ドワーフクエスト
第四章 ミラバールへ
「肥満王の呪い」


●野営地

*砦を発った一行は、半日ほど進んだところを野営地にして休憩する。実は今回からHotUを導入することになり、そのために技能の割り振りや声の変更などの作業をしてから始めることになったからだ。

フンディン: …
フンディン: なんだかスキーニー
フンディン: 声変わった?

スキールニル : そんなことはナイ

フンディン: 気のせいかな?

スキールニル : 前からこんな声だ

フンディン: 声変わり??

スキールニル : お前こそ太ったんじゃないか

フンディン: わたしは前からこれくらいだよ
フンディン: なんだか荷物の中身がごちゃごちゃだ
フンディン: どうしてだろう…

スキールニル : いずれこの剣を鍛えなおしてもらって
スキールニル : 燃え盛る炎の剣にしてもらう

フンディン: スキーニー
フンディン: その剣ちょっと貸してよ

スキールニル : なんだ
スキールニル : い・や・だ

フンディン: …
フンディン: 別に壊したりしないってば

スキールニル : お前の腕じゃあ名品になりはしないだろう

フンディン: そんなの
フンディン: 材料もないんだからあたりまえじゃあないか

スキールニル : じゃあコレを


*スキールニルは予備の短剣を渡す。

フンディン: ちょっといじることくらいならできるよ

スキールニル : 大事な剣を勝手にいじられると困るからなあ

フンディン: ここをこう削って…

スキールニル : おいおい大丈夫か?

アル: …

スキールニル : なんかあまりうまくいってないように見えるぞ

アル: …

フンディン: ほら、できた
フンディン: 少し切り裂きやすくしてみたんだけど

スキールニル : ほう

フンディン: 材料も何もない場所ではこれが精一杯かな…

アル: 結構いいじゃんか


*HotUから追加された製作技能を試してみている。特に材料などはなくても外見を変更することは可能だ。道具などは持ち運べるものは持っているという事にしよう(笑)

スキールニル : 一応腕のいい鍛冶師に弟子入りしてただけのことはあるようだ

フンディン: えへへ

アル: フンディン、デザインのセンスいいな

フンディン: これくらいのことでよければ
フンディン: いつでも承りますよ

アル: メイスとかクロスボウなんかも出来るのかい?

スキールニル : しかし最近修行してないんじゃないのか

フンディン: ええ

アル: コリャ驚きだ

フンディン: だからこうして修行を兼ねて練習するんだってば

スキールニル : 名工になったら頼むよ

アル: これたのむよ 

スキールニル : 弓もいじれるのか

フンディン: うん
フンディン: 柄の部分の細工と基本は一緒だから
フンディン: 大丈夫
フンディン: …たぶん
フンディン: アレ…
フンディン: おかしいなあ
フンディン: できました

アル: おぉ!

フンディン: 短剣くらいなら
フンディン: 先端で受け止められるようにしてみました
フンディン: 敵が近くに来ても慌てなくて住むように

アル: すごいすごい

フンディン: でもクロスボウではこれくらいが精一杯ですね…

エル: すごいな
エル: ちっと見せてくれよ

フンディン: 鎧のしたてなおしもやりますよ
フンディン: 道具もないから根本的な補強はできないですけれど

アル: 前とは別物みたいだよ

フンディン: 着心地くらいは変わると思います

エル: へー

スキールニル : ミラバールで仕事場借りたらいろいろできるんじゃないか


*すぐに外見の変更やアイテム作成が出来上がるのも変な話だがそこはゲームなので突っ込まないこと。

エル: この鎧に装飾できるのかな・・・

アル: そうだね

フンディン: ええ

エル: 楽しみにしてるよ

フンディン: そんなに複雑な意匠でもありませんから
フンディン: なんとかできそうです

エル: 今のじゃ、旅芸人が着込む代物じゃないからなぁ・・・

フンディン: さあ、それでは
フンディン: そろそろ出発しましょう

エル: おー

アル: あぁそうしよう


*というわけで本編スタート。

●幸せの金の鳥亭

フンディン: ここかな?

*だいぶ広い空間に出た一行は、地図でミラバールへの道を確認しながら進む。

フンディン: この先に
フンディン: 宿があるはずです

フンディン: いつのまにもう昼すぎか・・

スキールニル : これかな


*トンネルの途中に「幸せの金の鳥亭」と看板が出ている。

アル: でも暖かい食事は食べたいなぁ

フンディン: 今日はここに泊まっていきましょうか


*一行は看板の示す道に入り、宿の扉をくぐった。宿の中は広く、ここが大きな宿屋であることがわかる。一階の食堂兼酒場には数名のドワーフの姿も見える。

フンディン: こんにちは

宿屋の主人 : いらっしゃい

フンディン: 一晩お部屋をお貸し頂きたいのですが
フンディン: 空きはありますでしょうか?

宿屋の主人: そうですね
宿屋の主人: 小部屋が2つ、6人用の部屋が一つ
宿屋の主人: あとは雑魚寝の大部屋です

エル: まだ時間が早いな、人は集ってない

フンディン: お値段はいかほどになりますでしょうか?

スキールニル : 一番安いやつ頼むわ

宿屋の主人: 雑魚寝なら一人1GPです

スキールニル : 俺はそれでいいや

宿屋の主人: 小部屋なら一部屋5GP
宿屋の主人: 6人部屋なら7GPです

フンディン: ふむ…

アル: う〜ん、一部屋借りた方がいいんじゃない?

フンディン: どうしますか、皆さん?

スキールニル : (ここ結構いい宿みたいだなあ)

アル: 寝ぼけるやついるし…

エル: そだね、お金は結構あるし

アル: 7ゴールドなら俺が出すよ

スキールニル : 金なんかないよ!

アル: 一部屋借りよう

フンディン: 主人どの
フンディン: 六人部屋というのは
フンディン: 一人あたり7ゴールドでしょうか?
フンディン: それとも部屋あたり7ゴールドということでしょうか?

宿屋の主人: いえ、一部屋の値段です

フンディン: おお
フンディン: それでは今宵一晩
フンディン: お借りできますか?

宿屋の主人: 人気のお部屋ですが、ちょうど空いていますので
宿屋の主人: 少々準備する間、こちらでお待ちください

フンディン: それは結構なことでした
フンディン: よろしくおねがいします
フンディン: はい

宿屋の主人: 料金は前払いで
宿屋の主人: お願いします

フンディン: あ、アルドリックさん

アル: ん?

フンディン: よろしかったのですか?


*アルが支払いをしたことに対してのことを聞いている。

アル: いいよ

エル: よろしくないよ

フンディン: そうですね

エル: みんなで割るんだ

フンディン: ではこちらを


*フンディンは割り勘分の金をアルに渡す。

フンディン: ほら、スキーニーも

スキールニル : いくら?

フンディン: 子供じゃあないんだから
フンディン: 2ゴールドだよ

アル: 1ゴールド

スキールニル : 俺雑魚寝でいい

フンディン: …

スキールニル : 無駄使いできないからな

フンディン: まったく…


*一行は適当なテーブルに腰を下ろして適当に飲み食いしながら待つ。

アル: 雑魚寝と同じだっての

スキールニル : それなら問題ないなあ

宿屋の主人: それではどうぞ。二階一番奥の左手のお部屋です

フンディン: ありがとうございます

アル: ありがとうございます

フンディン: では食事の前に
フンディン: 荷物を置いてきましょう

エル: おお

スキールニル : 飯はもう食ったぞ

フンディン: …

アル: ずるいぞぉ

スキールニル : ミートパイが結構うまいなあ


*どやどやと二階に上がる一行。

フンディン: 一番奥の
フンディン: 左手ですね

エル: ミラバールについたら
エル: いいもの食べたいな

フンディン: ここかな?

スキールニル : うわ

フンディン: おお、これは良いですね

スキールニル : いい部屋じゃん

エル: いい部屋だネェ

アル: 人気なのも肯けるね

エル: 旅に出てから一番いい部屋じゃないか?


*スキールニルはベットに突進。

スキールニル : おおーふかふか

エル: よいしょ


*一行はそれぞれ適当に自分のベットを決めると荷物を下ろす。

アル: めしめし〜〜!

スキールニル : よし飯にするか

フンディン: スキーニー

エル: おー

フンディン: 鎧くらいぬいでいきなよ…

エル: あれが正装さ

フンディン: 別に正装しなくても
フンディン: いいと思うのですが

スキールニル : 酒場の喧嘩で有利になるぞ
スキールニル : 鎧着てると

フンディン: そんなもの着てたら重くて動けないじゃないか
フンディン: 逆に

エル: とんでもないな

スキールニル : いい鎧は重みが全身に分散される
スキールニル : 案外身軽に動けるものさ

スキールニル : そうでなきゃ殴り合いにならない

*再び一階へ戻り思い思いに食事を取る。それからエールを片手に酒場の中を歩き回る一行。


ボグノール: …ん、なんだい?

フンディン: はじめまして。私はフンディンと申します。

ボグノール: 俺はボグノール。狩人だ。

フンディン: 何かおもしろい話でもありませんか?

ボグノール: んー…そうだなぁ。ここから地上に出るとコールドウッドの近くなんだが、何年かに一度、まれに真っ赤なイノシシが出るんだよ。

フンディン: へえー
フンディン: 真っ赤なイノシシ?

ボグノール: うむ。こいつの肉がまた恐ろしく旨くてね…いつも狙っているんだが、下手に近づくと返り討ちにあっちまうよ。それに…
ボグノール: この近くに住んでる蛮族で、ブラックボアーって部族がいるんだが、その蛮族にとって赤いイノシシは儀式に使う大切なものらしくてな。やつらも狙ってるんだ。
ボグノール: まあ仕留められたらラッキーってことだな!

フンディン: なるほど…

トリナール: こんにちは、旅の人。私はトリナール。この宿の用心棒ってとこかしら。

フンディン: これはご丁寧に。私はフンディンと申します。

トリナール: 私の剣の錆になりたくなかったら、面倒は起こさないことね。


*フンディンは何か噂話はないかとたずねてみた。

トリナール: そうね、この時期はミラバールの市があるわ。
トリナール: だけど、この市は主にドワーフ以外の種族との取引がメインなの。ドワーフとは、一年中取引をしているからね。


*一方スキールニルは気になる話をしている二人組のドワーフが気になっている。

エル: どした?

スキールニル : 話に夢中だな
スキールニル : ブルード・アイアンハンマーについて話してる
スキールニル : 恐ろしく強いらしいな
スキールニル : 会ってみてえな
スキールニル : 稽古試合を一本でいいから見てもらいたいもんだぜ


*ちなみにブルードはDMぎぶがNWNの公式キャンペーンを一人でプレイした時のキャラで、冒険記を書いたもの。この冒険記がメンバーには好評だったので今回ドワーフキャンペーンということもあり登場させている。

スキールニル : ブルード・アイアンハンマーについて詳しいのかな二人とも?

*スキールニルは思い切って話に割り込んでみる。

ローシル : ん
ローシル: なんだい、話に割り込んでくるなよ

スキールニル : まあまあ

フンディン: スキーニー?

スキールニル : 一杯やってくれよ

フンディン: こら、スキーニー
フンディン: 申し訳ありません
フンディン: うちのスキーニーがご迷惑をおかけしまして

スキールニル : すっこんでろ、お前は

フンディン: どうかお気になさらず…

スキールニル : よかったら話を聞かせてくれないかな

ローシル: まあ…おごりなら、飲まない手はないがね


*スキールニルは給仕にエールを注文して持ってこさせ、二人組に振舞った。

ローシル: そうだな、あんたブルードの話は聞いたことあるのかい

スキールニル : あるとも

ローシル: どんな内容?

スキールニル : すごい戦士らしいじゃないか

ローシル: そうだな…それは間違いないのだろう
ローシル: ネヴァーウィンターの疫病を払い

スキールニル : 歌がいろいろ伝わってるぞ
スキールニル : そうそれだ!
スキールニル : その街だ

ローシル: 邪悪なカルトを滅ぼした

スキールニル : すごいじゃないか

ローシル: でもこの話には続きがあるのさ

スキールニル : 続き?

ローシル: そう。ネヴァーウィンターが最後の戦いの中にあった時
ローシル: ブルードは捕らえた裏切り者アリベスのいる地下牢に向かった

スキールニル : 裏切り者か・・・

ローシル: そしてそのまま1日戻ってこなかったらしい

スキールニル : へえ

ローシル: ネヴァーウィンターはラスカン軍を撃退し
ローシル: 戦後処理が始まった
ローシル: 裏切り者アリベスの扱いについても
ローシル: 話し合われたわけだ

スキールニル : それでどうなったんだい?

ローシル: もちろん、裏切り者は処刑だろう

スキールニル : そうだな

ローシル: それまでだって、許されたことはないんだ
ローシル: 特別扱いなんてあるわけがない
ローシル: だけど

アル: 裏切り…か

スキールニル : うんうん

ローシル: ナッシャーは、邪悪な力を受けた裏切り者の血で
ローシル: 街が汚されるのは御免だと
ローシル: いうわけで、
ローシル: 街の外で処刑することになった
ローシル: 場所はネヴァーウィンターの森の中にある
ローシル: 血まみれニレの木ってやつだ

スキールニル : へえ

ローシル: 昔敵をそこにつるして
ローシル: 処刑した場所らしい
ローシル: まあ、市民は反対はしなかったが

スキールニル : それでブルードはどうなった?

ローシル: 慌てるなよ

スキールニル : アアごめんよ

ローシル: でもネヴァーウィンターの森には処刑を見物にはいけないだろ。いろいろ忙しいし、ナッシャーも見物は薦めなかったんだ
ローシル: んで、事件が起こったわけだ

スキールニル : 事件?

ローシル: 処刑場に連行中のアリベスが脱走したのさ

スキールニル : まさかブルードが逃がしたっていうのかい?

ローシル: 現場には、連行していた衛兵が血まみれで殺されていた

スキールニル : へえ

ローシル: それは酷い有様だったらしい
ローシル: 時を同じくしてブルードも街から姿を消した
ローシル: それでいろいろ噂が立ってるわけさ

スキールニル : なるほどなあ

ローシル: おれはこう思うね
ローシル: アリベスが邪悪な力でブルードを虜にして、脱走をやらせたと

グロイガン: ばかな!

アル: ・・・

グロイガン: ブルードがそんな力に負けるわけがない

エル: ふーむ

スキールニル : そうだよな

グロイガン: だいたいアリベスってのはエルフの女だぜ

スキールニル : 馬鹿でかい竜に勝ったって噂だぜ

グロイガン: かわいこちゃんならまだしもよお

ローシル: そりゃ、どうかな

スキールニル : でも実際どうなんだろうな

ローシル: おれはブルードも裏切り者だと思うね
ローシル: お前さんはどう思うんだよ?

スキールニル : 俺はもしかしたら
スキールニル : ブルードはアリベスに惚れてたんじゃないかと思うな

ローシル: そんな馬鹿な事が
ローシル: あると本気で?

スキールニル : そうかな?

ローシル: ならブルードは自分の意思で衛兵を皆殺しにしたってのかい

スキールニル : それはどうしてだろうなあ

ローシル: まあやつの二つの斧なら、あっというまに血の海だろうけどね

スキールニル : みねうちで済む話だしな
スキールニル : こういうのはどうだ
スキールニル : アリベスが邪悪の手に落ち
スキールニル : ブルードは彼女を助けるため
スキールニル : 旅だった

エル: スキールニルも調子がいいな

ローシル: …

スキールニル : 面白いと思わないか

ローシル: お前もブルード擁護派かよ!

スキールニル : 戦士の憧れだよ

ローシル: 英雄なんてのは噂だけで、実際はあてになるものか

スキールニル : アレだけ強くなれたらと思うぜ
スキールニル : そんなもんかな?

ローシル: そうさ

スキールニル : ああでも
スキールニル : ブルーノー王は噂どおりの男だったぜ

ローシル: …


*疑いのまなざし。

スキールニル : (アレ、疑ってる・・・)
スキールニル : ホントに会ったんだよ
スキールニル : おーいフンディン!

フンディン: ?

スキールニル : 二人に話してやってくれ

フンディン: なんだいスキーニー
フンディン: 大声出して

ローシル: へー、そう、そりゃあすごいな(棒読み)

スキールニル : バトルハンマー氏族の王に会ったときの話
スキールニル : 二人とも信じてねえんだ

フンディン: ??
フンディン: そうなのですか?

ローシル: お前らみたいな若造が、会えるものかよ

フンディン: それはそうとスキーニー

スキールニル : ん?

フンディン: ここのミートパイはおいしいね!

スキールニル : そうだな


*フンディンは少し酔っているようだ。

スキールニル : ミスラルホールのやつもうまかったけど
スキールニル : ・・・まあいい話を聞かせてもらった
スキールニル : ありがとな!


*ローシルとグロイガンの二人組は、ブルードが良い奴か悪い奴かという話に戻った。

フンディン: あまりお酒が過ぎないうちに
フンディン: わたしは部屋へ戻っておくことにします

スキールニル : お前飲むとひどいからなあ

エル: ・・・

スキールニル : 素振りして寝ようかな
スキールニル : ああでもまだ早いな


*時刻はまだ21時前くらいだ。

エル: そんじゃ俺も寝るよ

スキールニル : 仕方ない部屋に戻るかな


*部屋に戻ると、フンディンが荷物を整理していた。

フンディン: ふう、ようやく荷物の整理が終わった

エル: おやすみ

スキールニル : コレだけ広いと思いっきり素振りできるなあ

フンディン: 壁や家具を
フンディン: 傷つけないようにきをつけなよ

スキールニル : 大丈夫
スキールニル : 今まで二回しか傷つけてない

フンディン: そういえばスキーニー

スキールニル : なんだ

フンディン: さっきは何を熱心に話していたの?

スキールニル : ブルード・アイアンハンマーの話だ
スキールニル : ネヴァーウィンターの英雄だよ
スキールニル : なんでも裏切り者が行方不明になったのと時を同じくして
スキールニル : 彼も姿をけしたそうだ

フンディン: ふーん
フンディン: 確かさ
フンディン: これから行くミラバールの
フンディン: 鍛冶屋さんが
フンディン: アイアンハンマーさんだったよね

スキールニル : でもまあよくある家名だし

エル: 寝れない
エル: も少し飲むかな・・・
エル: スキールニル、もう少し飲みにいくけど行くかい?

スキールニル : 行く

エル: おー
エル: おっと
エル: フンディン、行くかい?

フンディン: ?

エル: エール飲むんだ

フンディン: いまからですか?

エル: 少しだけね

フンディン: それじゃ気が向いたらあとから行きますよ

エル: ああ


*エルとスキールニルは再び下に戻り、飲み物を注文した。エルは近くにいた用心棒のトリナールにこの辺のことを聞いてみた。

トリナール: そうねえ…この辺にはこの宿があるくらいかしら…ああ、そういえば
トリナール: この宿の近くから下に降りてすぐのところに廃墟があるわ。なんでもミラバールの王族ゆかりの地だとか…

エル: もっと詳しく聞きたいな。

トリナール: でも、私はよく知らないのよ。呪いがあるとかなんとか…不気味な噂も聞くわね。ここの主人が詳しいんじゃないかしら?

スキールニル : へえ

エル: 面白そうな噂だ


*エルは続けて主人に声をかける。

宿屋の主人 : なんですか?

エル: あのさ
エル: ここの近くにさ

宿屋の主人: はい

スキールニル : 廃墟があるんだって?

エル: ミラバール王家ゆかりの
エル: そうそう

宿屋の主人: ああ…ありますね
宿屋の主人: 今は
宿屋の主人: 墳墓になっていて
宿屋の主人: 墓守が一人いるだけですよ
宿屋の主人: 墓守は入ってすぐ右手の小屋にいます

エル: 中には入れるのかな?

宿屋の主人: ええ、誰でも入れますが
宿屋の主人: 呪いがあるとかなんとか…
宿屋の主人: 墓守が詳しいですよ

エル: !!
エル: 面白そうだ

宿屋の主人: あー…そうそう、ちょっとまってください


*主人は宿帳をペラペラとめくっている。その間にフンディンが上から降りてきた。

フンディン: スキーニー
フンディン: エルドリックさん

エル: お

スキールニル : ん?

フンディン: どうしたんです?

スキールニル : いや面白い噂話をね

エル: 面白い話があるんだ

フンディン: 面白い話?


エル: まあこっち来て聞いてなよ

スキールニル : ミラバール王族ゆかりの墓が近くにあって

フンディン: うん

スキールニル : のろいがあるらしいぜ


*宿の主人は顔を上げる。

宿屋の主人: ああ…ありました
宿屋の主人: 今、考古学者の方がここにお泊りで
宿屋の主人: 二階の大部屋にご宿泊です
宿屋の主人: よくここにも来られる方でね
宿屋の主人: そのへんにも詳しいんじゃないですかね?

エル: へー、どんなひとだい?男?女?

宿屋の主人: 男の方で、ドワーフには珍しい三角帽子を被っていらっしゃるので
宿屋の主人: すぐにわかると思いますよ

フンディン: お名前を伺ってもよろしいですか?

宿屋の主人: 興味がおありなら、話を聞いて見てはどうでしょう
宿屋の主人: ナレールさんといいます

スキールニル : 訪ねてみようぜ

エル: ちっと覗いてみようか、大部屋

スキールニル : 学者ってのは話を聞かせてくれっていうと
スキールニル : 嬉々として話し出すものさ

フンディン: そうですね
フンディン: 失礼にならない時間ですし
フンディン: どうもありがとうございました、ご主人

宿屋の主人: いいえ
宿屋の主人: なにかありましたらいつでも


*三人は二階の大部屋に向かう。

エル: ここかね

スキールニル : あ
スキールニル : いたぞ

エル: 帽子帽子っと・・・
エル: どうみても彼だな

フンディン: こんばんは


*しかし反応がない。

エル: ナレールさん?

ナレール: …

フンディン: もしもし?

ナレール: ……

フンディン: ちょっといいですか?

ナレール: …わしの思索を邪魔するとはいい度胸だな。重要な用件なんだろうな?

エル: こんばんはっと

フンディン: ええと、
フンディン: 近くの遺跡について聞きたいんですが…

ナレール: ほう?歴史に興味が?

フンディン: はい。

ナレール: よかろう。この近くにある遺跡は、肥満王と呼ばれたドイナス1世が晩年を過ごした場所で、今はかの王の墳墓になっておる。

フンディン: 肥満王…

ナレール: もともとドイナス1世は、王位継承権を持っていたが順位が低く、名家ではあるものの小さな貴族にすぎなかった。
ナレール: だが、当時の王ナシュケル3世と同世代でな、個人的な付き合いがあったようだ。
ナレール: ナシュケル3世は即位が早かったが、短命で、子を成す前に崩御なさった…。そして「次期王位をドイナスに」と遺言を残してしまった。
ナレール: これは大変なことだぞ。王位継承順位を無視して、末端の貴族が王になってしまったのだからな。当然周囲の反発は激しかったが、遺言を無視することも出来ずにドイナス1世は即位した。
ナレール: ドイナスは、当時から大きな腹をしておって、食い意地のはった人物だったと言われておる。だがそれを除けば、王としてそれほど問題のある人物ではなかった。
ナレール: だが重鎮たちはドイナスを嫌っておった。突然自分たちを飛び越えて王になってしまったのだから当然といえば当然だな。

フンディン: ふーむ

ナレール: ドイナスの周囲はまるで協力的でなく、影では肉ダルマだの豚だのと馬鹿にした。ドイナスはそのストレスを食べることで解消するかのように、即位してから大いに食い、ますます肥えていったらしい。
ナレール: その後、まあいろいろとあったのだろう、ドイナスは若くして…たった1年の治世で退位に追い込まれ、この近くにあるあの遺跡に隠居させられてしまった。

フンディン: それはひどい話ですね

ナレール: 退位後の生活は安寧としたものだったが、誰も訪れるものもなく、残りの長い人生を軟禁されたような状態で過ごし、亡くなったそうだ。
ナレール: これが肥満王ドイナス1世の物語だ。

フンディン: ありがとうございました。

ナレール: うむ。また歴史の勉強をしたかったら聞きに来なさい。

フンディン: なんだかふびんなお話です

スキールニル : まあよくある話だけどな

フンディン: そうかな?

スキールニル : 王位を争って殺しあうなんてのはどこでもやってるよ

フンディン: どこでもやってはいないと思うけど…
フンディン: フェルバールでだって
フンディン: アドバールだって
フンディン: ミスリルホールでだってやっていないじゃあないか

エル: でも呪いって程激しい話でも無さそうだ
エル: 晩年は静かに暮らしたのならさ

スキールニル : 3箇所だけだな
スキールニル : 王に限らないしな

ナレール: それらの都市は基本的に同族で継承するからだ

フンディン: まるでスキーニーは
フンディン: 自分が誰かを殺したことがあるみたいな言い方をするね

ナレール: 氏族に関わらず王位を継ぐのはミラバールの特徴でもある

フンディン: へえ…

エル: ふむぅ

フンディン: ?
フンディン: 呪いって言うのはいったい
フンディン: 何の話です??

エル: いやね
エル: その墳墓には呪いがかかってるって噂が

ナレール: 呪いなんてものを、わしは信じないがね

エル: 墳墓に呪いがかかってれば、当然埋葬されてるものの呪いだろ?

スキールニル : でもまあゾンビくらいは出るかもしれない

フンディン: どんな呪いですか?

ナレール: 若いうちから小さなところに閉じ込められて死ぬまでそこにいろ、というのは惨い話だと思うがね

エル: 噂だからね、詳しくは聞いてないんだ

フンディン: そうですね

エル: どうだ、面白そうじゃないか、少し寄ってみないか?

フンディン: うーん、しかし…

スキールニル : かつての王の墓参りってのも
スキールニル : 礼にかなっているぞ

エル: 今はそんなに急いでないだろ?

フンディン: 我々は旅を急ぐ身・…
フンディン: まあ、少しだけ、なら

エル: おー
エル: 決まり
エル: 明日の朝行こう

フンディン: 明日立ち寄っていきましょうか

スキールニル : 明日朝早く
スキールニル : そうだな

フンディン: それではナレール様
フンディン: お話ありがとうございました

ナレール: うむ

エル: ありがとさん

スキールニル : じゃあね先生


*一行は部屋に戻った。

エル: まだ少し早いけど寝るか

スキールニル : 明日早起きしようぜ
スキールニル : 寝るか

フンディン: ではおやすみなさい

エル: ああ
エル: おやすみなさい


●スキールニルの夢

*スキールニルはまたいつもの夢を見る。いつものように洞窟を進んでいくとやはり部屋があるようだ。また財宝が手に入るかと意気揚々乗り込んだスキールニルだったが、今度の財宝の持ち主はエルフだった。今までと同じように、スキールニルには戦って奪うか立ち去るかの選択しかない。

スキールニル : エルフか・・・

*スキールニルはこれ以上の財宝をあきらめて来た道を引き返す…と、そこには今まで倒してきたはずのゴブリンとオークが強力な魔法の武具に身を固めて待っていた。スキールニルはなすすべもなく切り裂かれ、残酷に殺されてすべてを失ってしまうのだった…。

●寄り道

アル: 朝か…
アル: 久しぶりによく寝たなぁ

フンディン: ふう
フンディン: それでは
フンディン: 支度が出来たら出発です

エル: ああ

フンディン: 忘れ物をしないように気をつけてくださいね


*一行はそれぞれに荷物をまとめて朝食をとる。

スキールニル : うーむ

フンディン: ?
フンディン: どうしたんだろう??

アル: なんだなんだ?

エル: わからんね

フンディン: なんだか朝から機嫌が悪いみたいですね
フンディン: まったく子供みたいだなあ


*一行は支度を終えて下に降りる。

宿屋の主人 : ご出発ですか?

フンディン: それではご主人
フンディン: 私達はそろそろ出発いたします

エル: またね

フンディン: とても良い一晩を過ごせました
フンディン: おかげさまで

アル: お世話になりました

宿屋の主人: 遺跡に立ち寄られるなら、必ず墓守に許可を取ってください

アル: ベット、気持ちよかったね

フンディン: 墓守?
フンディン: どちらにいらっしゃるのでしょうか?

エル: はいはい
エル: すぐそばにいるってさ

フンディン: ああ、なるほど

宿屋の主人: 入ってすぐ右手の部屋に住んでいます

フンディン: ありがとうございます

フンディン: またこの近くを旅することがあれば
フンディン: 是非立ち寄らせていただこうと思います
フンディン: それでは

宿屋の主人: はい

フンディン: 行きましょう

エル: 鎧着ていこう
エル: ゾンビなんかいたりして・・・

アル: ゾンビ?

スキールニル : アルは寝てたんだっけ

エル: 王様の墓さ

アル: 墓?

エル: 墓参りしていく事になったんだ

スキールニル : 肥満王だってさ

フンディン: 食いしん坊の王様の

アル: ふ〜ん

フンディン: お墓へ行きます
フンディン: 何があるかわかりませんから
フンディン: 念のため鎧は着ていったほうが良いですよ

アル: へっ?

スキールニル : 呪いだそうだよ

アル: おいおい物騒な話だなぁ


●墓守の話

*一行は少し歩いて、今は墳墓になっているという肥満王が晩年をすごした地へと一行は足を踏み入れた。中は埃っぽく、壁や柱は時間の侵食によってでこぼこになっている。確かに遺跡と呼ぶのが相応しそうな場所だ。

フンディン: ふう
フンディン: ええと
フンディン: 右の部屋ですね


*入って右手には扉が見えた。明らかに後から付け加えられたものという感じで、人の気配もある。早速、挨拶に向かう。

フンディン: こんにちは

墓守: 誰だ?

スキールニル : 墓参に来た者だ

フンディン: 私フェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子

墓守: ここになんのようだ

フンディン: フンディンと申します
フンディン: これはわたしの友人スキーニー

墓守: 今時、肥満王の墓参りとは
墓守: 珍しい

フンディン: それにウッズタイガーの双子です
フンディン: 故あって旅の途中

墓守: 入っていいぞ


*フンディンの長い名乗りを最後まで聞かずに、墓守の男は部屋の中にある質素な椅子に腰掛けた。見た感じ粗野な印象をうける老人だ。

フンディン: この墓の噂を聞きまして

スキールニル : 実を言うと呪いの噂にも興味があってさ

フンディン: おお
フンディン: 失礼します

アル: なんか…そっけない人だね

墓守: 肥満王の墓参りに来たのなら
墓守: 焼肉の一つも持ってきてるのだろうな?

フンディン: ええと、

スキールニル : ミートパイじゃだめかな?

フンディン: ミートパイがあります

墓守: 生前、大層焼肉がお好きな方だったと聞いている

スキールニル : イノシシが大好物だったりして

アル: 焼き肉〜♪

墓守: まあ、いい

フンディン: 焼肉、ですか…

墓守: 二つだけ、守ってほしいことがある
墓守: 入り口からまっすぐ進むと祭壇がある部屋がある
墓守: その奥が、墓部屋になっているが
墓守: そこには入らないことだ
墓守: 扉に手を触れてもいかん

アル: あら…

スキールニル : それはなぜ?

墓守: 祭壇に捧げ物をして、帰るのがいいだろう

フンディン: なぜってそりゃスキーニー
フンディン: 当たり前じゃあないか
フンディン: お墓の中に立ち入るなんて普通はやってはいけないことだろう

アル: まっ確かにね

スキールニル : 棺桶を開けるわけじゃないだろう

墓守: …もう一つは…
墓守: 祭壇の部屋に入ったら
墓守: 豚とかデブという言葉を発してはならぬ

スキールニル : ・・・・

墓守: 肥満王は大層、それらの陰口を嫌っておいでだ

フンディン: 心にとめておきます

アル: 分かる気がする…

墓守: それだけ守っていれば平気だ。さあ、さっさと済ませて立ち去るんだな

エル: 兄者、歌っちゃいかんぜ

フンディン: では


*あまり人好きのする男ではないのだろう。一行もさっさと部屋を出て祭壇の間へと向かう。特に迷路になっているわけでもなく、祭壇はちょうどこの遺跡のエントランスだったであろう広間にあった。だが、やはり”祭壇らしい”形の石にしか見えない…。

●肥満王の呪い

フンディン: なんだかひどいなぁ

*祭壇の有様のことだろう。

フンディン: ここが祭壇の部屋かな
フンディン: 皆さん、絶対に
フンディン: 豚
フンディン: とか
フンディン: デブ

エル: あ・・・

フンディン: と言ってはいけませんよ

スキールニル : 馬鹿!

フンディン: ?

スキールニル : 言ってるじゃないかお前

エル: まあまあ、迷信だよ

フンディン: あ…


*何か妙な雰囲気があたりに漂う…

スキールニル : ・・・・?

フンディン: ?

スキールニル : げげ

フンディン: うわ

フンディン: 地震?!


*突然の激しい揺れ。このもろい遺跡なら崩れてしまいそうな勢いだが、不思議と埃のひとつも落ちてこない…。だが一行は確かに揺れを感じている。

スキールニル : 案外のろいってのもホントだったりして

エル: ぐ、偶然さ


*やがて、揺れがおさまった。一行はあたりを見回す…と。

アル: あっ

フンディン: ぶひ

スキールニル : 一応あやまったほうがいいんじゃないのか

エル: あ

スキールニル : フンディ・・・

フンディン: ピギー


*フンディンのいた場所に一匹の豚がいる。周りにはフンディンの装備も落ちており、体にはフンディンの服をまとわりつけている…。なんとフンディンは豚に変えられてしまった!

スキールニル : ああ?!

エル: *ごしごし*
エル: *目をこする*
エル: あれれ

フンディン: ピギー

アル: フンディンが…ブ…えっと

スキールニル : 呪いってコレか

アル: 嫌な呪いだなぁ…

フンディン: …

エル: 俺にはフンディンがブラに見えるんだけど

スキールニル : 不用意な発言は慎まないとナ

アル: あのぉ…王様…許して上げてもらえませんか?

墓守 : !


*様子を見に来た墓守が、祭壇の部屋までやってきた。

フンディン: ピギ!

スキールニル : いやあ・・・

アル: そんなに悪い奴じゃないんで…

スキールニル : 連れがアホやっちゃって

墓守: ばかな
墓守: あれほど警告したのに

スキールニル : 俺もそう思うよ

墓守: おい、お前達
墓守: さっさとこの部屋から出ろ


*ひとまず警告にしたがって部屋から出る。

スキールニル : やっぱり王は怒ってるんだろうなあ

エル: 困ったな

墓守: 呪いを確かめに着たのか?無謀なことを

スキールニル : いや・・・まあ結果的にはそうなっちゃうね・・・

アル: でも自分のことを言われてるんじゃないと分かればきっと許してくれるさ

スキールニル : ヤツも悪気があったわけじゃないんだが

墓守: 王はすでにお亡くなりだぞ。そんな話し合いができるものか

スキールニル : なんとか怒りを静められないものかな

アル: そう…なのかな…

墓守: 残念ながら…

スキールニル : じゃああいつは一生あの姿?

エル: ・・・

スキールニル : 親子の感動の再会

墓守: 過去に一度、呪いを解いたものがいるにはいる

アル: 僕は何故だか許してくれそうな気がするんだけど

スキールニル : 呪いは解けるのか

エル: 詳しく教えてくれ

スキールニル : どうやったらいいのかな

墓守: 王は生前、焼肉が好きだったと言ったが

スキールニル : まさかフンディンを丸焼き?!

墓守: 特に、赤いイノシシの焼肉が好きだった

スキールニル : ああ違うか
スキールニル : 赤いイノシシか

アル: 僕も食べてみたいと思ってたんだ

墓守: かつてそれを捧げて許しをこうたものがいるが

スキールニル : ならやってみようぜ

墓守: 赤いイノシシなんて、まともな生き物じゃない。そんなのを見つけられるのか?

スキールニル : いることは確かなんじゃないのかい?
スキールニル : 呪いも本当にあったんだし

アル: しかも別の部族も狙ってるらしいしね

スキールニル : イノシシもいるはずだ

墓守: 王の怒りを解くには日が沈むまでだ

スキールニル : そりゃまた

アル: そりゃ大変だ

スキールニル : 急がないとな

アル: そうだね

墓守: それまでになんとかできれば、解けるかもしれんな

フンディン: …

エル: どこにいるんだろ

アル: 宿屋の人が知ってるみたいだった
アル: まだいるかな?

エル: どうするか

スキールニル : 困ったな
スキールニル : 置いていくか?


*↑フンディン豚のこと。

エル: ここに置いとく訳にも行かないし

アル: とにかく地上に出よう
アル: ここにいた方が安全かもよ

エル: おじさん
エル: ここ、おいっててもいいかい?

墓守: …
墓守: 好きにしろ

フンディン: …

エル: 決まり!じゃあ頼むよ

アル: 間違っても食べないでね

スキールニル : しかたない狩人に会おう

エル: 急ごう


*一行は走って宿に向かう。あとをフンディン豚がついてくる。

アル: 飛べない豚はタダの豚だ

スキールニル : まあ良い急ぐか

フンディン: ……

スキールニル : 日没は何時くらいなんだろうこの時期

アル: お邪魔しま〜す
アル: あっいない

スキールニル : あれ
スキールニル : いない


*昨晩、イノシシの話をしてくれた狩人は見当たらない。

アル: 部屋かな?

スキールニル : 親父さん昨日の晩あそこに座ってた狩人しらない?

アル: 蒼い服を着た

宿屋の主人: ボグノールですか?
宿屋の主人: 彼はさきほど出発しましたよ

スキールニル : げげ

アル: あいた〜

スキールニル : どっちへ行ったかわかる?

宿屋の主人: おそらく地上に出たのでしょう

アル: 追いつけるかも
アル: 急ごう

スキールニル : 追いかけよう

宿屋の主人: このすぐ近くの道を上へと進めば地上に出れますが
宿屋の主人: 一時間ほどかかりますよ…


*主人が言い終わる前に、一行は走って宿を出て行ってしまった…。なんのことやらわからず主人は取り残された。


●コールドウッドの赤い猪

*一行は急いで地上への道を進み、洞窟を抜けてコールドウッドの森へと出てきた。

スキールニル : もう1時間たっちまったな

アル: いないねぇ


*狩人ボグノールのことだろう。近くには見当たらない。

スキールニル : あと数時間か

エル: よーし
エル: いいぞ


*アルとスキールニルが慌てて周囲をきょろきょろしている所、エルはフンディン豚に何か飲ませている…

フンディン: *ヒック

*酒を飲まされたフンディン豚はそのまま眠ってしまった。うろちょろされずには済むが…

エル: 運べる重さじゃないしな・・・・
エル: かといって置いといたら誰かに食われちまうよ


*仕方なく、エルが担いでいくことにした。一行はそのまま森を探索する。

スキールニル : 大体森なんて俺たちの領分じゃないよなあ

エル: がんばれ

アル: そうだねぇ

スキールニル : イノシシだ
スキールニル : アレは違うよな?

アル: あれは普通の猪かな?


*と、森を歩いていると…

アル: (静かに)いた

スキールニル : !
スキールニル : (ああ

アル: (どうしよう?)

スキールニル : (なんかやけに動きが早い


*赤いオーラのようなものを纏った猪が確かにいる。ほとんど音も立てず、その素早い動きは重さを感じさせない。通常の生物ではないのだろう。

スキールニル : あれ・・・
スキールニル : どこいった、くそ

アル: う〜ん


*隠れて様子を見ていた一行だったが、ちょっと目を離した隙に赤い猪はいなくなってしまった…

スキールニル : 見失っちまったよ

エル: そっか

スキールニル : しかも狼の群がいる


*スキールニルは近くに狼の群れも発見していた。

アル: そのままねかしといたら食べられちゃうぞ

*フンディンの事。

スキールニル : だけど行くしかないかな

エル: 危険だな

スキールニル : まあここでじっとしてても仕方ない


*仕方なく一行は狼の群れを追い払い、進む。と…

エル: お
エル: あれがそうか


*赤い猪を発見…

スキールニル : くそ
スキールニル : また見失った


*したものの、また見失ってしまった。

エル: 餌でつれないか?

*などと話しながら森を歩いていると、前方に明かりが見えた。

スキールニル : 人間だ

アル: あれさ、紅い猪狙ってる連中だよ


*野営地にいるのは大きな蛮族たちだ。ボグノールが話していた部族の人間だろう。

スキールニル : まいったな
スキールニル : 避けて通ろうか

アル: その方がいいと思う


*一行は接触を避けることにした。

エル: 困ったな

スキールニル : どこへ行ったんだろうな

エル: 重くて疲れた

アル: 困ったねえ

エル: もうひとふんばり・・・

スキールニル : お


*森が暗くなるのは日没よりも早い。薄暗い森を歩き回っていると…スキールニルは赤い猪を見つけた。今度は逃げられる前にと、突然飛び掛る!

スキールニル : クソ!

*赤い猪はやはり超常の生き物なのだろう。信じられない素早さで飛び回り、スキールニルの剣をすり抜ける。スキールニルの動きに気が付いて遅れて矢を放ったアルだが、それも命中しない。赤い猪は一瞬でアルの目の前に移動すると、アルに体当たりを食らわせる。一撃でアルは重傷を負ってしまった。スキールニルとエルが、アルをかばって立ち回るが、なかなかしとめることが出来ない。だが少しずつ傷を負わせ、やがて逃げようとした猪の背後にスキールニルがとどめの一撃を加えた!

アル: やった〜

エル: 兄者、顔色が悪いな

アル: エル、包帯あったら巻いてくれ

スキールニル : 休んでる暇がないのが問題だな
スキールニル : あと何時間あるんだ

エル: 休む時間は無いしな

スキールニル : 急いで帰るぞ

アル: 走れないけどね


*とりあえずの手当てを受けた重傷のアルに、やはり傷だらけのスキールニル、そしてフンディンを担いだエルの3人は、できるだけ急いで遺跡へと戻っていった…。


●赤い猪の味付けは?

アル: 紅い猪
アル: 取ってきましたよぉ

スキールニル : 見てくれ!

墓守: …ほう

スキールニル : 間違いないだろ?
スキールニル : 早速料理しないとな

墓守: 料理人でなくても、この肉の質の良さは見てわかる

アル: 焼き肉〜〜〜

スキールニル : 俺もちょっと食ってみたかったけどまあしかたないなあ
スキールニル : じゃあ祭壇とこで料理して良いかな?

アル: や〜きにく

墓守: 食べ賭けを捧げるなどもってのほか

アル: や〜っきにっく

スキールニル : キットにおいに大喜びだと思う

墓守: 料理は祭壇ではするな

エル: 兄者、食べちゃ駄目だよ

スキールニル : あらそうかい

墓守: 失礼だろう

スキールニル : いや焼いてるときのにおいが
スキールニル : たまんないんだけどな

墓守: 高貴な方は調理場などに足は運ばぬ

スキールニル : ここで料理はできる?

墓守: かまわんが、わしは料理人じゃない

アル: 腹ぺこは最高のスパイス!

スキールニル : 宿で料理してもらったほうが良いかな?

エル: いいんじゃないかな

スキールニル : 俺は料理苦手だし

エル: 一応コショウだのニンニクだのはあるけれど

墓守: 料理に自信があるなら、好きにしろ。わしには関係ないことだ

スキールニル : 俺は自信ないぜ
スキールニル : アルとエルはどうだ?


*が、双子の反応もイマイチだ…

スキールニル : 宿の料理人に頼んでくるかやっぱり

エル: ま、多少ならできるけど

アル: そうだね…

エル: 肉焼くくらいなら簡単でしょ

スキールニル : 腕のいい料理人のほうがいいだろ

アル: きっと王様は味にも五月蝿いと思うな

スキールニル : よし宿に行こう

アル: エルひとっ走り頼む

エル: 俺はここで待ってるよ
エル: あれが心配だ


*あれ=フンディン豚

アル: 俺達走れないんだ

*重傷のため、満足には走れないのだ。

エル: わかった
エル: 肉をくれ

スキールニル : 革も持っていけ
スキールニル : 革は一緒にささげよう
スキールニル : いわば証拠だ

アル: 食べれば分かるさ


*二人を残し、宿に急ぐエル。時間はあと1時間ほどしかない…

エル: シェフ!

シェフ: おいおい!邪魔するんじゃねえよ!


*宿に戻るなり、厨房へと転がり込むエル。厨房の中は戦場のような様相だが…

エル: こいつを大至急、美味い焼肉に

シェフ: 今注文が多いんだ!

エル: 頼むよ、友達が豚にされちまって
エル: こいつがないと戻れないんだ!


*料理人は明らかに奇異なものを見る目でエルを見ている…

エル: ほんとだよ、豚と言うかイノシシというか
エル: ピギーって鳴くんだぜ
エル: 尻尾揺らしてさ


*エルを見る目に同情の色が混ざる…が、エルが持っている肉には興味があるようだ。

シェフ: ほう、これはなかなか良い肉じゃないか
シェフ: まあ…特急料金はもらうよ

エル: 金とるのか・・・

シェフ: 金貨10枚もらおう

エル: うへぇ

シェフ: それがいやなら順番を待て

エル: そりゃちっと・・・
エル: あとどのくらい待てばいい?

シェフ: そうさな
シェフ: 1時間てところかね
シェフ: それから料理して30分

エル: (それならぎりぎり間に合うかな・・・?


*いや、間に合わないでしょう。金貨10枚くらいならいいじゃないか(笑)確かに法外だけど払えない金額ではないはずだ。

エル: うーん
エル: でもアブないな・・・
エル: じゃあ、いいよ!、友達はブタにしとくよ!


*金貨10枚をけちって、エルは宿を飛び出した(笑)

エル: だめだー

*エルは墓守の部屋に戻ってくるなり言った。

スキールニル : だめ?!

エル: あと一時間半はかかるってさ
エル: 自分でやろう

スキールニル : しかたない
スキールニル : 料理頼むぜ


*エルは料理に取り掛かる。まずレシピだが…忘れていたので思い出す(判定成功)。次に料理。これも無難に成功。

スキールニル : できた?

アル: 焼き肉焼き肉焼き肉焼き肉焼き肉焼き肉

エル: 素晴らしい出来だ
エル: これなら肥満王ももんくないだろ

スキールニル : じゃあさっそく革と一緒に
スキールニル : ささげようぜ

アル: 焼き肉ぅぅぅぅ


*とりあえず空腹で狂ったアルは放置して、一行は祭壇の間へと急ぎ向かって捧げ物をする。

スキールニル : 王よ!最高の焼肉を捧げよう!
スキールニル : 受け取り給え!

アル: 僕にもたべさせてえええええええ!
アル: ザ・焼き肉ぅぅぅぅぅっ!


●呪いの意味

*フンディンの心に直接声が聞こえてきた。

???: …我が気持ち、わかったか

フンディン: ぶひ…

???: ここに閉じ込められ、なにも出来ず、人には豚とののしられつづけた無念
???: わしが何をしたというのだ…


*言葉とともに、肥満王の苦しみが伝わってくる。

???: だが、そなたには仲間がいるようだ…。そなたがもし、わしと同じく孤独なものであれば
???: わしと同じ運命を辿ったであろう…。だがそなたを慕う仲間がいるのであれば、そなたを解放せざるを得まい。
???: わしが得られなかったもの…仲間に免じてわしへの無礼を許してやるとしよう…
???: それは得がたきもの…けして手放すでないぞ……


*声は遠のいていった…

●一件落着

エル: もどった!!

スキールニル : あーやれやれ

フンディン: うーん…
フンディン: むにゃ…
フンディン: あ、あれっ?
フンディン: スキーニー
フンディン: エルドリックさんにアルドリックさん
フンディン: どうしてぼろぼろなんです?

スキールニル : あ
スキールニル : 肉がないぞ!


*見ると祭壇にあった焼肉がなくなっている。

スキールニル : 王様食ったのか・・・

エル: ほんとだ

フンディン: あれっ??

エル: ・・・

フンディン: ど、どうしてはだかなんだろう…
フンディン: なんだか…
フンディン: 夢を見ていたような気がする

スキールニル : 王よ
スキールニル : 寛大な処置に感謝します

フンディン: いったい何があったのですか?
フンディン: …

スキールニル : あとではなしてやるから
スキールニル : ここではしゃべるな

フンディン: どうも記憶がはっきりしないんだ

アル: 焼きにくぅぅぅぅぅ…(しくしく)

フンディン: 確かここの祭壇の前で
フンディン: ええと、何か言ってはいけない単語を言おうとして

スキールニル : せっかくだから革は持って帰ろう

フンディン: 確か

スキールニル : 宿でじっくり話そう

エル: もう帰ろう・・・

フンディン: そういえばスキーニー
フンディン: のろいの話ってどうなったんだい?

スキールニル : それもあとで


*?マークのフンディンをつれて、一行は宿へと戻ることにした…

スキールニル : ふう・・・

フンディン: なんだか
フンディン: あしどりが重いね
フンディン: 具合悪いの、スキーニー?
フンディン: 気がついたらすっかり遅い時間になってしまっていました

エル: おっさん、今夜も泊まらせてくれ・・・

スキールニル : あーつかれた

フンディン: ご主人

宿屋の主人: はい

フンディン: こんばんぶひ
フンディン: あ、あれ??

宿屋の主人: …??


*後遺症だ。呪いの後遺症というのも変だけど。

スキールニル : 親父さんこれ見てくれ
スキールニル : 赤いイノシシ狩ったぜ!

フンディン: いえ、
フンディン: 今晩も
フンディン: こちらに部屋をお借りできませんでしょうか?

宿屋の主人: もちろんです

フンディン: ありがとうございます

宿屋の主人: ごゆっくり


*主人はスキールニルの言葉に笑顔を向けるが、信じてはいないだろう。

スキールニル : なんか不思議な力がありそうな気がしてならない

エル: 持っていこう

スキールニル : とどめはエルだから
スキールニル : エルがもってるかい?

エル: いや、スキールニル、頼むよ

スキールニル : そうか

エル: とりあえず酒飲んで寝よ

フンディン: ……
フンディン: (少し太ったかな…?


*後遺症だ(笑)まあそれはさておき、それぞれテーブルに付く。

フンディン: それでは食事にしましょう

アル: 俺は…寝るよ
アル: 食欲がないんだ…


*アルは二階に行く。

フンディン: おやすみなさい
フンディン: ??
フンディン: (なんだろう)
フンディン: (アルドリックさんの顔を見たら突然寒気が…??)

スキールニル : あんなに食いたがってたのに
スキールニル : フンディンを


*3人は食事を注文する。

スキールニル : ふう
フンディン: なにをやったのか覚えていないんだけど
フンディン: 妙に”ぶひ”疲れたね
フンディン: あれ??
フンディン: いま何か言った?

スキールニル : じゃあ教えてやろう
スキールニル : 墳墓で豚とデブっていって
スキールニル : 豚に変えられて
スキールニル : アルに食われそうになったんだ

フンディン: あのね、スキーニー
フンディン: わたしだっていつまでも子供じゃないんだから
フンディン: そんな話でこわがると思ったら大間違いだよ
フンディン: どうせならもうちょっとましな話をしなよ


*食事が終わってフンディンはあきれた様子で席を立つ。

フンディン: それじゃおや”ぶひ”
フンディン: …ン?
フンディン: おやすみ

スキールニル : もう助けねえ


*というわけで一件落着し、一行はそのまま宿に泊まった。ミラバールまでの行程はもう半分以上過ぎている。果たしてミラバールで待つものはなにか。続きは次章…。


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