ドワーフクエスト
第二章 アドバール城砦
「理想と現実」


●いつもの朝

アル: おはよう

スキールニル : 素振り1000回だ
スキールニル : おりゃ!

アル: 相変わらず頑張るねぇ

スキールニル : えいっ!

アル: ちょっとメシの補充に行ってくるよ

スキールニル : 俺もいくかな

アル: 終わったかな?


*二人は先に宿を出て、市場で買い物をした。

スキールニル : やっぱり朝の散歩はいいなあ

スキールニル : あいつらマダもたもたしてるのか

アル: そのようだね


*と、そこへフンディンたちも出てきた。

フンディン: *はあー*

アル: どうかしたのか?
アル: フンディン

フンディン: なんでもありません…

アル: ならいいが

フンディン: *ふうー*

エル: おはよう

スキールニル : 今日はどこいくんだっけ

エル: 元気ないじゃないか!

フンディン: そんなことないですよ
フンディン: *はあー*

スキールニル : 嘘のつけないやつだ

エル: お酒のみ過ぎ?

スキールニル : 手がかりはあんまりないし
スキールニル : どうすんだこれから

フンディン: ………
フンディン: ん?
フンディン: 何だい、スキーニー?

アル: そうだな…取り敢えずは王に謁見を求めてみるか

フンディン: なにか言った?

スキールニル : 今日はどうすんだっていったんだよ

フンディン: ああ、今日
フンディン: ええと、それじゃナクルどののところへまずは先日の
フンディン: お願いの結果について
フンディン: 元気一杯、聞きにいきましょう!
フンディン: *はあー*

アル: 病気か?

スキールニル : 先が思いやられるな
スキールニル : エル昨日なんかあったのか

アル: それとも…恋?

エル: 別に


●遊撃隊の仕事

*一行はナクルのところにやってきた。フンディンが扉をノックする。

ナクル : ん、誰だ

フンディン: フンディンです
フンディン: ナクルどの、よろしいでしょうか?

ナクル : 入っていいぞ

フンディン: 失礼します
フンディン: ナクルどのにおかれましては本日もご機嫌うるわしく

アル: おはようございます

ナクル: うむ
ナクル: おはよう
ナクル: で、なんのようだ?

フンディン: 先日ナクルどのにお願い申し上げた
フンディン: 親衛隊長どのへの認定申請の件について参りました

ナクル: ああ…あれか

フンディン: その後いかが相成りましたでしょうか?

ナクル: 実はその件なんだが

アル: (やな予感…)

ナクル: 前回の作戦参加で、推薦状をもらおうと思ったんだが
ナクル: それだけでは足りないと

スキールニル : なるほど

アル: そうですか…

フンディン: ……

エル: ふーん・・・

ナクル: 一つ、遊撃隊のために働いてもらわなければならなくなった
ナクル: そこで、信用できるか見るそうだ

スキールニル : 待ってました
スキールニル : 埃っぽい図書室にはうんざりだ

フンディン: なるほど、道理でありますね
フンディン: ……

ナクル: だが今回、おれは一緒にはいけん

アル: スキールニルにはそうだろうな

スキールニル : ああ

ナクル: お前たちだけでやらねばならん
ナクル: やるか?

フンディン: それは当然のことと考えております

スキールニル : 勿論

フンディン: 認可を頂くのは我々でありますから

エル: ♪

ナクル: では、これを。


*ナクルは地図を取り出すと、一行に見せる。

スキールニル : ふむ

フンディン: これは…?

ナクル: アドバールの近くの森の地図だ
ナクル: ここがアドバール。見ればわかるだろう

フンディン: はい

ナクル: これは我が遊撃隊のパトロール区域の一つだ

エル: ふむふむ

ナクル: お前達はその地図の範囲内をパトロールして
ナクル: 戻ってくればいいだけだ

フンディン: わかりました

ナクル: 無論、報告は上げてもらうから

スキールニル : 話を聞くとずいぶん簡単そうだけどな

アル: 普段の危険度はいかほどでしょう?

ナクル: ちゃんと調べて来るんだぞ
ナクル: お前達の腕前では
ナクル: 狼の群れに襲われればやっかいな事になるだろう
ナクル: 十分注意してやることだ

アル: 狼…

フンディン: 心得ました
フンディン: では当該地区の巡回、早速発とうと思います

ナクル: では、気をつけて行って来い

アル: (治療の魔法を準備しないとな…)

フンディン: これにて失礼致します

ナクル: 食料と野営の道具も準備していくんだぞ

アル: それでは


*一行は遊撃隊本部から出る。

アル: 久々に砦の外だなぁ

スキールニル : ホントに久々だ

フンディン: あっ
フンディン: 皆さんは先に
フンディン: 準備をすすめていてください

エル: うん

フンディン: わたしはイランディル様のところでオッドアイをお借りしてから行きます

アル: お借りしてって…

スキールニル : 返して貰うんじゃねえのかよ
スキールニル : むしろ取り戻す

アル: 取られたのか? あの男に

スキールニル : まったくあのボウヤにもこまったもんだぜ

アル: どういう事なんだ?


*フンディンは早速、イランディルのところに向かった。

フンディン: おはようございます

*イランディルの部屋の扉をノックするが、反応がない。部屋の中の様子に聞き耳を立てて見るが、鍛冶場の音で何も聞こえない。

フンディン: うーん…

ドワーフ: ん
ドワーフ: なんだ坊主、ボスに用事か


*フンディンが困っていると、近くのドワーフが声をかけてくれる。

フンディン: お忙しいところ失礼します
フンディン: イランディル・バングスティール様はお留守でしょうか?

ドワーフ: ボスなら今朝早く、またどっかにいっちまったよ

フンディン: ええっ?!
フンディン: そ、それでは、その、

ドワーフ: ん、何か大事な用事でもあったのかい

フンディン: フェルバールのフンディン・アイアンビアード宛てに
フンディン: 何かおことづてでも残されてはいらっしゃらないでしょうか?

ドワーフ: …うーん…
ドワーフ: 特に聞いてないなあ

フンディン: そ、そうですか…
フンディン: *がっくり

ドワーフ: まあ気まぐれな人だから
ドワーフ: それに今回は
ドワーフ: 何も言わずに出て行ったから
ドワーフ: そんなに長旅ではなかろうよ

フンディン: そうでありますか…
フンディン: どうもありがとうございました
フンディン: *はあー*


*フンディンが地上区に上がると、入り口の近くにある訓練場に仲間が待っていた。待っている間に使わせてもらっていたらしい。今後も、来たい時に訓練場を利用してよいという許可ももらっていた。

エル: やあ

フンディン: *はあー*

フンディン: あ、エルドリックさん

アル: おっ出てきたかな?
アル: おっ
アル: 待ってたよ

フンディン: ……

アル: どうしたんだろうな?
アル: 朝から変だった

スキールニル : あいつはいつも変だ

アル: いつにも増して変だった…

フンディン: ………

エル: 鎧をどうした

フンディン: ああ、そうか…

スキールニル : 何もたもたしてんだよ

フンディン: 警備でしたね
フンディン: では行きましょう

スキールニル : やる気あんのか?

フンディン: ?
フンディン: 何か言ったかい、スキーニー?

アル: あってもなくてもやらなきゃ

スキールニル : なんでもねえよ

アル: …

フンディン: *はあー*


*鎧を返してもらえなかったフンディンは仕方なく、鍛冶屋で代わりのチェインメイルを買った。

●慣れない仕事

*一行はアドバールを発ち、4時間ほど歩いて教えられた地区までやってきた。

アル: 雨か…

フンディン: 地図によると…
フンディン: この辺りから該当地区ですね
フンディン: では張り切って!
フンディン: 見回りましょう!!

アル: 予定より遅れているな


*一行は周囲を警戒しつつ森の中を歩き始めた。

スキールニル : ・・・・・

フンディン: 異常なーし
フンディン: ?
フンディン: どうしたの、スキーニー?

スキールニル : 狼2匹か
スキールニル : 狼はほっといていいモンなのか?

フンディン: ?
フンディン: あれは犬だよ、スキーニー


*ちなみに、狼です。

エル: ランラン♪
エル: ハイキングは楽しいね、兄者

アル: ハイキングかよ!

スキールニル : 犬だって人を食い殺せるんだぞ

フンディン: それはそうだけど

アル: あれ、狼だけど

フンディン: 別に人を食い殺してはいないじゃあないか

スキールニル : ああいうのは排除しないでいいのか

アル: おい


*狼は一行を見ている。

エル: 危険かな?

フンディン: ほら
フンディン: こんなに人懐っこいよ


*狼が一行に駆け寄ってくる…

アル: 危険どころじゃない!
アル: 襲ってくるぞ!

フンディン: ??

スキールニル : 仕方ない撃て

エル: それなら仕方ないね

アル: フンディン、武器を取れ


*反応の遅れたフンディンが傷つくも、狼を撃退した。

フンディン: いたた…

アル: 傷付いてるじゃないか!

エル: エルドリック・ジ・ウルフキラー


*エルは狼を倒した事に満足している。

フンディン: いきなり近づいたから驚いたのかな?

アル: 治療薬はあるのか?

フンディン: 大丈夫です

スキールニル : 気合で治す

アル: 相手は野生の動物なんだ

エル: のこのこ近付いたら襲われても仕方ないね

アル: いきなり近付けば警戒するのは当たり前だ

フンディン: 今度見かけたらそっとしておいてやることにします

アル: そうしてくれ

エル: ああいうときは
エル: 笛を鳴らしながら近付くといいんだ


*一行は森の中を進む。今度は熊が歩いているのを見つけた。

スキールニル : 熊だ

*突然、フンディンが口笛を鳴らす。

アル: おい

*驚いた熊は、フンディンに向かって突進してきた!

フンディン: !!

*フンディンと熊の間にスキールニルが立ちはだかる。熊の突進にスキールニルは跳ね飛ばされ、振り下ろされた前足の一撃で追い討ちを受ける!スキールニルの血が飛び散った!

フンディン: スキーニー?!

アル: 今行くぞ


*スキールニルは重傷を負いながらも立ち上がり、熊と戦闘に入った。すぐさま双子が援護に入り、なんとか熊を追い返した。

エル: 大丈夫

アル: スキールニル
アル: 大丈夫か?

フンディン: どうして襲ってきたんだろう???

スキールニル : まだまだ未熟だ

アル: 貴様!


*不思議顔のフンディンをアルが殴る。

フンディン: いたっ

エル: スキ-ルニル、ひどくやられたね
エル: 髭に血がついてるぜ

フンディン: なにをするんですか、アルドリックさん

スキールニル : 俺の踏み込みがもっと深ければ
スキールニル : 倒せていたのに

アル: 貴様のせいでスキールニルが危険な目に遭ったと
アル: 何故分からない?

スキールニル : ほっとけ
スキールニル : 馬鹿は死なないと直らん

フンディン: しかし笛を吹きながら近づけば良いと…

アル: その為にお前が死んだら
アル: もういい…

エル: 口笛じゃダメだ
エル: 牛笛じゃないと

スキールニル : アレは俺がミスしただけだ
スキールニル : 次は負けねえ

エル: む
エル: 今度こそ、仕事だ
エル: 向こうを見て


*エルが小川の向こうの茂みを指差す。

フンディン: あれ?
フンディン: 何か動いた??

アル: 良く見えない

エル: 薄汚いゴブ野郎だ

アル: ゴブリンか

フンディン: !


*茂みの向こうから、うっすらと煙が上がっている。ゴブリンの野営地だ。

エル: フンディン、今度は思いっきり行くぜ

フンディン: ゴブリンがこんなところで何を??

アル: それを調べるのが役目だ

フンディン: その通りですね

エル: 一匹だけ生かして捕らえよう

フンディン: なにをしていたか
フンディン: 吐かせるわけですね

フンディン: では


*今度は、準備してからスキールニルとフンディンを前衛に突撃する。特に大怪我をする事もなく、一行はゴブリンを全滅させることができた。

エル: ・・・

フンディン: さっき転がしておいた一匹は・・


*情報を聞き出すために、一応、一人生かしておくことに決めていたようだが…

スキールニル : 思いっきり真っ二つにしちまったようだ

エル: 僕の矢も喉に刺さってる

スキールニル : まあ仕方ない

フンディン: せっかく盾で殴って気絶させたのに…


*まだ、しっかりと手加減するほどの余裕は持てないようだ…。(うまく手加減できたかどうかの判定にスキールニルとエルが失敗したのだ)

フンディン: これでは手がかりも何もないですね

スキールニル : 修行が足りねえ

フンディン: 少しこの辺りに置いてあるものを
フンディン: 調べてみましょう


*フンディンたちはゴブリンの野営地を調べる。エルは調べる気はないらしく、黙ってみている。

フンディン: どうやら今の連中がこの辺りに住み着いたのは最近のようです
フンディン: ただうろついていただけというかんじですね

スキールニル : 最近やけに物騒だなこのあたり

フンディン: この箱が気になりますが…

エル: 開けてみたらどうだい?

フンディン: 何かの罠が仕掛けられているようなのです

エル: ふむ

フンディン: 箱の縁にいじった後が

スキールニル : 中身が壊れるかもしれないがまあしかたないぜ

フンディン: 気をつけてね、スキーニー


*罠が作動する可能性を考えて、離れたところから飛び道具で箱を壊そうとする。

アル: ふう

フンディン: 中身までこわさないように

エル: 箱ごと壊しちゃえば、罠なんか関係ないものなぁ


*箱は罠ごと壊れた。

フンディン: 魔法のスクロールが
フンディン: 一枚だけでした
フンディン: とくに変哲があるようには見えません…

アル: 最近住み着いたのかな?

フンディン: ゴブリンにとっては珍しいものだったということでしょうか

アル: そうかもしれない

フンディン: ではパトロールを続けましょう

エル: そろそろ夕方か


*一行は再び進む。

アル: 右

フンディン: 今度は

アル: 狼だ

スキールニル : ち


*狼はこちらに向かってくる!

フンディン: 口笛も吹いていないですよ

アル: だからやるしかない


*今度は警戒していたため、特に被害もなく撃退することができた。

フンディン: えさをくれると思ったのかな?

エル: 腹が減ってるのかな?

スキールニル : 腹が減ってんだよあっちは
スキールニル : お前がえさだ

エル: いや、その体が餌に見えるんだろうね
エル: こっちを見るとすぐに襲い掛かってくる

スキールニル : 修行としては悪くない

アル: 少し休みたいが夜になると困るな

エル: 旅人の安全を考えると、殺すしかないみたい

フンディン: むこうに何か


*フンディンが何かに気がついた。

アル: 鹿と猪か?

フンディン: いや、焚き火が見えるような気が


*フンディンは目を凝らす。

フンディン: 煙が見えます
フンディン: やっぱり間違いじゃあないみたいだ

アル: そうだな、間違いない
アル: 俺にも煙が見えた

スキールニル : 調べるぞ

エル: うん

フンディン: ???!

アル: オークだ

エル: シカを狩っているのかな

アル: 何故こんなところに

フンディン: 放っておくわけにはいきませんね

エル: もちろん

スキールニル : 妙だな

フンディン: なにがだい、スキーニー?

スキールニル : この間の残党であればいいんだが

エル: 皆殺しにしよう

スキールニル : ゴブリンにオーク・・・無関係だといいな

フンディン: 別に一緒にいたわけではないよ
フンディン: 関係ないさ

スキールニル : それはそうだ


*一行はオークの野営地に攻撃をしかけ、多少のケガはしたものの問題なく倒した。どうやら先日の戦いでの残党だったようだ。

フンディン: もうだいぶ暗くなってきましたね

アル: おう

エル: そろそろ帰らないと、遅くなっちゃうぞ

フンディン: 今日は野営しましょう

アル: ここでか?

エル: 本気かい!?

フンディン: いや、ここではだめです
フンディン: 少し離れましょう
フンディン: オークが今の者達だけなら良いのですが
フンディン: 他の者が戻ってきたら厄介なことになりますからね

スキールニル : どうもそうじゃない気がする

フンディン: 少し離れた位置で

エル: しまった!!

フンディン: この辺りなら大丈夫そうですね
フンディン: ?

アル: どうした?

エル: まさか帰れないとは思わなかったから
エル: エールを持ってこなかった

アル: 我慢するしかないな


●野営

*一行は野営の準備をする。

アル: ふう、何とか火はついたな

フンディン: ……

スキールニル : 見つからんといいが
スキールニル : 獣はよってこないだろうけど
スキールニル : オークがよってくるかも知れない

エル: 獣のが怖いな
エル: オークなら返り討ちだ

アル: 2交代ってところか?

スキールニル : 最初に見張る

フンディン: ………

アル: じゃあフンディンとエルが休んでくれ

エル: OK

フンディン: ……
フンディン: ?

フンディン: いまなにか言いました?

アル: 休めと言っている

フンディン: ではそうさせていただきます

アル: 浅いとは言え傷をそのままにするのは良くないからな


*スキールニルとアルが見張りに立ち、フンディンとエルは眠りについた。そのまま何事もなく、数時間が経過した。

フンディン: ………

スキールニル : 交代だ

フンディン: ……


*スキールニルはフンディンを足で叩いて起こす。が、フンディンは起きない。エルは普通に、目が覚めた。

エル: お

スキールニル : 交代だ

フンディン: ……

スキールニル : ・・・・・


*やはり、フンディンは起きない。

エル: やすまないのかい、お二人さん

アル: このままにしておいた方がいいか?

フンディン: zzz....

アル: 見張りを1人に任せるのはなぁ

スキールニル : 一人で平気か?

エル: まあ、大丈夫だろ
エル: 休んでくれよ

アル: 仕方ない
アル: スキールニルと俺は半分ずつでいこう

スキールニル : 休ませてもらうぞ

アル: そうしてくれ


*結局、残りの時間はエルと、アルとスキールニルで半分ずつ見張りに立つことにしたようだ。

アル: もう夜中か…流石に眠いな…

*さらに数時間が経過。スキールニルが起き出してくる。

スキールニル : 休めよ

*アルに向かって言う。と、周囲から獣のうなり声が聞こえてきた。どうやら気がつかないうちに接近され、囲まれてしまったらしい。(見張りが判定に失敗した)

エル: おや?

フンディン: zzz...

アル: そういう状況じゃないみたいだ
アル: おい!フンディン、起きろ!

スキールニル : くそ

エル: おい!

フンディン: むにゃ…

エル: なんかいるぞ!


*アルはフンディンを揺さぶり起こす。だが獣はすでに茂みから飛び出して来ていた!

エル: わ

フンディン: ん…

スキールニル : エル気をつけろ!

エル: オオカミだ

アル: 頼む、起きてくれ
アル: 狼が出た

スキールニル : 危なかったら逃げろ
スキールニル : 必ず助ける

エル: ああ


*飛び掛ってきた狼とエルが戦闘に入る。すでにスキールニルの周りにも3匹ほどが群がっていた。

フンディン: おかみが…出た…?
フンディン: むにゃ…

アル: ”おおかみ”

スキールニル : さあ来い狼ども

フンディン: ??

アル: 寝首を取られたくなかったら起きてくれ

フンディン: なんだかさわがしいなあ
フンディン: 眠いのに…
フンディン: ???

アル: 寝たまま死にたいのか?


*エルとスキールニルが戦っている逆側から、狼が飛び出してきた。やはり囲まれていたらしい。狼は眠っているフンディン目掛けて駆けてくる!フンディンを起こそうとしていたアルは、諦めて狼の前に出た。狼の牙と爪が容赦なくアルを切り裂く。アルのピンチにスキールニルが駆け寄り、エルは治癒の呪文を詠唱する。3人の活躍でなんとか狼を撃退したが、アルが大怪我を追ってしまった。

アル: いてて

フンディン: な、な、な、
フンディン: これは夢??

アル: くそっ噛みつきやがった

*エルが、アルの傷を手当てする。

アル: ありがとうエル

フンディン: やっぱりまだ夢を見ているのかな

*突然、スキールニルがフンディンに歩み寄ると、本気で殴った。いつものとは違い、フンディンが口の中を切るほどの勢いだ。

フンディン: いてっ!
フンディン: なにするんだよ!

スキールニル : 馬鹿が
スキールニル : お前は帰ったほうがいい

フンディン: ???

スキールニル : 悪いことはいわねえ

フンディン: 何を言っているんだかさっぱりわからない

エル: こういうのが英雄になるんだって

スキールニル : 分からなきゃわからないでかまわんぜ
スキールニル : 死んで悟れ
スキールニル : だがな

フンディン: 死んだら悟れない!

スキールニル : お前が死ぬのは勝手だが

フンディン: 誰だって死んでしまったら
フンディン: おしまいだ!

スキールニル : お前が起きないせいでアルは危ない目にあった
スキールニル : おまけにお前をかばって怪我までした

フンディン: ……

アル: もういいよ

スキールニル : それで分からないならお前は救いようがない
スキールニル : うちに帰れ


*フンディンは目に涙をためてスキールニルを睨みつけた。

アル: こんな夜中に
アル: 仲間割れはよそう

エル: 死ぬ直前に悟れるらしいよ

スキールニル : 俺が死ぬのはかまわん

フンディン: かまわなくない!

スキールニル : それは俺が未熟だからだ
スキールニル : だが双子が死ぬのは
スキールニル : 俺には耐えられない

フンディン: ……


*みな黙ったまま、1時間ほどが経過する…

アル: 結局寝るどころじゃなかったな

スキールニル : 今ならまだ少し寝れるぞ
スキールニル : 疲れが取れるかどうかは分からないけどな

アル: ちょっと高ぶってて眠れそうにないよ
アル: 帰るまではもつだろうさ

フンディン: ……

スキールニル : 俺も見張ってるから休むといいよ

アル: それじゃ少しだけ

フンディン: ……


*やがて、空が白みはじめ、朝が来る。

アル: 明るくなったな

スキールニル : (長い夜だったな・・・)

アル: さぁ、仕事仕事

フンディン: (父上はどうして…)
フンディン: ……ん
フンディン: いつの間にもう朝か…


*それぞれキャンプを片付け、荷物をまとめる。その間、スキールニルとフンディンは目が合ったが、フンディンはフンと顔をそらす。

フンディン: では行きましょう

エル: はいよ

アル: (ふわぁぁ)

スキールニル : 眠そうだなアル

アル: ちょっとね

スキールニル : 顔洗うといいぞ

アル: *じゃぶじゃぶ*
アル: ふう
アル: 気持ちイイや


*アルがオークの野営地の近くの小川で顔を洗っている間、フンディンは野営地に誰か来た形跡が無いか調べている。

フンディン: ……

フンディン: どうやら昨日のオークは
フンディン: あれだけだったようです
フンディン: いまのところは戻った後はない

アル: 残党だったのかな?

スキールニル : かもしれない
スキールニル : 巡回を続けよう


*突然、アルがつんのめって倒れる。

フンディン: …?

スキールニル : おいしっかりしろ

アル: すまん

フンディン: アルドリックさん?
フンディン: どうかしましたか?

アル: 根っこに足を

フンディン: ああ

アル: ん?
アル: 何かあるみたいだな


*起き上がったアルが、何か見つけたようだ。

フンディン: 焚き火のようなものが
フンディン: 見える気がするのですが…

スキールニル : いやな予感がする


*アルとフンディンは目を凝らしてみる。

アル: 駄目だ、かすんで良く見えない

フンディン: 目がしょぼしょぼする…

アル: 行ってみるしかないか

フンディン: *ごしごし*

エル: このにおいは・・・


*数は少ないが、オークだ。ここにも逃げた残党が残っていたのだ。バラバラに逃げ出したため、昨日の野営地のオークとはお互いに近くにいるのに気がつかなかったようだ。おかげで各個撃破できる。一行は突撃した。

フンディン: この!

*と、アルが呪文を唱えるオークに気がついた。

アル: シャーマンだ
アル: 気をつけろ


*シャーマンの呪文にフンディンとスキールニルが影響を受けるが大きな被害にはならない。一行はオークを倒した。

フンディン: ふう…
フンディン: なんだか体が重い

アル: 大丈夫か?スキールニル

スキールニル : このくらいへでもない

アル: 良かった
アル: 一瞬顔色が悪くなったようにみえたから
アル: 心配したよ
アル: それにしても油断ならないな


*フンディンが野営地を調べる。が、昨日と同じく特に変わったものはない。

フンディン: 特に変わったことはないようですね

*その後も渡された地図の地域を探索するが、特に何事もなく任務を終えた。

フンディン: これでこの一帯はだいたい周り終えましたね

アル: ふう
アル: そうだな

フンディン: ?
フンディン: スキーニー?

アル: どうしたんだ?

スキールニル : なんでもない

アル: ならいいが

スキールニル : (くそ・・・いつもの俺じゃないな)
スキールニル : (いや・・・こんなものか)


●思い沈んで

*一行は任務を終えて戻ってきた。アドバールに到着したときはすでに日も落ちて暗くなっていた。

エル: つかれたなぁ

フンディン: なにがですか??

アル: 報告は君らだけでいいか?

フンディン: なにかあったんですか?

スキールニル : 俺は行くところがある

フンディン: ……

*スキールニルはそのままどこかへ行ってしまった。

アル: ちょっと疲れたよ
アル: 眠りたいんだ

フンディン: わかりました
フンディン: お大事に

アル: ありがとう

フンディン: ……


*ほとんど寝ていないうえ、治療を受けたと言っても怪我をしたアルは言葉も少なく宿に向かう。エルも兄の後を追い、二人は部屋を取ると倒れこむように寝てしまった。

*スキールニルは、訓練場に来ていた。すでに兵士たちは帰宅しているのだろう。真っ暗で誰もいない中で、ひたすら訓練人形に剣を振るう。

スキールニル : (俺はあの巡視の間に・・・3度は死んだ!)
スキールニル : (未熟すぎる!!!)
スキールニル : うおおおおわあああああああああ


*スキールニルは咆哮を上げて剣を振るっている。その様子をフンディンが見ていた。

フンディン: …………
フンディン: (スキーニーはああして剣を振るう)
フンディン: (この数日でわたしがしたことといえば…)
フンディン: *はあー*


*フンディンは訓練場を後にして、神殿にやってきた。モラディンの像の前にひざまずき、祈りを捧げる。

フンディン: 父上……いったいなぜ
フンディン: わたしをこの旅に遣わされたのですか…
フンディン: オール・ファザーよ…
フンディン: (何も聞こえない)

フンディン: 聞こえるわけなどないか…


*フンディンの独り言に、答える者があった。

初老の神官: …前に進むことだ

フンディン: ………

初老の神官: こんなところで、膝をついて祈りを捧げて、何か解決するのかね?

フンディン: 別に何も


*神官とは思えない事をいう。先日もここで出会った神官だ。

フンディン: ………

初老の神官: みな、進むしかない…それを止めたらおしまいじゃ

フンディン: ……
フンディン: その道が… 自分の進んでいる道が正しいと
フンディン: わからなければどうしますか?
フンディン: わからなくなったら
フンディン: こうしてここで祈ってみても、神は何も答えてはくれぬということを知るだけ…

初老の神官: 分かるところまで進んで、振り返ってみるしかない

フンディン: ……

初老の神官: 全ての父は常に我ら息子を見てくださっている

フンディン: ……

初老の神官: だが、なにをすべきか決めるのは我ら自身じゃよ

フンディン: 今宵はこれにて
フンディン: …失礼します


*フンディンは神殿を後にした。宿屋に戻ると、いつもの部屋を取っているという。部屋に行くと、扉も開けっ放しで疲れ果てた双子が眠り込んでいる。スキールニルは戻ってきていないようだ。フンディンはそっと扉を閉めると、燭台の火を消した。


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