ドワーフクエスト
第七章 バーミル・スラルレオの真実
「再会」


●再会
*フンディンとエルの二人は再びミラバールへと戻ってきた。約束の日には間に合ったようだ。

フンディン: 変わりないみたいですね

エル: ああ

フンディン: スキーニーとアルドリックさんはもう戻っているかな

エル: どうだろね


*二人は待ち合わせの場所、赤銅亭へと入る。

エル: いた

*店内を見渡すと、奥の席にスキールニルとアルの二人がいる。

フンディン: !
フンディン: スキーニー

エル: 酒飲んでやがる

フンディン: アルドリックさん

アル: よぉ

スキールニル: 来たか

フンディン: ひさしぶりです!

エル: 久しぶりだね

スキールニル: 思ったよりははやかったな
スキールニル: フンディン
スキールニル: お前少し変わったな

フンディン: ?

スキールニル: 少し太ったか?

フンディン: そんなことないと思うけど…

スキールニル: 気のせいか

フンディン: それより二人も変わりないようでなによ…り…
フンディン: ?

スキールニル: ・・・・ああ
スキールニル: 変わりねえぜ


*フンディンはアルの顔をじっと見る。

アル: ん? なんだ? フンディン

フンディン: い、いや
フンディン: なんだか… 少し
フンディン: (影が見えるような… なんだろう?
フンディン: 気のせいです

アル: そっか…
アル: エルも変わったぞ、鎧が

エル: ああ、この鎧ね
エル: とりあえずあっちは無事だった
エル: 無事って訳でもないけど、まあ、問題はないよ
エル: 襲撃を受けていたけれど、撃退していたよ

スキールニル: 里帰りご苦労

フンディン: ともかく無事にみんなで会えてよかった

スキールニル: 無事・・・ね

アル: みんなで…か

フンディン: …?

エル: それと兄者

アル: ん?

エル: これ、パパママから

アル: へぇ

エル: 会えなかったんだけどさ、置手紙とハープが

アル: このハープがその土産か?

エル: そ、オレのぶんもある

アル: って事はこれは俺のだな

アル: 手紙はエルが持っていてくれ

スキールニル: 無事と言えないことはないな

フンディン: なにかあったのかい、スキーニー?

スキールニル: いろいろあったよ
スキールニル: 全部は話しきれねえな

フンディン: それで… ラスカンでなにか手がかりはつかめた?

スキールニル: ・・・・
スキールニル: ああ一応な

スキールニル: 二つお前の爺さんの品に関わったが

フンディン: えっ?
フンディン: 二つも!?

スキールニル: どちらもある男が持っていったぜ

フンディン: ??
フンディン: どういうことだい、スキーニー

スキールニル: まあ座れ

フンディン: まるで誰かが
フンディン: 祖父上の武器を追い求めているみたいに聞こえるけど

スキールニル: 一言じゃ話せねえ
スキールニル: お前の爺さんの武器を「同胞」の他には渡したくない野郎ドモが
スキールニル: いるようだな

フンディン: それってもしかして…

スキールニル: 何か思い当たることがあるか?

フンディン: あのさ、スキーニー
フンディン: ここを発つときにスキーニーにも写しを渡したこの手紙
フンディン: バーミル・スラルレオの閉鎖を提案した人物は
フンディン: その後、ミラバールと他の種族との取引も中止すべきだと…


スキールニル: なるほど
スキールニル: そんな話だったっけな
スキールニル: 俺とアルはダンヒルとラスカンで・・・あるドワーフと関わることになった
スキールニル: 一度は味方として
スキールニル: 一度は敵として
スキールニル: そいつはどうもその手紙のような話しをしてたぜ
スキールニル: つまりフンディンの作品はドワーフだけのものにすべきだとな

アル: おっと忘れてた

フンディン: ?

アル: あの鍛冶屋からだ


*ギブノーのこと。アルはギブノーから預かった手紙(正確にはギブノーの母からの手紙)を出して見せた。内容については第六章「大フンディンの大鎌と強盗団」のラスト付近を参照。

フンディン: これは・・

アル: 怒ってたぞ…

フンディン: …!

スキールニル: 守り手バーシルもダンヒルの村人ももともとはまっとうにお前の爺さんの武器を手に入れたんだと思うが
スキールニル: そんなことはお構い無しって感じだったな
スキールニル: そいつは名前を
スキールニル: ギルフォスという

フンディン: …

スキールニル: で、その手紙読んだな?

フンディン: うん

スキールニル: つまりそういうことらしいぜ

フンディン: …鉱山へ行ってみよう

スキールニル: 当然だな

アル: あぁ…そうとも

スキールニル: ギルフォスには借りを返さないと

フンディン: 借り?

スキールニル: ・・・いや何でもない
スキールニル: 一度は敵だったといったろう
スキールニル: そのことさ

アル: 何でもない?
アル: 何でもない…か、そうか

スキールニル: 何いってやがる
スキールニル: お前このごろおかしいぜ

フンディン: なにか…あったんですか?

アル: 何でもない…そうだ

フンディン: それじゃ明日出発しよう


*という事で給仕を呼んで料理を注文する。揃ったところで飲み食いしながら別れていた間の事を話して過ごす。とはいえ、フンディン達はミョルニルに頼まれた事を話さず、スキールニル達はラスカンで起こった事(主にフィオール関連)については口を濁した。

スキールニル: そうそうフンディン
スキールニル: あのハゲは
スキールニル: まだ生きてたか?

アル: ハゲ? ミョルニルさんのことか? スキールニル

スキールニル: 他に誰がいるんだよ

フンディン: 叔父上ははげじゃないと思うけど…
フンディン: お元気でやっていらしたよ

スキールニル: だいぶ薄くなってたけどな

アル: そうか

エル: ああ、元気だったな

スキールニル: まあ殺しても死なないだろうな

フンディン: いまは守備隊の指揮官をやっていらっしゃる

スキールニル: 部下に嫌われそうな指揮官だぜ

フンディン: オークの襲撃は… ワーラットの手引きがあってね

スキールニル: ワーラット?

フンディン: ほら、あの時さ、
フンディン: ワーラットがいたろう?

アル: アドバールか

スキールニル: あー坑道のアレか?

フンディン: それもそうだし…
フンディン: それになんかアドバールでエルドリックさんがどうしたとか
フンディン: あっ、そういえば
フンディン: 二人にはもう一人お兄さんがいたんですね
フンディン: いままで知りませんでした

スキールニル: 三つ子?!

アル: 兄貴? 俺に?

フンディン: うん、エルドリックさんが
フンディン: そう言っていた

スキールニル: そんなの初耳だぜ?!

エル: 兄者、あのワーラット覚えてるだろう?

アル: 覚えてるよ

エル: あいつと会ったんだ

アル: ごちゃごちゃうるさいやつな

エル: フンディンの斧が見事に首を飛ばしたよ

アル: へぇ
アル: そりゃよかった

エル: そいでさ
エル: その戦いのときにさ

アル: あぁ

エル: フェルバールの衛士たちと一緒だったんだけど

アル: なんかニヤけてないか?エル

エル: 士気を鼓舞するために、兄者が死んだって言ったんだ

フンディン: ええっ?

エル: あれ?

フンディン: それじゃあれ… うそだったんですか?

エル: フンディン、君も騙されたのか

フンディン: *はあー*

スキールニル: ・・・・ま、まあ敵を欺くには・・・っていうだろ

エル: そか、それなら成功だ

フンディン: いいのかなあ…

アル: 腕を上げたな、エル

エル: 歌だけじゃない事を見せたぜ

アル: まぁフンディンだから引っ掛かったのかも知れないけどな

スキールニル: アルもスゴイ歌唱力を証明したぜ

エル: へぇ

スキールニル: ・・・ダンヒルで・・・な・・・・
スキールニル: ・・・・・


*ちょっと口を濁しつつ、ダンヒル村でのことを話す。

アル: そんな事もあったな…

エル: ふーん

フンディン: (まただ… なんだろう?

アル: あの時は楽しかったよ

エル: (・・・

スキールニル: 20年も前のことみたいに感じるな

アル: あぁ、そうだな…昔のことのようだ

エル: おいおい
エル: ずいぶんじいさんみたいな事言うね

スキールニル: だがあのころにはもう戻れないわけだ

アル: あぁ…

スキールニル: 一生なんて短いもんさ

フンディン: なにか… なにかあったの?

スキールニル: ・・・いろいろな

フンディン: 話したくないのならいまは聞かないけれど
フンディン: いつか聞かせてもらうよ

スキールニル: いつかな・・・

フンディン: 今日はもう休もう

アル: そうするか…

スキールニル: アル・・・

アル: ん?

スキールニル: このごろ酒の量が多すぎないか

アル: このくらいで丁度いいさ

スキールニル: ・・・・

アル: 今までが節約しすぎてたんだ

エル: ふうむ
エル: 金が相当入ったのかい?
エル: こっちも多少稼いだけれど

スキールニル: まあ・・・傭兵としてある程度はね

アル: おやすみ…


*アルはスッと立ち上がって部屋に行ってしまった。スキールニルも続けて部屋に行く。

エル: ???
エル: どうしたんだろな

フンディン: …
フンディン: なんだか… 二人ともどこか違う気が…

エル: 確かに
エル: フンディン話したよな

フンディン: ?

エル: いちど、兄者がすごく衝撃を受けたような気がしたんだ

フンディン: そういえば


*前話参照。

エル: 気のせいかもしれないから、そんな気にはしてなかったけど
エル: もしかしたら何かあったのかもね

フンディン: …
フンディン: とりあえずは考えても仕方ないです
フンディン: 寝ましょう

エル: ああ


*そして二人も部屋に引き上げ、そのまま眠りについた。

●旅の再開
*翌朝、フンディンが部屋から下りてくると、スキールニルとアルの二人はすでにテーブルについて朝食をとっていた。

フンディン: おはよう、スキーニー
フンディン: それにアルドリックさん

アル: おはよう…


*エルも遅れて下りてきて食事の席に加わる。

エル: おはよう

*そして一通り食事が終わり…

アル: 保存食、買わないとな…

フンディン: それじゃ準備を整えて
フンディン: 一時間後に正門で落ち合おう

スキールニル: わかった

フンディン: わたしはちょっと… 寄るところが

アル: 分かったよ

エル: 俺は特に用は無いな・・・


*というわけで一時解散して、それぞれ買い物や準備をして過ごす。フンディンはギブノーに挨拶しようと彼を探してみるが、1時間程度では見つからない。(定期市もすでに終わっていて、ギブノーの家も知らない)仕方なく職工ギルドに相談してみると、住所を勝手に教える事は出来ないが手紙を預かっておくことは出来るという事なのだが、直接会って礼をしたいフンディンは自分が会いたがっていたと伝言を頼んでギルドを後にした。

エル: そういえば兄者

アル: ん?

エル: そのハープすごいんだぜ

アル: 何がどう凄いんだ?

エル: 俺たちアンデッドの大軍と戦ったって言ったろう

アル: そう言えばそんなこと言ってた

エル: 俺たちは四人だったけれど、アンデッドに囲まれてピンチだったんだ
エル: そのとき俺がそのハープを奏でたら
エル: 味方の傷は癒え、アンデッドどもは一瞬で崩れ落ちた

アル: へぇ

エル: 兄者の使う癒しのわざと同じ効果があるみたいなんだ

アル: そんな力があるのか
アル: それじゃいざって時に使えるな
アル: まぁあんまりいざって時が多いのも困るけどな

スキールニル: たぶんそうなるぜ

アル: そうだな…スキールニルがやられそうになったくらいだからな


*アルの一言にカッとなってスキールニルは怒鳴り返す。フィオールを守れなかった件で責められたと感じたのかもしれない。

スキールニル: ああそうだな!

*と、やっているところへ遅れてフンディンがやってきた。

フンディン: おまたせしました!
フンディン: ?
フンディン: なにかあったんですか?

スキールニル: お前が遅いんだ!

フンディン: いきなりそんなに怒らなくても…


*八つ当たり。

エル: 待ちくたびれただけさ

フンディン: それじゃ行こう


●スパイン山脈への旅
*ひさびさの4人揃っての旅だが、道中の雰囲気は再会後とあまり変わらなかった。途中、たいした危険に遭遇する事もなく一行はミラー河まで出ることが出来た。ミラー河はスパイン山脈から流れてる河川である。地図によれば、目的の鉱山まではミラー河に沿っていくのが良さそうだ。一行はそのまま河沿いに旅を続けた。圧し掛かるように、徐々に大きくなるスパイン山脈。スパイン山脈はフェイルーンでも最も危険な地域の一つである。近づくにつれて一行の緊張も高まる。やがて暗い森に差し掛かると…

フンディン: あっ

*茂みから突然、フンディンと同じくらいの大きさの黒犬が飛び出して襲い掛かってきた! ウォーグである。

フンディン: このっ!

エル: うへ


*ウォーグを撃退した一行。

フンディン: あぶないなあ

スキールニル: ふん

エル: 結構危険そうだな


*とエルが言うのも、ウォーグは軍用犬として大型のヒューマノイド種族に飼われている事もあるからだ。

フンディン: !
フンディン: 死体が…


*見ると腐食しかけた旅人の死体があった。1体だけだが、この付近を一人で旅するような者がいるだろうか…。もし複数人なら、残りの者は逃げ延びたかあるいは…

フンディン: 山犬に襲われたんだね

アル: うっ…おうえ


*死体を見てアルが吐いた。

フンディン: あ、アルドリックさん
フンディン: 大丈夫ですか?

アル: あぁすまない

スキールニル: 二日酔いだな

アル: 大丈夫…


*ちなみにアルが吐いたのは二日酔いのせいではない。

エル: ・・・
エル: うまくポーズが取れない

フンディン: ポーズ?

エル: 呪文の詠唱にポーズが必要なんだ
エル: フンディンやスキールニルは知らないだろな


*さらに森を進む一行。

スキールニル: おい

フンディン: !
フンディン: オグレ…
フンディン: もとい、オーガだ!


*森の中に、オーガの野営地がある。発見される前に、発見することが出来た。

エル: ??なんだそれ

フンディン: ちょっと舌をかみました

エル: 緊張するなよ、君ほどの戦士が

フンディン: そういうわけじゃないですよ


*前話のオルブとか今回のオグレとか…まぁ、わかる人にはわかるだろうけど、微妙にタイムリーだったんですよね(笑)

エル: 行くぜ

*やり過ごせそうになかったので、先制攻撃。2体のオーガをなんとか撃退する事ができた。

スキールニル: オーガ相手に油断すると死ぬぜ

フンディン: しかしこのあたりに住み着いているみたいだ


*オーガの野営地を調べながらフンディンが言う。

スキールニル: こんなもんじゃねえ
スキールニル: 俺が殺したい相手はな

フンディン: …?

スキールニル: いやなんでもない


*野営地には、オーガの不気味な戦利品が並べられていた…。恐らく、入り口で見つけた死体の仲間たちだろう。

アル: *ぐえええ*

フンディン: ひどいな…
フンディン: アルドリックさん
フンディン: 顔まっさおですよ

エル: どうしたんだよ兄者

アル: 大丈夫…大丈夫だから

エル: まさか今の戦いで気分悪くなったなんていわないよな

アル: 違うよ

エル: 酒飲み過ぎか

アル: もう大丈夫

フンディン: …

エル: (・・・


*一行は使えそうなものを戦利品として拾って、野営地を後にし森を進む。森の中には他にもオーガの野営地や、オーガに飼われているウォーグなどが放たれており、かなり危険な場所だった。一行はなんとかそれらを撃退あるいは避けて進む…。

フンディン: 危険な場所だ…

スキールニル: そんなの知ってて来たんじゃないのか

フンディン: こんなところにいるなんて
フンディン: いったいどんな人だろう
フンディン: スキーニーとアルドリックさんは
フンディン: このギルフォスって人に
フンディン: 会ってるんだよね?

スキールニル: ああ

アル: 俺はダンヒルで1回だけだけどな

エル: 一体どんな奴なんだよ

スキールニル: 一言で言えば敵だな

アル: 頭の堅そうなヤツだった

フンディン: 敵だな、って…
フンディン: それ説明になってないよ


*この地域の出口付近に、オーガの見張りが立っていた。どうやらスパイン側を警戒しているらしい。ここに住んでいるオーガ達に敵対するものがそちら側にいるのだろうか。いずれにせよ、そこを突破せねばならない。一行は気を引き締めてチャンスをうかがい、そしてなんとか撃退して森を抜けることができたのだった。

フンディン: …
フンディン: まただ
フンディン: スキーニー… なんだか剣が走ってる

スキールニル: 何のことだ

フンディン: 今のオーガを切った時も、さっきのウォーグも
フンディン: すごい勢いで両断されてたなって

スキールニル: あの程度のわざではなんにもならねえ

フンディン: ……

スキールニル: 例えばお前の胴体を盾と鎧ごと
スキールニル: 真っ二つにできれば別だが

フンディン: …
フンディン: いこう


*フンディン達はオーガの野営地を抜けて歩き出す。地図によれば目的地の鉱山は近い。歩き出したフンディンは、スキールニルのつぶやきに気がつかなかった。

スキールニル: それができるようにならなきゃ・・・何の意味もないんだ

*続く…


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