ドワーフクエスト
第二章 アドバール城砦
「フンディンの兄弟子」


●スキールニルの夢

*戦闘の疲れもあり、深い眠りに落ちている一行。そしてスキールニルはまた奇妙な夢を見ていた。

*スキールニルは洞窟の中にいる。目の前には金貨がポツリポツリと落ちていて、それを広いながら進んでいく…。やがてポケットの中も手の中も金貨で一杯になったスキールニルは、この金で何をしようかと考える。


スキールニル : 素晴らしい武器・・・やはり両手剣かな
スキールニル : ・・・優れた戦士には優れた武器が・・・


*と、スキールニルは考える。まず思い浮かぶのはフンディンの持っている、ムンディンから譲り受けたドワーヴン・ウォーアックスだが、それよりも強力な両手剣をと思う。そして拾った金貨を眺めてみるが、この程度の金貨ではまったく手が出ないだろう事に気がつく。そのことに不満を感じ、まだ洞窟の奥には金貨があるかもしれないと思ったスキールニルは洞窟を進むことにした…と、そこで夢は終わる。

スキールニル : ・・・また妙な夢を見た気がするぞ

*夢の内容は、はっきり覚えていない。だが不満足な気分がどこかに残っている。

スキールニル : うーん何の夢だか思い出せんなあ
スキールニル : まあいい素振りだな

フンディン: あっ、みなさん
フンディン: おはようございます

スキールニル : 1...2....

エル: おはよう

アル: おはよう、英雄

スキールニル : 94.・・・

フンディン: スキーニーは朝からがんばるなぁ

エル: 部屋で振り回すのやめてくれ

フンディン: 朝ご飯にしましょう

スキールニル : 外で振り回したらつかまるじゃないか
スキールニル : 421・・・422


*スキールニルが素振りをしている横で、フンディンたちは食事を並べて食べ始める。

フンディン: ふう
フンディン: それにしても昨日は皆さんおつかれさまでした
フンディン: *もぐもぐ*

スキールニル : 少し戦い足りないくらいだ

アル: いや、ホントに疲れたね、俺は

エル: こりごりだ

スキールニル : 630・・・631

フンディン: アルドリックさんとエルドリックさんのほうは
フンディン: 大丈夫だったんですか?
フンディン: そういえば昨日の夜はお聞きする暇がなかったのですが

スキールニル : ネズミを・・・847

フンディン: スキーニー、素振りをするなら
フンディン: 食卓から離れてやったほうがいいと思うよ

アル: まぁ大丈夫だったからここにいるんだけどな

スキールニル : やったんだって・・・?859

フンディン: ほら、あぶない!
フンディン: サラダのボール
フンディン: ひっかけたじゃないか!

スキールニル : お前が不注意なんだよ

フンディン: あやうく床につぶれたトマトが散乱するところだった

スキールニル : 944
スキールニル : 945

フンディン: *はあー*

エル: そのトマトくれないか?

フンディン: あ、はい、どうぞ

スキールニル : だいたいトマトは嫌いだ

エル: ありがと

スキールニル : 999!
スキールニル : 1000!

フンディン: スキーニー、好き嫌いは良くないよ

スキールニル : お前にやるぜトマトは

フンディン: ほんと?!

エル: ムシャ

フンディン: *モグモグ*

フンディン: それでは
フンディン: 食事もおおかた終わりましたので、今日の予定について確認しておきましょう

アル: 予定なんてあったっけ?

フンディン: まずはナクルどのの所へ
フンディン: 出頭しようと思います

アル: あっ、それは予定にあったな

フンディン: 昨日は何かと慌しく、落ち着いて話す暇もありませんでしたから

アル: 賛成だ

フンディン: それではさっそく出発しましょう

エル: 賛成だ

スキールニル : なにもたもたしてるんだ
スキールニル : いくぞおら

フンディン: スキーニー

スキールニル : 今度はなんだ

フンディン: ちゃんと口の中のものを飲み込んでから
フンディン: だよ、立つのは

スキールニル : お前じゃないんだから
スキールニル : いっしょにすんな

フンディン: もぐもぐやりながら椅子から立つのはマナーが悪いよ


*フンディンのぶつくさは気にせず、一行は外に出てナクルのところに向かった。

●遊撃隊本部

*フンディンはナクルの部屋の扉をノックして、中に入る。

フンディン: おはようございます!

ナクル: おはよう
ナクル: 良く眠れたか?

スキールニル : 隊長おはようございます

フンディン: はい

アル: こんにちは〜

ナクル: 昨日は退屈かと思ってたが、最後にひと暴れできたな

スキールニル : まだ戦い足りないくらいだけどな!

アル: 勇ましいねぇ


*ナクルはスキールニルを見てニヤリする。

ナクル: ところで

フンディン: はっ

ナクル: お前さんらは、まず坑道長どのに挨拶に行かなきゃいけないんじゃ?

スキールニル : そういえばそうか

アル: 推薦状の件ですか?

ナクル: おれのほうからは、報告も受けたし特に何もないが

フンディン: いえ
フンディン: ダグダ・アムミルどのにはすでにご挨拶は済ませました

ナクル: 推薦状?

アル: あぁ、そこまでは話し行ってないんですね

ナクル: んむ

フンディン: 実のところダグダ・アムミルどのが
フンディン: わたしたちにこの任務につくようにとの口利きをなさってくださったのです

ナクル: うん、それは聞いている。

フンディン: それで結局のところ、図書館に入るためには
フンディン: どなたかもう一人の信任を得なければならないのが今の私たちの状況です

ナクル: ふーん、なるほど

スキールニル : (こっそり忍び込むって手もあるにはあるがなあ)

ナクル: それならなおのこと、まずは坑道長どののところに行って報告しなきゃならんだろう

フンディン: ?

スキールニル : よしそんじゃ行こう

ナクル: 図書館に入るには2名以上必要だが
ナクル: 他にあてにはあるのかね

フンディン: いえ、実のところ… まだ皆目見当もつかぬところです

ナクル: ふーむ…まあ、おれから隊長に口を利いてもいいが
ナクル: あとで話してみよう

ナクル: そうそう、それから
ナクル: 鍛冶長どのが戻られているそうだから、あとで行って見るといい

フンディン: !!
フンディン: それはまことですか!

スキールニル : やっと戻ってきやがったか

アル: おぉ、やっと会える

ナクル: うむ、昨日の深夜に戻られたと聞いている
ナクル: またどこかに行く前に…まあ今日中に会っておくんだな

アル: 良いことをうかがいました

フンディン: 心得ました!

アル: 早速行こう

エル: 急がないと

ナクル: またあとで顔を出せよ

フンディン: はい

ナクル: 推薦状の話は通してみる

フンディン: それでは失礼致します

アル: では

ナクル: うむ


●坑道長の推薦と思い出した事

*イランディルのところにも急ぎだが、まずは仕事の報告をしなければならない。一行はダクダの部屋を訪ねた。

フンディン: フンディン・アイアンビアード
フンディン: 入ります

エル: やあやあ

フンディン: おはようございます、ダグダ・アムミル様

ダクダ アムミル: ふむ、戻ったかね

スキールニル : 若造4名です

アル: こんばんは

スキールニル : (どうせ名前なんか覚えてねーだろうな)

ダクダ アムミル: 任務はどうだった?

フンディン: いろいろと学ぶところの多いものでした

ダクダ アムミル: そうかそうか
ダクダ アムミル: 推薦状の件だが
ダクダ アムミル: もう書いて、記録長に渡しておいた

フンディン: !

アル: それはそれはお心遣い感謝いたします

ダクダ アムミル: それと…一つ思い出した事があってな

フンディン: ?

ダクダ アムミル: フンディンはオヤジさんの斧を持っていたな、確か

フンディン: はい

ダクダ アムミル: ちょっと見せてくれ


*フンディンは、父ムンディンの斧を取り出して見せる。

ダクダ アムミル: ふむふむ

フンディン: 何度も危機を救ってくれました

スキールニル : (うーん今朝見た夢のことをおぼろげに思い出すが・・・・)
スキールニル : (なんだったっけな)

ダクダ アムミル: 昔に、ミョルニルが
ダクダ アムミル: 生まれた場所…つまり大フンディンの家だが

フンディン: はい

ダクダ アムミル: そこから持ち出したものはないかとムンディンにせがんだときに
ダクダ アムミル: やつはこの斧を出して見せた事がある

アル: ほぉ

フンディン: そういえば叔父上も
フンディン: 祖父上と共にお住まいだったのですよね?

ダクダ アムミル: そう聞いている

フンディン: 叔父上は祖父上とは
フンディン: 何かなかったのでしょうか?


*一応、叔父上=ミョルニル 祖父上=大フンディン

アル: (何か?)

フンディン: 例えば… 鍛冶仕事についてとか…
フンディン: スキーニー
フンディン: 何か叔父上から聞いていないかい?

ダクダ アムミル: スキールニル、オヤジさんは何か言ってなかったかね?

スキールニル : さあ・・・
スキールニル : なんかいってたかな
スキールニル : 覚えがない

フンディン: ??

アル: (ふむふむ)

ダクダ アムミル: まあミョルニルが覚えてないのは仕方ないだろう
ダクダ アムミル: まだ赤ん坊くらいだったはずだ

フンディン: そ、そうでしたか

ダクダ アムミル: この斧、ちょっと借りるよ

フンディン: はい

スキールニル : あの男はまだそこに何かあると思ってるんだろうな

フンディン: あの男?

スキールニル : 養父だよ

フンディン: あの男って誰のことだい、スキーニー?
フンディン: ヨーフ?


*スキールニルはフンディンをひっぱたく。

スキールニル : 殴るぞ・・・

フンディン: いたい!
フンディン: いきなり何するんだよう

スキールニル : おおっと先に手が出たなすまん


*などどやっている間に、ダクダは工具を持ってくる。

ダクダ アムミル: いいか、この斧自体はこのアドバールで作ったものだが
ダクダ アムミル: ここにはめ込まれているものは……

フンディン: ????


*ダクダは斧の中心にはめ込まれている宝石を、取り外して見せた。

フンディン: あっ!

スキールニル : ばらしちゃって平気なのかな

フンディン: *ぐすん*

アル: (じぃ〜)

ダクダ アムミル: 安心しろ、これはわしが作ったもんだからちゃんと元に戻してやる

スキールニル : てことは俺たちの探す工房で作られたわけじゃないって事か?

フンディン: えっ?!?!
フンディン: ダグダ様が?!

ダクダ アムミル: おかしいか?

ダクダ アムミル: 坑道長が鍛冶をしらんでどうする

スキールニル : おやっさんどういうことか説明してくださいよ

フンディン: そ、そうでしたか…

ダクダ アムミル: この宝石はもともと
ダクダ アムミル: ムンディンが持っていたペンダントについていたものだ

アル: (ペンダント)

エル: ほえー

ダクダ アムミル: それを使って斧を作って欲しいと頼まれたんだ

フンディン: !!

ダクダ アムミル: で、そのペンダント自体は普通の品物だったが
ダクダ アムミル: この宝石には何か細工があるような気がする

アル: (じぃ〜)

フンディン: …

ダクダ アムミル: たとえ斧を失っても
ダクダ アムミル: この宝石は何かの手かがりになるだろう、なくすんじゃないぞ

スキールニル : その宝石の出所はどこなんだろうか

フンディン: は、はい

エル: 斧はもう失っちゃったね

スキールニル : やはり例の工房・・・・?

エル: バラバラ

アル: (宝石に手を伸ばしかけてハッとなる)

フンディン: ??

アル: (ふぅ…)


*ダクダは斧を元に戻す。

ダクダ アムミル: ほら、元通りだ

フンディン: あ、ありがとうございます…
フンディン: *ぐすん*

スキールニル : (ち・・・俺にもあんな武器があれば・・・

ダクダ アムミル: わしは石にもくわしいが
ダクダ アムミル: その宝石も、素材自体はありふれたものだ

スキールニル : 何かの魔力があるんですか

フンディン: …

ダクダ アムミル: ただ時々、光の加減で妙な光を放つ時があった
ダクダ アムミル: 魔力なのか、細工なのかはわからん

フンディン: ……

ダクダ アムミル: 魔法に詳しいやつに出会ったら聞いてみることだ

スキールニル : それも図書館で調べられるだろうたぶん

フンディン: 魔法…

エル: 呼んだかい?

アル: お呼びでない

ダクダ アムミル: さて…ほかに何か力になれればいいんだが

エル: ・・・

フンディン: そういえば

ダクダ アムミル: もうわしに出来るような事はなさそうだな

フンディン: イランディル・バングスティール様が戻られているとのこと
フンディン: これからお会いしてみようと考えています

ダクダ アムミル: ああ、イランディルか

スキールニル : そうだった
スキールニル : 早速行こう

ダクダ アムミル: あいつはなあ…ちょっと変な奴だが
ダクダ アムミル: 魔法の武具には詳しいからな
ダクダ アムミル: 何か知っているかもしれんな

フンディン: 実はイランディル様の鍛冶の師
フンディン: ガーリン・ファイアフォージ様に
フンディン: フェルバールで私も師事しているのです
フンディン: ですからそれだけでも、お話を伺う価値があると思っています

ダクダ アムミル: ほう、あのヤロウまだ生きとるのかね

フンディン: ダクダ様はお師匠様とお知り合いなのですか?

ダクダ アムミル: まあ、多少な
ダクダ アムミル: ああ、それと推薦状ならイランディルに頼んでもいい

フンディン: ふーむ…

ダクダ アムミル: もし3名の推薦が得られたら、王に謁見を申し込んでもいいだろう

フンディン: ?!!

ダクダ アムミル: 王の信頼を得られれば、手を貸してくれるかもしれん

アル: 王に…

スキールニル : ほれもたもたしてると日が暮れるぞ

ダクダ アムミル: うむ、イランディルのやつすぐどこか言っちまうからな

フンディン: そ、それでは

スキールニル : 坑道長は忙しいんだからさ

ダクダ アムミル: 急いだほうが良い

フンディン: 今日のところはこれにて失礼します!

アル: それでは失礼いたします

ダクダ アムミル: スキールニル、ちょっと残れ

スキールニル : へ?

フンディン: ?

アル: ?

スキールニル : 俺がデスか

エル: おーい

ダクダ アムミル: ほらほら、他は行った

アル: 行こう、フンディン

スキールニル : 先いってろ

フンディン: (スキーニー…怒られるのかな?)

スキールニル : 追いつくから

フンディン: で、でも…

アル: 行くぞ!

スキールニル : いいからいけよ

ダクダ アムミル: さっさといかんか

フンディン: は、はい
フンディン: それでは失礼します


*スキールニルを残し、他のものは退出した。

ダクダ アムミル: スキールニル

スキールニル : はあ

ダクダ アムミル: フンディンを支えてやれ

スキールニル : 俺がですか

ダクダ アムミル: お前の親父さん…ミョルニルがムンディンにそうしたように

スキールニル : !!
スキールニル : あの男が?

ダクダ アムミル: ムンディンもミョルニルがいなければ
ダクダ アムミル: どうなっていたかわからん

スキールニル : あの男はムンディンを憎んでいますよ
スキールニル : ひどく嫉妬しているし
スキールニル : とても信じられない

ダクダ アムミル: 何をばかな!
ダクダ アムミル: ミョルニルも、フンディンのためにお前さんを育て上げたのだとわしは思っておるよ

スキールニル : 養父は己の果たせなかった夢・・・戦士としての名声
スキールニル : それを俺に託してるだけだと思う

ダクダ アムミル: …

スキールニル : 俺もそのつもりでいますよ

ダクダ アムミル: …まあ…昔の話だから今は変わったのかもしれんな…

スキールニル : 旅に出たのは俺自身の修行のためです

ダクダ アムミル: そうかい…
ダクダ アムミル: もしお前さんの話が本当なら
ダクダ アムミル: それは寂しいことだな

スキールニル : 養父は変わりました
スキールニル : 昔はもっと強かった・・・

ダクダ アムミル: さ、もういきなさい
ダクダ アムミル: 仲間が待っている

スキールニル : そうしますよ
スキールニル : 話してくれてよかった・・・役には立たなかったけどね

ダクダ アムミル: …


*スキールニルは退出し、鍛冶場に向かった。残されたダクダはふっとため息をついた。

●変わった兄弟子

*スキールニルが鍛冶場に向かうと、入り口でフンディンたちが待っている。

スキールニル : なにもたもたしてるんだ

フンディン: あれ、スキーニー?

スキールニル : 話はもう終わった

フンディン: スキーニー…
フンディン: 大丈夫?

スキールニル : なにが?

フンディン: その、無理をして元気に振舞うことはないんだよ

スキールニル : だからなにがだ!!

エル: 怒られたから
エル: 礼儀がなってないって
エル: って思い込んでるらしい

スキールニル : 怒られたくらいで本気で落ち込むのは
スキールニル : フンディンお前くらいだ

フンディン: 確かにスキーニーは礼儀がなっていないけれど
フンディン: スキーニーは他にもよいところがたくさんあるのはわたしも知っているから
フンディン: あんまり気を落とさずにね

スキールニル : 鉱夫にはそれなりの話し方があるんだが

エル: あとでとりなしておいてやりなよ、フンディン

スキールニル : コイツにいっても無駄かもなあ


*一行は鍛冶場に入った。

フンディン: おはようございます!

ドワーフ: んー
ドワーフ: なんだい

フンディン: すみません、御仁
フンディン: お忙しいところ大変恐縮なのですが

スキールニル : ボスはいるかな?

ドワーフ: ああ、帰っているよ

フンディン: わたくしフェルバールより参ったムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します

ドワーフ: いまは部屋にいる

スキールニル : ありがとう

フンディン: イランディル・バングスティール様に…
フンディン: スキーニー…!

スキールニル : ほらいくぞー

フンディン: *はあー*

スキールニル : お前の挨拶は時間がかかりすぎだ
スキールニル : 相手も忙しいんだぞ


*仕方なく、イランディルの部屋に向かい、ノックする。中からは「んー…」と返事なのかどうかわからない声がした。

フンディン: 失礼しま・・・

スキールニル : 失礼

フンディン: あっスキーニー
フンディン: かってにあけたら

スキールニル : どうもこんにちわ

フンディン: *はあー*


*スキールニルが開けてしまったので、仕方なく部屋に入る。部屋には本や道具が散乱しており、積み上げられた本の間にドワーフが一人、熱心に本を読んでいる。年はフンディンたちから見ればお兄さんという感じで、鍛冶長という肩書きは似合わない年頃だ。

スキールニル : おー気づいてないな
スキールニル : おーい

イランディル バングスティール: !


*スキールニルが大声を出すので、びっくりして顔を上げる。

フンディン: お邪魔をしては悪いだろう、スキーニー

イランディル バングスティール: なんだい、君たちは

フンディン: !

イランディル バングスティール: 勝手に人の部屋に入るなんて、どうかしてるな

フンディン: うう…

アル: ノックはしましたよ
アル: 一応

フンディン: まったく返す言葉もありません…

イランディル バングスティール: ネズミに脳みそでも食われてるのかい

エル: 返事がなかったんだ

フンディン: ここにいるわたくしめの従兄弟スキーニーは
フンディン: こと礼節という二文字に関しては決定的に欠落している出来そこないでありまして・・

スキールニル : ノックをしたら声がしたんで入っていいのかと思った

イランディル バングスティール: ノックしたなんてとんだ妄想癖の持ち主だな

フンディン: このような無礼を働いてしまったこと、まことに申し訳なく思っています

イランディル バングスティール: はいはい、それでなんのよう?

アル: (コリャ相当変わり者だな)

フンディン: 見たところイランディル・バングスティール様とお見受けいたします

イランディル バングスティール: ははははは
イランディル バングスティール: それ面白いジョークだね
イランディル バングスティール: この部屋にイランディル以外のイランディルはいないよ!

フンディン: ?
フンディン: ジョォク?
フンディン: ???

スキールニル : じゃあもしかしてあんたがイランディル?!

フンディン: イランディル以外のイランディルはいない…???

イランディル バングスティール: だからそうだって言ってるのに
イランディル バングスティール: 君の思考は尺取虫なみだな

アル: すみませんねぇ、ジョークの通じないヤツで…

フンディン: ???

エル: イランディルがにらんでぃる

フンディン: ?????

イランディル バングスティール: いや、僕はそういうの好きだからいいんだよ

フンディン: え、ええと

アル: (ズコッ)

フンディン: ともかく

イランディル バングスティール: で、早く用件を言って

フンディン: わたしはフェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子、フンディンと申します
フンディン: こちらは従兄弟のスキーニー
フンディン: こちらのお二人は

スキールニル : 長い

アル: と、愉快な仲間です

フンディン: 旅の仲間アルドリックどのとエルドリックどのです

イランディル バングスティール: 双子だね、双子でいいよ

スキールニル : そこは省略して次

イランディル バングスティール: で、スキーディル君はなんのようなの


*いきなり名前を間違えている。というか聞いてない…

フンディン: わたくし
フンディン: 不肖の身でありながらガーリン・アイアンフォージ様に鍛冶師見習として師事しているものでありまして

イランディル バングスティール: ん?

フンディン: 兄弟子にあたるイランディル様にぜひお目にかかりたいと思いこうしてはせ参じた次第であります

イランディル バングスティール: もしかしてフンディン?

フンディン: はい
フンディン: フェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子、フンディンと申します

イランディル バングスティール: ああ、もう君のせいで時間を無駄にした!

エル: 何回も言ってるのに

イランディル バングスティール: まあ来てくれたからいいか…

アル: ………

スキールニル : ん?
スキールニル : 来てくれたからいいというと
スキールニル : まるで探しにいってたかのような
スキールニル : 口ぶりだが

イランディル バングスティール: 君さ、師匠の最後の作品を持ってるよね

フンディン: この… オッドアイでしょうか?

イランディル バングスティール: そうそう!

フンディン: 確かにこの旅立ちに際してお師匠様から
フンディン: 身に余る贈り物として譲り受けました

イランディル バングスティール: それの噂を聞いて見せてもらいにいったら、フンニーとかなんとかいうのに持たせたとか言って

フンディン: ????

イランディル バングスティール: どこかで野たれ死んでたらどうしようかと

スキールニル : なるほど
スキールニル : その危険性は大いにあったね

アル: あったな

フンディン: それではイランディル様は
フンディン: フェルバールへいかれていたのですか?!

イランディル バングスティール: そうだよ、わざわざね

フンディン: それはどうも大変な失礼を致しました…

イランディル バングスティール: ね、ね、それ見せてもらっていい?ていうか1日くらい貸してくんない?

フンディン: ?

アル: (か、軽い…)

イランディル バングスティール: 調べてみたいんだよ、いいだろう

フンディン: はい

イランディル バングスティール: 変わりになんか上げるからさ
イランディル バングスティール: やった!

フンディン: ガーリンお師匠様のお弟子にあたる方の頼みを断るほど
フンディン: このフンディン傲慢ではありません


*フンディンは取り出したオッドアイを差し出す。イランディルはすごい勢いでそれをひったくった。

イランディル バングスティール: もらいっ

スキールニル : もらいっておい

フンディン: ??

アル: 『もらい』って聞こえたけど…


*イランディルは受け取った鎧を熱心に見始める…

スキールニル : それは貸したんだぞ・・・おい
スキールニル : きいてねえぞこいつ

イランディル バングスティール: ……

フンディン: イランディル様

アル: 駄目、多分こうなったら放っておくしかないと思う
アル: うちの父ちゃんソックリ

イランディル バングスティール: ん? まだいたのか

フンディン: ひとつ
フンディン: お聞きしたいことが

イランディル バングスティール: なに

アル: 猫夢中

フンディン: わたしたちは今
フンディン: 我が祖父、大フンディンの残したという
フンディン: 秘密の鍛冶場を探してここへ参った次第なのです
フンディン: イランディル様に何かお力をお借りできればと思ったのですが

イランディル バングスティール: ああ…どっかで聞いた名前かと思ったらフンディン氏の孫なんだ

フンディン: !!?
フンディン: 祖父上をご存知なのですか???!

イランディル バングスティール: さあ本人は知らないよ。…それ面白いジョークだね

フンディン: ????

イランディル バングスティール: 僕がそんな年寄りに見える?
イランディル バングスティール: はははは

フンディン: いえ…
フンディン: これは大変な失礼をば

イランディル バングスティール: そうか…ジーサンの事を知りたいってわけだ

アル: (ボケ同士の会話は見るに耐えかねるなぁ)

フンディン: はい

スキールニル : (誰か突っ込んでやれよ・・・)

エル: (おもしろい)

イランディル バングスティール: まあ鎧を貸してもらってるし、軽く調べてまとめておいて上げるよ

フンディン: ! 本当ですか!

イランディル バングスティール: 図書館とかで調べるのもいいね

フンディン: よろしくおねがいします!
フンディン: 図書館?

スキールニル : その図書館に入れないからあちこちで媚を売ってるわけなんだけどね

フンディン: コビ?

イランディル バングスティール: なんで図書館入れないの?

フンディン: 何を売ってるの、スキーニー??

スキールニル : いいから話を続けな
スキールニル : 許可が要るんじゃないの?
スキールニル : そう聞いた気がするんだが

フンディン: そういえば
フンディン: 図書館に入るには
フンディン: 二人から信任を得なければならぬと聞かされていたのです


アル: スキールニルの言う通り

イランディル バングスティール: そうだったけ…ああ、推薦がいるんだっけか
イランディル バングスティール: じゃあ推薦もしといてあげるから

フンディン: !

アル: これで図書館に行けるな

イランディル バングスティール: ちょっと今日はもう出ていってくんない?

フンディン: あ、ありがとうございます!

エル: はい

アル: この人が忘れなければ

スキールニル : そういうことならもういくぜ

フンディン: それではひとまずお暇致します

スキールニル : 明日また来る

イランディル バングスティール: じゃ、また後でくればいいよ…


*煩わしいことが済んだというように、イランディルは再び鎧に専心する。

スキールニル : 推薦わすれるなよー

フンディン: こら!
フンディン: スキーニー
フンディン: なんて口の聞き方だ!

アル: 先に推薦してもらった方が言い気がする


*一行はイランディルの部屋から外に出た。

スキールニル : 忘れたら邪魔しに来るぜ
スキールニル : あんまり年いってないぞあいつ

フンディン: まったくいい加減親戚として恥ずかしくなるよ・・

スキールニル : そいつはうれしいね

フンディン: どうしてうれしいのさ!

スキールニル : 話すと長くなる
スキールニル : おっと隊長に会おう

フンディン: ナクルどのに?

スキールニル : あとでこいっていってなかったか?


*一行は早速遊撃隊本部に移動し、ナクルの部屋を訪れる。扉を叩くが返事は無い。

スキールニル : 隊長!

スキールニル : 留守か
スキールニル : まあいいや

フンディン: うーん

アル: この腹具合からすると夕方だけど

スキールニル : 晩飯にしよう

アル: 図書館行ってみる?

フンディン: そうしましょう

スキールニル : いやだからまだ入れないんじゃないの?

フンディン: ??

アル: そうだろうね
アル: あの様子じゃ

フンディン: ダクダ様とイランディル様が
フンディン: 推薦状を出してくださったのでは?

アル: 推薦いつになるか…

スキールニル : イランディルのやつが推薦してくれてるとは思えない
スキールニル : 絶対忘れてる

フンディン: こらスキーニー!
フンディン: やつって言い方はないだろう

スキールニル : お前の兄弟子なんぞこんな言い方で十分よ

フンディン: イランディル様といわないといけない


*一行は宿に戻る途中、近くにいた兵士を呼び止めた。

フンディン: 失礼します
フンディン: 御仁

アドバール兵士 : なんでしょう?

フンディン: おたずねしたいことがあるのですが
フンディン: 図書館はどちらにありますでしょうか?

アドバール兵士: 図書館はこの扉の奥から城に入り、右手になりますが
アドバール兵士: 今日はもう遅い。明日にされよ

フンディン: わかりました
フンディン: どうもありがとうございます
フンディン: お役目ごくろうさまです、それでは


*兵士は無言で敬礼だけ返す。一行はそのまま宿に帰って夕食にした。

●夕食

アル: 焼き肉、焼き肉

スキールニル: *げっぷ*

フンディン: それでは頂きましょう

アル: んめ〜

エル: *げっぷ*

フンディン: 全能なる全ての父よ

スキールニル : うんうまい

エル: 今日も美味しい酒だ

スキールニル : ここのパイは癖になる

フンディン: 今宵ここに我らに食事を授けていただいたことを感謝致します
フンディン: ……


*例によって、フンディン以外は先に食べている…

スキールニル : 明日には図書館に入れるといいなあ

アル: だな

フンディン: スキーニーの家では
フンディン: 食膳の祈りは捧げていなかったの?

スキールニル : ない

フンディン: …

アル: 食べながら話すなよ

エル: さてあと5,6杯のんだら今日は早めに寝るか
エル: *げっぷ*

アル: 今日は色々あったなぁ

フンディン: 図書館へ行くのは明日ですね
フンディン: それにしてもスキーニー
フンディン: 食事のときくらい鎧は脱がないのかい?

スキールニル : ん?


*早々に食べ終わったアルは、部屋を取りに行く。

スキールニル : 脱いだら持ち運べないだろが
スキールニル : 馬鹿だな

フンディン: 部屋においておけばいいじゃないか

スキールニル : そんな面倒なことできるか

フンディン: 城砦の中で戦うわけでもないんだし
フンディン: 持ち運ぶほうが疲れると思うけどなあ

スキールニル : いつどこで殴りあいになるか
スキールニル : わからんさ

アル: 鎧は戦士の正装さ

フンディン: スキーニーは法律という言葉を知らないの?

スキールニル : 知ってる
スキールニル : 言っとくが武器は鞘に収めてあるし
スキールニル : 何も問題はない

フンディン: 剣はいいけどさ

スキールニル : 大体宿に置いたら盗まれるかもしれない

フンディン: 一日中結局鎧着っぱなしじゃないか

スキールニル : それがどうした

フンディン: 重たいし疲れるし
フンディン: 良いことないよ

スキールニル : コレも修行
スキールニル : 鎧着て軽業ができるくらいになるまで
スキールニル : 修行する

フンディン: スキーニーは
フンディン: そんなに訓練を続けてどうしたいの?

スキールニル : 名を上げる
スキールニル : ブルードのようになる

フンディン: 名をあげてどうするのさ

スキールニル : じゃあお前はどうなんだ
スキールニル : 鍛冶師になってどうする

フンディン: ぶー
フンディン: 質問に質問で返すのはルール違反だよ

スキールニル : あほか
スキールニル : 餓鬼の遊びじゃないんだ
スキールニル : もう寝る


*2階のいつもの部屋に行き、一行は眠りについた…。


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