ドワーフクエスト
第七章 バーミル・スラルレオの真実
「怨念の彷徨う場所」


●惨劇のあと
*この村で起こった事を知り、鍵を得た一行は封じられた鉱山の入り口に立っている。幾重にもかけられた錠を、ひとつずつフンディンは外していく。

フンディン: …

*すべての鍵が地面に落ちて、今、鉱山の扉は開かれようとしている。

フンディン: …いきましょう
フンディン: *ごくり*


*錆び付いた重い扉に身体を預けるようにして力をこめ、フンディンは扉を開く。鉱山から漏れ出すかび臭い空気の中に、フンディンは最近感じた嫌なニオイが混じっているのに気が付いた…。

フンディン: うっ…
フンディン: ……
フンディン: かわいそうに…


*鉱山の入り口には、たくさんの遺体があった。調べると抵抗した跡もあるようだが…恐らくここで侵入する兵士を食い止めることは出来なかっただろうと推測できる。なぜなら、夢で見た兵士の装備をつけた遺体のほうが圧倒的に少ないからだ。

エル: ふむぅ
エル: こないだのアレ思い出すな、フンディン

フンディン: …


*アレ=フェルバール地下のオーブの件。

スキールニル: アレってなんだ

フンディン: フェルバールでね
フンディン: ちょっとあったんだ

エル: まあ後でな

アル: ……うぅ

スキールニル: どした

エル: 兄者、どうした

フンディン: 真っ青ですよ、アルドリックさん
フンディン: 大丈夫ですか?

アル: すまん…
アル: 見たくないんだ…


*一行は遺体の山を避けて鉱山に足を踏み入れた。鉱山の中は死者のニオイが充満している。通路にもところどころに争った跡や遺体があった。

アル: くそっ…

フンディン: …

スキールニル: ふん

フンディン: ……


*一行はそれらを見ながら通路を進む。やがて扉が並んでいる通路に出た。恐らく鉱山内の生活スペースや倉庫が集まっている区画だろう。その中の一つを開いてみる。元々がなんの部屋だったかわからないほど破壊されてしまっているが…

フンディン: この本…まだ少し読める

*と、部屋を調べていたフンディンが焼け焦げた本を拾い上げたその時、部屋の入り口に人影が!

フンディン: !!

*ドワーフの…恐らくここで死んだ村人の…アンデットである。ほとんど白骨化したそいつは、問答無用で襲い掛かってきた。不意を打たれたものの、なんとかドワーフスケルトンを撃退する一行。

フンディン: あわれな…!

*倒したスケルトンを見ながらつぶやくフンディン。だが、感慨にふける暇はなかった。なにしろ、大量のドワーフスケルトンが部屋の入り口に殺到してきたのだ!

フンディン: !

スキールニル: くそ

フンディン: うっ


*入り口で食い止めようとしたフンディンとスキールニルだったが、その体勢になる前にスケルトンたちは雪崩れ込んできてしまった! 数体のスケルトンにエルが押し倒されるのが見えたところで、フンディンもスケルトンに部屋の隅まで追い込まれてしまった。

フンディン: く…

*フンディンが覚悟を決めた時、突然スケルトンたちは部屋を出て行ってしまった。一瞬、スキールニルが何か叫んだように聞こえたが…

フンディン: いってしまった…

*部屋を見渡すと、アルはうずくまり、エルは倒れている。スキールニルの姿は見えない。

アル: く…

フンディン: あんな姿になって
フンディン: もう何が何なのかもわかっていないんだ…

アル: なんてこった…

フンディン: エルドリックさん
フンディン: しっかり


*フンディンはエルの具合を見て、治療道具を使う。エルは頭を振って起き上がった。そこへスキールニルが駆け込んでくる。どうやらスケルトンたちを引き付けて時間を稼いでくれたようだ。お互いに何か言おうとした時…

アル: うわ

*スケルトンたちがこちらに向ってくるのが見えた。だが今度は体勢を立て直す時間があった。フンディンとスキールニルが部屋の入り口に立ち、敵と対する。

フンディン: 当たらなければ…!
フンディン: このっ!
フンディン: もう戦う必要はないんです


*フンディンの言葉は、スケルトンには届かない。このピンチにアルは魔法のハープを取り出した。アンデットを退けたというエルの話を思い出したのだ。意を決してハープを奏でるアル。だがその音色は…

エル: くぅ

フンディン: !
フンディン: 音色が…


*エルの奏でた落ち着いた清らかな旋律とは打って変わって、激しい音と凶暴な旋律だ。スケルトンたちには効果がないが、逆にフンディンたちには苦痛に与える。

アル: すまん…

フンディン: スキーニーさがって!

エル: 呪文が行くぞ
エル: 兄者下がれ


*持てる力を振り絞り、激しい戦闘をなんとか乗り越え、一行はスケルトンを撃退した。

フンディン: はあ…はあ…

エル: ・・・
エル: 大丈夫か

フンディン: わたしは大丈夫です
フンディン: それよりみんな一度休んだほうがいい

アル: 何処かで休まないと…身体が
アル: 頭もハッキリしない…

エル: ああ、体が重くて

フンディン: 見張っています
フンディン: わたしも…少し…


*フンディンは壁によりかかった。他の面々はその場に座り込む。

アル: くそっ…なんてこった
アル: こんなトコで同士討ちとは…

フンディン: 同士討ち?

アル: 同士だろうが…
アル: 腐っていても

フンディン: ああ…
フンディン: ……
フンディン: スキーニー
フンディン: 大丈夫?


*スキールニルは黙ったまま答えないが、しばらくすると立ち上がった。アルとエルも立ち上がるのを待って、一行は無言のまま鉱山の探索を続ける。アンデット化した村人たちが襲ってくる事がわかった以上、今度は慎重に進む。

●無常な戦い

フンディン: …

アル: いるな

フンディン: うっ

アル: 左


*襲ってくるものは、倒すしかない。一行は当時の凄惨な様子を残したままの鉱山を戦いながら進む…。

フンディン: くそっ… くそっ…!
フンディン: なにが…
フンディン: いったい何があったっていうんだ?

アル: よほど苦しい思いをしたんだな

フンディン: …

エル: とにかく進もう

スキールニル: どれだけいけるものかな

フンディン: …!


*現れるドワーフスケルトン。

フンディン: もう戦う必要はないんです!
フンディン: …

エル: 話の通じる相手じゃない

フンディン: わかって…わかっています
フンディン: でも
フンディン: …


*ドワーフスケルトンを倒した。

フンディン: この包帯…

スキールニル: 包帯はまだ使えそうだな

フンディン: もっていこう

アル: あぁ

フンディン: この先いくつあっても多すぎることはないだろうから


*一行は、採掘穴のある作業場で治療道具の入った箱を見つけた。もともと鉱山夫たちが怪我をした時のためのものだろう。採掘穴の底はよく見えないが、数人が入る程度の広さはありそうだ。また、土砂の上げ下げをするための滑車も残されているので、ロープを伝って下りる事は出来そうである。

フンディン: ここから…
フンディン: ロープを伝っておりることもできそうですね

スキールニル: このロープで降りられそうだ

エル: 大丈夫かな

フンディン: 東側は調べていないけど…
フンディン: このぶんでは変わりは…

スキールニル: 亡者退治に来たわけじゃないんだが
スキールニル: どうする

エル: 降りるのは怖いな

アル: かなり昔のことだし生きてはいないだろうね

エル: 先に向こう回ってみようか

スキールニル: 何か手がかりはあるかもしれないな

アル: いるとしてもゾンビかスケルトン…あとはレイスか


*一行はひとまず、穴の底を調べるのは止めて別の場所を調べることにした。近くには似たような作業場が見つかったが…

フンディン: …
フンディン: 焼け焦げてる…


*入り口付近に何かが爆発したように木片が散らばっている。そしてロープは途中で焼き切られたようになっていた。このロープを使って下りるのは無理そうだ。

スキールニル: アル
スキールニル: メイスかしてくれないか

アル: ん?

スキールニル: その剣を変わりに


*スキールニルはアルからメイスを借り、魔法のかかっているショートソードをアルに貸す。スケルトンには刃よりも鈍器が有効だからだろう。

フンディン: …
フンディン: てっきりスキーニーって
フンディン: 大剣しか使わないと思ってた
フンディン: 本当にひととおりの訓練は積んでたんだね

スキールニル: 当たり前だ

フンディン: …


*フンディンは続けて何か言おうとしたが、言葉を飲み込むようにして黙ってしまった。

スキールニル: どうした

フンディン: なんでもないよ

スキールニル: 戦槌買ってくればよかったな
スキールニル: 品切れで売ってなかった

アル: 仕方ないさ
アル: 誰もこんな場所とは思わなかったろ


*鉱山の奥に進む一行。すると通路の途中に鍵のかかった頑丈な扉があった。鉱山を探索中に拾った鍵を試してみると、上手く合った。鍵を開けて部屋に入る。

フンディン: !

スキールニル: ここは様子が違うな


*スキールニルの言うとおり、この部屋はどこか違った雰囲気がある。荒らされた形跡も見られない。部屋の中央には立派なドワーフの像が置かれ、その前には祭壇が置かれている。小さな神殿のようだ。

フンディン: サイレント・キーパーの像

*サイレント・キーパーとはドワーフの神の1柱デュマイソンの別名である。ドワーフの秘密の守護者として知られている。アルが像を調べてみると…

アル: 鍵穴がある

フンディン: さっきの鍵は…合わないか
フンディン: 山の下の秘密の守護者
フンディン: その像がここにあるからには
フンディン: 何かがある… かも知れない

アル: そう思えるな

フンディン: でも鍵が見つからないことにはどうしようもないですね

エル: ふーむ


*仕方なく一度、その部屋を後にしてさらに奥へと進んでみるが…行き止まりまで来てしまった。

アル: ふさがってる

フンディン: 仕方ない… 降りましょう


*一行は仕方なく、途中にあった採掘穴の底を調べる事にした。

●穴の底
*一行はまず、ロープがしっかりしているほうの穴を調べる事にした。一人ずつ慎重に下りていく…

フンディン: うっ…

スキールニル: 飛び散ってる感じだな

エル: ぐぅ

アル: 何があったんだ…


*穴の底は焼け焦げ、バラバラに吹き飛ばされた遺体がある。DMとして敢えて説明はしなかったが、ここは村人たちが放り込まれたあと、爆薬(か、あるいはそのようなもの)で一気に"処理"された場所なのだ。

スキールニル: 斧か
スキールニル: 無事に残ってるなんてな

フンディン: 少し魔法がかかってる
フンディン: ミスリルじゃないだろうけど
フンディン: でも少しだけ混じってるかもしれない

スキールニル: 魔法の武器で無いと倒せないやつもいるからな
スキールニル: 誰か持ってたほうがいいな
スキールニル: 誰かいるか?

フンディン: いや… スキーニー…使えばいいと思うよ

アル: 俺には使えない

スキールニル: まあ斧も普通に扱えるが・・・

エル: おら、つかえねえだ

フンディン: これでは手がかりも何もないですね
フンディン: 上がりましょう

アル: 粉みじんだしな


*一行は穴から出た。

アル: さっきの部屋のロープに
アル: 手持ちの物を足してみるか

*さっきの部屋=ロープが途中で焼き切られていたほうの穴がある部屋。

フンディン: ?

アル: ほら


*アルは持っていたロープを取り出す。思えばミスリルホール付近の冒険で活躍したきりだったな(笑)

フンディン: …

スキールニル: なるほど


*部屋を移動して、焼ききれたロープにアルが自分のロープを結びつける。

アル: このロープ
アル: 足りるかな?


*下に落としてみると、手ごたえがあったので底に付いたと思える。

アル: 行けそうだ

スキールニル: 行くか・・・


*穴の底に下りると…4体のスケルトンが待っていた。

フンディン: !

アル: うわ

フンディン: やるしか…ない!

スキールニル: アル!
スキールニル: !
スキールニル: この斧!


*スキールニルはさっき拾った魔法の斧をアルに投げ渡し、自分はメイスで戦う。

フンディン: !!

アル: くっ


*不意を打たれたが、なんとか撃退することが出来た。

スキールニル: ほう
スキールニル: いい指輪を見つけた


*AC+1の指輪。

アル: フンディン

フンディン: ?

アル: こっちの死体のポケットに鍵がある
アル: 鍵…だと思うんだけど

フンディン: …


*フンディンは一瞬躊躇ってから、手を入れてポケットの中のものを取り出した…

フンディン: 鍵…です

スキールニル: 骸骨の癖にいいもん持ってたぜ

フンディン: スキーニー…

スキールニル: なんだ

フンディン: いや、なんでもない
フンディン: なにかがあって
フンディン: こうなってしまったんだ


*一行は発見しなかったようだが、実はここにいる村人たち(の成れの果て)は穴に落とされた後、そのままロープを切られて放置されたのだ。その事が分かるような恨み言が、壁に刻まれていたのである。彼らは怪我をしていてロープなしでは登れず、ここで餓死したのである。

フンディン: 骸骨じゃなくて、戦っている相手は… ドワーフの仲間だったんだよ
フンディン: 上がろう

スキールニル: 仲間ねえ
スキールニル: せっかくだから使わせてもらうか
スキールニル: 短剣もだれかもってろよ


*他の面々はさっさと上がって行ってしまった。スキールニルはショートソード+1を拾って後を追う。一行はそのまま、小さな神殿へと向かった。

●サイレント・キーパー

フンディン: ?
フンディン: 合わない…?


*鍵は合わない。実はここは展開によって違う。ネタばらししてしまうと、実はここから先に進む為に鍵は必要ないのだ。この鍵はもっと先で必要になるもので、一行がもし穴を下りるという選択をしなかった場合にはここから、同じ鍵が入手できたのである。ちなみにこの鍵は2つあると展開上都合が悪いので、一行が穴を下りた時点でこちらの鍵はDMロックをかけている。

スキールニル: あわないわけか

エル: ふーむ

フンディン: …

エル: 関係ないのかな

フンディン: この鍵はいったい何なんだろう


*と、一行が頭を捻っている。アルは床にしかれた敷物をめくって下を覗いてみた。めくると、何か落とし戸のようなものが見える…。

アル: おい
アル: この敷物

スキールニル: どうした

アル: 変にぼこぼこしてないか?

スキールニル: そうか?

*スキールニルが敷物を片付けると…

フンディン: !

アル: やっぱり…

エル: へぇ

スキールニル: ドコから風が吹き込んでるのかと思えば・・・
スキールニル: コレか


*敷物の下の落とし戸が現れた。この落とし戸の先がバーミル・スラルレオなのだろうか…? 落とし戸の鍵を外し、手を掛けて引き上げる。そこにはさらに下へと向う梯子が、じっとりとした闇の中へと伸びているのであった…。


*ところで本編中、PCたちは鉱山の中で焼け焦げた本や切れ端、日記の一部と思しきものを拾っている。本編ではPCがそれに触れるような発言をしなかったため紹介できなかったので、以下にまとめて出しておこう。

「我らドワーフの先祖たちが、長きに渡り発見し作り上げ蓄えてきた富そして品々を金に換え、他種族に売り渡すなど、先祖への冒涜ではないのか…」

「我らは神を裏切ってしまったのだろうか…。それとも神が我らを…?」

「我らモーディンサマンの民に約束されし栄光と富は、今や卑しき者どもに侵され失われようとしている。それに気付かぬ我が同胞たちのなんと悲しきことか…」


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