ドワーフクエスト
第五章 別離
「ネヴァーウィンターの英雄」


●ミラバール

フンディン: いろいろありましたが
フンディン: ミラバールまであと一息です
フンディン: はりきって進みましょう!

エル: うん

スキールニル : 豚バラ揚げ煮がくいてえな

フンディン: 珍しいね
フンディン: スキーニーが食べ物の話をするなんて

アル: *じゅる*

フンディン: てっきりおなかにはいれば何でもいいと思ってるんだと思ってたよ

スキールニル : ウマイ豚食い損ねたんでね
スキールニル : なあアル

アル: アレは惜しかったなぁ


*前話参照。

フンディン: おお!

*などと話しているうちに、目の前にミラバールの立派な門が見えてきた。

フンディン: ごきげんよう

ミラバール兵: ようこそ、ミラバールへ

フンディン: 私はフェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディン
フンディン: これは私の連れ
フンディン: スキーニーとウッズタイガーの双子です

ミラバール兵: 通行は自由になっています。どうぞ中へ。

フンディン: ありがとうございます

*現在ミラバールでは定期市を開催中であるため比較的通行が多い。また、一行はまだ知らないがここから入れる街はミラバールそのものではない。

エル: ずいぶん簡単になっちゃったな
エル: 口上が

*確かに。だがエルの突っ込みはスルーされ、残りの面々は街の中へと入ってしまった。

スキールニル : ここがミラバールか

アル: ミラバール
アル: 大きいな

フンディン: 大きいですねえ

*門をくぐると、立派な地下都市が姿を現す。正面の広場を取り囲むように商店の看板が並び、広場の中央には市場もある。

エル: まずは寝床だ

フンディン: ええ
フンディン: とりあえず宿をとりましょう

エル: ああ


*とか言っているうちに、スキールニルは人ごみの中に消えた。

フンディン: スキーニーってばどこへ行ってしまったんだろう
フンディン: 仕方がないなあ


*とりあえず宿を探す。双子がそれらしい場所を発見したのだが…

エル: お

アル: ここかな?

エル: 名前からすると宿に見えるな

フンディン: すみません
フンディン: ちょっとお聞きしたいのですが

ドワーフ: なんですか

フンディン: この町で旅の者向けの宿はどのあたりにありますでしょうか?

ドワーフ: …

フンディン: ?

ドワーフ: そこがそうですが…


*いま双子が宿屋と目星をつけた扉の前で、フンディンは通行人を捕まえて宿の場所を聞いた…

フンディン: おお、そうでしたか
フンディン: それはどうも失礼いたしました
フンディン: ありがとうございます
フンディン: よい一日を


*怪訝な顔で立ち去る通行人をよそに、一行は宿に入る。宿にはスキールニルが先に来ており、なにやら噂話を聞いているようだ。

ドワーフ: ミラバールは、ミラバールのドワーフ以外は入れないからな。ここは取引や旅の途中立ち寄ったドワーフのための街さ。
ドワーフ: だからといって、ミラバールは他のドワーフに冷たいってわけじゃないんだ。ここには必要なものはあるし、親切にしてくれるよ。
ドワーフ: あんたは定期市目当てで来たのかい。でもまあ、あそこはドワーフ以外の種族と取引するための場所だからあまり用事はないと思うぜ。
ドワーフ: 確かに珍しいものなんかはあるけど、ここでも手に入るし、それにちょっと高いから買い物は考えたほうがいいぜ。


*ついでにスキールニルはミラバールに来た本来の目的、アイアンハンマーという人物について聞いてみるが…

ドワーフ: うーん…知らないなあ。行って探してみるのが早いんじゃないか?定期市はそんなに広い場所じゃないぜ。

*という事で、詳しくは知らないそうだ。他に何か噂話でもないかと聞いてみると。

ドワーフ: うーん…そうだなあ…強盗団がどうとか…定期市に来ていた人間が言ってたのを聞いたよ。詳しくは知らないけどな。

*という話を聞くことができた。スキールニルがそんな話をしている間に、後からやってきた3人は宿を取る手配を終えていて、一行は大部屋に泊まる事になった。2階の大部屋に移動する一行。

スキールニル : 面白い噂聞いたぞ
スキールニル : 強盗団だってさ

アル: 強盗団?
アル: 物騒だな

スキールニル : 人間が噂してたらしい

エル: ふうん

スキールニル : アイアンハンマーについては知らないらしい
スキールニル : 定期市のぞいてみろっていわれた

アル: まぁどうせその予定だったしな


*大部屋についてみると、雑魚寝が出来る部屋になっており他に宿泊客もいるようだ。

フンディン: 荷物を置いてはいけないですね…

*とはいえ、とりあえず落ち着けるスペースを確保する。他には商人らしきドワーフがいて、スキールニルは早速声をかける。

ドワーフ: なんだい?見たところ同業者じゃなさそうだが…旅人かね。

*まずは世間話程度に定期市について聞いてみる。

ドワーフ: 定期市は、ここから3時間ほど通路を進んで地上に出たところでやってるよ。普段は誰も住んでいない小さな村だが、定期市の時期になると開かれる村なんだ。
ドワーフ: 道は外市街の入り口の門の近くから、上に上に行けばすぐわかる。


*続いてミラバールに来たもう一つの手がかり、ミスリル鉱石の取引とバーミル・スラルレオという人物についての話が聞けそうなところを聞いてみると…

ドワーフ: ここの取引は、定期市以外では交易ギルドを通すことになってる。ギルドに行ってみるのが一番だろう。

*という事であった。

スキールニル : 交易ギルドか
スキールニル : ギルドが牛耳ってるようだ

アル: ギルド、宿の近くにあったな

スキールニル : のぞいてみよう

フンディン: そうだね

アル: ありがとう


*商人に礼を言う。

エル: まだ夜までは時間あるしな

*というわけで一行は再び街に出る。

アル: どうする?
アル: ギルドか市かどっちかしか行けそうにないけど
アル: 今日はギルドで情報集めにしておくかい?

フンディン: そうですね…
フンディン: いまから市に行っても
フンディン: つく頃には終わってしまいそうですね
フンディン: 今日はギルドにお邪魔させていただくことにしましょう


●ミラバール交易ギルド
*一行は宿の近くにある交易ギルドを訊ねた。中では何人かの商人とギルド員が取引の話をしている。ひとまず受付らしき人物に話しかける。

アル: お邪魔します

フンディン: こんにちは

ギルド員: こんにちは。
ギルド員: ふむ、どうやら商人という風ではありませんが
ギルド員: 交易ギルドにどのような御用向きで?

フンディン: 私フェルバールより参りましたフンディン・アイアンビアードと申します
フンディン: 実は故あって
フンディン: ミスリルホールよりここミラバールへの
フンディン: ミスリル鉱石の取引の記録について
フンディン: 調べております

ギルド員: ふむ…それで

スキールニル : (うさんくさがられてるな)

ギルド員: ここに調べに来たと

フンディン: はい

ギルド員: しかし、取引の記録は大切なものですので、簡単には見せられませんね

フンディン: それは… そうでありますね
フンディン: 道理です

ギルド員: ギルドに登録されている商人でもないのでしょう?

フンディン: ええと、
フンディン: バーミル・スラルレオ…
フンディン: という方だと思います

ギルド員: その方が、どういう?

フンディン: その方が、 ミスリルホールとの間で
フンディン: 唯一個人でミスリル鉱石を取引されていたそうなのです
フンディン: もう三百年ほど前にさかのぼりますが
フンディン: 当時バーミル・スラルレオどのはここミラバールにお住まいであったという記録があります
フンディン: その記録をたよりにここまでやってきました

ギルド員: ミスリル鉱石を個人で取引されている方は確かに現在はいません
ギルド員: まあ…その方がこちらに登録されているかどうか
ギルド員: 調べることくらいなら…できるかもしれませんが…


*と、話の途中だがフンディンは交易ギルドの中を歩き回り商談を立ち聞きしているスキールニルが気になるようだ。

フンディン: スキーニー

スキールニル : ああん?

フンディン: すみません、アルドリックさんかエルドリックさん
フンディン: どちらか

エル: うん

フンディン: このスキーニーの子守りをお願いできませんでしょうか

アル: 子守って…

フンディン: 外のお店に連れて行ってやれば大人しくなると思いますので…

スキールニル : おとなしく座ってるだろう

アル: じゃ、行こうか

フンディン: あのねえ、スキーニー
フンディン: ここは交易所で
フンディン: 休憩所ではないんだよ
フンディン: こんなところに座り込んだらみなさんの迷惑じゃあないか

スキールニル : 誰も気にしてねえよ

フンディン: ほらほら
フンディン: アルドリックさんが飴玉買ってくれるってさ

アル: ・・・・・・

フンディン: いまは外に行っていてくれないかい?

アル: 行こう

スキールニル : 豚の指図は受けん・・・


*と、言いながらもアルに引っ張られて外に連れ出されていった…

フンディン: どうしちゃったんだろう…
フンディン: なんだかいつもにもまして子供みたいだ…
フンディン: エルドリックさんはなにか心当たりはありますか?

エル: うーん・・・
エル: まあ、ないこともなく

フンディン: ??

エル: あるともいえないし

フンディン: いったいなにがあったんです?

エル: まあ、気にしないで話を進めよう

フンディン: そうします


*再び、ギルド員に向き直るフンディン。

フンディン: 失礼致しました
フンディン: それで… バーミル・スラルレオどのの件なのですが

ギルド員: …ああ、まだいらしたのですね


*と、本から顔を上げる。

フンディン: 大変申し訳ない
フンディン: なにぶん礼儀のなっていない者でして…

ギルド員: いや、気にしてませんよ。それより
ギルド員: 私も忙しい身ですので
ギルド員: その方のことを調べる時間がとれるかどうか…


*と、言いつつ意味ありげにもったいぶるギルド員。明らかに"お礼"を要求している。

エル: ふうむ

フンディン: 困りました…

エル: 困ったね

フンディン: これでなんとかなりませんでしょうか?
フンディン: 大切な用件なのです


*フンディンは30gpを取り出してみせた。こんなちょっとした賄賂にしては法外な金額なので判定の必要もなくギルド員は、

エル: !!

ギルド員: そうですね…やってみましょう
ギルド員: どうやらお困りのようですしね


*という事です(笑)

フンディン: よろしくおねがいします

ギルド員: こちらで待たれますか?

フンディン: はい

エル: (やるな、フンディン)

フンディン: お忙しい方のようですから
フンディン: これは正当な代金といえます

エル: なるほどね・・・


*本人には買収したとか賄賂とか、そういう考えはないらしい。ギルド員は記録を調べ始め、フンディンたちはその場で待つことにした。

*一方その頃、外に出たアルとスキールニルは地上へと向かう通路の途中で景色の良い場所を見つけてなんとなく話している。

スキールニル : …ウォーターディープか
スキールニル : 前にあったあの商人が
スキールニル : そんな町のことを言っていたな

アル: なんか気になるよね

スキールニル : なんでも山の下にすごい迷宮があるらしいな
スキールニル : そこで名を上げるのもいいな

アル: 実際にあるらしいけど
アル: 偏屈な魔法使いが作った物らしいから

スキールニル : へえ

アル: 1人じゃ危険だろうね

スキールニル : 腕のいい面子をそろえるか

アル: それがいいと思うよ

スキールニル : アルはいきたくないのかい

アル: 帰ってこられる保証のある場所じゃないらしいからねぇ
アル: もっともっと色んな事を勉強しなきゃ

スキールニル : そうだな
スキールニル : 俺も鍛えないとな

アル: そうそう

スキールニル : あの猪を一刀両断できるくらいにならないとダメだ

アル: 猪かぁ
アル: アレには参ったよねぇ


*前話参照。

スキールニル : あとは・・・オークだな
スキールニル : 奴らが・・・弓を引く前に・・・
スキールニル : 俺が奴らを斬り捨ててれば
スキールニル : 今頃あいつらは生きていたな


*前々話で助けられなかった子供たちの事。

アル: 僕は呪文を勉強してみたいな
アル: やつらを眠らせられれば…
アル: はぁ…

スキールニル : アルならなんだってできるはずだ
スキールニル : アル自身が英雄になることだってできるはずだ

アル: それは…僕の性分じゃないなぁ
アル: 僕は英雄について語り継ぐ方が好きだ
アル: 勿論役に立つ同行者として腕も上げたい

スキールニル : ブルード・アイアンハンマーのように強くなりてえな
スキールニル : そうすればミョルニルにも勝てるはずだ・・・

アル: スキールニルには素質があるよ
アル: 実戦を積めばきっとミョルニルさんにも
アル: 勝てるさ
アル: 目標があるのはいいことだよね


*まるでスキールニルに目標があることをうれしそうに語るアル。二人がそんな話をしている間に交易ギルドのほうでは…

ギルド員: えーと

フンディン: はい!

ギルド員: 300年も前の記録となると
ギルド員: 探すのも大変ですよ

フンディン: そうですね…
フンディン: 本当にお手数をかけます

ギルド員: 調べてみたところ
ギルド員: バーミルという名前の方は登録されていませんね

フンディン: スラルレオの姓ではどうでした?

ギルド員: そちらも、ありません。珍しい名前だと思いますし
ギルド員: あればわかるはずです

フンディン: そ、そうですか…

ギルド員: 残念ですが、力にはなれないようですな

フンディン: ミスリル鉱石の…
フンディン: ミスリル鉱石の個人での取引の記録は

エル: スラルレオだものな・・・変な名だよな

フンディン: 見当たりませんでしたか?

ギルド員: 個人で取引されている方は、過去に数人おりますが
ギルド員: それらを明かすことはできません

フンディン: そうですか…


*手かがりが途絶え、フンディンはがっくりと肩を落とした。

フンディン: お忙しいところお手数をおかけしました

ギルド員: どちらにしても
ギルド員: 個人で定期的に取引、というのはありえませんよ

フンディン: ありえない、とは
フンディン: どういうことです?

ギルド員: そんな資金を持っていたら、さぞかし有名な商人になっているでしょうし
ギルド員: 基本的に、国と国の取引になります。

フンディン: ふーむ…

ギルド員: 過去に取引のあった個人も
ギルド員: 王族であったり、貴族であったりしますし
ギルド員: 例外的に、1.2回取引されただけです

エル: 王族ねぇ

フンディン: なるほど…
フンディン: そういうことですね
フンディン: わかりました
フンディン: どうもありがとうございました
フンディン: ではいきましょう、エルドリックさん

エル: ありがとう、おじさん


*二人は交易ギルドを後にした。外に出ると、アルとスキールニルの二人が待っていた。

アル: おっ
アル: 終わった?

フンディン: どうも手がかりがないようです

アル: 幾ら取られた?
アル: あの親父、露骨に手数料要求してたろ?

フンディン: いえ
フンディン: お忙しい中こちらの用事でお時間を取らせるのですから
フンディン: 当然の代金ですよ

アル: はいはい…精々破産しないように気をつけてね

フンディン: それよりスキーニーは
フンディン: 粗相はしなかったですか?

アル: おいおい
アル: スキールニルは育ちが違うんだ
アル: それはフンディンも分かってるだろ?

フンディン: ?
フンディン: どういうことですか?

アル: あぁ…もういいや

フンディン: ともかく、 ギルドには
フンディン: 不思議なことに手がかりは一切残っていなかったようなのです
フンディン: 「個人でミスリルを取引するなど例外的に王侯・貴族くらいしかやらない」と

アル: じゃああの砦のおっさんが言っていた
アル: 鍛冶職人が見付からないと手詰まりだな

フンディン: そうですね…
フンディン: ともかく明日は市のほうへ行ってみましょう

スキールニル : ギルドの親父が本当のこといってるとは限らないだろうけどな

アル: おいおい

フンディン: 嘘をいってどうするのさ

アル: あの人は嘘言いそうじゃなかったぞ

スキールニル : 知らないだけかもしれないぜ
スキールニル : 密輸の方法があるのかもしれない

フンディン: そんなことってあるのかなぁ?

アル: それはありえるけど

エル: あるいはミスリルホールの記録の方が違うのか

フンディン: とりあえず夕食にしましょう


*考えても答えは出ない。時刻はすでに夕暮れを過ぎており、一行はひとまず宿に戻って食事にすることにした。

●不吉な噂、不吉な夢

フンディン: なにがあるのかな?

*と、給仕を呼ぶ。話を聞くと、どうもミラバールは食事事情はあまりよろしくないらしくメニューは少ない。

エル: ううむ

フンディン: 仕方ありませんね

エル: 酒をのもう


*一行は食事を取り、部屋に戻る。

フンディン: まだ寝るまで時間がありますから
フンディン: よかったら今のうちに武器屋さんの炉を借りて
フンディン: 鎧を仕立てなおしてきますよ

アル: あぁ

エル: コレに飾りをつけて欲しいな


*エルの着ている鎧の事。

フンディン: どんなふうにすればいいでしょう?
フンディン: 動きやすいようにすればいいですか?
フンディン: それとも装飾を派手に?

エル: ああ、派手にして欲しい

フンディン: わかりました
フンディン: なんとかやってみます
フンディン: 左右のデザインは対象のほうがいいですか?

アル: 金色になったりしてな

フンディン: エルドリックさんは両手で斧を使われるのですよね

エル: うん

フンディン: では適当にあわせてみます

エル: ありがと


*早速フンディンは鎧を預かり、宿を出て行った。スキールニルは昼間話した商人と再び話している。すると商人は新しい噂話を仕入れていた。

ドワーフ: そうさね。商売をやってるといろいろ聞くけどあまり大きな事件とかはないなあ…。フェルバールに最近オークの襲来がありそうだってくらいかねえ。
ドワーフ: でもまあ、年中ある程度の規模らしい。フェルバールではもう撃退の準備は出来てるって聞いたよ。襲撃前に規模を掴んでるくらいだから、大事にはならんだろう。

スキールニル : なに?!

アル: そんな噂が!

スキールニル : まあ大丈夫だろう

アル: 大丈夫…なんだよな

エル: 何か面白い話?

アル: 面白くはないな


*エルにも聞いたことを説明してやる。

スキールニル : ミョルニルひとりでも50匹くらいはやれるだろうよ

アル: う〜ん

スキールニル : なんか気になっちまうな

エル: まあね

アル: 一応今住んでるところだしなぁ
アル: あの町並み好きだから

スキールニル : オークには恨みがある・・・
スキールニル : 俺も戦に出たいくらいだ

アル: 急いで帰れば間に合うんだろうか?

スキールニル : 間に合わないだろうね

アル: そうだよなぁ…

スキールニル : 俺たちが帰って間に合うような戦なら大事だよ

アル: ここの噂になるまでに何日も経っているだろうしね

スキールニル : 今頃もう終わってるかもしれない
スキールニル : フェルバールの戦士たちは強い
スキールニル : キット大丈夫だ

エル: うん

アル: 今はそれを祈ろう

スキールニル : 今はそれよりこの旅を終わらせないと


*そこへフンディンが帰ってくる。

フンディン: ただいま帰りました
フンディン: ?
フンディン: どうしたんですか?
フンディン: なにかあったのですか?

エル: いや
エル: えーと・・・

アル: なんでもないよ

フンディン: ??

アル: ただの噂話さ

フンディン: 噂?
フンディン: どんな噂です?

アル: 聞きたければそこの人に聞くといい


*フンディンはさっき話した事について聞いてみた。

フンディン: ……

*抱えていたエルの鎧を床に落とす。

アル: おいおい
アル: 今までにもあったことだろう?

フンディン: そんな…まさか…

アル: あんまり心配するな

フンディン: …………

エル: ・・・

フンディン: うう……
フンディン: 父上…

アル: 大丈夫さ、ミョルニルさんもいるんだし

フンディン: 胸騒ぎがする…
フンディン: (全能なる全ての父よ… どうか皆をお守りください…)
フンディン: (このフンディン一生のお願いです… どうか、どうかお聞き届け下さい…)


*フンディンは祈った。

エル: 大丈夫だ
エル: それに俺たちがいてもいなくても変わらないさ

アル: さて
アル: 寝よう


*一行はそれぞれに眠りについた…。そしてスキールニルは夢を見た。

*どこかの戦場で、スキールニルはオークと戦っている。周囲には敵と味方の死体が入り混じり、酷い有様だ。すぐ後ろから、仲間の呼ぶ声がする。振り向くとそこには…フンディンと双子の死体があった…。

スキールニル : !!

*そしてまたフンディンも夢を見た。

フンディン: ……ん……

*オークの軍勢とフェルバールの戦いだ。後ろの本陣では父が指揮を取っているようだ。

フンディン: ………うう…

*戦闘は続き、やがてオークの一団が本陣にも迫ってくる。父の傍らにはいつの間にか叔父のミョルニルがいる。ミョルニルは持っていた包みを紐解き、中にあったものを父に渡す。「これがあれば、兄貴は誰にも負けないよ」と。その渡したものとは…

フンディン: …父上………叔父上……

*それは"王殺し"と呼ばれた斧。父はそれと知らずに斧を受け取ると、迫ってくるオークにそれを振り下ろし…

フンディン: 父上っ!!!

*フンディンは叫んで目が覚める。

フンディン: はっ……
フンディン: はぁ…はぁ…はぁ…
フンディン: ゆ、夢…?
フンディン: 汗でびっしょりだ…
フンディン: 父上…

アル: ん?

エル: おはよう

アル: おいおい、フンディン…大丈夫か?

フンディン: お、おはよう、ございます


*近くではスキールニルが素振りをしており、双子は荷物を片付けている。もう慣れたいつもの風景。

アル: 顔色悪いぞ

フンディン: ひどく… いやな夢を見ました

エル: よく眠れなかったのか?

アル: そんなに心配なのなら帰るのも…

フンディン: ……

スキールニル : 素振りも終わったし飯も食った
スキールニル : 市場に行くぞ

フンディン: い、行きましょう
フンディン: 今日は市場で聞き込み、です

エル: うん

アル: 何時くらいから開くんだろう?

エル: 早いのかね

スキールニル : 朝から晩までやってるんじゃないのかね
スキールニル : なわけねえかな

アル: 今からだと8時くらいに着いちゃうぞ

エル: やってるんじゃないか?


*フラフラしているフンディンを引っ張り、一行は定期市へと出かけた。

●ミラバール定期市

*一行が地上に出て、少し進むと大きな門が見えてきた。

アル: いい天気だ

スキールニル : まだあいてないのか?

*門は閉まっており、その前には鎧を着込んでハルバードを担いだドワーフ兵が一人立っている。

ミラバール兵: 朝早いな

スキールニル : 市はまだ開かないの?

アル: おはようございます

ミラバール兵: 市が開くまでまだ1時間ほどある
ミラバール兵: 少し待ってもらうことになるな

スキールニル : じゃあ悪いけど待たせてもらうよ

アル: あちゃ〜

ミラバール兵: 待つのはかまわんよ

エル: それじゃ久しぶりに地上に出たし
エル: のんびりするか


*地上に出たのは前々話以来なので久しぶりだ。

アル: そうだ…兵隊さんは強盗の噂聞いてます?

スキールニル : そんな噂があるな

ミラバール兵: 強盗団の話か

スキールニル : そうそう

アル: えぇ、そうです

ミラバール兵: 聞いてはいるが

アル: どの辺に出るとか
アル: どの程度の人数か?とか

ミラバール兵: 市に来ている人間の商人が詳しく知っていたよ

アル: ほぉほぉ
アル: ありがとうございます

スキールニル : 市が開いたら聞いてみよう

ミラバール兵: 大きなキャラバンが来ているから、あとで行って見るといい

スキールニル : キャラバンか・・・

アル: そうします

スキールニル : キャラバンと一緒にのんびり旅するのもいいな

アル: フェルバール方面から来たキャラバンだったりするといいね


*フェルバールのオーク戦の情報が知りたいのだろう。やがて門の向こう側、定期市がざわつき始め、挨拶し合う商人の声などが聞こえ始めると門が開いた。

フンディン: ぽー・・

アル: 開いた!

エル: フンディン
エル: 開いたぞ

アル: では

フンディン: ?
フンディン: な、なにかいいました?
フンディン: エルドリックさん

エル: いや


*一行は定期市に繰り出した。本来は小さな村であるのだろう。そこにたくさんの人間の商人たちが来ていた。

アル: うまそうな牛…

スキールニル : お


*物珍しく定期市を見て回る一行。露店を覗いたり、慣れない人間の言葉を試したりしている。スキールニルはキャラバンの一員らしい人間の女性に話しかけた。

スキールニル: フェルバールの噂を知らないか?

女性: ごめんなさいね。良く知らないわ。

スキールニル: 強盗団の噂については?

女性: ここミラバール定期市と南のロングサドルをつなぐ街道の途中に、強盗団が出るらしいわね。私達の場合、ひとごとじゃあないんだけど…
女性: 被害にあった人の話によると…ちょっとおかしな話なんだけど、これといった特徴はないけどとにかく恐ろしい相手だそうよ。できれば出会いたくないわね。

スキールニル: それ以外に何かないかな

女性: ネヴァーウィンターの苦難は終わって、今は落ち着いているようね。
女性: そういえば、ヒルトップの村で何か騒ぎがあったという噂を聞いたわ。詳しくは知らないんだけど…

スキールニル : ヒルトップ・・・?
スキールニル : ヒルトップってあれか
スキールニル : 人間の集落だっけ?

アル: そうだね

スキールニル : 何かあったらしいけどなんだろうな

エル: 気になるね

アル: 僕もどんな所か詳しくは知らない


*ネヴァーウィンターとヒルトップの話は、ここが公式と同じ世界観を共有しているというアピール。食いついて来られたら困った事になるところだった(笑)

スキールニル : 交易路にでる強盗か…

*スキールニルは強盗が気になるらしい。双子も思い思いに市を見回っているようだがフンディンだけはまだボーっとしている。

フンディン: ぽー…

*スキールニルは一軒だけ、まだ閉まっている店を見つけた。扉を叩いても反応はない。市を一通り見回って、双子もスキールニルのところにやってきた。

スキールニル : まだしまってら

アル: 砦の親父が言ってた鍛冶屋はどこだろうね?

スキールニル : それらしいのはいなかった気がするなあ
スキールニル : 案外このしまってるのがそれかも

アル: う〜ん
アル: そりゃ困った


*と、近くをミラバール兵が通りかかる。スキールニルは声をかけた。

スキールニル : もしもし

ミラバール兵 : なんだい

スキールニル : あそこがしまってるけど
スキールニル : ありゃなんでだい

ミラバール兵: さあ…あそこは鍛冶場があって
ミラバール兵: 今年はアイアンハンマーんとこの小僧が借りてるが

スキールニル : おお

ミラバール兵: 寝坊でもしてるんじゃないか

アル: ビンゴ!

スキールニル : 実はアイアンハンマーを探してたんだ
スキールニル : 見つかってよかった


*兵士は仕事に戻った。

スキールニル : 寝坊・・・か

アル: あれ?
アル: フンディンがいない
アル: まぁいいか

スキールニル : まあそのうち見つかるだろう
スキールニル : いつものことだ

アル: でもちょっと心配だな
アル: あいつフェルバールのこと


*と、アルが何か言おうとしたところにフンディンがやってた。

アル: っと来た来た

スキールニル : ノックしてみるか

フンディン: スキーニー
フンディン: ほらこれ
フンディン: 作ってみたよ


*フンディンは市の鍜治場を借りて一振りの剣を作っていた。が、スキールニルはフンディンを無視して店のドアを叩いたり、中を覗いたりしている。

スキールニル : いないのかな

フンディン: …

アル: へぇ立派な剣だな


*と、代わりにアルが剣に興味を示したようだ。

アル: 見せてくれよ
アル: うわたたた…重い
アル: 全然持てないぞ

エル: 兄者には無理だろ

アル: ちぇ


*スキールニルのために作った剣なのだろう。

フンディン: この家はなんなんです?
フンディン: もしかして
フンディン: 件のアイアンハンマーさんの?


*と、ドアの鍵が外された音がした。

スキールニル : お

*スキールニルは早速、店に入る。慌てて他の3人も後に続いた。

●アイアンハンマー鍛治店

スキールニル : やあ

アル: おはようございます

フンディン: こんにちは

ギブノー アイアンハンマー: 早いな

フンディン: はじめまして

スキールニル : もう市は開いてるよ

ギブノー アイアンハンマー: 開けたらすぐに客が来るなんて
ギブノー アイアンハンマー: 初めてだよ

アル: ははは
アル: 客かどうか分かりませんけどね

フンディン: 実は、お聞きしたいことがあって

スキールニル : そんなにはやってないわけ?

ギブノー アイアンハンマー: アイアンハンマーの店にようこそ
ギブノー アイアンハンマー: おれはここの店主ギブノー アイアンハンマーだ


*と名乗ったドワーフは、まだフンディン達と同じくらいの年頃だ。

フンディン: 私はフェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディン
フンディン: こちらは私の連れスキーニーと
フンディン: ウッズタイガー家の双子です

ギブノー アイアンハンマー: …客じゃないの?

フンディン: お邪魔は致しませんので
フンディン: どうかお話をお聞かせ願えないでしょうか?

スキールニル : (なんか若いな)
スキールニル : (俺とかわらん)

ギブノー アイアンハンマー: うーん…まあいいよ。どうせ暇だし

スキールニル : 市はにぎわってるのに
スキールニル : 暇なのはなんで?

ギブノー アイアンハンマー: …

アル: (笑っていいのか判断に困るなぁ…)

ギブノー アイアンハンマー: お、おれもがんばってるんだけど
ギブノー アイアンハンマー: なかなか…

スキールニル : あーまだ腕が
スキールニル : 未熟なのか

ギブノー アイアンハンマー: 昨日も売れたフルプレートが
ギブノー アイアンハンマー: 返品されちゃったし…

アル: あらら

フンディン: それはいったいどうしてです??

スキールニル : まあ最初はそうさ

アル: そりゃ残念だね

ギブノー アイアンハンマー: アイアンハンマーの名も地に落ちたなとか、ひどいったらねえよ

スキールニル : あーーーー

アル: それは非道いね

フンディン: ???

スキールニル : そんなひどいモノ造ったのかい

ギブノー アイアンハンマー: 兄貴は変なエルフ女連れてきちゃうしさあ…

フンディン: ???


*どうやら色々とストレスが溜まっていたらしく、ギブノーは一気に愚痴をこぼす。フンディンには突然のことでなにやらさっぱりである。

スキールニル : 兄貴って・・・まさか

アル: 兄貴がいるとは聞いてないなぁ

ギブノー アイアンハンマー: おれだって
ギブノー アイアンハンマー: オヤジみたいにすごいもの作りたいよ
ギブノー アイアンハンマー: だけど、オヤジはおれに何も教えてくれないで
ギブノー アイアンハンマー: 行方不明だし…

スキールニル : ブルード・アイアンハンマーの親戚じゃないだろうね

ギブノー アイアンハンマー: ん

アル: (小声で)おれもそう思った

ギブノー アイアンハンマー: ブルードは俺の兄貴だよ

スキールニル : あの
スキールニル : ブルード・・・?

アル: !

フンディン: ブルードって誰だい、スキーニー?
フンディン: 知り合い?

アル: びっくりだ

フンディン: ??

スキールニル : ブルード・アイアンハンマー
スキールニル : ネヴァーウィンターの英雄?


*ちなみにブルードは公式キャンペーンをソロプレイした際にDMが使用したキャラで、それを元に書いたものがある。メンバーはみんなそれを読んでいて、いろいろ感想ももらえたので今回登場させる事にしたのだ。

ギブノー アイアンハンマー: 英雄とか呼ばれてるそうだけど、兄貴もオヤジと一緒さ!
ギブノー アイアンハンマー: 家を守るとか、そういうの考えてないんだ

スキールニル : 大変だなあ
スキールニル : なんかブルードもいろいろいわれてたぜ

ギブノー アイアンハンマー: 知らないね
ギブノー アイアンハンマー: そんなことどうでもいいよ


*ギブノーはこの話題はあまりしたくないらしい。

フンディン: そうでした
フンディン: ギブノーどの

ギブノー アイアンハンマー: なんだい

フンディン: 実は先代のことについてお話を伺いたくやってきたのです

ギブノー アイアンハンマー: …あんたもオヤジの品物買いにきたクチ?


*フンディンは首を振って、説明する。

フンディン: 私たちは今
フンディン: わたしの祖父大フンディンの足跡を追う旅をしているのですが
フンディン: ここへ来る途中の砦にて
フンディン: アイアンハンマー家の先代どのが
フンディン: 我が祖父大フンディンの鍛冶を褒められていたということを伺いまして
フンディン: なにかつながりがあったのかも知れぬと思い
フンディン: こうしてお話を伺いにまいったのです

ギブノー アイアンハンマー: ふーん
ギブノー アイアンハンマー: 正直、おれもオヤジを見つけて一言いってやりたいところだ

フンディン: いらっしゃらないのですか?

スキールニル : 行方不明っていってたな?

ギブノー アイアンハンマー: ずっと前に行方不明さ
ギブノー アイアンハンマー: あの日…昔の仲間が尋ねてきて
ギブノー アイアンハンマー: オヤジは、すまねえ とか一言いって
ギブノー アイアンハンマー: 出かけていって…それきりさ

フンディン: !
フンディン: それは… 失礼なことをお聞きしました

アル: 昔の仲間?

ギブノー アイアンハンマー: 兄貴はオヤジを見つけてくるとか行って出て行ったけど
ギブノー アイアンハンマー: エルフの女を連れて戻ってくるし
ギブノー アイアンハンマー: オヤジのことは後回しとか言ってる

スキールニル : 戻ってきたの?

ギブノー アイアンハンマー: いるよ

スキールニル : え
スキールニル : いるの?!

アル: いるの!?

エル: ・・・

ギブノー アイアンハンマー: エルフ連れてミラバールには入れないから
ギブノー アイアンハンマー: ここに泊まってる

スキールニル : そうか

アル: 会いたい会いたい会いたい〜

スキールニル : あいてえな

ギブノー アイアンハンマー: 今奥の部屋でなんか話してるから
ギブノー アイアンハンマー: 今はやめといたほうがいいよ
ギブノー アイアンハンマー: 兄貴はすぐ怒るから、こわいぜ

フンディン: ??


*スキールニルが珍しく興味を示して、フンディンの話はとりあえず終わってしまった。

スキールニル : そうか・・・
スキールニル : わかった

フンディン: そんなにすごい人なのかい、スキーニー??

スキールニル : ああ


*返事はしたものの、かなり無愛想。自分の憧れるブルードの事を何も知らないフンディンに腹が立ったのか、それとも…

フンディン: ……
フンディン: (なんだかスキーニーが変だ…)

スキールニル : そうだギブノー
スキールニル : 甲冑みせてくれ
スキールニル : 君の作ったやつをな

ギブノー アイアンハンマー: うーん、いいよ
ギブノー アイアンハンマー: まだ直してない…っていうか

スキールニル : たぶんそんなにひどい出来じゃないという気がするんだが

ギブノー アイアンハンマー: どこが悪いのかわからないんだけど

フンディン: もしよろしければ
フンディン: わたしにも見せて頂いてもよろしいですか?

ギブノー アイアンハンマー: これ

スキールニル : なんだ充分使えるじゃないか


*というのはスキールニルの感想だが、フンディンはかなり細かく調べることが出来た。(知識判定に成功している)

フンディン: うーん…
フンディン: ギブノーどの
フンディン: この鎧
フンディン: 確かに間接部分の稼動範囲はすばらしいと思います

ギブノー アイアンハンマー: だろ
ギブノー アイアンハンマー: 画期的だよ

フンディン: けれどこの方法だと
フンディン: 実戦で着て激しい動きをすると
フンディン: 外れてしまうかも知れません

ギブノー アイアンハンマー: …

フンディン: 強度が稼動範囲の犠牲になってしまっているんです

スキールニル : いやまあホラ
スキールニル : 動きやすいのはいいことだよ

フンディン: あっ、
フンディン: これはとんだでしゃばったことを…
フンディン: も、申し訳ありません…!

アル: アイデアは良かったけど実用性に難があったと


*ギブノーはじっと、自分の作品を見つめたあと一言もらす。

ギブノー アイアンハンマー: …あんたも鍛冶師なの?

フンディン: いえ、とんでもない
フンディン: まだほんの見習です…

スキールニル : (あちゃー)

ギブノー アイアンハンマー: 君のつくったもん、見せてくれよ
ギブノー アイアンハンマー: おれだけじゃ、不公平だろ

フンディン: わたしの作ったもの…ですか…
フンディン: (困ったなぁ…)
フンディン: (さっき市で材料を見てついうれしくなって一気に作ってしまったこの剣しかない…)
フンディン: お見せできるようなものではないのですが…


*フンディンは先程スキールニルのために作った剣を見せる。

ギブノー アイアンハンマー: ふーん…

フンディン: スキーニーは
フンディン: 敵陣に切り込んで剣を振るう時に
フンディン: 速さに重きを置いているように見えるんです
フンディン: だから刃の部分を加工して
フンディン: 振りの速さを重視して作ってみました…

アル: そういうバランスだったんだね


*アルは剣の持ち方を知らないので、重くて振り回せないと感じたのだ。

ギブノー アイアンハンマー: 見習いって…これなら十分売り物になるんじゃないの
ギブノー アイアンハンマー: ミラバールじゃあ…駄目かもしれないけど

フンディン: お、恐れ多いことです…

ギブノー アイアンハンマー: 普通の街なら、流通してる品物と変わらないよ
ギブノー アイアンハンマー: ちゃんとした師匠にならったんだな…

フンディン: お師匠様にはまだまだ修行が足りないとよく言われています・・・

スキールニル : 何いってんだ
スキールニル : 教えてもらってこのくらいできなきゃうそだ
スキールニル : あんたの画期的なアイディアはすげえぜ
スキールニル : 将来鎧の歴史を変えるかもしれないぞ

ギブノー アイアンハンマー: おれも…オヤジがいたら…

フンディン: …

ギブノー アイアンハンマー: 実戦てあまりしたことがないんだ
ギブノー アイアンハンマー: だからわからないんだよ

フンディン: ギブノーどののお父上が
フンディン: 行方不明になられたのは
フンディン: いつごろのことなのですか?

ギブノー アイアンハンマー: おれがもっと小さい頃…

スキールニル : 髭がどのくらいのとき?

ギブノー アイアンハンマー: 20年くらい前かなあ

スキールニル : あーそんなに前か

アル: しかも行き先分からないしね

フンディン: わたしの祖父上、
フンディン: 大フンディンも
フンディン: 鍛冶師でした
フンディン: けれど父上がまだ幼い頃に何かの出来事で亡くなられて
フンディン: わたしも今のお師匠様に出会うことがなければ
フンディン: 鍛冶の道をこうして歩むこともきっとなかったと思います

ギブノー アイアンハンマー: そうなんだ

フンディン: この旅は祖父上の足取りを探す旅なのです

ギブノー アイアンハンマー: そうかあ…

フンディン: 祖父上… 大フンディンは
フンディン: ミスリル製の武器しか作らなかったそうです
フンディン: それで、ミスリルホールの記録から
フンディン: このミラバールへ個人で「バーミル・スラルレオ」というかたが
フンディン: ミスリルの取引をされていたということがわかりました
フンディン: きっとこの方が大フンディンにミスリル鉱石の供給をしていたのではないかと思いまして
フンディン: こうしてミラバールまでやってきたのです

ギブノー アイアンハンマー: たぶん、だけど
ギブノー アイアンハンマー: オヤジはその大フンディンについては何か知っていたと思うけど、友達ではなかったと思うよ

フンディン: そ、そうですか…

ギブノー アイアンハンマー: お袋に聞いてみればなにか知っているかもしれない

フンディン: おお、
フンディン: 母上殿はこちらに?

ギブノー アイアンハンマー: お袋なら
ギブノー アイアンハンマー: 家にいるけど

スキールニル : ああミラバールか

ギブノー アイアンハンマー: ミラバールはミラバールのものしか入れないぜ

フンディン: そ、そうでしたか……

ギブノー アイアンハンマー: でもそういう事なら
ギブノー アイアンハンマー: 代わりに聞いてきてやろうか


フンディン: おお!
フンディン: 申し訳ないですが、お願いできますでしょうか?

ギブノー アイアンハンマー: ただ、店は開けておかなきゃならないから
ギブノー アイアンハンマー: 今晩帰って、明日になっちゃうけど

フンディン: わかりました
フンディン: …… (また一日…か)

ギブノー アイアンハンマー: ところで、フンディンさあ

フンディン: は、はい
フンディン: なんでしょうか?

ギブノー アイアンハンマー: ここの鍛冶場、一つ空いてるから
ギブノー アイアンハンマー: 滞在してる間は使ってもいいよ

フンディン: おお、ほ、本当ですか?!

ギブノー アイアンハンマー: うん

フンディン: ありがとうございます!

ギブノー アイアンハンマー: いろいろと話もしたいな

アル: 一緒にさっきの鎧直してみれば?
アル: フンディンのセンスとギブノーのアイデアでさ

スキールニル : ギブノー式改良重甲冑の誕生は近い

フンディン: お力になれるかわかりませんが…


*と、そこで奥の部屋から誰かが出てきた…

●ネヴァーウィンターの英雄

フンディン: ?

ギブノー アイアンハンマー: あれ、お帰り?

役人: 残念です…


*立派なローブを着たドワーフは一言、そうギブノーに告げると店を後にした。

アル: ?

フンディン: ??

スキールニル : んん??

エル: ???

アル: 誰?

ギブノー アイアンハンマー: なんか兄貴に用があって
ギブノー アイアンハンマー: 役人が来てたんだよ

フンディン: お役人の方でしたか


*役人が来ていた理由は、実はブルードが連れてきたアリベスの処遇についてである。ミラバールとしてはブルードに仕官して欲しいのだが、アリベスの存在は問題であった。そのためアリベスをネヴァーウィンターへと送還し、ブルードにはミラバールに残ってくれるように頼みに来ていたのだ。この事がブルードを怒らせ、よってこの後、一行に対する反応が良くなかったのだがそれは一行の知る所ではない。

スキールニル : アレは・・・
スキールニル : 間違いない・・・


*役人が出て来る時に開いたドアの隙間から、スキールニルは見ていた。フラフラと扉に近づく。

フンディン: あっ、スキーニー
フンディン: 勝手に人の家をのぞいたら


*だが、制止したフンディンをスキールニルは睨みつけた。

アル: ・・・・・・

スキールニル : 取り込み中かな
スキールニル : 竜を殺した話とか聞いてみてえな

ギブノー アイアンハンマー: 兄貴がかわりに店番してくれればなあ…
ギブノー アイアンハンマー: 英雄だかなんだか知らないけど店番も出来ないんだから

スキールニル : そうなのか
スキールニル : 意外だな
スキールニル : 何でもできそうなイメージだった

ギブノー アイアンハンマー: あんな怖い顔してちゃだめさ

アル: まぁ短気な人には向かないよね

スキールニル : じゃあ俺も駄目だなキット

アル: そう思う

スキールニル : じっとしてるの苦手だしな

エル: スキールニルはそこまで短気じゃないさ

フンディン: で、ではギブノーどの、
フンディン: さっそくですが…
フンディン: こちらでよろしいですか?


*フンディンは使われていなさそうな鍜治場の扉を指差す。さっそく鍜治場を借りたいらしい。

ギブノー アイアンハンマー: うん

フンディン: ありがとうございます!

*早速中に入る。ギブノーもついていく。

フンディン: うわぁ…
フンディン: よく手入れされていますね

ギブノー アイアンハンマー: まあね
ギブノー アイアンハンマー: 好きに使ってくれよ

フンディン: ありがとうございます!


*と、二人が鍜治場にいる間に…

アル: あっ

*店のほうでは、奥の部屋からいかにも戦士といった雰囲気の、赤毛のドワーフが現れた。ブルードである。

ブルード アイアンハンマー: …

アル: こここ、こんにちは

*だが、返事もせずにブルードは外に出てしまった。

アル: 凄い威圧感だ

*入れ替わりにフンディンが鍜治場から出てくる。

フンディン: ?
フンディン: スキーニー??

スキールニル : いなくなっちまった

フンディン: なにやってるんだい?

アル: 今、ブルードさんが出てきたんだよ

フンディン: ??

スキールニル : 稽古つけてもらおうと思ったのに

フンディン: どこに出ていらしたのです?

アル: さぁ?

フンディン: ???

アル: 何も言わずに出て行った

フンディン: きっとお忙しいのですね

アル: おっエルフだ


*勝手に部屋を覗いたアルは、部屋の片隅にいるエルフの女性を見つけた。

スキールニル : えーと・・・
スキールニル : こんにちは

*しかしエルフの女性は目を伏せ、話しかけられるのを拒んでいるように見える。

スキールニル: もしかして、レディ・アリベス?

エルフの女性: …それは、知らないほうがあなたのためよ。私に関わってはいけない。

スキールニル: 何があったんだ?

エルフの女性: …ブルードと話して頂戴。わたしは…説明する気分じゃないの。

スキールニル : !!
スキールニル : やっぱりそうだ

アル: 本物?

スキールニル : 秘密にしとこうぜ

フンディン: ??
フンディン: それよりスキーニ…


*と、部屋の前で騒いでいる一行の後ろにいつの間にかブルードが戻ってきていた。

ブルード アイアンハンマー: 邪魔だぞ

フンディン: こ、これはどうも
フンディン: お邪魔しております

スキールニル : こ・・・こんにちは

ブルード アイアンハンマー: …


*怒っているように見える。というか実際イライラしている。理由は前述のとおり。

スキールニル : あんたがブルード・アイアンハンマーですね

フンディン: 私フェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディン
フンディン: こちらは私の友人
フンディン: スキーニーと
フンディン: ウッズタイガーの家の双子です

スキールニル : (ああなんて間抜けな質問を・・・くそ)

ブルード アイアンハンマー: …
ブルード アイアンハンマー: …それで

フンディン: 故あって伺いたいことがありこちらにお邪魔させて頂いていたところです

スキールニル : えーと・・・その

ブルード アイアンハンマー: …

フンディン: そのことは、もうギブノーどのとお話がついたのですが…

スキールニル : (何を言ったらいいかわからなくなってきたぞ・・・)
スキールニル : 頼みがあるんだ!
スキールニル : その、頼みってのは
スキールニル : 稽古を・・・つけてくれないかと

ブルード アイアンハンマー: 稽古…か

スキールニル : あんたはすごい戦士らしい
スキールニル : 稽古でもいいからあんたと手合わせしたとなれば
スキールニル : 生涯の名誉だ
スキールニル : 頼む

フンディン: 初対面の人にどうしていきなり稽古??

ブルード アイアンハンマー: そんなことで得られる名誉なんて、たいしたもんじゃねえな

フンディン: まったくだよ

スキールニル : あんたにかなう腕じゃないのは知ってるが
スキールニル : 俺はまだその程度だ
スキールニル : だからそれでいいんだ

ブルード アイアンハンマー: いいか。おれは遊びで武器は使わん。
ブルード アイアンハンマー: 昔はやっきなって斧を振るったもんだが
ブルード アイアンハンマー: 英雄なんてのは、人殺しが旨いやつがもらえる称号さ

フンディン: 失礼千番だ

アル: 違う

フンディン: ?

アル: スキールニルは本気だよ
アル: あの人が噂通りの人なら…ね

スキールニル : ああ
スキールニル : 人殺しかもしれないが
スキールニル : あんたのおかげで何人も救われたんだぞ

ブルード アイアンハンマー: そのつもりでやったんだ…

スキールニル : ・・・あの女の人のことか・・・?

ブルード アイアンハンマー: だが今は、一人の女を救うので精一杯なんだ

スキールニル : ・・・

ブルード アイアンハンマー: あいつには、あまり近づくな
ブルード アイアンハンマー: 何があってもしらんぞ


*言い捨てて、ブルードは部屋に入る。

アル: まぁああ言われちゃ仕方ないな

スキールニル : おい待ってくれ


*だが、スキールニルは追いかけて部屋までいく。

ブルード アイアンハンマー: …

スキールニル : すこしでいい
スキールニル : 試合をしてくれ!

エル: おいおい
エル: まだ早いよ

ブルード アイアンハンマー: …

アル: 次はいつ会えるか分からないんだ
アル: 早いということはないよ


*ブルードはしばらく黙っていたが、一言答えた。

ブルード アイアンハンマー: 明日、また来れば手合わせしてやる

スキールニル : 本当だな
スキールニル : よし!

アル: ありがとうございます

スキールニル : (特訓だ)


*礼も言わず、スキールニルは走っていってしまった。エルがそのあとを追う。

フンディン: いっちゃった

アル: あれでいいんだよ


*残された2人は部屋にいるのも気まずいので店に戻った。

フンディン: アルドリックさん

アル: ん?

フンディン: ブルード・アイアンハンマーとは
フンディン: どんなかたなのです?

アル: 噂でしか知らないからね

フンディン: スキーニーがあんなに向きになるなんて
フンディン: 聞かせてください
フンディン: その噂

アル: ネヴァーウィンターの疫病は知ってるよね?

フンディン: ??


*何も知らないフンディンのためにアルは一通り説明した。

アル: って感じかな

フンディン: えっ? そんなことが…

アル: あぁ
アル: だから噂通りだとすれば
アル: あのエルフは大罪人なんだ

フンディン: それはつまり
フンディン: あのエルフの女性が
フンディン: レディ・アリベスどのだということですか?

アル: かも知れない

フンディン: …

アル: だから役人が来ていたんだと思う


*その通り。

フンディン: 残念です、と
フンディン: おっしゃっていたようですが

アル: 明日まで無事だといいんだけどな

フンディン: ではもしかすると…
フンディン: そうですね
フンディン: 気になります

アル: 俺
アル: 今日はここの宿舎に泊めてもらおうかな?

フンディン: そうですね
フンディン: わたしもそのほうが鍛冶場が近いですから
フンディン: 遅くまで練習ができそうです
フンディン: スキーニーとエルドリックさんにも伝えておいて頂けますか?

アル: あぁ
アル: 分かった


*アルは早速スキールニルたちを探しに出て行った。残されたフンディンは独り言をもらす…

フンディン: ブルード・アイアンハンマーさんが
フンディン: 噂どおりの人だとして
フンディン: どうしてスキーニーが戦いたがるのだろうか??
フンディン: 聞いてもきっと教えてくれなさそうだな…


*一方スキールニルたちはというと…

エル: いくら特訓しても
エル: 実戦で鍛えた剣とは違うんじゃないのかな

スキールニル : 勝てるわけはないが勝つつもりで行く
スキールニル : そんなことは知っている
スキールニル : だが今の俺には必要なんだ
スキールニル : 俺の剣がひとつ上の段階にいくには
スキールニル : 何かが必要なんだ
スキールニル : コレはその機会だ
スキールニル : (そう、そうしなければ俺は大事なものをみな失ってしまう・・・)

エル: 俺もたまには付き合うかな

スキールニル : よしじゃあ一緒に訓練しようぜ
スキールニル : これからもしばらくは一緒に戦うんだ


*エルに付き合ってもらって特訓に励むスキールニル。しばらくするとアルが駆けてきた。

アル: あのさ

スキールニル : ?

アル: 今日は泊めてもらえそうなら
アル: ここ宿舎に
アル: 泊めてもらおうかって
アル: どう?

スキールニル : それがいい

アル: じゃ決まったら知らせるよ
アル: 訓練頑張ってな

スキールニル : エルが特訓に付き合ってくれてるから
スキールニル : 明日はいい試合しないとな

アル: あぁ
アル: 応援してるよ
アル: エル、お互いに怪我しない程度にな
アル: 軽い傷なら手当てするけどさ

エル: ああ

アル: それじゃ!


*アルは店へと戻る。途中、フンディンと出合った。

アル: あれ?

フンディン: アルドリックさん
フンディン: どうしました?

アル: スキールニル達には話したよ

フンディン: 宿舎は借りられそうでしたか?

アル: 後は泊めてくれるかどうかだね

フンディン: ああ、そうですね
フンディン: ではわたしも一緒に行きましょう


*二人は宿舎に向かって歩き出す。すでに日は落ち、周囲は紫色に染まっていく。遠くで衛兵が、あと1時間で門を閉める事を告げている。

フンディン: アルドリックさん

アル: ん?

フンディン: ブルード・アイアンハンマーどのが
フンディン: ほんとうに噂どおりの方だとして

アル: あ…あぁ

フンディン: どうしてスキーニーはその人と戦いたがるのでしょうか?
フンディン: わたしにはスキーニーの考えがわかりません

アル: 自分より強い人と戦うのは
アル: 凄くよい訓練になる

フンディン: 訓練… ですか…

アル: 何か一つでも学べることがあれば
アル: そう思ってるんじゃないかな?

フンディン: …

アル: スキールニルの目標はミョルニルさんを越えることだしね

フンディン: そうなのですか


*二人は宿舎に到着した。聞いてみると、外市街(最初にフンディンたちが入ったミラバールの街)を勧められたが特に問題があるわけでもない。料金を支払って部屋を借りた。

アル: 良かった良かった

*ということでアルはスキールニルたちの元へ。

アル: 泊まれることになったよ

スキールニル : よかった

アル: すぐそこの宿だから
アル: 後でフンディンに1ゴールド渡してね


*立て替えておいてくれた分。

エル: ああ

スキールニル : 払うよ


*あたりは完全に夜の闇に包まれ、遠くでは門を閉めると衛兵が宣言しているのが聞こえる。

アル: すっかり暗くなっちゃったなぁ

スキールニル : よし
スキールニル : 切り上げよう

エル: ああ

スキールニル : あとは休んで万全の体調で望む

エル: 寝ようぜ


*3人は宿に向かい、借りた部屋に入るとそれぞれベットに倒れこむ。部屋にフンディンの姿はない。

エル: 疲れた・・・・
エル: 慣れないことしたもんだから・・・


*言いながら、エルは眠りに落ちた。スキールニルも、すぐに寝息を立て始めた。その頃フンディンはどこにいるかというと…

フンディン: ふう…

ギブノー アイアンハンマー: 店、閉めたよ

フンディン: あっ、
フンディン: ギブノーさん


*借りた鍜治場にいた。

ギブノー アイアンハンマー: ギブノーでいいよ

フンディン: おや、いつのまにこんな時間でしたか

フンディン: これは失礼しました、ギブノー…
フンディン: うーん、なんだか呼びづらいですね

ギブノー アイアンハンマー: そう?
ギブノー アイアンハンマー: 普通だろ

フンディン: なれていないもので…
フンディン: やはりギブノーさん、とお呼びしてもよろしいでしょうか?

ギブノー アイアンハンマー: いや、気持ち悪いな

フンディン: おっと、
フンディン: 遅くまですみません
フンディン: つい熱中してしまって

ギブノー アイアンハンマー: ところでさっきの鎧の件なんだけど

フンディン: はい

ギブノー アイアンハンマー: いいかな

フンディン: どうしました??

ギブノー アイアンハンマー: いや…実戦ではって言ってたけど
ギブノー アイアンハンマー: おれ、実は経験なくて
ギブノー アイアンハンマー: よくわからないんだ

フンディン: 確かに…
フンディン: わたしもフェルバールを出るまではずっとわかりませんでした
フンディン: フェルバールを出てからここ一ヶ月ほどの出来事のおかげで
フンディン: なんとか戦いというものがわかってきたといったところです

ギブノー アイアンハンマー: 改修手伝ってほしいんだ

フンディン: わ、わたしでお力になれることでしたら、よろこんで
フンディン: ギブノーさ… ギブノー

ギブノー アイアンハンマー: なんか…あまり話し合えるやつがいなくて

フンディン: (ううん、やっぱりしっくりこないなぁ…

ギブノー アイアンハンマー: みんなおれを小僧呼ばわりで偉そうに言うんだ

フンディン: 見習のころはそうですよ
フンディン: わたしもそうでした
フンディン: フェルバールでは

ギブノー アイアンハンマー: だけど俺だって、オヤジみたいに名を上げたいんだよ。

フンディン: 実際、まだとてもとても一人前とはいえるような技量も身につけてはいないですし
フンディン: ギブノーさん…
フンディン: わかりました、お手伝いさせていただきます!

ギブノー アイアンハンマー: フンディンは…おじーちゃんのようになりたいの?

フンディン: わたしは…
フンディン: まだ祖父上がどのような方だったのか… わかっていないのです
フンディン: わたしが生まれるよりもずっと昔に
フンディン: 姿を隠されてしまいましたので…

ギブノー アイアンハンマー: でも、けっこう有名だろ

フンディン: ですから、いまわたしが目標としているのは
フンディン: お師匠様のガーリン・アイアンフォージ様です

ギブノー アイアンハンマー: おじーちゃんみたいになりたいから旅してるんじゃないのか
ギブノー アイアンハンマー: じゃあなんで旅を?
ギブノー アイアンハンマー: いろいろ大変だろう

フンディン: でもとても勉強になります
フンディン: ここまで来るだけでもたくさんのことを得ることが出来ました
フンディン: 今ならば父上がわたしに旅立ちをお命じになられた理由もわかる気がします

ギブノー アイアンハンマー: ふーん…

フンディン: 祖父上の足跡を探すということは
フンディン: ひいてはわたしの体に流れるアイアンビアードの血について探ることにもつながると思うのです
フンディン: 父上に一度も聞いたことがなかったにも関わらず
フンディン: どうしてわたしがこうも鍛冶の道に心惹かれるのか
フンディン: その理由を知りたいと思うのです
フンディン: きっと祖父上の足跡について知ることは
フンディン: そのための手がかりの一つになると思っています

ギブノー アイアンハンマー: ふーん…

フンディン: あっ、
フンディン: すみません、ひとりで話し込んでしまいました
フンディン: 鎧の修繕、でしたね

ギブノー アイアンハンマー: うん
ギブノー アイアンハンマー: ああでも、もうこんな時間だ

フンディン: おっと、
フンディン: ではそろそろ

ギブノー アイアンハンマー: うん
ギブノー アイアンハンマー: 店閉めていくから
ギブノー アイアンハンマー: 出よう

フンディン: はい

ギブノー アイアンハンマー: 鍵は兄貴が持ってるから平気だけど、一緒に出るよ


*二人は店を出る。

フンディン: ではギブノーさ、、、
フンディン: ギブノー
フンディン: こんなに遅くまでありがとうございました
フンディン: おやすみなさい

ギブノー アイアンハンマー: うん。じゃあまた明日


*そうしてギブノーと別れ、宿舎に戻るフンディン。同世代の志を同じくする、友達と呼べるようになるかもしれない人との出会い。だがフンディンの中には拭い去れない不安があり、それがギブノーそして旅の仲間との別れを呼ぶ。続きは次節で…


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