上の出入り口はバトルハンマー氏族の秘密になっておる
ダクダ アムミル: だから移動は、地下のトンネルを通っていくことになるんだが…

スキールニル : 何か問題でも?

フンディン: そのトンネルが、ここの坑道に繋がっているということなのですか?

ダクダ アムミル: うむ
ダクダ アムミル: 北方のドワーフの大トンネルは
ダクダ アムミル: アドバール ミスリルホール ミラバールをつないでおる
ダクダ アムミル: かつては、フェルバールもな
ダクダ アムミル: オークに落されたあとに、全てのトンネルがふさがれたがね

フンディン: ……

ダクダ アムミル: だが、先日話したとおり

フンディン: *オークと聞いて唇をかむ*

ダクダ アムミル: いま坑道では問題が起こっておる。

フンディン: それはどのようなことなのでしょう?

アル: おいおい忘れたのか?

フンディン: そういえば…そうお聞きしたかも知れません…

ダクダ アムミル: 思い出したかね
ダクダ アムミル: だから今通行禁止になっとる

フンディン: 坑道は通れなくなってしまっているのですか?

ダクダ アムミル: はっきり言って危険だから、お前さんらを行かせたくない…
ダクダ アムミル: わしもまだ報告を全て処理しきてれいないが
ダクダ アムミル: 通ることはできるはずだ

スキールニル : しかし他に道はないんだろ?

ダクダ アムミル: そうだな。ミスリルホールにはそこからしか入れない

スキールニル : だったら迷うことはないな

フンディン: ともあれ他に道がない以上は
フンディン: 進んでみようと思います

ダクダ アムミル: ただ、陛下から通せとも言われている…

フンディン: このわたしの鎧
フンディン: これは我が師匠ガーリン・アイアンフォージ様から頂いたものです
フンディン: …ミスリルで出来ています

ダクダ アムミル: んむ

フンディン: アドバールの鍛冶長にして
フンディン: わたしの兄弟子である
フンディン: イランディル様は
フンディン: わたしが鎧にただ守られるだけで
フンディン: 本質を理解できていないとわたしに言われたのです

ダクダ アムミル: んむ

フンディン: これから進もうとする道がかように危険で
フンディン: この鎧の守りすらも及ばなくなるかも知れないとすれば
フンディン: その時こそわたしは…
フンディン: イランディル様の仰られたことを理解することができるかも知れない
フンディン: …そんな気がしています

ダクダ アムミル: んー…まあ、イランディルは頭でっかちだからなあ
ダクダ アムミル: つまりは、お前さんにがんばれって言いたいんだろ

アル: なるほどねぇ

スキールニル : 今はわかる必要はないんじゃないのか
スキールニル : 今わかる必要があるならちゃんと教えてくれんだろ

ダクダ アムミル: 自分なりに鍛冶の技を教えたつもりなんだろ

フンディン: それはそうだけどさ、スキーニー

スキールニル : でもあいつ偏屈そうだからどうかわかんないけどな

フンディン: だからともかくいま言いたい事は
フンディン: ミスリルホールへ行こうってことだよ

スキールニル : だから行こうぜ

ダクダ アムミル: まあ…行くってんなら、止められんがね

フンディン: …ご心配をおかけして
フンディン: 申し訳なく思っています、ダクダ様

ダクダ アムミル: うむ…出来る限り教えておく
ダクダ アムミル: まず、ミスリルホールへは通常
ダクダ アムミル: トンネルの第1層をずっと西に進めばいい
ダクダ アムミル: 入り口は隠されていて
ダクダ アムミル: それが見つけられなければ入れない
ダクダ アムミル: そしてその場所は教えてならないとされている

フンディン: 第一層を西、ですね

ダクダ アムミル: うむ、西に進んでそれ以上進めなくなったら
ダクダ アムミル: 周囲をよく探せ

エル: ふむふむ

ダクダ アムミル: ここだと思った場所で
ダクダ アムミル: 斧と盾を打ち鳴らせ
ダクダ アムミル: リズムは1.2.1

フンディン: 1、2、1ですか
フンディン: ええと

ダクダ アムミル: 正しければ、道が開く

フンディン: いよぉーっ!
フンディン: *がん ががががが がん*
フンディン: こういった具合でしょうか?

ダクダ アムミル: うむ。一つ、忠告しておこう
ダクダ アムミル: その合図は一回しか使えない

フンディン: !

ダクダ アムミル: つまり間違った場所で使えば
ダクダ アムミル: もう一度ここに戻ってまた新しい合図を聞かなければならない

エル: まさにフンディンが何かしでかしそうな・・・

アル: 絶対に1回じゃ通れなさそうだな

ダクダ アムミル: 1回で決めろ。トンネルは往復できる状態じゃない

フンディン: それで、
フンディン: その隠された入り口の先はどのように?

ダクダ アムミル: 入れれば、わかる
ダクダ アムミル: それから
ダクダ アムミル: もしかすると1層に通れない場所があるかもしれん
ダクダ アムミル: その時は2層を通って迂回しろ
ダクダ アムミル: だが、4層には降りるな
ダクダ アムミル: 何があってもだ

スキールニル : 一体なぜ

フンディン: ドロウ…ですか?

ダクダ アムミル: うむ…例の封鎖した坑道が4層にあるんだ
ダクダ アムミル: まだ調査もままならん状態で、何がいるかわからん

フンディン: わかりました

スキールニル : ドロウと坑道でやりあうってのはさすがにまずいな

ダクダ アムミル: 新米のドロウの戦士1人ですら、お前さんらが何も感じないうちに殺せるだろうよ

フンディン: …

スキールニル : つまりは苦しまずにすむってことだけが
スキールニル : 救いか?
スキールニル : それもあてにならなそうだが

ダクダ アムミル: そうしてくれたらな…
ダクダ アムミル: もしドロウを見かけたら、全力で逃げろ

スキールニル : そうしよう

フンディン: 心得ました

ダクダ アムミル: もしかしたらドリッズドかも?なんて思うなよ

フンディン: もとより見分けがつくとは思っておりません

ダクダ アムミル: わしも何度が会ったことがあるが、あいつは正真正銘のドロウだ。区別はつかん
ダクダ アムミル: そんなところだ…

フンディン: わかりました

ダクダ アムミル: トンネルにはアドバールの戦士や工夫もいるだろう
ダクダ アムミル: やつらの話もよく聞くことだ

フンディン: はい!

スキールニル : そうするよ

フンディン: 数々のお心遣い
フンディン: 本当にありがとうございました
フンディン: それでは今晩は支度を整えて
フンディン: 明朝早くに発とうと思います

ダクダ アムミル: うむ…気をつけてな

スキールニル : おやっさん次にくるときはいい酒もってくるよ
スキールニル : 世話になったからな

ダクダ アムミル: お前さんに酒の味がわかるのか?


*ダクダはスキールニルを生意気に思ったのか、にやりとする。

スキールニル : 判るさ
スキールニル : あんたの次にね

ダクダ アムミル: わははは

スキールニル : おやっさんはいい人だ

フンディン: 悪い人なんているわけないじゃないか
フンディン: 当たり前のことを言うね、スキーニー

スキールニル : いるよ
スキールニル : たとえば俺とか

フンディン: それではこれにて


*一行は退出すると、店が閉まる前に買い物を済ませるため急いで地上に戻る。店はまだ開いていた。慌てて買い物を済ませる。

フンディン: ふう
フンディン: それじゃ今日は宿に戻って
フンディン: 早めに眠りましょう

エル: そうだね

スキールニル : 今日は素振りも軽めにするか


*一行は宿に戻って部屋を取り、部屋に入る。

エル: さて、寝るかな
エル: 今日はなんか疲れたよ

アル: あぁ
アル: ゆっくり寝ておいた方がいい

スキールニル : ミスリルホールか

アル: 支度はできたかい?スキールニル

スキールニル : わくわくするな
スキールニル : もちろんできてる

アル: 結構だ

スキールニル : 今すぐ行ってもいいくらいさ

アル: 気をつけてくれよ

スキールニル : ああ
スキールニル : この間の無様な戦いでいかに自分が未熟かわかった
スキールニル : 一から修行のしなおしだな

アル: うん、そのくらい慎重な方がいい
アル: でないと英雄を守りきれないからね
アル: 何だか少し不安だな…

フンディン: (アドバール…ずいぶん長いこと過ごした気がするなあ)


*実際、半月は過ごしている。

スキールニル : 俺も不安はあるけど

フンディン: ミスリルホール、か…
フンディン: *どきどき*

スキールニル : 不思議と楽しみなんだ

アル: 楽しみ…か

スキールニル : 楽しみじゃないか?
スキールニル : もちろん全員屍ってことも大いにありうるけどな

エル: ZZZ

スキールニル : そろそろ寝るか

アル: そうしよう

フンディン: それではおやすみなさい


*明かりを消し、一行はそれぞれベットに潜り込む。明日はいよいよ、アドバールを離れてミスリルホールへの旅が始まる。果たして坑道で一行を待つものは…。


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