ドワーフクエスト
第六章 それぞれの道行き
「フンディンの選択」


●選択の朝
*翌日の朝。

ノーラ: あっお早うございます、隊長

エギル: うむ
エギル: 昨夜は楽しんだようだな

ノーラ: 聞いてくださいよ

エギル: 何をだ?

ノーラ: フンディンさんにすっぽかされてしまったんですよ

エギル: あの若者は・・・物事が見えていないからな
エギル: もっともたいていの若者はそうだ

ノーラ: もう…お坊ちゃま育ちだとそうなっちゃうんですかねぇ?

エギル: ものを見ようと近くへ近くへと寄ろうとする
エギル: 本当にそのものを見るには
エギル: 少しはなれて見なければ
エギル: 全体は見えぬものだ

ノーラ: 離れてしまったらゆっくりお話しできませんわ

エギル: そういうことを言っているのではない
エギル: もののたとえというヤツだよ

ノーラ: はぁ…(首を傾げる)


*一方、当のフンディンはと言うと…

フンディン: おはようございます、母上

ジェミリ: おはよう


*テーブルに付くと、心得たように母親が料理を持ってくる。フンディンは食事に手を伸ばした。

フンディン: 父上は今日はなにかご予定はあるのですか、母上?

ジェミリ: 今日は家にいらっしゃるようですよ

フンディン: そうですか
フンディン: お城へ行かれるようでしたら…
フンディン: その、付き添いをお願いしようかと思ったのですが…


*そのまま食事を終える。

フンディン: ごちそうさまでした

*と、そこへ誰か尋ねてきたようだ。

エル: こんにちはー!

*ジェミリに案内されてエルがやってきた。

エル: おはよう

フンディン: エルドリックさん
フンディン: おはようございます

エル: だいじょぶかい?

フンディン: そうだ、もうご飯はお済みですか?

エル: 食べちゃったよ

フンディン: そうでしたか
フンディン: その…
フンディン: エルドリックさん

エル: うん?

フンディン: 昨日は申し訳ありませんでした

エル: いいんだ
エル: ただ大丈夫かなって

フンディン: 大丈夫?

エル: 元気か?

フンディン: は、はい

エル: ここの無事も確かめて
エル: それでこれからどうするつもり?

フンディン: 父上も母上もお変わりなかったようで
フンディン: 私も本当に安心しました
フンディン: 五日ほどフェルバールに留まってから
フンディン: 戻ろうと思います

エル: うん
エル: しかし兄者がいないとツマラナイな
エル: 旅は楽しいけれど
エル: ひとところに落ち着くと感じるよ

フンディン: アルドリックさん…
フンディン: それにスキーニーは元気でしょうか?

エル: 大丈夫だろう

フンディン: そうですね… スキーニーならきっと
フンディン: 何があっても大丈夫ですよね

エル: 兄者が元気なのはなんとなくわかる
エル: ってことはスキールニルも無事さ


*と言うエルであったが、実は明け方に突然衝撃を受けて飛び起きている。詳細は不明だか、アルが何かショックを受けたのでは、と感じていたが敢えて教えないようだ。(時間としてはアルがフィオールの死に遭遇した時間である)

フンディン: それじゃエルドリックさん
フンディン: また


*とフンディンは席を立つ。

エル: どっかいくのか?

フンディン: い、いえ
フンディン: 居住区から出ることを禁じられているのです
フンディン: 今日は… 家で過ごそうと思います

エル: ふーん
エル: じゃあ、外の広場にでもいるよ

フンディン: はい

エル: ごちそうさま


*エルは帰り、フンディンも自室に戻る。

フンディン: はあ…

*しばらくベッドに腰掛けていたフンディンであったが…

フンディン: (もう一度父上に… お願いしてみよう…

*と、立ち上がり、父の部屋に向う。

フンディン: フンディンです、入ります
フンディン: おはようございます、父上

ムンディン: おはよう

フンディン: 父上… 実は、そのう…

ムンディン: なんだね

フンディン: その…
フンディン: ガーリン・アイアンフォージ様と今日お会いする約束があるのです
フンディン: どうか… 工房へ行くことをお許し願えませんでしょうか…?

ムンディン: その話は昨日もしたはずだが?

フンディン: うぅ…

ムンディン: 二言はない

フンディン: はい…
フンディン: では… 失礼します…
フンディン: (やっぱり父上は私が鍛冶をやることにお怒りなのだろうか…


*父の態度にそれ以上その場にいることができず、フンディンは自室に退散した。

フンディン: はぁ…

●窓からの旅立ち
*フンディンが家で困っている頃、暇になってしまったエルは兵舎に遊びに来ていた。(もちろん普通に遊びに来ていい場所ではない)

エル: やあ

エギル: む
エギル: エルドリックか

エル: 弓なんかもってどうしたんだい

エギル: ノーラは弓の手入れをしているぞ

エル: ああ、それでか
エル: どっか出撃かと思ったよ

エギル: わしは兵隊だからな
エギル: いつでも動けるようにしておるのだ
エギル: フンディンは元気かな

エル: 元気ないね
エル: さっきも遊びにいったんだけど

エギル: ふむ
エギル: お前さんがどうにかしてやるべきかも知れんな

エル: ご馳走してくれた後、追い出されちゃったよ

エギル: なるほど
エギル: なんでも一人で抱え込むたちのようだな

エル: そういえば今日どっか行くって言ってたけど

エギル: ほう

エル: 家にいていいのかな??

エギル: 約束してあるのであればまずいのではないか
エギル: ああ・・・あの鍛冶屋と会うのだったか

エル: そうだそうだ
エル: それだった

エギル: わしは事情は知らんが
エギル: アイアンビアード家の噂はいろいろと聞いている

エル: へえ

エギル: 親子の間に何かあるようだがな

エル: それは多少は聞いたけど

エギル: まあわしが詮索することではないか
エギル: しかしガーリンはフェルバールの鍛冶匠ではないか
エギル: すっぽかしてよいのか

エル: ねえ
エル: そうなると大変な事に思えてきたぞ
エル: ちょっと見てくる

エギル: ふふふ


*再びアイアンビアード家にやってきたエル。とりあえず玄関から入ろうとするが、少しためらって止めた。ぐるっと回ってフンディンの部屋の窓を見上げてみるが、フンディンの部屋は2階なので中の様子はわからない。しばし考えてから、登れそうな場所を探して登り始めた。ここで登攀判定。エルはDEXがあまり高くなく不利なんだけど…ダイスで19を出すという幸運に見舞われて、すんなり登ることができた。

フンディン: 鳥でもいるのかな?
フンディン: 何か音が…


*とフンディンが窓(ガラス窓ではなく木窓)を開けたところ、ガツンと何か手ごたえがあった。

フンディン: うわっ
フンディン: え、エルドリックさん

エル: イタタ・・・


*ちょうど窓を開けようとエルが試みているところだったので、フンディンが開けた窓がエルの顔面に直撃したのだった。顔を抑えるエル…(痛そう)

フンディン: こんなところで何をやってるんです?!

エル: いや、フンディンこそ
エル: 何してるの?

フンディン: 私は…
フンディン: その、家で過ごすと先ほど言ったではありませんか

エル: だって鍛冶匠のところ行くとか何とか

フンディン: そ、それは…
フンディン: しかし父上にお許しを頂けていないのです…

エル: でも約束したんだから
エル: 行かないと怒られるぞ

フンディン: うう…
フンディン: お師匠様にも申し訳ないですが…
フンディン: しかし父上のお言い付けをないがしろにすることも私には…

エル: じゃあ、身代わりを置いていこう

フンディン: ??

エル: その布団を丸めて、服を着せて
エル: このハープを置いていこう

フンディン: そ、そんな…

エル: 魔法がかかってるから、何かあったら勝手に返事してくれる


*ちなみにこれはエルの嘘。

フンディン: しかしエルドリックさん
フンディン: それでも父上に対して不義を成すことには変わりません…

エル: ふむ

フンディン: と、とにかく
フンディン: いつまでもそんなところにいては
フンディン: どうぞ入って下さい

エル: うん
エル: 小さい窓だ
エル: 兄者ならひっかかるな


*フンディンに引っ張ってもらって、エルは部屋に入った。

フンディン: ふう…

エル: けどさ
エル: どっちかの約束は破る事になるんだろ

フンディン: そ、それは…
フンディン: はい…

エル: それなら一番いいのは
エル: おじさんを騙す事さ
エル: 師匠のほうは行かないとどうにもならないけど

フンディン: けれど… 父上は私に良かれと思って、そう申し付けられたと思うのです
フンディン: そのお気持ちを無下には…

エル: 師匠に怒られるぞー

フンディン: ……
フンディン: エルドリックさん

エル: うん

フンディン: エルドリックさんのお父上は… その、一緒にいられることもなくて
フンディン: 心配になることはないのですか?

エル: 心配?

フンディン: はい

エル: 親父たちの無事を?

フンディン: 旅の途中でオークに襲われているかも知れない…
フンディン: 船が難破してしまったかも知れない
フンディン: そういった風に心配にはならないのですか?

エル: 俺と兄者がこうして無事なんだもの、親父達みたいなベテランは何をか、
エル: ってとこかね

フンディン: そうですか…

エル: わからないけど、そんな心配したことは無いな

フンディン: 私も昔は…
フンディン: 小さい頃はそうでした
フンディン: 父上はいつも、出かけていって
フンディン: 戻られるとオークの首や戦利品を持ち帰られて
フンディン: 幼い私を膝に乗せて語ってくださいました
フンディン: わたしはそれが当たり前だと思っていました
フンディン: だから父上が戦に出かけていっても、何も心配はしていなかった
フンディン: ですが…
フンディン: …あの戦いの時は違いました
フンディン: 斧を腰に提げて、ぬぐい切れなかった返り血がかすかについた鎧兜を身に帯びられて、誇らしげに母上と私のもとへ戻られた父上…
フンディン: その姿はありませんでした

エル: ふむぅ

フンディン: …だからエルドリックさん、わたしはいつ父上が同じようにわたしの預かり知らぬところで
フンディン: そのようにしてお命を落とされてしまうかが不安で
フンディン: そして同時に父上に余計な気苦労をおかけするべきではないとも思ったのです
フンディン: *グスッ*

エル: ふーん
エル: ずっと親父さんの言う事おとなしく聞いてたっけか?

フンディン: そ、それは…
フンディン: こっそり抜け出して
フンディン: お師匠様のところへ…

エル: ほらほら
エル: 何故今日に限って・・・?

フンディン: けれどあの出立の前の日に
フンディン: 父上はそのこともご存知だと

エル: あー、わかった

フンディン: ??

エル: 今日も親父さんはご存知だよ
エル: 抜けだしても

エル: 今まで抜け出した事知ってるなら、扉や窓に鍵かけて閉じ込めとくさ
エル: って、事は抜け出せってことだ

フンディン: そ、そんな…

*鋭いな(笑)

エル: 雨降ってきたから滑りそうだけど、窓から行こうぜ


*言いながらエルはさっさと布団や枕を駆使してフンディンの身代わりを作る。

フンディン: エルドリックさん…

エル: お、縄梯子


*何か使えそうなものを探していたエルは、昔フンディンが部屋から抜け出すのに使っていた縄梯子を発見した(笑)

フンディン: ……

エル: 先行ってくれよ
エル: 俺あんまり身軽じゃないんだから
エル: 落ちたら支えてくれ

フンディン: (父上…
フンディン: フンディンは…
フンディン: フンディンは親不孝者です…!


*窓から縄梯子を下ろし、二人は外に出る。

フンディン: ふう…

*家の裏手に降り立った二人。フンディンは工房まで人に見られずに行ける裏道も知っている(笑) 二人はそのまま工房に向った。

●フンディンの証明
*二人はガーリンの工房の前までやってきた。

フンディン: エルドリックさん…
フンディン: ありがとうございました

エル: うん、早く行こうぜ


*二人は工房に入る。

フンディン: おはようございます
フンディン: お師匠様
フンディン: フンディン、参りました

エル: どうも

ガーリン ファイアフォージ: 遅かったな

フンディン: はっ・・
フンディン: それは… そのぅ…

ガーリン ファイアフォージ: まあ、いい

フンディン: は、はい!

ガーリン ファイアフォージ: 早速、見せてもらおうか
ガーリン ファイアフォージ: この箱の中に
ガーリン ファイアフォージ: 材料が入っている
ガーリン ファイアフォージ: 好きに使っていい
ガーリン ファイアフォージ: 使わなかった分は戻しておくように

エル: 危ないからすみっこにいよっと

フンディン: わかりました

フンディン: それで… お師匠様
フンディン: 何を作れば…

ガーリン ファイアフォージ: 今、お前が作りたいものを
ガーリン ファイアフォージ: 作れば良い
ガーリン ファイアフォージ: 見せてもらおう

フンディン: ……
フンディン: ………


*しばらく考えた後、フンディンは道具に手を伸ばし一心不乱に槌を振るい始めた。そのまま時間は過ぎ、翌朝の4時。(そんなにすぐ鎧は出来ないと思うけど、ゲーム的な都合なので気にしないでください)

フンディン: こ、これで…
フンディン: お師匠様
フンディン: おねがいします

ガーリン ファイアフォージ: む…出来たようだな

フンディン: は、はい


*フンディンは作品をガーリンに手渡した。ガーリンはそれを注意深く眺める。

ガーリン ファイアフォージ: ふむ…
ガーリン ファイアフォージ: なるほど
ガーリン ファイアフォージ: オッドアイを持たせた事も、イランディルに会わせた事も無駄ではなかったようだ

フンディン: お、お師匠様…?

ガーリン ファイアフォージ: 鎧というものについて、オッドアイを使いながら学べたようだな

フンディン: は、はい
フンディン: 使えば使うほど…
フンディン: これをお作りになられたお師匠様の腕の素晴らしさを、文字通り身にしみて感じました

ガーリン ファイアフォージ: これなら、そこいらの鍛冶師には引けは取るまい

フンディン: !
フンディン: *感激してうるうる

ガーリン ファイアフォージ: あくまで一般レベルでの話だが

フンディン: は、はい!
フンディン: もったいないお言葉…

ガーリン ファイアフォージ: まだわしの領域には遠いし、わし独自の技は教えられないが
ガーリン ファイアフォージ: もうすぐ、それもできるようになるだろう

フンディン: 本当のところ…
フンディン: フェルバールを出てからろくに鍛冶の修行をする時間も取れず
フンディン: 己の怠慢さゆえに腕もすっかり鈍ってしまってはいないかと
フンディン: わたしは心配でありました

ガーリン ファイアフォージ: 物を作り続ければ腕があがるというものでもない
ガーリン ファイアフォージ: それは単に慣れたということだけだ

フンディン: …

ガーリン ファイアフォージ: 本物を作るには本物を知らねばならん

フンディン: 今ならば… 少しはわかった気がします

ガーリン ファイアフォージ: わしがイランディルを弟子にしたのは、それを見る目があったからだ

フンディン: 鍛冶の道とは、炉の前のみにあらず・・ということなのですね、お師匠様

ガーリン ファイアフォージ: うむ
ガーリン ファイアフォージ: イランディルにも、似たようなことは言われたようだな

フンディン: *決まり悪そうに頭をかく

ガーリン ファイアフォージ: ところでこれは誰のために作ったのかね

フンディン: はい
フンディン: 炉の前で一心に槌を振るう間… この旅の間のことが
フンディン: 不思議と心のどこかに浮かんできました
フンディン: 我が従兄弟スキーニー… それにウッズタイガー家の双子、アルドリックさんとエルドリックさん
フンディン: それに様々な人たちと出会いました
フンディン: アドバール城砦の司祭様…
フンディン: 部隊長のナクルどの…

フンディン: でも鉄を叩いているうちに、そういったことも全部消えて言ったんです
フンディン: お師匠様… 実は今日も
フンディン: 本当だったらこうしてお師匠様のもとへ来ることはできませんでした

ガーリン ファイアフォージ: うむ

フンディン: きっとわたし一人ではできなかったでしょう
フンディン: この鎧は… エルドリック・ウッズタイガーに
フンディン: 気がついたら自然に形を成していました

ガーリン ファイアフォージ: そうか
ガーリン ファイアフォージ: わかった
ガーリン ファイアフォージ: 鎧はしまっておきなさい

フンディン: はい

ガーリン ファイアフォージ: 疲れただろうから、ここで休んでいくと良い
ガーリン ファイアフォージ: エルドリックは誰か呼びにやっておく…

フンディン: はい… そうし…ま…


*フンディンはそのまま倒れるようにベンチに横になってしまったので、ガーリンはそっと毛布をかけてやるのだった。

●再び、トンネルへ

*昼前に、一度家に戻っていたエルの元に使いが来たのでエルは工房に戻ってきた。

エル: あ、おはようございます
エル: フンディンは?

ガーリン ファイアフォージ: 奥で眠ってしまっている

エル: ありゃ
エル: 作品は出来たの?

ガーリン ファイアフォージ: お前さんのために、鎧を作ったそうだよ

エル: え?俺のために!?

ガーリン ファイアフォージ: 起こして、受け取るといい

エル: ええ
エル: おーい
エル: フンディン

フンディン: むにゃ…

エル: よっぽど恨詰めてやってたんだな

フンディン: zzz....
フンディン: あ、あれ…?

エル: よう

フンディン: エルドリックさん、どうしてここに?
フンディン: それにわたしは…

エル: もう朝、いや昼近くだぜ

フンディン: えっ?!!
フンディン: い、いつのまに寝ちゃってたのか…

エル: 満足の行くもの作れたのかい?

フンディン: は、はい
フンディン: これを


*フンディンは鎧を取り出して見せる。

エル: ・・・綺麗な鎧だなぁ

フンディン: どうかエルドリックさんに使っていただきたいのです

エル: 親方から聞いたけど、
エル: 何故、俺に?
エル: ははーん
エル: 俺なら最前線に出ないから傷つかないとか

フンディン: ?

エル: あ、見た目がいいのが俺だからか
エル: つけて見ても?

フンディン: もちろんです
フンディン: 寸法はこの前の鎧のままあわせてありますので

エル: 素晴らしい
エル: けどさすがにもらえないよ

フンディン: ?

エル: だってフンディン、お父さんの事も忘れてただろ

フンディン: あっ!

エル: そんなに入れ込んで作った大事な鎧、貰えないぜ

フンディン: いや…
フンディン: だからこそ
フンディン: この鎧はエルドリックさんが使ってください

エル: ・・・

フンディン: …

エル: わかった
エル: ・・・ありがたく使わせてもらうよ

フンディン: まだまだ未熟な腕ですが

エル: 英雄フンディンの獅子奮迅の活躍のそば、エルドリックの鎧には傷一つつくどころか一匹の怪物も近づけなかったのであった
エル: って書けるな

フンディン: 銘をつけるなら“銀の微風”と

エル: 銀の微風・・・
エル: おしゃれな名前だね、スキールニルなら想像もつかないだろな

フンディン: 塗料と、それに材質の鋼が混ぜ合わさって銀色になったんです

エル: へぇ

フンディン: それに、動きを阻害しないように
フンディン: 微風のように軽く…というつもりでつけました

エル: そうか
エル: ありがとう、フンディン
エル: すごく嬉しい


*エルが鎧を受け取ったところで、ガーリンがやってきた。

フンディン: お師匠様

ガーリン ファイアフォージ: 話は済んだかね
ガーリン ファイアフォージ: フンディン、実は今日わしはここを留守にする

フンディン: えっ
フンディン: お出かけですか?

ガーリン ファイアフォージ: フェルバール アドバール間のトンネルを作っているのは知っているな?

フンディン: はい

ガーリン ファイアフォージ: お前さんらが旅に出た時、最初に通ったところだ

フンディン: 覚えております

ガーリン ファイアフォージ: あの作業が続いていたのだが、途中で別の洞窟にぶつかってしまったらしい

エル: うん

フンディン: 洞窟?

ガーリン ファイアフォージ: うむ
ガーリン ファイアフォージ: そこの鉱脈の調査を頼まれておるのだが
ガーリン ファイアフォージ: それだけではなくてな

フンディン: と仰いますと?

ガーリン ファイアフォージ: 洞窟には、かなり古い居住地の跡があり
ガーリン ファイアフォージ: そこに鍛冶場もあるそうだ

フンディン: !!

ガーリン ファイアフォージ: かなり古い廃墟らしいが、もしドワーフのものだとすれば
ガーリン ファイアフォージ: 古の技を知る機会になるやもしれん

フンディン: お師匠様

ガーリン ファイアフォージ: うん?

フンディン: わたしも…
フンディン: わたしもご同行させては頂けませんでしょうか?

ガーリン ファイアフォージ: 構わんよ。

フンディン: !

エル: そんなら俺も

フンディン: ありがとうございます!

ガーリン ファイアフォージ: 興味を持つことはいいことだ

エル: ヘヘ、鎧を着ていこう

ガーリン ファイアフォージ: では、準備をしてトンネル入り口の前に
ガーリン ファイアフォージ: わしもあとから行こう

フンディン: はい


*フンディンたちがそんな話をしている少し前、兵舎ではエギルとノーラの二人が新たな任務を授かっていた。

エギル: コレは指揮官殿

ミョルニル: 休暇は終了だ

エギル: ほう

ミョルニル: 新しい任務を言い渡す

エギル: してその任務とはなんですかな

ミョルニル: 現在、フェルバール アドバール間のトンネルを作っていることは知っているな

ノーラ: …

ミョルニル: トンネル工事中に、偶然だが別の洞窟と繋がってしまった
ミョルニル: 二人は、本来護衛任務は領分ではないが
ミョルニル: そこを調査する鉱夫の安全確保のため
ミョルニル: 洞窟に出向いてもらう

エギル: それはかまわんのですが

ノーラ: …

エギル: わしの部下はまだ傷がいえておりませんのでね

ミョルニル: 洞窟に、敵の姿は今のところない

エギル: 今のところ、ね

ノーラ: …

ミョルニル: それに、どうやら人の住んでいた形跡もある

エギル: ほう

ミョルニル: それらの調査には、二人の技能も役に立つだろう?

ノーラ: …

ミョルニル: 前回の掃討作戦の戦果も認められての命令だ

エギル: ふむ
エギル: このノーラを鍛えるのにも悪くはないですな
エギル: しかしわれわれはあくまで斥候
エギル: 厄介なことがあったら増援の要請に戻るが
エギル: よろしいか?

ミョルニル: すでにいくつかの小隊が護衛についている
ミョルニル: 心配はいらない

エギル: ふむ

ミョルニル: 任務の第一目的は鉱夫の安全確保
ミョルニル: もしなにか問題がおこった時は
ミョルニル: それの解決または食い止めることが鉱夫の安全に繋がるならば
ミョルニル: それを成せ。以上だ。

エギル: 了解
エギル: では早速任務に向かうとします

ミョルニル: 必要なものは、奥の倉庫で補給して行けよ

ノーラ: ………はい


*二人は倉庫で必要な装備を補給する。

エギル: ふむ
エギル: 矢は補充せねばな

ノーラ: はい
ノーラ: *弓の調子を見る*
ノーラ: よし

エギル: 用意はできたか

ノーラ: はい、隊長

エギル: いくか

ノーラ: はい


●古の洞窟

エギル: ふむ
エギル: コレは広いな


*エギルとノーラの二人は現場の責任者に案内されて新たに発見された洞窟へとやってきた。想像以上に広い空間になっており、確かに居住空間として利用できそうである。各所には派遣されてきた兵が立っており、また、鉱夫達が色々と調べている。二人が入り口付近を調べていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。

エル: あ、そうだ
エル: このハープのことは話したよね
エル: それとさ

フンディン: ?

エル: 今思い出したんだけどさ、
エル: おとといの夜、兄者達になんかあったみたい
エル: ・・・な、気がする

フンディン: えっ?!
フンディン: なにかって…

エル: いや、無事だとは思う、今も兄者の存在を感じるし

エル: ただ、なにかショックな出来事があったみたい
エル: 感じるだけなんだ、気のせいかもしれない

フンディン: …
フンディン: あっ

エギル: む?

フンディン: エギルどの
フンディン: それにノーラさん

ノーラ: あら
ノーラ: フンディンさん、エルドリックさんも

フンディン: どうしてここに?

エギル: 任務だな

フンディン: ああ

エル: ああ、調査隊か

フンディン: そうでしたか

ノーラ: えぇそうです

エギル: 「隊」ねえ・・・

フンディン: ?
フンディン: それで… 何か見つかりましたか?

エギル: いやまだだ
エギル: おぬしらはなぜここに?

エル: 見学に

フンディン: 新しく発見された洞窟に
フンディン: 居留地の跡があったとお聞きしまして

ノーラ: そうですか

エギル: 「新しく」?
エギル: われわれにとってはそうかもしれんが・・・
エギル: まあ何が出てくるかわからんよ

フンディン: それはそうですね


*そこへ遅れてガーリンがやってきた。

フンディン: !
フンディン: お師匠様

エギル: ガーリン殿まで・・・

ガーリン ファイアフォージ: 待たせたな
ガーリン ファイアフォージ: さて、噂の廃墟を見に行くか

フンディン: はい!


*というわけで一緒に奥に進むフンディン達。エギルとノーラも護衛のため一緒である。入り口付近はなにもない空間に思えたが、徐々に遺構らしきものが見え始める。

ガーリン ファイアフォージ: ふむ

フンディン: …
フンディン: このあたりはもう
フンディン: 居住地跡なのですね

ガーリン ファイアフォージ: そのようだな

フンディン: !

エギル: これか

フンディン: はあ…

エル: へー


*洞窟にひっそりとたたずむいくつかの建物。それらは形を保ったまま、そこにあった。石造りではなく木造であるがサイズはドワーフのものと変わらない。中心の広間を囲うように立っている事から、これらの建物が同じ機能を持ったものであると思える。

エギル: ふむ

フンディン: ずいぶん古いですね

エギル: 下手をするとくずれる
エギル: あまり立ち入らんほうがいい


*というエギルの忠告を無視して

ガーリン ファイアフォージ: この建物はだいぶましだな

*とか言いながら入ってしまうガーリン。

フンディン: あっ

*と、フンディンは追いかけた。中に入ると、思いがけず見慣れたものがそこにあった。

フンディン: これは…
フンディン: かなとこ?
フンディン: それに炉も…

ガーリン ファイアフォージ: ふむ
ガーリン ファイアフォージ: これはドワーフのものに間違いないな
ガーリン ファイアフォージ: 大きさもそうだし…道具もかなりボロボロだが、他の種族が使うものではなさそうだ

フンディン: どれほど古いものかは…わかりますでしょうか?
フンディン: お師匠様

ガーリン ファイアフォージ: 800…いや、1000年前かもしれん

フンディン: !


*ガーリンと、それを追いかけてフンディンが入ってしまい、仕方なくエギルはこの区画全体を調査しにその場を離れた。追いかけようとするノーラにエルが声をかける。

エル: 今日も二人?

ノーラ: はい
ノーラ: まだカイルさんの傷が癒えていないのです

エル: そっか
エル: 頑固じいさんと二人じゃつまらないだろ

ノーラ: そんな事…


*そこへエギルが戻ってきた。

エギル: 何か言ったか?

エル: わわ

ノーラ: いえ、何も!

エル: そんなとこいたの

エギル: 馬鹿者め
エギル: すべて聞こえとる

ノーラ: す、すみませんでした!

エル: うへぇ

エギル: ノーラよ、今は任務に集中するのだ

ノーラ: はい、隊長

エギル: それがすめば何をしてもかまわんがな

ノーラ: はぁ…

エル: 俺のせいで怒られちゃったな

ノーラ: いいんです
ノーラ: 気にしないでください

エル: 行こうか

ノーラ: はい


*ノーラとエルはエギルに付いて、先に二人が入っていった建物に入る。中ではガーリンとフンディンが何か調べている。

エギル: ここは危険ですぞ

フンディン: エギルどの

エギル: せめて補強するまでは出入りしないほうが

ガーリン ファイアフォージ: ここを調べに来たのだ

エギル: ほう?

ガーリン ファイアフォージ: 他の連中に荒らされる前にな

エギル: 鍛冶場のように見えますな

フンディン: (800年前…
フンディン: ええ

エギル: 500年以上も前のものか

ガーリン ファイアフォージ: 道具を見ると、基本的には今も昔も変わらんな
ガーリン ファイアフォージ: 道具や設備は、ずっと昔から変わらないということだな

エギル: われらの種族のものだろうか

フンディン: そのようですね

エギル: しかし今のところ何もないな
エギル: ミョルニルめ・・・なぜわしらを送り込んだのやら

フンディン: 叔父上が?

エギル: うむ
エギル: 彼が指揮官だからな

フンディン: そうでしたか

ノーラ: そう言えばエルドリックさんの鎧、先日とは違いますね
ノーラ: 新調されたのですか?

エル: ああ
エル: 実はね、フンディンが作ってくれたんだ

ノーラ: 素晴らしいわ

エル: いいだろう
エル: だから、今日は危ない事も無いとは思ったけど、着けてきたんだ

ノーラ: えぇ
ノーラ: とても動きやすそう

ガーリン ファイアフォージ: このかなとこ
ガーリン ファイアフォージ: かすれて見えないが、ルーン文字らしきものが…

フンディン: ?

エギル: ほう

ガーリン ファイアフォージ: 台座に…
ガーリン ファイアフォージ: 駄目だ。読めないな

フンディン: ……

ガーリン ファイアフォージ: ルーンの刻まれた道具というのは
ガーリン ファイアフォージ: 古に、ドワーフの間では良く使われていたと聞く

フンディン: ……

ガーリン ファイアフォージ: 道具の持つ魔力を作品にこめるためにな
ガーリン ファイアフォージ: だが多くは失われてしまったり
ガーリン ファイアフォージ: 一族の秘密として隠され、行方がわからなくなってしまった

ノーラ: 魔力…

ガーリン ファイアフォージ: フンディンのオッドアイは昔わしが手に入れた
ガーリン ファイアフォージ: 古のルーンが書かれたスクロールを使ったのだ

ノーラ: じゃああの斧もきっと…

エギル: あの忌々しい斧か

ガーリン ファイアフォージ: スクロールのルーンは、オッドアイに刻まれるとそのまま消えてしまった
ガーリン ファイアフォージ: この技術も、すでに失われたものだが…ドワーフの中にはまれに、なぜがその技を
ガーリン ファイアフォージ: 使える者がいる

フンディン: …


*このへんの件は世界観的に微妙。PnP版ではルーンクレイバーという、ルーンを刻んで魔法の道具にするドワーフ用クラスが存在しますし、魔術師系には魔法のアイテムを作る特技があるものもいます。過去のAD&D時代の小説には、すでに魔法の武具を作る能力は失われたとされる描写が見られることもあります。どちらにしてもガーリンは戦士なので、アイテムの力を借りて魔法の防具オッドアイを作ったという事なるでしょうけど。

ガーリン ファイアフォージ: わしもそうだが、やり方を説明することはできない
ガーリン ファイアフォージ: どういうわけか、出来ると確信があった

フンディン: それは… 自然とわかるものなのですか?

ガーリン ファイアフォージ: そうだな
ガーリン ファイアフォージ: 時がくれば、一流の鍛冶師にはそういう機会があると聞く

フンディン: ……

ガーリン ファイアフォージ: 今でもルーンを扱えるものはいるが、その魔力は古のそれほど強くはない。

フンディン: それは…


*フンディンが何かを問おうとした時、外からなにやら大声が聞こえてきた。その声は何らかの異常事態を告げていた。

●封じられしもの

フンディン: ?

エル: どした

フンディン: なにか騒がしいですね

ノーラ: 悲鳴!?


*と、外の様子を聞きつけて一行が建物から出ると、洞窟の奥からドワーフが一目散に駆けてくる。そのドワーフは一行を見つけると駆け寄ってきた。

鉱夫 : 助けてくれ!

エギル: む

フンディン: ?!

ノーラ: どうされたのです?

鉱夫 : 兵隊さんぬ


*普通にタイプミスだが、鉱夫の慌てぶりを表現したということにする(笑)

鉱夫 : !

エギル: 落ち着きなさい
エギル: 事情を話してくれ

鉱夫 : こ、この下にも洞窟があって
鉱夫 : 俺達はそれを調査してたんだ

エギル: うむ

鉱夫 : ああっ

フンディン: !!


*ドワーフの駆けてきた洞窟の奥から、気配を感じさせずに何かがノロノロと姿を現す…

ノーラ: スケルトン?

フンディン: …!

エル: ひゃあ


*慌てる一行をよそにエギルが矢を放つ。スケルトンには効果が薄いものの、その隙に他の面々は武器を取り出す事が出来た。スケルトン自体はたいした敵でもなく、あっさりと倒すことが出来た。

鉱夫 : 下の洞窟に
鉱夫 : 入ってしばらくしたら
鉱夫 : アンデットが出てきて

エギル: そうか

ノーラ: なんてこと!?

鉱夫 : 仲間が二人やられちまった
鉱夫 : まだ生きてるかもしれねえ、はやく助けに行ってくれ!

エギル: とにかく様子を見に行くぞ

エル: 鎧着てきて良かった
エル: 俺たちはどうする

フンディン: いきましょう!


*すぐさま駆け出す一行。ノーラはすばやく伝言を残す。

ノーラ: この事を他の者にも伝えてください

鉱夫 : わ、わかった!


*ガーリンは鉱夫と共に後退し、一行はそのまま奥へと進む。しばらく行くとさらに下の階層へと向かう道を発見することが出来た。先ほどのドワーフの話では問題が起こっているのはこの先である。

エギル: む

フンディン: どうしました


*エギルが下の階層へと向かう道の入り口に、横倒しになった石碑を見つけた。一見するとただの石にも見えるそれに気がつくあたり、さすがである。

エギル: 忌まわしきもの封じる・・・
エギル: と書いてあるな

フンディン: ?
フンディン: 忌まわしきもの…?

エル: さっきのホネかね
エギル: あんなものでこれほど大掛かりな物を作るとは思えんが


*と、エルが地面に埋もれた小さな欠片を見つけてほじくり出し、手に取る。

エル: 貝殻だ
エル: なんでだ?


*下の階層から、悲鳴が響いた。

フンディン: !!

*フンディン達は駆け出した。

エギル: ええい、またんか

*慌てて追いかけるエギル。だが、すぐに立ち止まっているフンディンたちに追いついた。フンディンたちの目の前にはドワーフの鉱夫が一人、倒れていた。その周囲にはスケルトンがいる。スケルトンたちは上の階で遭遇したものより素早く、活力(?)があるように思える。が、一行はなんなく撃退した。だがその時…

フンディン: ?!

*一見して死んでいるとわかる姿の鉱夫が、のっそりと起き上がった。白濁した目を一行に向けると、何かをつぶやきながら襲い掛かってきた! 慌てた一行ではあったが仕方なく、再び倒す。

フンディン: なんということ…

エル: ゾンビにされちゃったのか

ノーラ: オーブの波動?
ノーラ: どういう意味なのでしょう?


*ゾンビ化した鉱夫がつぶやいていたのをノーラは聞き取ったらしい。ちなみに「オルブ」ではない(笑)

エギル: なんのことやら

フンディン: しかしこのままでは…

ノーラ: どなたかいらっしゃいますかぁ!

エギル: もう一人いるはずだな

エル: うへ

ノーラ: 隊長!
ノーラ: 扉があります

エギル: うむ
エギル: いくしかない


*と、エギルが扉を調べていると…

フンディン: うしろ!

*倒したはずのスケルトンが再び起き上がって襲い掛かってきた。とどめを刺し損ねたのではない。見ると倒したはずのスケルトンがどんどん起き上がろうとしている。

フンディン: くっ…

エギル: キリがないな

エル: 怖い


*隣の部屋に飛び込んで扉を閉める一行。起き上がったスケルトンたちは扉を壊そうと叩き始めた。そして飛び込んだ部屋にもスケルトンはいる。目の前のスケルトンも、後ろから迫ってくるものも、倒しても倒しても再び起き上がってくるのだ!

ノーラ: きゃあ

フンディン: そんな…!
フンディン: いったい何が…

エル: ひょえー
エル: 大変な数だ

フンディン: いったいこの場所は…

エギル: わからんな

フンディン: くっ
フンディン: これじゃ切りがない…!

エギル: 元を断つぞ

フンディン: 元…?

エギル: ワカランが勝手に亡者が沸くはずもあるまい


*一行は敵を倒しつつ突破して進む。だが途中の部屋で後ろから追ってくるスケルトンの大群に追いつかれてしまいピンチに陥った。その時、エルの魔法の竪琴が清らかな旋律を奏でる。スケルトンたちは一時的に糸が切れたようにその場に倒れた。同時にフンディンたちには活力が沸いてくる。

フンディン: !

エル: なんだこれ・・・

フンディン: 竪琴が…?

エル: うん


*だが今は調べている暇はない。一行は扉を閉じて敵を閉じ込め、時間稼ぎをしつつ先に進む。だが…

フンディン: !!
フンディン: お、大きい…


*思わず見上げてつぶやいてしまう程、巨大なスケルトンがいた。それは複数のスケルトンが複雑に組み合わさって一体化したもののように見える。ガシャガシャと不快な音を立てて一行に迫ってくる。

フンディン: エルドリックさん、下がって!

エギル: コレはまずい

フンディン: くいとめます!


*フンディンは前線に立ち、巨大スケルトンに立ち向かう。動きは鈍く、攻撃をさばくのは容易いがいくら傷つけても削りきる前に再生してしまう…。

フンディン: !!

ノーラ: 隊長〜!

フンディン: くっ…

エル: 歯が立たないぜ

エギル: そいつは戦っても無駄かもしれん

フンディン: くそっ…

エギル: ノーラ、来い


*エギルは巨大スケルトンをフンディンに任せて、ノーラに呼びかけて奥の部屋に飛び込む。エルもすぐに後を追った。その部屋は、入った瞬間に誰でもそれとわかるほど不快なエネルギーで満たされていた。中央に、半ば朽ちた祭壇(と思われるもの)があり、そこには禍々しい波動を放つオーブがあった。

エル: なんだこれ

エギル: ワカランが壊してしまおう


*オーブを守るように、部屋に散らばっていた骨がスケルトンの形を成して立ち上がる。エギルとノーラ、そして駆けつけたエルはスケルトンを倒すが、やはりすぐさま立ち上がってくる。エルはスケルトンを力任せに押しのけるとオーブに一撃を加えた!

エル: 堅いぞ

*オーブから目に見えない波動が発せられ、エルは跳ね飛ばされてしまったが、同時にスケルトンたちはその場に崩れ去る。

フンディン: !?

*同時に、フンディンが相手していた巨大スケルトンも崩れ去った。フンディンも3人の後を追って部屋に入る。

エギル: あのでかいのはどうした?

フンディン: わ、わかりません
フンディン: 突然ガラガラと…
フンディン: !


*オーブが再び、波動を放ち跳ね飛ばされる一行。それに呼応するように部屋に散らばった骨が1ヶ所に集まると、巨大なスケルトンの形を成した。オーブは自らを守るために力を一つに集めたのだ。ノーラの背後で、巨大スケルトンは立ち上がった…

フンディン: ノーラさん!!

ノーラ: あぁ!

フンディン: !


*巨大なスケルトンの手が無造作に振り下ろされる。直撃を受けたノーラはくるくると回転しながら地面をバウンドした。その首は有り得ない角度で曲がっており、ピクリとも動かない…。

エル: ノーラ!

*エルが駆けつけようとした時、ノーラだったものはゆっくりと起き上がり、オーブに攻撃を加えるエギルに素手で掴み掛かった。

エル: ああ・・・

フンディン: …!


*フンディンは巨大スケルトンと再び戦闘に入った。エギルは掴み掛かってくるノーラと格闘している。エルは意を決して、オーブを叩いた。何度か跳ね飛ばされつつも、やがてオーブにヒビが入る。エルが最後の一撃を加えると、オーブは最後の波動を放ち、砕け散った! 同時に全てのアンデットはその場に崩れ落ちる。

エル: 早く戻って司祭かなんかに
エル: 見せよう

フンディン: はい…!


*一行は、ノーラの遺体を運んで地上へと戻るのだった…。

●父と子

*エルがオーブを破壊した事によって、アンデットたちの活動も停止した。謎の力がフェルバールを危機に陥れる前に、それを止めたフンディン達。洞窟とオーブの調査はより慎重に進められる事になった。犠牲になったノーラたちは、すでにアンデット化していたため最高位の信仰呪文が必要になる。そのためアドバールの神官長に助力を求めることになり、その到着は3日後であることが知らされたのだった。

エル: ・・・

フンディン: ……

エル: 心配だな・・・

フンディン: まさかこんなことになるなんて…

エル: もっと準備して置けばよかった・・・
エル: まさかあれほどの戦いになるなんて

エギル: わしのミスだ・・・
エギル: 若者の命をみすみす失わせてしまうとはな

エル: 彼女、俺にポーションをくれたんだ
エル: あれを自分で持ってればやられなかったのかもしれない

フンディン: アドバールから… 神官長様がいらしてくださるそうですし…
フンディン: まだ希望はありますよ…

エギル: 希望か
エギル: かつてはわしも希望を抱くことができた
エギル: 夢を抱くこともあった
エギル: だが今は何も残っておらぬわ


*詰め所で落ち込む一行の元に、ミョルニルがやってきた。

ミョルニル: エギル

エル: わわ

エギル: なんです

ミョルニル: フンディンたちも、良い働きだった
ミョルニル: あのアンデットやオーブの力がフェルバールに及ぶ前に対処したのだからな
ミョルニル: おかげで鉱夫の犠牲も二人で済んだしな

フンディン: 叔父上
フンディン: …

ミョルニル: ノーラについては残念だったが、まだ蘇生の望みはある。鉱夫の二人もな

フンディン: はい…

エギル: してあれはなんだったのです

ミョルニル: それについては何もわからん。引き続き調べなければならんな

フンディン: まるであのオーブから発せられる波動が
フンディン: アンデッドを何度もよみがえらせているように思えました

ミョルニル: お前達の報告によれば破壊されても蘇ってきたそうだな
ミョルニル: いくらアンデットといえど、めったにあることではない

エル: オーブ叩くたびに波動が来て
エル: 足腰の丈夫な俺だから良かったけど

ミョルニル: ともあれ、ノーラの事はエギルの責任ではない。あの事態は予測範囲外だったからな

フンディン: …
フンディン: ともかくわたしたちは一度帰ります、叔父上

ミョルニル: フンディンたちには、報奨金が出ているからもって行くがいい

フンディン: …


*と、フンディンが迷っていると

エギル: おぬしらがフェルバールを救ったのだろう
エギル: 堂々と受け取るがいい

フンディン: エギルどの…


*フンディンはしぶしぶ受け取った。

ミョルニル: フンディン、例の件についての返事待っているぞ

フンディン: …!

エギル: ふん・・・

フンディン: ではわたしたちは帰ります、エギルどの

エギル: うむ・・・

フンディン: あまり根をお詰めにならず…

エギル: 最初に会ったときと目が違うなフンディン

フンディン: そ、そうですか?

エギル: ふふふ・・・男になったということかな

フンディン: ??
フンディン: *頭をかく

エギル: 思うとおりにしたらいい

フンディン: はい

エギル: 例の件もな

フンディン: ではまた3日後に
フンディン: ……

エル: また明日
エル: ・・・

エギル: (迷いの消えた若者の目というのは悪くないな・・・ぶつぶつ


*というわけで家に戻るフンディンたち。結局、フンディンは2日間黙って留守にしていた事になる(笑) 今更なのに、窓から入るフンディン。

フンディン: おっと

*ベッドに寝かせてある身代わりを片付ける。そして装備をしまうと1階に下りる。2階の物音に気がついていたのか、ジェミリが階段の下で待っていた。

フンディン: 母上

ジェミリ : フンディン、なにやら大変だったようね

フンディン: ええ、アンデッドが…
フンディン: あっ
フンディン: *ごほん*
フンディン: アンデッドが出てくる夢にうなされました…

ジェミリ: フェルバールの危機に立ち向かったと、聞いています

フンディン: うう…
フンディン: 母上は、どなたからその話を…?

ジェミリ: そのことかどうかは分からないけど、お父様がお話があるそうだから

フンディン: !

ジェミリ: フンディン、自分のやったことに
ジェミリ: 胸を張りなさい

フンディン: 母上…

ジェミリ: たとえそれが間違いでも、自分で決めたことなら
ジェミリ: そうするべきです

フンディン: はい…


*フンディンは、母に背中を見守られながら父の部屋をノックした。

ムンディン : 入りなさい

フンディン: フンディン、入ります
フンディン: …


*父、ムンディンは相変わらず表情が読めない。

ムンディン: フンディン
ムンディン: わたしの言いつけを破り、工房に行ったそうだな

フンディン: はい

ムンディン: そのまま一言もなく、洞窟に出向いたと聞いている

フンディン: …
フンディン: はい、父上

ムンディン: 何か言う事はないのか?

フンディン: ……


*しばしの沈黙。父はフンディンが話すまで何年でも待ちそうだ。フンディンは意を決して口を開く。

フンディン: 父上
フンディン: わたしはフェルバールの偉大なる戦士ムンディン・アイアンビアードの息子として
フンディン: 父上を尊敬しております
フンディン: けれど…

フンディン: しかし父上、わたしには、それと同じくらいに
フンディン: 大切なものが見つかってしまったのです
フンディン: 友達… それに鍛冶の道…
フンディン: どれもわたしにとって大切なものです

ムンディン: わしの言いつけよりもそれを選んだという事か…?

フンディン: はい…
フンディン: …言い訳することはなにもありません


*ふっ、とムンディンは息を吐いた。

ムンディン: フンディン、わしは
ムンディン: お前が旅に出たのはわしの言いつけに従ったからだと思っていたし
ムンディン: お前はいつもわしの言う事には従っていた

フンディン: …

ムンディン: だが、お前ももう子供ではない
ムンディン: なのにいつまでもそれではいかんと思ったのだ
ムンディン: だから、お前を試した

フンディン: …!

ムンディン: ガーリン殿とは話をつけてあった
ムンディン: お前を呼ぶように頼み、その日わしはお前に出掛けることを禁止した

フンディン: !!

ムンディン: お前がわしに従うのであれば
ムンディン: 今後もフェルバールに残り、わしの指導のもと戦士としての訓練をつませるつもりだった
ムンディン: 自分の見つけた道を進むのであれば、再び旅立ちを許可しようと思っていた

フンディン: ち、父上…

ムンディン: お前を旅に出したのは
ムンディン: ムンディンの息子として戦いの腕を磨かせるためでもないし
ムンディン: 偉大な探求の達成者という名誉を与えるためでもない
ムンディン: 大フンディンの孫として当然そうすべきというわけでもない
ムンディン: ただ、もしお前が鍛冶の道に生きるのであれば
ムンディン: 大フンディンの残したものがきっと役に立つと思っただけだ

フンディン: ……

ムンディン: わしには、鍛冶の道は進めなかったから、お前に一族の宝を
ムンディン: ついで欲しいというのも理由ではあるし
ムンディン: わしの失った記憶を探してほしいとも思ったが
ムンディン: 一番の理由はそれなのだ

フンディン: ち、父上…


*フンディンの目から涙がぽろぽろと零れ落ちる。

フンディン: 違うのです、父上…
フンディン: わたし一人だったら、きっと…
フンディン: 父上のお言いつけに背くこともなく
フンディン: ずっと家にいたでしょう
フンディン: あの旅立ちの日に
フンディン: なぜ父上が信頼できる者を連れて行けと仰られたのか…
フンディン: 今ではわかります


*父は緊張を解いたように思えた。フンディンにとっては、父が自分の前で緊張を解くのは初めてだったかもしれない。

ムンディン: ならば、よい

フンディン: は、はい

ムンディン: もう自由にしていい。好きに旅に出るがよい

フンディン: はっ…

ムンディン: 今後は、自分で決めろ
ムンディン: もうわしの言いつけを守る必要はないし
ムンディン: 伺いを立てなくてもいい

フンディン: 父上…

ムンディン: 鍛冶の道を進むのも、途中で止めるのも、すべて自分で決めるんだ

フンディン: フンディンにとって、父上はいつまでも偉大な尊敬すべき父上です
フンディン: そのことに変わりはありません!


*ムンディンは、恐らくうれしかったのだろうけど、長い年月がそれを表現する術を失わせてしまったようだ。だがフンディンには、きっと伝わったのだろう。次の父の一言は、フンディンにとってとても優しく感じられたに違いない。

ムンディン: …
ムンディン: …さあ、もう行きなさい

フンディン: はい
フンディン: では失礼します


*フンディンは一礼して、退出しようとしたのだが、思い返して立ち止まった。

フンディン: …
フンディン: 父上

ムンディン: なんだね

フンディン: ひとつ…
フンディン: 相談に乗っていただきたいことがあるのですが

ムンディン: どうした?

フンディン: 父上は… その…
フンディン: これが己の分を過ぎた事であるというのは重々承知の上で
フンディン: 父上にお尋ねします
フンディン: 父上は… 叔父上のことをどう思われますか

ムンディン: なぜそんな事を聞くのかわからないが
ムンディン: ミョルニルは、あれは
ムンディン: 悪いやつではない

フンディン: ……

ムンディン: いつもわしの影になってくれて支えてくれた
ムンディン: その事が、あいつから
ムンディン: 多くのものを奪ったかもしれぬと思うことはある
ムンディン: だからそれを取り戻したいのかもしれん

フンディン: 多くのもの…

ムンディン: あれには子供は出来ないから、スキールニルを養子にしたのだと思っていたが
ムンディン: おそらくスキールニルを、自分と似ていると思ってふびんに
ムンディン: 思ったからかもしれん
ムンディン: わしがお前を思うように
ムンディン: ミョルニルもスキールニルを思っていると信じている

フンディン: ……
フンディン: わかりました
フンディン: ありがとうございました、父上

ムンディン: うむ

フンディン: では今日はもう休みます
フンディン: おやすみなさい

ムンディン: おやすみ


*フンディンは父の部屋を出た。部屋の外には母が変わらず待っていた。

フンディン: おやすみなさい、母上

ジェミリ: おやすみフンディン


●本当の旅立ち

*3日後。アドバールの神官長(実はフンディンたちがアドバールに滞在していた時に会っているおじいさん)による蘇生の儀式が行われた。フンディンたちは邪魔をしないように外で待たされていたので、結果だけを知らされる事になった。(かつ、入れ違いで神官長にも会わなかった)

フンディン: ノーラさん!

*詰め所の1室に呼ばれて入ると、ノーラがベッドに横たわっていた。フンディンに呼ばれて身体を起こしたその顔は、蘇生が成功したことを告げていた。(ちなみにこの蘇生はD20で15以上なら成功というわりと高めの難易度を設定してダイスを振らせたのだが、見事にノーラのプレイヤーは成功したのだ)

エギル: よく戻ったな

ノーラ: えっ? ここは?

エル: あの世さ

ノーラ: 私…


*まあエルの冗談はさておき、エギルが事情を説明した。

ノーラ: そう…なんですか?

エギル: うむ

フンディン: まだ安静になさってください

エギル: だが気に病むことはない

ノーラ: は、はい…

エギル: すべてはわしの責任だ
エギル: 今はゆっくりと休め

ノーラ: いえ、そんな…

エギル: それが命令違反の罰だ

ノーラ: はい…

エギル: わしに断らずに死んだ罰だぞ

ノーラ: はい…

エギル: この二人も心配で駆けつけてくれたようだ

ノーラ: あの…有り難うございます
ノーラ: 心配をおかけしてすみませんでした

エギル: 改めて礼を言おう
エギル: 何から何まですまなんだ

フンディン: とんでもありません

エル: 一緒に酒飲んだ人は家族みたいなもんさ

フンディン: ではどうぞお大事になさってください

ノーラ: はい…

エギル: おぬしらはもう発つのだったかな

エル: そう、もう行かなくちゃいけないんだ

エギル: そうか

エル: ま、家はここだからね、また戻るけどさ

ノーラ: 折角お知り合いになれたのに残念です

エル: だいじょぶだいじょぶ、またすぐ会えるよ

ノーラ: はい…

エギル: 故郷はこのノーラが守ってくれるだろう
エギル: だから必ず帰ってくるのだぞ

エル: うん

エギル: どこへいって何をするのかは知らぬが
エギル: 達者でな

フンディン: はい
フンディン: エギルどのもお元気で

エギル: うむ

ノーラ: あの…私が言うのも何ですが…どうかお元気で

エル: はは

エギル: おそらくもう会うことはあるまいが
エギル: 二人のことは忘れん

エル: いや、何言ってるんだ
エル: また会えるさ

エギル: ふふふ
エギル: ところがそうもいかんのだ

フンディン: ?

エギル: わしは引退するのでな

エル: ほえ?

ノーラ: えっ!?

フンディン: !

ノーラ: な、何を仰るのです? 隊長

エギル: かんじんなときに道具を間違えるようではいかんよ・・・昔はあんなことはなかったのだが


*洞窟のシーンで、投げる道具を間違えて使っていたのだ(笑)

エギル: カイルも明日戻ってくる
エギル: お前も充分訓練をつんだ

ノーラ: そんな…ことは…

エギル: もう一人前といってよかろう
エギル: ふふふ
エギル: 疲れる仕事はな
エギル: 若者がやるものだ
エギル: そうだろう?

ノーラ: そんなぁ
ノーラ: 私隊長がいなくちゃ
ノーラ: *くすん*

エギル: 泣くな
エギル: わしは元の狩人に戻る

ノーラ: はい…*えぐえぐ*

フンディン: …
フンディン: (いきましょう、エルドリックさん)

エル: ああ


*フンディンとエルはこっそりと退室した。

エギル: 何十年も軍人として働いてきた
エギル: そろそろ骨を休めるときだ

ノーラ: はい…

エギル: 幸い優れた弟子が育った
エギル: もう思い残すことはない

ノーラ: 隊長!

エギル: ・・・さらばだノーラ


*ノーラはベッドから下りるとエギルに抱きついた。エギルもしっかりと抱き返す。

エギル: あの二人の帰る場所だ
エギル: しっかり守るのだぞ

ノーラ: はい…はい!

エギル: では今度こそ本当にお別れだ


*こうしてエギルは詰め所を後にした。もし再び会うことがあれば、それは隊長としてではなく狩人としての彼であろう。

ノーラ: 隊長〜
ノーラ: (行ってしまわれた…)


*一方、フンディンとエルは…

フンディン: エルドリックさん
フンディン: 出発の準備はもう大丈夫ですか?

エル: いや
エル: 少々買い物が残ってる
エル: 食料と薬を買おうかと思って

フンディン: ではトンネル入り口で
フンディン: 落ち合いましょう

エル: ああ

フンディン: 私は叔父上に
フンディン: ご挨拶をしてから行きます


*フンディンは再び詰め所に戻り、ミョルニルの部屋を訪ねた。扉は開いている。

フンディン: 失礼します

*ミョルニルは机に向かって何か仕事をしているようだ。背を向けたまま、フンディンに問う。

ミョルニル: …
ミョルニル: 答えを聞こうか。フンディン

フンディン: …
フンディン: 叔父上は
フンディン: スキーニーのことを… 信じておられるのですか

ミョルニル: 当たり前だ。お前より信じている

フンディン: その言葉… 偽りはありませんね

ミョルニル: …お前がどう思おうが構わん。俺は答えが聞きたいだけだ

フンディン: …わかりました
フンディン: この斧… 機を見て必ず
フンディン: スキーニーの手に渡しましょう

ミョルニル: そうか
ミョルニル: ではお前に頼むとしよう

フンディン: …

ミョルニル: もしスキールニルがそれに頼るようなら
ミョルニル: 必ず、俺に知らせるんだ。いいな

フンディン: …

ミョルニル: わかったのか?

フンディン: 心得ました
フンディン: ではもう発ちます

ミョルニル: うむ

フンディン: 失礼致します


*こうしてフンディンは再びフェルバールを発った。この2度目の旅立ちがフンディンにとって真の旅立ちとなるのである。分かれた二つの道が再び一つになる時、それが彼らをバーミル・スラルレオに導くのだが…それはまた次章にて。


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