ドワーフクエスト
第二章 アドバール城砦
「アドバール図書館」
●エルドリックの悪夢
*エルは夢を見ている。夢の中、場面は先日の戦いの場所だ。雪の吹きすさぶ中、目の前にワーラットが迫ってきている。その姿に恐怖を感じ、助けを求めて周りを見ると、近くにエルドリック…自分がいる。ということは自分は兄のアルなのだろう。夢の中のエルドリックはあなたを助けようとワーラットとの間に割ってはいる。だが夢の中の自分(アルドリック)は恐怖のあまり悲鳴をあげて逃げ出してしまう。そして振り向くと、ちょうどワーラットがエルドリックに止めを刺そうとしているところだった。夢の中の自分、アルドリックは…
エル: *脚がすくんで動けない*
*そしてワーラットの爪が、エルドリックの喉を切り裂こうと振り下ろされる…。
エル: わあああ!!!
エル: はぁはぁ
アル: はっ
エル: おはよう・・・
アル: おはよう
エル: ふぅ、死ぬかと思ったよ
エル: 怖い夢見た
スキールニル : ほう
スキールニル : どんな夢だい
アル: どんな夢だった?
スキールニル : 1・・2
スキールニル : 3・・・4
*スキールニルは日課の素振りを始める。
エル: 殺されそうになる夢
フンディン: ??
アル: 誰に?
エル: こないだの戦いの夢さ
スキールニル : 21,22,23
アル: あぁ
エル: 夢では負けそうになって
アル: そりゃ嫌な夢だなぁ
エル: そこで目が覚めた
スキールニル : 27,28・・・まあ生き残ったんだからいいじゃないか
エル: そうだね
スキールニル : 33,34
アル: そうだな
スキールニル : (あ・・・テーブルに傷が)
アル: いつも偉いな、スキールニルは
スキールニル : (まあいいか)
フンディン: それではお日様が昇る前に
フンディン: 今日は図書館に行きましょう
アル: あいよ
*一行は宿を後にした。
●図書館
フンディン: おはようございます
フンディン: お役目ごくろうさまです
アル: おはよう
*などと兵士に挨拶しながら、城の入り口に続く扉まできた。入り口には兵士が立っている。
アドバール兵士: おはよう
アドバール兵士: どんな御用かね?
フンディン: フェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します
フンディン: 図書館への入室を許可いただきたいのですが
アドバール兵士: では、真っ直ぐ進み、階段を上へ行かれよ
フンディン: ありがとうございます
アドバール兵士: 城内の事は中の者に聞くといい
フンディン: はい
フンディン: ありがとうございました
スキールニル : ほー
フンディン: ?
スキールニル : ここがそうか
*通路を進むと、上へと向かう大きな階段がある。
フンディン: この上ですね
エル: 自動ドアか・・・
アル: いや間違えてしめちまったんだ
エル: なんだ、ビックリさせないでよ兄者
スキールニル : 遊んでないでいこうぜ
アル: あぁすまん
*一行は階段を上がり、アドバール城内へと入った。
フンディン: お役目ご苦労様です
アル: おはようございます
フンディン: おはようございます
スキールニル : 図書室を探してるんだけど
フンディン: こらスキーニー!
スキールニル : どっちかな
アドバール兵士 : ふむ
スキールニル : (フンディンは無視)
フンディン: ……
アドバール兵士: 真っ直ぐ進み、右の通路を行かれるがよい
フンディン: ありがとうございます
アル: ありがとう
スキールニル : ありがとう
*兵士に案内されたとおりに進むと、大きな扉の前に机があり、そこにローブを着たドワーフが一人座っている。身なりはしっかりしていて、気を使っている様子だ。
記録長: …
フンディン: おはようございます
*ドワーフ=記録長は、本を読んでいたが呼びかけられて目を上げる。
アル: おはようございます
記録長: 何かね
フンディン: 私フェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します
フンディン: こちらは私の連れ
フンディン: 大図書館の記録長どのとお見受けしますが
記録長: ふむ…
記録長: いかにもそうだ
フンディン: 調べもののため我々に図書館への入室を許可いただきたいのです
記録長: ちょっと待て
フンディン: はい
*記録長は傍らの書類を取り出して目を通す。
フンディン: スキーニー
スキールニル : なんだ
フンディン: いくらなんでも図書館にはいるのに帯刀はまずいよ
フンディン: その剣はここにでも置いていきなさい
スキールニル : どこにおけというのだ
スキールニル : それは断る
フンディン: その辺に立てかけておけばいいだろう
フンディン: ……だから宿に置いてくればいいのに
フンディン: 意地張って持ち歩いちゃって
記録長: ふむふむ、フンディン アイアンビアード…
*書類から名前を探しているようだ。
スキールニル : 宿に置くと盗まれる
フンディン: なら家に置いてくればいいじゃないか
スキールニル : あほか
フンディン: スキーニーのほうがよっぽどあほだよ
スキールニル : 家が何マイル離れてるのかしってるのか
記録長: なるほど、確かに申請が来ておる
フンディン: !
アル: 呼んでるぞ
エル: !
フンディン: おお
エル: (フンディンの真似)
記録長: よろしい。入館を許可しよう
フンディン: ありがとうございます!
アル: ありがとうございます
記録長: ただし、いくつか注意がある
フンディン: はっ
記録長: ここの書物は全て貴重なものだ
スキールニル : 皆でまねしとる
記録長: もし本が傷ついたり
記録長: 紛失した場合
記録長: その代価はそなたらの命と同等と思ってほしい
フンディン: 至極尤もな沙汰でありますね
アル: !
フンディン: 心得ました
スキールニル : そんなに貴重な本があるのによく入れてくれるものだ
記録長: よって鋭利なものや火気は厳禁
フンディン: スキーニー
フンディン: わかっただろう?
スキールニル : なにがだ
フンディン: 剣は置いてきなさい
スキールニル : 鞘に入ってる
フンディン: そういう問題じゃないだろう
フンディン: 今朝だって宿の机に切り傷をつけたばかりじゃないか
記録長: 武器や鎧はここに置いて置くか袋にしまいなさい
スキールニル : 置いていってもかまわないが
スキールニル : 盗まれたら責任は取ってもらうぞ
記録長: このアドバール城内に盗人がいるとでも??
フンディン: めっそうもありません!
スキールニル : 命にかけて誓えるなら何も問題ない
*フンディンは本気でスキールニルを睨みつける。だがスキールニルは気にしてない様子だ。
記録長: 侮辱としか受け取れんな、若いの
フンディン: も、もうしわけございません!
*スキールニルは武器を入り口の脇の棚に置く。
スキールニル : これでいいかな記録長殿
記録長: よろしい
記録長: 来なさい
*アルはちらりと、棚に置かれたフンディンの斧を見てから後に続く。
スキールニル : 侮辱する意図はないがこの街のことを知らない
スキールニル : 気に障ったんなら誤ろう
記録長: ならば、そなたは言葉を学ぶべきだな
エル: (ワクワク)
*記録長に続いて、図書室に入る一行。
記録長: ここが図書室だ
記録長: 好きに調べてかまわないが、
記録長: 私はここにいる
記録長: 妙な真似はしないと信じておるよ
エル: ほー
フンディン: はい
スキールニル : 俺たちが盗人かもしれないしな
フンディン: 当然であります
フンディン: スキーィニィー……
記録長: 推薦は伊達ではないと証明してくれよ…
スキールニル : フンディン
スキールニル : じいさんが工房あとにしたのは正確には何年だ?
フンディン: 正確な年数は父上もご存知ないみたい
スキールニル : だいたいでもいい
フンディン: 手分けして
フンディン: 探しましょう
フンディン: 私は大フンディンについて調べます
フンディン: アルドリックさんは
アル: 俺は宝石について知りたい
フンディン: ではそれについておねがいします
アル: 分かった
スキールニル : 記録長殿、ここには地図はあるのかな
記録長 : うむ
記録長 : 地図もある
スキールニル : DR1600年頃の地図があるといいんだが
エル: 僕はせっかく来たし、英雄伝みたいなのでも読んでみるよ
*手分けして調べ始める一行。アドバール図書館にある書物はほとんどが北方ドワーフ、主にアドバールに関係するものの英雄的行為や、オークとの戦いでの働き、戦果などで、あらゆる記録が収められているわけではないようだ。だいぶ偏りがある。個人と集団の輝かしい栄光の歴史であり、そうでないものは残されていないのだろう。
*フンディンは大フンディンについて調べてみる。結果、大フンディンの名前が出てくる記録を一つ見つけることができた。
*先代アドバール王が当時のオーク大襲来の時に、オーク王と戦うために斧を作らせた。その製作者がフンディン・アイアンビアードであった。戦いの中、アドバール王が斧を振り下ろそうとした時、斧はアドバール王の手からすっぽ抜けると、そのままオーク王に向かって飛び、オーク王の頭を叩き割った。斧はそのまま飛んでいき、谷底に落ちて行方不明になってしまった。戦いの後、臣下は勿体ないと残念がったが、王は「それでよかった」と言ったという。
フンディン: ふんふん……
フンディン: (それでよかった…?)
*アルは、ムンディンの宝石について調べてみる。ムンディンについては現代史の中にその名前を見ることができた。しかし持っていた宝石については何もかかれていない。
*アドバールで経験を積んだムンディン・アイアンビアードは、エメラス王と共にフェルバール奪還戦に参加し素晴らしい働きを見せ、現在では”フェルバールの盾”と呼ばれるほどの英雄となった。
アル: (ちっ…)
*スキールニルはDR1600年頃の地図を見つけ調べてみる。アドバール付近にある人間の農村を探してみるが、ここにある地図にはドワーフの砦やオーク部族の勢力図などについてはかなり細かく書かれているのだが、人間の小さな農村などについて書かれたものはほとんどない。
スキールニル : あまり役にはたたんかやはり
*エルは英雄物語、偉人伝について調べてみる。ここにある書物の、勝ち戦についての記録には毎回英雄的な働きをした人物が登場し、中には少し誇張されているようなものもある。有名な偉人や英雄は当然ながら、そういったあまり知られていない人物も英雄として書かれていたりするため、何か特定するものがないと役に立つようなものは見つからない。物語調で書かれたものもほとんどないため、エルは早くも飽きてしまった。
*結局、夕方頃まで調べてみたものの、以上のようなことしかわからなかった。
フンディン: ふーむ……
エル: あまり楽しい本は無いね
アル: 大した収穫はなかったな
スキールニル : やみくもに調べても仕方ないなやはり
フンディン: そろそろ夕暮れになってきたようですね
エル: みんなは?何か面白い本見つかったかい?
フンディン: ここで話もなんですので
フンディン: 一度外へ出て話しましょう
アル: そうしよう
フンディン: 記録長様
フンディン: どうもありがとうございました
アル: ありがとうございました
フンディン: それでは失礼します
エル: ありがとうございました
記録長: また来られるがよい
フンディン: ありがとうございます
*慣れない調べ物で疲れた一行は、図書室をあとにするとそのまま宿屋に戻った。
●話し合い
*宿屋に部屋を取った一行は、部屋で食事しつつ話し合う。
スキールニル : フンディン
フンディン: ?
フンディン: なんだいスキーニー?
スキールニル : 大フンディンは例の場所を秘密にしていたのか?
フンディン: 例の場所??
スキールニル : 俺たちが探してる場所だよ
フンディン: スキーニーは
フンディン: 地図を探したんだったっけ
スキールニル : 役に立たなかったが
フンディン: あのさ
フンディン: 祖父上の仕事場は
フンディン: 父上のお話だと
フンディン: 人里離れた山奥にあったみたいなんだよね
フンディン: 近くに村もあったみたいだけど
フンディン: 基本的には町から離れた場所だから
スキールニル : ただ単に人里はなれた場所に住みたかったってわけじゃない気がするんだが
フンディン: 住みたかったわけじゃない??
フンディン: どういうことだい?
スキールニル : 秘密にしたかったのかもしれないだろう
フンディン: 場所を知っている人が他にいないということは
フンディン: そういうことなんだろうね
スキールニル : アダマンタイトやミスリルが山ほどほれたのかもしれないな
フンディン: ??
フンディン: それがどうしてつながるんだい?
スキールニル : どうしてって・・・
フンディン: アダマンタイトやミスリルが山ほどほれるなら皆で掘りたいと思うんじゃあないかな?
スキールニル : 秘密にしとけば独り占めできるだろうが
フンディン: わからないな
スキールニル : しかしフンディンのいうことにも一理はある
フンディン: うん
スキールニル : 大量の鉱石を掘るには人手がいる
フンディン: そうだよね
スキールニル : すると違う理由かも知れんな・・・
フンディン: みんなで掘ったほうが楽しいよ
スキールニル : ニルディンてのはどんな人だ
スキールニル : 子孫はいないのか
フンディン: 大叔父上か…
*フンディンは、父ムンディンから預かった手記を読んで調べてみる。
スキールニル : 何かわかったか?
フンディン: うーん…
スキールニル : わかんなかったんだな・・・
フンディン: 大叔父上は祖父上の弟君である
スキールニル : ・・・・
フンディン: ということくらいしか書いてはいないようだね
スキールニル : 大フンディンがいわばその場所を捨てたのはなぜだろうな
スキールニル : わからないことが多すぎる・・・
フンディン: スキーニー、ちがうよ
フンディン: なにかがあって
フンディン: 祖父上はお亡くなりになられたんだよ
フンディン: その時に父上の記憶がなくなって
フンディン: 仕事場の場所もわからなくなったんだ
スキールニル : あーそうだったのか
スキールニル : それじゃますますワカランじゃないか・・・
フンディン: ともかく
フンディン: 明日図書館にもう一度行ったら
フンディン: スキーニー
フンディン: このアドバールの周りで
フンディン: 町から遠くて
フンディン: 少し近くに村がありそうな山の中…を
フンディン: ちょっと調べてみてくれないかな?
スキールニル : いいだろう
スキールニル : もし何か貴重な金属の鉱脈でもあったのだとすれば
スキールニル : 坑道長がヒントをくれるかもな
フンディン: 鉱脈があったなら、だけどね
エル: 僕らはどうする、兄者
エル: 図書館てのはあまり面白いとこじゃないね
アル: 俺は引き続き宝石について調べてみたい
スキールニル : ここまで手がかりがないと
スキールニル : そのくらいやまをかけないとな
スキールニル : 徒労に終わる可能性は大きいが・・・
フンディン: わたしはまだだいぶ調べたりない気もするのですが
フンディン: 必要なことはわかった気もします
エル: ふむぅ
スキールニル : そうなのか
フンディン: 祖父上のお作りになった斧が
フンディン: 先代のアドバールの王様の
フンディン: オークとの戦いで使われたこと
フンディン: その際に斧は王様の手から抜け落ちてオークの頭を砕き
フンディン: そのまま行方知れずになってしまったこと
フンディン: それから王様はなぜか「それでよかった」と…
スキールニル : すると王にあえば何かわかるかもしれないな
アル: 王と言っても先代だからなぁ
フンディン: だからスキーニーが明日図書館に行っている間に
フンディン: 私はもう一度
フンディン: イランディル様のところへ行ってこようと思っている
スキールニル : アノ爺嫌いなんだよな・・・
フンディン: オッドアイを引き取らないといけないからね
アル: イランディルさんならあの宝石のこと分からないかな?
フンディン: スキーニーが無礼を働くといけないから
スキールニル : 人の命より本が大事だと抜かしやがるし
*そうは言ってないけどね(笑)
フンディン: エルドリックさん
フンディン: スキーニーと一緒に図書館に行って貰ってもよいですか?
エル: いいよ
スキールニル : 俺だってばかじゃない
スキールニル : 暴れたりしねえ
スキールニル : ただアノ爺がむかつくだけだ
エル: それはちとわかるなあ
スキールニル : 本と一緒に心中しやがれ
フンディン: …………
フンディン: それじゃアルドリックさん…
スキールニル : まあ細かいことは気にするな
フンディン: やっぱりスキーニーと一緒にお願いできますか…?
アル: いいよ
スキールニル : 調べりゃいいのさ!
フンディン: エルドリックさんはわたしと一緒にイランディルさまのところへ行きましょう
エル: うん
エル: そのほうがいいな
フンディン: では今日はこれで
エル: じゃ、エールを飲むか
スキールニル : 素振りして寝るかな
アル: 手紙書いて寝よう
スキールニル : はっ!とうっ!
フンディン: スキーニーは相変わらずよくやるね
スキールニル : 自分の腕のように自由自在に振れるようにならないとナ
*そしてそれぞれ眠りについた…。
●図書館再び
*次の日の朝。
アル: はっ…もう朝か
フンディン: おはようございます
エル: おはようさんー
アル: おはよう
フンディン: 今日も一日がんばりましょう!
フンディン: では昨日の夜打ち合わせたとおり
スキールニル : ああ
フンディン: スキーニーとアルドリックさんは図書館へ
アル: おう
スキールニル : 人里はなれた山奥でいいんだったな
フンディン: わたしはエルドリックさんとイランディル様のところへ伺います
スキールニル : 主要な鉱脈などからは外れた場所だな
フンディン: うん
フンディン: スキーニー
フンディン: くれぐれも失礼のないようにね
スキールニル : それは無理だな
フンディン: ……
アル: 俺もそう思う
フンディン: スキーニーの名前が汚れることは
フンディン: 叔父上の名誉
フンディン: ひいてはフェルバールの名誉が汚されることになるんだよ
フンディン: そこのところをしっかり覚えておいてね!
スキールニル : 俺には関係のないことだ
フンディン: *はあー*
スキールニル : ヤツに名誉の何がわかるんだ(ぶつぶつ
フンディン: エルドリックさんはわたしとイランディル様のところです
エル: はーい
*早速、スキールニルとアルは図書室に向かう。
スキールニル : さてと・・・
スキールニル : アルは何を調べるんだっけ?
アル: ムンディンさんの斧の宝石についてだね
スキールニル : そうか
スキールニル : じゃあがんばって調べようぜ!
アル: おう
アル: 頑張ろう
スキールニル : 俺は地図だな
スキールニル : えーと人里はなれた山奥でなおかつ人間の集落が近くにあってと
スキールニル : うーむ・・・分類がわかりにくい図書館だ
スキールニル : あの記録長結構駄目人間かもなー
*分類が悪いというより、スキールニルが見方を知らないだけだ(判定の出目が悪い)
*調べてみたが、北方、シルバーマーチは地域が広すぎてそれだけで特定するのは難しい。
スキールニル : うーむ
スキールニル : 手がかりが少なすぎるな
*すでに発見されている主要な鉱山はドワーフが押さえているというのはわかった。
アル: でも調べられることは調べておかないとね
アル: もう少し頑張ろう
*アルは引き続き、宝石について調べてみるがやはりムンディンの持っている宝石について書かれたものはない。ただし、調べていくうちに宝石が何かの目印に使われることは多いというはわかった。たとえば、特定のカットがされた宝石が、ある一族の証として使われたり、ある扉の鍵であることを示すために、扉と鍵に同じ宝石を付けておく、などだ。
アル: ふむふむ
アル: もう少し材質とかを調べないと駄目かなぁ…
スキールニル : やっぱり何を調べるにしても・・・もう少し手がかりがないと
スキールニル : 時間の無駄に終わりそうだ
アル: そうだねぇ
アル: 加工の仕方を調べることで何か手掛かりが得られるかもしれないな
スキールニル : へー
スキールニル : なるほど
スキールニル : じゃあイランディルに聞けば何かわかるかもな
アル: そうだね、あの宝石には変わった加工がしてあったようだし…
スキールニル : まあこっちはあんまり収穫ナシって事かぁ
アル: 具体的には…ね
アル: でも手掛かりを得る方法が見つかっただけでも
アル: ありがたいな
スキールニル : うん
●再びイランディルの話
*スキールニルたちが図書室で調べている間に、フンディンたちはイランディルの部屋を訪ねていた。フンディンがノックしてみるが、返事が無い。ドアノブをひねってみると、鍵はかかっていないようだ。
フンディン: あ
フンディン: ……
フンディン: 失礼します
イランディル バングスティール: …
エル: やあ!
フンディン: おはようございます、イランディル様
イランディル バングスティール: ……
フンディン: フェルバールのフンディン、まいりました
*イランディルは本を読んだまま眠ってしまったらしい…。
フンディン: イランディルさま?
イランディル バングスティール: …ん
フンディン: おはようございます
イランディル バングスティール: ふあー
エル: 寝てたのかな
フンディン: 本日はごきげんうるわしく
イランディル バングスティール: なんだ、また君ら勝手に僕の部屋に
フンディン: ノックをしたのですがお返事がないようでしたので
エル: 例によってノックはしたよ
イランディル バングスティール: フンディルだっけ…
フンディン: ムンディン・アイアンビアードの息子フンディンです、イランディルさま
エル: ベルでも付けたらいいんじゃないか?ものすごいでかい音がするやつ
イランディル バングスティール: ああ、そうだっけ
イランディル バングスティール: で、なんのよう?
イランディル バングスティール: あまり気軽に来られても困るんだけどな
フンディン: 先日こちらをおたずねした際に
フンディン: ガーリン師匠のオッド・アイを
フンディン: イランディルさまにお預けしたと思うのですが
フンディン: あの後なにかわかったことはありますでしょうか?
イランディル バングスティール: …そうだっけ?
イランディル バングスティール: あれって、君から借りたんだっけ?
フンディン: はい
イランディル バングスティール: うーん
フンディン: お預けしました
イランディル バングスティール: もう少し貸しておいてくれない?
フンディン: ?
イランディル バングスティール: かわりに、大フンディンの話をしてあげるから
イランディル バングスティール: いいよね?
フンディン: !!
フンディン: なにかわかったのですか?!
フンディン: 祖父上について
イランディル バングスティール: わかったっていうか
イランディル バングスティール: まあ、知ってたんだけど
エル: はじめから知ってたのか・・・
イランディル バングスティール: この前は気分じゃなくて
イランディル バングスティール: そういう事ってあるじゃない?
イランディル バングスティール: じゃあ僕が知ってる事をもっと話してあげよう
フンディン: ともあれ教えていただけるならばそれに越したことはありません
フンディン: よろしくおねがいします
イランディル バングスティール: 大フンディンが僕にとって興味があるのは
イランディル バングスティール: 彼の作った武器のほとんどがミスリル製だという事だね
エル: ミスリルかぁ
イランディル バングスティール: だけど、わりに有名でないのは
イランディル バングスティール: 彼が自分の武器に、自分の銘を入れない事による
フンディン: はい、そのことはすでに聞き知りました
イランディル バングスティール: もし銘を入れていたら、もっとずっと有名だったろう
イランディル バングスティール: 理由は、僕にはわからないし興味ないけど
イランディル バングスティール: それと、一部で有名というのはね
フンディン: 祖父上は… 大フンディンは
フンディン: 武器しか作らなかったそうですね
イランディル バングスティール: うん、そう
イランディル バングスティール: 修行時代には防具も作ったかもしれないけど
イランディル バングスティール: 有名なものは全てミスリル製武器だね
フンディン: ……
イランディル バングスティール: あと、彼は基本的に
イランディル バングスティール: 特に晩年だけど
イランディル バングスティール: 注文を受けてから、それに見合ったものを作る
イランディル バングスティール: 注文生産をしていた事だ
フンディン: それだけ数が限られているということですね
フンディン: 仕事の
イランディル バングスティール: 資金さえあれば、誰にでも作ったそうだけどね
エル: ふむぅ
イランディル バングスティール: 彼の武器で名前が付けられたものもほとんどなくて
イランディル バングスティール: どこかで名前のないミスリル製名器に出会ったら、彼の作だと疑ってみてもいいね
フンディン: なるほど…道理でありますね
イランディル バングスティール: 名前が付けられたので
イランディル バングスティール: 僕が知っているものでは
イランディル バングスティール: 先代のアドバール王が持っていたと言われている
フンディン: !
イランディル バングスティール: ”王殺し”しかない
エル: !
フンディン: 確か話によるとその斧はすでに失われているとのことでは?
イランディル バングスティール: 僕も見たことはないよ。話だけで
イランディル バングスティール: 見てみたいな〜
イランディル バングスティール: どんな話かは知っているようだね
フンディン: オークを屠った際に王の手より抜け落ちて
フンディン: いずこかへと転がり落ちて行ったと
イランディル バングスティール: それにはもうちょっと補足があるんだなあ
フンディン: 補足?
エル: ?
イランディル バングスティール: 王殺しという名前がついたのはね
イランディル バングスティール: アドバール王が注文するときに
イランディル バングスティール: 「どんなに屈強な王が敵として現れても、それに打ち勝てる武器が欲しい」と言ったからなんだ
フンディン: ふむ…
イランディル バングスティール: そして出来た斧を持ち帰ったときに
イランディル バングスティール: 側近の、魔術師がそれを調べてこう言った
フンディン: *ごくり*
イランディル バングスティール: 「王よ、この武器は戦場で必ず王を倒しましょう。しかしその時倒れる王は、あなた自身かもしれません」とね
フンディン: ………
イランディル バングスティール: 何か魔法がかかっていたのかもしれないね
イランディル バングスティール: 王を殺す、その目的は必ず果たす武器だよ
エル: 意外と内に対して怖れていたのかもね
フンディン: 内に対して?
エル: 王というより、王になりたいものっていうか
イランディル バングスティール: 思うに、大フンディンの晩年の武器というのは
イランディル バングスティール: その武器の目的に対して純粋すぎるゆえに強力なのだと思う
フンディン: 純粋すぎる…?
フンディン: 目的があって、そのために武器がある
フンディン: それが純粋に過ぎるなどということがあり得るのでしょうか?
イランディル バングスティール: オークの王を殺す、というだけでは研ぎ澄まされないのかもしれない。ただ、王を殺す、そのほうが目的はシンプルで純粋だよね
フンディン: 確かに… 「いかなる敵が」王として目の前にあらわれようとも
フンディン: 、その意味においては純粋だといえると思えます
イランディル バングスティール: 僕はいろんな武器を見てきたし、いろんな人に出会ったけど
イランディル バングスティール: 目的はシンプルなほうが、それに向かう力は強くなるものだと思っているよ
フンディン: ………
エル: 武器そのものが敵を選ぶみたい・・・
エル: (ワクワク)
イランディル バングスティール: まあこの王殺しについては
エル: 一度見てみたいなぁ、出来ればそれが振るわれるところを
フンディン: ……
エル: あ、深い意味は無いよ
イランディル バングスティール: アドバール王のほうが詳しいかもしれないね。もし先代が話していればだけど
フンディン: アドバール王にお話を伺ってみるのが良さそうですね
イランディル バングスティール: うん、まああまりジョークの通じない人だけどね
イランディル バングスティール: 僕は苦手なんだ
フンディン: 冗句が通じない…つまり質実剛健な方とお見受けします
イランディル バングスティール: …あ、そうだ
フンディン: ?
イランディル バングスティール: 鎧をもう少し貸してもらう代わりにアドバイスをあげよう
イランディル バングスティール: 僕は公正なドワーフだからな
イランディル バングスティール: 無駄な言葉なんて僕の口からは一つも出ないけどね
フンディン: ??
イランディル バングスティール: 君のその顔、おもしろいなあ…もいっかいやってよ
フンディン: ???
フンディン: *首をかしげる*
イランディル バングスティール: あははははは
エル: ワハハハ
イランディル バングスティール: おもしろいよね?
エル: ええ
フンディン: よくわかりません…
イランディル バングスティール: まあ、いいや、アドバイスね
フンディン: はい
イランディル バングスティール: 大フンディンの武器は全てミスリルで出来ている
イランディル バングスティール: ミスリルは貴重な金属で、アドバールでもほとんど見つからない
イランディル バングスティール: つまりミスリルを供給できるところは限られているんだよ
フンディン: …!
イランディル バングスティール: ミスリルの武器しか作ってないという事は
イランディル バングスティール: 常に品質の良いミスリルを得られたという事だ
フンディン: 鍛冶場はミスリル鉱脈の近くにあるやも知れぬ…ということですね!
イランディル バングスティール: そうだね
イランディル バングスティール: あるいは
フンディン: あるいは?
イランディル バングスティール: ミスリルを常に供給してくれる相手がいたか、だ
エル: むむ
フンディン: 相手… つまり商人のような方ということでしょうか?
イランディル バングスティール: だねえ…
フンディン: なるほど… あいわかりました
イランディル バングスティール: ともかく、ミスリルというのはすごい手かがりになるわけだね
フンディン: はい!
イランディル バングスティール: じゃ、話は終わり
フンディン: ありがとうございました
イランディル バングスティール: 僕はもう一眠り…いや仕事するから
フンディン: イランディルさま
エル: 眠りながら思索にふけるのか
イランディル バングスティール: うん
エル: 今度やってみようっと
フンディン: その… お話を伺っておいてなんですが
イランディル バングスティール: ん?
フンディン: わたくしの… オッドアイはいつごろお返し願えるでしょうか?
イランディル バングスティール: そんなの気にしちゃ駄目だ!
フンディン: いえ、決してイランディル様の調査を妨げようというつもりはないのです
フンディン: ただ… あの鎧がそばにあると
フンディン: 遠くフェルバールにいるお師匠様が自分を見守っていてくださるような気がして
フンディン: こう、気持ちが落ち着くのです
イランディル バングスティール: 物に執着するのはドワーフの悪いところだ!
フンディン: うう…
イランディル バングスティール: …あ、今のもおもしろい
フンディン: イランディル様
フンディン: それではせめて一目
フンディン: オッド・アイをもう一度見せていただくことはかなわないでしょうか?
イランディル バングスティール: しょうがないな…すぐに返してくれよ
*まるで自分のものだな(笑)
フンディン: ありがとうございました
イランディル バングスティール: いやいや、気にしないでくれ
フンディン: それでは早朝からお邪魔を致しました
フンディン: これにて失礼します
イランディル バングスティール: それではまたね
エル: しかし綺麗な鎧だねぇ・・・
フンディン: いきましょう、エルドリックさん
エル: 分解されちゃったりして・・・
フンディン: ぶんかい?
エル: んでは
フンディン: なんのことです?
エル: いやいや
エル: なんでもないよ
*フンディンたちは退出し、合流すべく宿屋に戻った。
●憩いの泡ジョッキ亭
*フンディンたちが宿で待っていると、スキールニルたちも戻ってきた。
アル: おつかれさん
スキールニル : あーほこりっぽかった
フンディン: おっ、スキーニー!
スキールニル : なんだ
フンディン: それにアルドリックさんも
フンディン: おつかれさまでした
エル: 兄者のほうはどうだった?
フンディン: なにかわかりましたか?
アル: う〜ん、あまり収穫はなかったな
スキールニル : あまりわかったことはないね
アル: もっと宝石について詳しく調べないと
スキールニル : 主要な鉱脈はだいたい開発されてるってことぐらいだ
フンディン: 宝石・・
エル: なんかね
フンディン: …この斧の宝石ですね
スキールニル : いずれにしてももっと手がかりがないと調べようもないってとこかな
アル: あぁ
アル: その通り
エル: 鉱脈から得てたのじゃないかも、って意見もあるよ
エル: ワカラナイけどね
スキールニル : そうかもしれないね
アル: へぇ
フンディン: そう、
フンディン: 祖父上の仕事はミスリル製の武器であったというのは
フンディン: フェルバールでガーリン様にお聞きした通りですが
フンディン: そうであるからには、仕事場もすべからくミスリル鉱脈の近くにあったか
フンディン: あるいはどなたかミスリルを供給してくださっていたのであろう
フンディン: ということでした
アル: うん、そうだね
スキールニル : 手がかりが少ないなあ
フンディン: ともかくミスリルについて調べてみる必要がありそうです
スキールニル : 核心に迫る情報はないってことだな
スキールニル : 今のところは・・・
フンディン: それからアドバールの王様に
フンディン: 先代王の使っていた斧についてのお話も伺いたいと思っています
アル: おぉ
スキールニル : 王に謁見できればいいが
フンディン: 確か
フンディン: ダグダ様のお話では
フンディン: 三人の推挙を得れば王様にお目通りがかなう
フンディン: でしたよね
アル: 遊撃隊長だな
フンディン: いまのところ
フンディン: ダクダ様
フンディン: それにイランディル様から
フンディン: 信任を得ています
スキールニル : ここの王ってどんな男なんだろう
アル: それを知るためにも会いたいね
スキールニル : 話のわかる男だといいな
フンディン: どなたかあと一人…
アル: だから後は遊撃隊長次第だね
フンディン: そうなりますね
スキールニル : すると軍の信任を得ないと駄目か
フンディン: 明日ナクルどののところへ行ってみます
スキールニル : そうしよう
アル: 記録長は駄目なのかな? 駄目そうだけど
フンディン: うーん
フンディン: そういえばスキーニー
フンディン: 今日は粗相はしなかっただろうね?
アル: あの人には今イチ印象良くなさそうだからなおれら
スキールニル : あの爺を殴ったりはしてないから安心しろ
フンディン: 当たり前だよ!
フンディン: そんなことをしたら即刻死刑だよ
*死刑にはならないだろうけどね(笑)
フンディン: それでは今日のところは
フンディン: やすみましょう
エル: そうしようか
*一行は部屋を取り、2階に上がる。
スキールニル : 結構落ち着くなここも
フンディン: ふー
フンディン: ふわ〜あ…
スキールニル : 素振りして寝るか
スキールニル : おりゃ!
スキールニル : せいっ!
スキールニル : はっ!
フンディン: スキーニーは練習熱心だね
フンディン: ほんとうに
スキールニル : 熱心?
スキールニル : 普通・・だろ! 731!
フンディン: わたしも最近ずっと炉の前に立っていないから
フンディン: なんだか不安になるなあ
スキールニル : 一日・・・784
スキールニル : やらないと・・・785
スキールニル : 三日・・・786
スキールニル : かかるぞ・・・787
フンディン: ??
スキールニル : 腕をとりもどすのに・・・
フンディン: ああ…
スキールニル : ふー
スキールニル : よし寝るぞ!
*スキールニルの言葉に、フンディンは不安を強くしつつ眠りについた…。