ドワーフクエスト
第七章 バーミル・スラルレオの真実
「対決」


●祖父の名を継ぐもの
*手がかりを求めてバーミル・スラルレオを探索する一行の前に姿を現したギルフォス。

ギルフォス: 今もこの道を行くものがいようとは

フンディン: も、もしかして…

アル: き…貴様
アル: フィオール…俺に…俺に力を!!


*叫んでアルは武器を振り上げる。だが、アルの前にさっとスキールニルが立ちはだかった。

スキールニル: アル落ち着け

エル: 何してるんだ、兄者

アル: *ぎりぎりぎり*


*はっきりとは事情を聞いてないエルは、兄の反応に驚いたようだ。

フンディン: あなたは…
フンディン: ギルフォスさん?!

ギルフォス: 誰かと思えばスキールニルか

スキールニル: 久しぶりだな

ギルフォス: …
ギルフォス: こんなところで何を…ああ
ギルフォス: 祖父の地を探しているんだったな
ギルフォス: バーミル・スラルレオに関係あるというわけか…

フンディン: ど、どうしてそれを…

ギルフォス: スキールニルが話してくれた
ギルフォス: まあ、俺にはどうでもいい事だが

アル: *ぶるぶるぶる*


*身を奮わせるアルを横目に(かどうかはヘルムのため分からないが)ギルフォスは一行の前を通り過ぎる。

フンディン: ……

ギルフォス: もし、大フンディン最後の作品が、他の種族の手に渡っていたら教えてくれ。取り返してやる

アル: その為に…その為に貴様は

フンディン: 待ってください


*立ち去ろうとするギルフォスをフンディンは呼び止めた。

フンディン: あなたに… 聞きたい事があるんです

ギルフォス: …

エル: 他の種族どころかネズミが持ってたぜ


*王殺しの事だろう。

フンディン: いったい…いったいなぜなんです?

ギルフォス: …何がだ?

フンディン: どうしてそうも同胞の手に…祖父上の作品があることにこだわるのですか
フンディン: そんなことをして何になるというのです?

ギルフォス: 別に大フンディンの作品だけじゃない
ギルフォス: お前に身の上話をするつもりもない

フンディン: …

ギルフォス: そうか、お前は…大フンディンの孫ってやつか…


*今気が付いたのか?(笑)

フンディン: いかにも… 大フンディンの子ムンディン、その息子フンディンです

ギルフォス: なら、おれが取り戻してきた大フンディンの作品がどうなったかくらいは教えておいてもいいだろう

フンディン: …

ギルフォス: すべて我が神に捧げた。だから今は神の手元にあるはずだ

スキールニル: アレはお前の神殿か

フンディン: 神…
フンディン: アバソールに奉げたと?

ギルフォス: 俺の?俺一人であんなものを作れると思うのか?
ギルフォス: おれの祖父とその仲間たちが作り上げた神殿で、俺は
ギルフォス: 神に捧げてきた。いろいろなものをな

スキールニル: 魂までもな・・・


アル: *ぐぐぐぐ*

ギルフォス: ドワーフの娘を殺してしまったのは俺の未熟とするところだが…

フンディン: 娘…?

ギルフォス: この鎧は、アバゾールの呪いで黒く染まったと聞く
ギルフォス: 祖父がアバゾールに背いたからだ

スキールニル: 背いた?

アル: 同胞を殺したという事さ

ギルフォス: ならば俺はせめて、祖父の呪いを解きたいのだ。この鎧が元の白銀に戻るまでな


*恐らくギルフォスに自覚はないが、フンディンに親近感を感じている。そして自らの道をフンディンなら多少理解してくれるのではと期待している。

アル: 戻ってたまるか!

スキールニル: 戻るとは思えないがな

フンディン: そんな…

ギルフォス: だから、お前の祖父の作品も捧げさせてもらった…悪く思うな。

アル: 貴様は殺したんだ!

ギルフォス: …

スキールニル: お前はおまえ自身もアバソールに捧げたようだな

フンディン: 殺した…
フンディン: もしかして… フィオールっていう人のこと?

アル: そうさ!

スキールニル: ・・・

アル: 俺は見てなかったけど

フンディン: そんな…

アル: だけど…
アル: うああああああ


●発動

フンディン: !!
フンディン: アルドリックさん!

スキールニル: よせ!


*アルは武器を振り上げてギルフォスに襲い掛かる。だがギルフォスはそれをすんなりと避けた。

ギルフォス: やめておけ、お前とじゃれるつもりはない

アル: うるさい

スキールニル: かなう相手じゃないぞ


*ぶんぶんとアルの攻撃は空を切る。ギルフォスにはかすりもしない。ギルフォスがアルの武器を狙って跳ね飛ばそうと考え始めたその時…

アル: うわあああ

*アルが武器を投げ捨てて両手を前に突き出す。そこに生まれた魔力の矢がギルフォスに突き刺さった。<マジックミサイル>の呪文だ。アルは秘術呪文の勉強などしたことはない。つまりこれはソーサラーとしての力の発現なのだ。ドワーフでこの力を持つ者は非常にまれである。

フンディン: !!!

エル: わ

ギルフォス: く…


*マジックミサイルを回避する術はギルフォスにはない。鎧が威力を削いでくれても、確実にダメージは受けている。(実際には2.3ダメージという所だが、アルは自分の呪文が尽きたあとミサイルワンドまで振り始めた)いかにギルフォスといえども黙ってマジックミサイルを受け続ければいつかは倒れる。アルの鬼気迫る攻撃は、確実に自分を殺そうとしている…そして自分はまだ死ぬわけに行かない…そう考えたギルフォスはアルを黙らせようと武器を振るう。殺意のなかったその攻撃はしかし、鋭い一撃となってアルの頭部を貫いた…!

スキールニル: ・・・・

フンディン: ああ…

エル: わ

フンディン: そんな…


*呆然とする一同。ギルフォス自身もだ。エルが倒れた兄に駆け寄って様子を見る。しかし…

エル: だめだ

ギルフォス: くそ…これもこの鎧の呪いなのか…二人も同胞を…
ギルフォス: うう…


*ギルフォスは頭を抱えてフラフラと壁によりかかる。そのままヨロヨロとホールを出て行こうとする。

フンディン: 待って…!!

*呼び止めるフンディンだが、ギルフォスは聞いていない…

スキールニル: アバソールはお前を手放す気はない様だな・・・

*スキールニルが自分の大剣を抜いてギルフォスに迫る…

フンディン: スキーニー!!

*フンディンは、まるでギルフォスしか見ていないスキールニルの肩を掴むと殴りつけた。

スキールニル: なんだ

フンディン: スキーニー…

スキールニル: 邪魔をするな!

エル: 兄者、休んでる場合じゃないぞ
エル: ・・・


*その間に、ギルフォスはフラフラと出て行く。

フンディン: スキーニーはさ…
フンディン: どうして…
フンディン: 剣が強くたって
フンディン: これじゃ何の意味もない!!
フンディン: アルドリックさんは死んでしまったのに…
フンディン: それを止めることもできないで…立ち向かうこともしないで…

スキールニル: お前の御託を聞いてる暇はない

フンディン: 待て
フンディン: 剣を置いて
フンディン: これを持って行きなよ
フンディン: スキーニー

エル: ・・・

スキールニル: ?

フンディン: 戦うなら…この斧を使えばいい

スキールニル: コレは・・・


*フンディンは"王殺し"を取り出してスキールニルに差し出す。

フンディン: けどねスキーニー
フンディン: わたしはそれでもまだどこかで信じているんだよ
フンディン: 戦って…相手を殺すだけが… 答えじゃないはずだ
フンディン: 武器って使うためにあるものだよ
フンディン: 武器に使われるなんておかしい!

スキールニル: そうだな

フンディン: その斧を使って
フンディン: 答えを出して見せてよ

スキールニル: そんなモンわからねえよ

フンディン: それができると思ったから… スキーニーに王殺しを渡したんだ

スキールニル: だがな・・・俺もおかしいと思ったんだ
スキールニル: たかが武器のためにこんなに死ぬなんておかしいだろう
スキールニル: フンディンは・・・お前の爺さんは
スキールニル: 戦いを好まなかったんだろうな
スキールニル: お前みたいなとぼけた野郎だったんだろう

フンディン: …

スキールニル: フンディンの武器は
スキールニル: どれも殺しの道具じゃなかった
スキールニル: 身を守るためのものだ
スキールニル: だがコレは違うよな
スキールニル: コレはたぶん
スキールニル: このためにあるんだな
スキールニル: さらばだ


*スキールニルは"王殺し"を手にギルフォスを追って出て行った。

フンディン: でもね
フンディン: スキーニー
フンディン: 戻ってきた時にその斧に血がついていたら…
フンディン: わたしはきっと君を許さない


●スキールニルとギルフォス

*ギルフォスはホールからそれほど離れていない場所にいた。

スキールニル: ギルフォス

*呼ばれてギルフォスは振り返る。

ギルフォス: スキールニル…俺は…

スキールニル: お前は何のために生きてるんだ?
スキールニル: ・・・お前それで幸せか?
スキールニル: それで祖父さんの汚名をはらせるのか?

ギルフォス: 祖父の汚名はすでに、それが事実であるかのように
ギルフォス: ミラバールの…いやドワーフはみんなそう信じている

スキールニル: お前の祖父さんは・・・お前がお前の祖父さんと同じになるのを
スキールニル: 喜ぶだろうか
スキールニル: それで解決するのか・・・?

ギルフォス: 祖父が喜ぶかどうかじゃない
ギルフォス: おれはせめて、俺だけは祖父を信じていたいのだ

スキールニル: 馬鹿な
スキールニル: お前は信じていたっていうのか?

ギルフォス: 俺に流れる血が、裏切り者のものでないと証明したい
ギルフォス: 神にだけでも…

スキールニル: 信じてたからこんなことはじめたのか

ギルフォス: だが、俺は異種族に奪われた同胞の宝を取り戻しているだけだ

スキールニル: 奪われた・・・?
スキールニル: 奪ってるのはお前じゃないか!
スキールニル: たかが武器のために何人殺した?
スキールニル: お前が一番裏切ってるのはな
スキールニル: お前の祖父さんだよ・・・
スキールニル: 俺は地上で夢を見た
スキールニル: 昔あったことの夢だ
スキールニル: お前もいたぜ
スキールニル: 祖父さんはな

ギルフォス: いや、祖父はアバゾールの神官だった。俺がアバゾールに尽くすのは祖父も望む事だ。

スキールニル: ここで・・・たった一人でか

ギルフォス: そうだ。

スキールニル: それに何の意味がある・・・

ギルフォス: なら、お前は?お前は自分の目標に明確な意味を見出しているのか?

スキールニル: いいや・・・だがな
スキールニル: この呪いを終わらせなければ・・・

ギルフォス: 少なくとも、おれは祖父の汚名を晴らす、神にだけは
ギルフォス: 自分の目標もわからないお前に
ギルフォス: おれのすることの意味を問えるのか?
ギルフォス: おれはわかってる!俺は自分のすることの意味は理解しているぞ!

スキールニル: 本当か?

ギルフォス: ああ
ギルフォス: お前は俺に意味だの、祖父の意思だのを言うが
ギルフォス: お前の口からでは、真実味がない
ギルフォス: 本当の所で、お前は何もわかっちゃいないのさ。自分のしている事も。旅の意味も。人生の意味も
ギルフォス: だから、聞いた風なことを言う。

スキールニル: 神は答えてくれたか?

ギルフォス: 無論だ。この鎧の力も多少は弱まっている
ギルフォス: それはつまり、神が許しを与えたということだ
ギルフォス: これがただの鎧に戻れば…
ギルフォス: 俺と、俺の神だけは、祖父の誇りを取り戻せるのだ

スキールニル: お前がコレを続ける限り呪いは終わらんと思うがな
スキールニル: 続けるつもりなんだろう
スキールニル: 殺し続けるつもりなんだろう

ギルフォス: どうかな。そうかもしれんが、俺は俺の信ずるままに進む
ギルフォス: 俺が見て、聞いて、そして理解した。そして選んだ道だ
ギルフォス: コロスさ。オーガだのトロールだの…オークだの
ギルフォス: 俺達の敵は全てな

スキールニル: 俺もだな

ギルフォス: 俺は戦う気はない。それはさっきもそうだったろう
ギルフォス: だがそのまま殺されてやるほど聖人君子じゃないんでね

スキールニル: 俺はフンディンの斧を持ってるぞ

ギルフォス: なら、お前が持っていればいい
ギルフォス: 同胞から奪うのは、アバゾールも禁じていることだ

スキールニル: 俺がコレをこのまま持ってると思うのか?

ギルフォス: さあな…もし他の種族に奪われ
ギルフォス: あるいは渡したとしたら
ギルフォス: いつか、俺が取り戻しに行くかもしれんな
ギルフォス: いいか、スキールニル。おれは望んで同胞は殺さない。仕方のない時だけだ

スキールニル: そしてまた同じことが起きるわけか
スキールニル: お前は道具なんだよ
スキールニル: アバソールのな

ギルフォス: お前はそうじゃないって言い切れるのか?
ギルフォス: 何者の道具でもないって?

スキールニル: わからん

ギルフォス: ずっと一人で、だれの意思にも左右されず活きてきた?
ギルフォス: お前は俺に言うくせに、問い返せばわからんという

スキールニル: だがお前みたいに一人でめそめそ生きてはいないけどな

ギルフォス: 言うに事欠いて、今度は挑発か?

ギルフォス: くだらん問答はこれで終わりだ。俺はもう行く

スキールニル: どこへだ

ギルフォス: 言う必要はない。休んで、また次の旅に出るだけだ

スキールニル: じゃあ俺はそれを止めるしかないな

ギルフォス: 意味もわからずに…か

スキールニル: 意味ね・・・

ギルフォス: 今まで、どいつにもそうやって、問答吹っかけてたのか?問い返されれば自分も答えられない問いを

スキールニル: そうでもない
スキールニル: 俺らしくなかったな
スキールニル: じゃあそろそろいくぜ

ギルフォス: よせ。
ギルフォス: 俺は戦う気はない。


*スキールニルは"王殺し"を振るう。ギルフォスはそれを避けたが、スキールニルの一撃が鋭さを増している事にギルフォスは気が付いた。

スキールニル: ・・・・ちっ

*スキールニルは攻撃を続ける。ギルフォスはスキールニルの振るう斧"王殺し"の能力は知らなかったが、それが奇妙な力を持っているのは感じていた。徐々に狙いが正確になり、しかも一撃で命を絶てるような急所を狙っている。まるで戦いながら斧がギルフォスの動きを学んでいるかのようだ。やがてスキールニルの、いや"王殺し"の一撃がギルフォスの死角を突いて鎧の表面をかすり火花を散らした。ギルフォスは脅威を感じた。

ギルフォス: やめろ!
ギルフォス: 俺からすれば、お前のほうが殺人鬼にみえるぞ

スキールニル: お前は違うのか?

ギルフォス: 結果そうなっていたとしても
ギルフォス: 俺は俺の信念に基づいて行動した

スキールニル: 信念か

ギルフォス: 仕方のないことだった。俺は望んで殺したわけではない…

スキールニル: 同胞以外はいくら殺してもいいんだろう?
スキールニル: いくらでも殺せるんだろう?
スキールニル: 何人も殺してきたんじゃないのか

ギルフォス: そうだ。敵ならばいくらでも

スキールニル: お前は俺にとっては敵なんだよ

ギルフォス: 俺にとっては、違う。お前を殺す理由はない


*スキールニルには確信があった。このまま攻撃を続ければ勝てるという確信が。しかしそれをもたらしたのは"王殺し"の力と、反撃してこないギルフォスによって与えられた確信だ。それは…

スキールニル: こんな斧さえなければ・・・
スキールニル: フンディンがこんなもの作らなければ
スキールニル: よかったのかもしれないな


*それは…スキールニルには受け入れ難いものだ。スキールニルは"王殺し"を下ろした…。

スキールニル: もういい・・・行きたければ行け
スキールニル: 次にあうまで命を預けてやる
スキールニル: 次は
スキールニル: 問答無用だ
スキールニル: そのつもりでいてくれ


*ギルフォスは去っていった。一人残されたスキールニルは、振り向くと仲間たちの元に戻っていった。

●蘇生

*スキールニルはホールに戻ってきた。

エル: 兄者の脳みそが半分どっか行っちゃった
エル: 探してくれないか、スキールニル・・・

フンディン: …

スキールニル: もう休ませてやろう

エル: ・・・

スキールニル: アルすまん・・・俺はとんだ腰抜けだ
スキールニル: 結局ヤツを斬れなかった

フンディン: スキーニー… ラスカンで…
フンディン: 何があったの
フンディン: 今こそちゃんと話してよ

スキールニル: 何から話せばいいんだろう

フンディン: フィオールって誰
フンディン: 二人にとってどういう人だったの

スキールニル: 俺たちにとって・・・・そうだな・・・
スキールニル: 大事な人さ・・・


*スキールニルは全てを話した。

フンディン: スキーニー… ひどいよ…
フンディン: ずっとラスカンで一緒だったのに
フンディン: 戻ってきてからアルドリックさん、あんなにおかしかったのに
フンディン: 悩みのひとつも聞いてあげたの?!
フンディン: ミラバールで分かれた時…
フンディン: アルドリックさんが一緒ならスキーニーも大丈夫だと思ってた
フンディン: でも逆だったんだ
フンディン: ……

スキールニル: そうだな


*その時、フンディンは何かに気が付いた。

フンディン: !

アル: *ぴく*

スキールニル: ?!

エル: あれれ

アル: *ひゅ〜*

フンディン: ア… アル… ドリックさん…?!

アル: *ひゅ〜*

エル: ゾンビ・・・??

フンディン: まだ生きてる!

エル: ほんとだ、生きてる


*フンディンは荷物からありったけのポーションを取り出すとアルに飲ませた。

アル: *ごくり*
アル: *ごくり*
アル: *ごっくん*
アル: *す〜す〜*

エル: もう大丈夫みたいだ
エル: 傷もふさがってる

フンディン: アルドリックさん!
フンディン: アルドリックさん!

スキールニル: 信じられん・・・

アル: うっ…

スキールニル: きっと・・・彼女だな

アル: !

フンディン: 気がついた!

アル: ここは…?

フンディン: よ、よかった…

アル: えっ?

フンディン: もう…だめかと・・

アル: 俺…目の前が真っ暗になって

スキールニル: フィオールが助けてくれたんだよ

アル: あっ…
アル: そう言えば会った気がする

スキールニル: へへへ・・・まだ来るなって言ってなかったか?

アル: あぁ…多分

スキールニル: 頼りないヤツ一人残して死ぬなってな

フンディン: *ぐすっ

エル: ふぅ・・・

アル: 多分…神様と彼女が助けてくれたんだな

スキールニル: アル・・・俺にはできなかった
スキールニル: ヤツを斬れなかった
スキールニル: ヤツと話をした

フンディン: ・・

アル: ギルフォスと?

フンディン: …

スキールニル: ますます分からなくなったよ
スキールニル: ああ
スキールニル: 俺って馬鹿だよな
スキールニル: でもひとつだけ
スキールニル: フンディンがアレを・・・

アル: あれって?

スキールニル: 作ったのにはわけがあるんだ
スキールニル: コレさ

フンディン: ?

アル: 王殺し?


*スキールニルは"王殺し"を取り出して見せた。

スキールニル: コレだけ
スキールニル: 「殺し」の道具なんだ
スキールニル: あの大鎌覚えてるか?

アル: 覚えてるよ…

スキールニル: あの時は彼女もいたっけな
スキールニル: みんなでびびったよな

アル: あぁギルフォスもあの時は…

スキールニル: だけどアレじゃあネズミも殺せないだろう

アル: あぁ
アル: 大剣もそうだったな
アル: 防御のための武器だっていってた

スキールニル: ディフェンダーってのは見ていないけれど
スキールニル: 聞くところによるとやはり身を守るためのものらしい・・・

アル: なんにせよ…仇は取れなかった

スキールニル: 俺もだ

アル: でも…それでも俺は生かされた

スキールニル: だけどコレでよかったような気もする
スキールニル: ヤツを殺せば俺もヤツと同じになる気がする・・・

フンディン: …
フンディン: それでギルフォスさんはどこへ?

スキールニル: さあな

エル: とにかく兄者が生きてて良かった

アル: おれもエルともう1度あえて嬉しいよ

フンディン: スキーニー

スキールニル: ?

フンディン: 王殺しは持っていてよ

スキールニル: なんで俺が
スキールニル: おまえんじゃないのか
スキールニル: お前が持ってるとはしらなかったけどな

フンディン: …
フンディン: そのことはいい
フンディン: ともかくスキーニーが持っているんだ

スキールニル: なぜだ?

フンディン: さっきも言ったろう
フンディン: スキーニーが戦士として自分を高めていくなら
フンディン: この斧はきっと必要になる

スキールニル: 俺は失敗したんだけどな

フンディン: 失敗?

スキールニル: さっきから自分でも言ってることがめちゃくちゃだ
スキールニル: でもまあ失敗は
スキールニル: 繕うべきか

アル: その方がスキールニルらしいと言えば言えるな

スキールニル: 正直言って俺はわからなくなった
スキールニル: わからなくていいともおもっていた
スキールニル: だがそうじゃないかもしれないな

フンディン: そして…
フンディン: 自分を試す時が来たら使うんだ
フンディン: 王殺しをね

スキールニル: でもなぜ俺なんだ

フンディン: 約束だ、スキーニー
フンディン: 戦の女神の名にかけて
フンディン: 誓ってくれ

スキールニル: いいだろう

フンディン: …

スキールニル: 炎の剣にかけて

フンディン: なら話はこれでおしまいだ

スキールニル: やれやれ・・・

フンディン: ……

アル: すまないな…

スキールニル: さっきから自分でも何言ってるかわからなくなってきた
スキールニル: 飯を食うかな

フンディン: 少し休もう
フンディン: みんなそれが必要だ

スキールニル: アル・・・

アル: ん?

スキールニル: なんだったらコレはお前が・・・


*スキールニルはフィオールの笛をアルに差し出す。

アル: あぁ
アル: スキールニルの気が変わるまで
アル: 持っているよ

スキールニル: ああ
スキールニル: (結局俺はヤツをどうすべきなんだろうか・・・
スキールニル: 考えるのはしばらくよそう・・・


●4つの道

*一行はホールで荷物を下ろして食事と休憩を取る。その間、フンディンは地図と4つの扉を見比べていた。扉について調べてみると、扉には特殊な仕掛けがしてあり鍵を一度使うと壊してしまい、閉じれば再び鍵がかかるような仕組みになっているようだ。手持ちの鍵は1つしかないから、どれか1つを選択するしかない。

フンディン: もしかして…

*しばらく考えていたフンディンが、思いついたようにムンディンの斧を取り出して見る。

フンディン: ダグダ様が…
フンディン: この斧は父上の持っていた宝石を取り付けたものだと
フンディン: 仰っていたけど
フンディン: もしかすると…

アル: 元は首飾りって言ってたかな?

フンディン: 光の加減で模様のようなものが浮かび上がるんです
フンディン: はっきりとはわからないけど…
フンディン: あの扉に付けられている宝石
フンディン: どこか似ているような…


*確認するため松明に火をつけ、明かりに照らしてみる。

エル: 模様が見えるな
エル: 同じ物に見えるよ

フンディン: この鍵…
フンディン: 一度開けると壊れてしまうみたいなんです
フンディン: でも…

スキールニル: コレだと思うんだろう?
スキールニル: だったら迷うことはない
スキールニル: 行こうぜ

フンディン: 他に手がかりもないしね


*フンディンは宝石の扉を開いた。開いた扉の向こうから流れてくる空気は、それまでのこもったものとは違う気がする。通路は果てしなく伸びていて先は見えないが、今までも先の見えない道を、いつか祖父の地に辿りつくと信じて進んできたのだ。恐れる事はないと、フンディンは通路を歩き始めた。


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