ドワーフクエスト
第四章 ミラバールへ
「小さな砦」


●旅人との一夜

*アシモに見送られミスリルホールを旅立った一行。気分良く北方ドワーフのトンネルを歩いてきたのだが…

フンディン: ふう

*すでに時刻は夕方になっている。

フンディン: そういえば
フンディン: 私すっかり失念していたのですが
フンディン: トンネル内のくわしい道筋をうかがうのをすっかり忘れていました
フンディン: たぶん方角はこっちであっていると思うのですが…

スキールニル : 俺も忘れてたがなんとかなるだろう

アル: まぁ西に進んでいけば着くだろ

エル: 看板など無いのかね


*このトンネルはドワーフのものであり、安全なせいか気楽だがそれでいいのか?

スキールニル : お
スキールニル : アレを見ろ

フンディン: なんだいスキーニー?

アル: 焚き火?


*前方の広くなっている空間に明かりが見える。

フンディン: おや

エル: 野営かな


*小さな焚き火には、一人の旅支度をしたドワーフが荷物を置いて座り込んでいた。

フンディン: ごきげんよう

スキールニル : やあ

旅人 : こんばんは

スキールニル : 焚き火に当たらせてくれないか?

旅人: どうぞ

アル: すみませんねぇ

フンディン: それでは失礼して

スキールニル : やあ助かった


*親切な旅人の許しを得て、一行は荷物を下ろして座り込む。

旅人: 今夜はここに野営して、明日ミスリルホールに向かおうと思ってるところだ。
旅人: あんたたちは?

スキールニル : へえ

エル: それはそれは

スキールニル : 俺たちはミスリルホールから

フンディン: 私達はちょうどミスリルホールから参ったところです

エル: 我々はあ〜

スキールニル : ミラバールにいくんだ

旅人: あんたたち、ミスリルホールのもんかね?

スキールニル : いやそういうわけじゃないんだが

フンディン: いえ、フェルバールより参りました

エル: 諸国漫遊のたびである

スキールニル : しばらくあそこにいたのさ

旅人: ふーん…

フンディン: 申し送れましたが私フェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディン
フンディン: こちらは我が友人のスキーニーと
フンディン: アルドリック・エルドリックの双子さんです

スキールニル : 腹が減ったな

アル: よろしく

旅人: おれはウィラー

スキールニル : 失礼して飯を食わせてもらうよ

エル: よろしく

旅人: トンネルを旅して商売してるのさ

エル: 行商人かい?

アル: へぇ

スキールニル : へえ

フンディン: どのようなものを商われていらっしゃるのですか?

旅人: 荷物見てもらえばわかると思うけど、行商とは違うんだ
旅人: おれは交渉して、手配してまわるだけさ

スキールニル : すると道には詳しいのかな?

旅人: まあね

スキールニル : ミラバールへの道は
スキールニル : このまま西でいいのかな?

旅人: 道がわからんのかい

スキールニル : いや確認だよ確認

フンディン: お恥ずかしいことなのですが

スキールニル : 近道とかあれば便利だしな

フンディン: はやる気持ちに流されてつい道の確認を怠って出立してきてしまったのです

スキールニル : (馬鹿正直に恥をさらすこともないのに・・・)


*旅の商人ウィラーはニヤリとした。

アル: 言ってる事がバラバラだぞ…

フンディン: ??

旅人: ふーん、そうか
旅人: なら、トンネルの地図とかあったら便利だよなあ

フンディン: はい、それはもう

スキールニル : (さっそくひっかかってるぞ)

旅人: おれ、予備に何枚かあるけど一つ売ってやろうか?

フンディン: おお、本当ですか!
フンディン: ありがたい

旅人: もちろんさ。おれは商人だからね
旅人: 売れるものは売るよ

フンディン: ぜひお一つおゆずり願えませんでしょうか

旅人: 金貨50枚でどう?


*ちなみに、街で手に入る値段から考えると法外だ。

フンディン: ああ、もちろんお代はお支払いします

スキールニル : やけに高いな

フンディン: これで

エル: ちょっと暴利じゃなかい?

アル: (高っ)


*などと仲間が言っている間に、フンディンは金を支払ってしまった。

フンディン: そ、そうですか?

旅人: まいどあり

スキールニル : まあ俺の金じゃないからいいけどさ・・・

旅人: これが地図だ

エル: フンディンはお金もちだなぁ

フンディン: ありがとうございます


*物は確かなようだ。

アル: まぁ品物は確かなようだから…
アル: フンディンの金だし…

旅人: トンネルは広いから細かい地図はまた土地土地で手に入れるしかないが
旅人: 普通に旅するならそれで十分だ

スキールニル : この辺の噂話をおまけでつけてくれないか

旅人: ミスリルホールからミラバールまでは
旅人: 安泰だよ。危険はない

スキールニル : そうか

フンディン: それはそうですね

スキールニル : じゃあ楽でいいな

旅人: この先、西に進むと
旅人: 長いつり橋が地溝にかかってる
旅人: 落ちる間抜けはいないが、落ちたら助からんよ

フンディン: ふむふむ…

旅人: また、トンネルの途中には
旅人: ある程度の間隔で砦や
旅人: 宿屋がある
旅人: だけど、ない区間もあるから、そういうときはこうして野営するしかない

フンディン: へえ…
フンディン: 旅人の便宜を図るためのものですか?

旅人: 宿屋はそうだろうけど
旅人: 他にも、お互いの都市だと
旅人: 話し難いことを話す場所にも使われる

スキールニル : ほう

フンディン: たとえばどういった事柄です?

エル: どした?

アル: 鎧って窮屈だから


*エルはもぞもぞしているアルを気にしている。

旅人: まああんたらには関係ない話だけど
旅人: 正式なルートで通せない政治交渉とかだよ

アル: 腹が…

フンディン: 政治交渉??

スキールニル : 食いすぎだからだよ

アル: うっ…

フンディン: 正式なルートで通せない??

スキールニル : まあそういうこともよくあるよな

旅人: ああ

フンディン: ?
フンディン: どういうことだい、スキーニー?
フンディン: さっぱりわからないよ

旅人: 特にドワーフは氏族の結束は固いが、人間より秘密主義なところがあるからな

スキールニル : お前には多分説明してもワカランだろう
スキールニル : だから教えてやらん

旅人: 商売してると難しいよ

フンディン: そんなこといって
フンディン: ほんとうはスキーニーもわかってないんだろう

スキールニル : そういうことでいいぜ別に

フンディン: 意地はっちゃって…

スキールニル : それよりウィラーは
スキールニル : 地図を売ってあるってるわけじゃないんだろ?

旅人: 当たり前だろ(笑)

スキールニル : じゃあいろんな商売に詳しいかい?

旅人: おれは主に食料品を扱ってるが
旅人: 雑貨もたまには扱うね

スキールニル : バーミル・スラルレオって名前
スキールニル : 心当たりはないかな?

フンディン: スキーニー
フンディン: あのね

スキールニル : なんだ

フンディン: それはもうだいぶん昔の話だよ

旅人: 変わった名前だな

フンディン: まだご存命とは思えないけれど…

スキールニル : 昔の話なのは知ってる
スキールニル : 子孫がいるかもしれんし
スキールニル : だいたいお前だって爺さんと同じ名前だ

フンディン: そ、それはそうだけどさ…

旅人: ソードコーストのほうに住んでる人間の名前みたいな感じだな。その名前

スキールニル : 人間かあ・・・

フンディン: ウィラーどのはミラバールへはよく赴かれるのですか?

旅人: ああ、ミラバールに家も借りてる

フンディン: どういったところなのでしょうか
フンディン: ミラバールとは
フンディン: 地図で場所を知っているだけで、実際に行ったことは一度もないのです

旅人: 他の都市と比べて

アル: (また話が長くなりそうだなぁ…)

旅人: 古臭い秘密主義の街だよ

アル: *あくび*

フンディン: ヒミツ主義?

スキールニル : あんまり愉快な街じゃなさそうだね

旅人: ドワーフでも、なかなか受け入れてはもらえない

スキールニル : となると厄介だな・・・

旅人: 俺もミラバールの外街に家を借りていて
旅人: 中まで入ったことはないんだ

スキールニル : 本当に?

旅人: ああ

スキールニル : そりゃすごいな

旅人: ミスリルホールだって似たようなもんだろう
旅人: ごく一部にしか入れてもらってないはずだ

フンディン: そうなのですか?

スキールニル : そういわれるとそうだなあ

フンディン: でも王様にはお目通りがかないましたよ

旅人: ほう!

スキールニル : なんだかんだで監視役もついてたし

エル: 最終的には結構歩き回ったね

フンディン: 隠し事をしているような方には見えませんでしたが…

旅人: おそらく、ミスリルホールにとって
旅人: 致命的なことは何も君たちには知られていないと思うよ

フンディン: それは
フンディン: たとえばどういった事柄のことです?

スキールニル : 秘密の抜け道とかいろいろあるだろ

旅人: 君たちが今からホールに戻って入る事はできる?

フンディン: おねがいすれば入れていただけると思いますが…

旅人: 通行証は1度しか有効ではないし
旅人: 秘密の合図とかいうのもそうだろう

フンディン: …

旅人: ミスリル鉱山がホールのどこにあるのか、あんたらは知ってる?

スキールニル : いやぜんぜん

フンディン: いえ
フンディン: それはお願いしませんでしたから…

スキールニル : 教えてくれないだろうなあ

フンディン: そうかなあ?

旅人: 地上への出入り口もあるし、他の出入り口もあるはずだが、氏族の連中以外はしらない
旅人: 今使われている出入り口も、その気になればあっというまにふさがれて
旅人: 通れなくなるだろうよ

フンディン: そういったものなのですか…

スキールニル : 考えてみればアドバールだって信頼されるまで大変だったな

旅人: そんなもんさ
旅人: でもホールも商売はしたいからね

スキールニル : フェルバールもよそ者にはそうなんだろうな

旅人: 親切にしてもらえるんだよ
旅人: 一部分でも自由に通行させてもらえるだけありがたいさ

スキールニル : ミスリルなんかを扱ったことはあるのかい?

フンディン: …

旅人: ないよ

スキールニル : さすがにそうか

旅人: ミスリルは一部の特権的な商人しかかませてもらえない

スキールニル : ホールでもう少し探りを入れてればよかったかな・・・
スキールニル : まあ無理だったろうけど

アル: (この人にミラバールの名店を聞いても知らないだろうなぁ…残念)

旅人: ウォーターディープみたいな自由取引なんて、ドワーフには永遠にできないんじゃないかとさえ思うよ

エル: 名店ってなんだ?豚マンかい?

フンディン: ……

アル: えっ? 声に出てた?


*たぶん、長年の付き合いと共感能力でなんとなくわかったのだろう。

スキールニル : 自由取引のほうがあんたみたいな商人にはいいんだろうね?

フンディン: ウィラーどのは
フンディン: それには何か理由があると思われますか?

旅人: さあねえ

フンディン: そうですか…

旅人: 神様がドワーフを頑固で秘密好きにお作りになったんだろうよ(笑)
旅人: おれはウォーターディープで生まれ育ったから

スキールニル : へえ
スキールニル : 名前だけは聞いたことがある・・・

旅人: いつかいってみるといい

フンディン: そういたします

旅人: 目からウロコが落ちる
旅人: きっとね

スキールニル : ほう!

フンディン: うろこ…ですか?

スキールニル : 人間の街にはいったことがないな

旅人: さて、それじゃ俺はそろそろ休むよ


*ウィラーは寝袋を出して横になる。

スキールニル : いろいろありがとう

フンディン: おやすみなさい

スキールニル : 俺は素振りしてくる

アル: 俺は…寝る

フンディン: *ふわ〜*


*一行は眠りについた。

●スキールニルの夢

*その晩、スキールニルはまたいつもの夢を見る。足元には斬り倒したゴブリンの死体があり、背負い袋は奪った金貨でいっぱいになっている。ゴブリンの死体はみすぼらしく感じられ、金貨はこんなやつにはもったいない、自分が持つべきだと思える。

スキールニル : 相応しい者こそが持つべきものだな・・・

*スキールニルは満足して、さらなる財宝を求めて洞窟の奥へと進んでいった…。

●西へ

*次の日の朝。場所こそ違えどいつもの風景だ。

アル: ふわぁぁぁ
アル: おはようございます

フンディン: ん…

エル: おはよう

フンディン: ああ

スキールニル : 221!222!

フンディン: 皆さん、おはようございます

エル: うへ
エル: もうそんなに振ってるの

アル: おはよう

スキールニル : 素振りは朝飯前だ


*ウィラーは朝食の準備をしている。さすがに手馴れたものだ。

スキールニル : 446!
スキールニル : よし1000!

アル: *ごくり*

スキールニル : ?
スキールニル : どうした

アル: あっ…いや、おいしそうだなぁって


*とはいえ分けてくれたりはしないようだ。一行もそれぞれ食料を取り出して食べる。

フンディン: ふう
フンディン: それでは食事も終わりましたね
フンディン: そろそろ出発しましょう

スキールニル : よし食ったぞ

旅人 : おれは荷物を片付けてから出発する

フンディン: それではウィラーどの

スキールニル : ウィラー、また会おう!

フンディン: 名残惜しいですがこれにて

エル: また会えるといいな

アル: さようなら

フンディン: オールファザーがあなたの旅路を祝福しますように

旅人: またな


*野営地をあとにして、一行は西へと歩を進める。

スキールニル : ウォーターディープか
スキールニル : いってみてえな

アル: そうだね

エル: いつか行こう
エル: 来月くらいに

スキールニル : そりゃいいや!


●地溝にかかる橋

*半日ほど進むと、話に聞いたとおりに地溝が見えてきた。地上にある谷が地下にあるようなもので、幅は広く底は見えない。そこにつり橋が架かっている。

フンディン: ふう
フンディン: 高いなぁ…

アル: ここが話にあった吊り橋か

スキールニル : おお
スキールニル : たけえなあ

エル: うう・・・

フンディン: 足を踏み外したら大変だね

エル: 足がすくむよ

フンディン: 皆さん足下には気をつけて

アル: そういうフンディンが一番危ない気がする


*一行は、そろそろと橋を渡りながら、絶景を満喫する。

●2度目の野営

*地溝を越えてからも特に事件もなく、時刻は夜になった。

フンディン: だいぶ歩きましたね

スキールニル : 腹が減ったな

アル: 歩いたね〜


*フンディンはウィラーから買った地図を見てみる。一番近い宿屋までまだ距離がありそうだ。

フンディン: まだ少しありますね
フンディン: 仕方ない、今日はここで休みましょう

スキールニル : ここらで野宿でもいいんじゃないか


*周囲は広い空間になっていて、野営するにはよさそうだ。

エル: 兄者はもう座り込んじゃったよ

アル: もうくたくただしね

フンディン: いちおう
フンディン: 交替で休んだほうが良いかもしれませんね

アル: へぇフンディンも成長したねぇ

フンディン: ?
フンディン: そうですか?

エル: そいじゃ俺が一番で…

スキールニル : 途中で起こされるのはいやだから俺最初!

エル: ずるいぞー


*話をしている間に、フンディンは焚き火を起こす。ところで洞窟の中なのに焚き火していいのか?という突っ込みは却下。そんなに狭くて小さい洞窟じゃないのだ。

フンディン: それじゃスキーニーよろしくね

フンディン: おやすみ・・

エル: くっ
エル: おやすみ

スキールニル : エル先にやるか?

アル: おやすみ〜

スキールニル : 俺最後でもいいや

エル: じゃ、先

スキールニル : ちょっと早起きするだけだからな


*というわけで交代してエルが見張りに立つ。他の仲間は全員横になっている。エルが一人見張りに立ってから1時間ほどが経過した頃…

旅人: おや

エル: やあ


*旅支度のドワーフが通りがかった。

フンディン: すぴーすぴー

旅人: こんばんは。旅人さんがた

エル: こんばんは

スキールニル : zzzz

エル: みな、たった今休んだとこさ
エル: 俺が見張り

旅人: なるほど
旅人: この近くに宿屋はないということですね

アル: もう食べ…むにゃむにゃ

エル: あなたは向こうから来たね

旅人: ええ
旅人: この先に小さな砦があります

エル: ということはどちらも近くには無いんだな
エル: ほうほう

旅人: そこで休ませてもらえますよ

エル: あなたは夜通し歩くつもりかい?

旅人: もしよければ、今晩は私もここで休もうかと思っていました

エル: そんならそこの焚き火に当たるといい

旅人: おお

エル: 遠慮せずに

旅人: それはありがたい
旅人: 是非そうさせてもらいます


*旅人を火に招いたエル。それからまた1時間ほど経って、交代の時間になった。

エル: うーん

フンディン: すきに…むにゃむにゃ…


*アルが起き出してくる。

エル: お、兄者

アル: ん?

エル: じゃ、悪いけどお願いな

アル: あ…見張りか

エル: ああ
エル: はあー疲れた

アル: ふわぁぁぁ


*アルに交代してからまた数時間が経過した。

フンディン: すーすー…

アル: ふわぁぁぁぁぁ
アル: そろそろ交代かなぁ?


*エルとスキールニルの話を聞いてなかったのか、アルはスキールニルを起こそうとする。

アル: 交代してくれ…

*アルはスキールニルを揺さぶる。だがスキールニルはびくともせず、目を覚まさない。

アル: もうしょうがないなぁ
アル: 仕方ない…フンディンを起こすか


*アルはフンディンを揺さぶる。

フンディン: わっ!?

アル: フンディン、ふんでぃん

フンディン: な、な、なんです?!

アル: そろそろ交代してくれないか?

フンディン: コウタ…イ?

アル: 何度起こしてもスキールニルのやつ起きないんだよ

フンディン: あ、あれ?
フンディン: なんだ、アルドリックさんか…

アル: 誰だと思ったんだよ…

フンディン: なんだろう…何か嫌な夢を見たような…

アル: とにかく交代!

フンディン: あ、はい

アル: ふわぁぁぁぁぁ

フンディン: おつかれさまで…
フンディン: あれ?
フンディン: あれはどなたです?


*少し離れたところに、エルが招いた旅人が寝ているのだが、まったく説明してないからな(笑)

アル: さぁ?

フンディン: 見覚えのない方ですが…
フンディン: お休みになられているようですね

アル: どうも俺とエルが交代する前に来たみたいだよ

フンディン: ではエルドリックさんならご存知なのでしょうか?

アル: とにかく…任せた

フンディン: あ、はい


*面倒になったのか、アルは寝てしまった。

フンディン: ふう…
フンディン: (ミラバールか…)
フンディン: (ずいぶん遠くへ来たような気がするなぁ)
フンディン: (父上… お師匠様…)
フンディン: (お元気かなあ)

フンディン: *ぐすん*


*そうして夜が明ける。

フンディン: ん…
フンディン: そろそろ

アル: ふえ?

フンディン: みなさん起きてください

スキールニル : なんとさわやかな朝だ

フンディン: 朝ですよ!

アル: もう朝か…

フンディン: あれ???
フンディン: いつのまに・・・
フンディン: あの方はどこへ??
フンディン: アルドリックさん
フンディン: ご存知ないですか??


*気が付くと旅人はいなくなっていた。実は早朝に出発したのだがフンディンは気が付かなかったのだ。(判定したらファンブルしたので、完全に気が付かなかったことにした。考え事でもしていたせいだろう)

アル: ん〜

スキールニル : 何の話だ?

フンディン: スキーニーが寝こけている間に

アル: あの後はぐっすりだったからなぁ

フンディン: 知らない人がここで寝ていたんだよ

スキールニル : そういえばなんで起こさないんだよ

フンディン: あのさ、スキーニー

エル: ああ、一足先に出発したんじゃないか?

フンディン: 人に文句は言うくせに
フンディン: 自分だって当番さぼってるじゃあないか

アル: 俺は起こそうとしたぞ

フンディン: まったく口だけだね、スキーニーも

スキールニル : 俺が起きなかったことあるか?

フンディン: 昨日の夜だよ!
フンディン: まあいいけどさあ


*実はこの晩もスキールニルは夢を見ていた。普通なら起きそうなものだが、まるで夢に囚われたかのように目が覚めなかったのだ。夢の中で洞窟を進んだスキールニルはまたもや財宝を持っているオークを発見した。手持ちの金貨では望むような武器は手に入らないと考えたスキールニルはオークを殺して奪うことを選択し、実行する。財宝は2倍になり、満足して目が覚めたスキールニルは夢の内容は覚えていないものの、上記のせりふな気分で目覚めた、というわけだ。

エル: あ、そうそう

スキールニル : 知らん

フンディン: ?

エル: 昨日の旅人がさ、この先に砦があるって言ってた

アル: ん?

フンディン: 旅人?

アル: へぇ

エル: フンディン、地図に載ってないかい?

アル: ここで寝てた人だろ


*フンディンは見てみたが、地図には載っていなかった。

フンディン: あ、
フンディン: エルドリックさん
フンディン: あの方はどなただったのですか?
フンディン: よくお休みだったので起こすのにはしのびなく
フンディン: 気がついたらどこかへいなくなられていたのですが

エル: よく知らないんだ

フンディン: ???
フンディン: お話したのではないのですか?

エル: この辺で休もうかと思ってるっていうから
エル: それなら焚き火のそばでどうぞって言った

スキールニル : 物盗りじゃないだろうな

フンディン: お名前もお聞きしていないのですか?

アル: こんな場所で?

エル: そういや変だな

アル: 盗む相手もまれだと思うけど

フンディン: 別に変ではないと思いますよ

エル: いや、この先の砦で休めるって言ってた割には

フンディン: ミスリルホールとの間を旅する方もいらっしゃると思いますし

エル: ここで休もうとするなんて

フンディン: そこはお急ぎだったのではないのですか?

エル: まあ、その砦とやらがどれぐらいの距離なのか
エル: それにもよるけどさ


*一行は一応荷物を確認するが、なくなっているものはない。DM的に補足すると、この旅人実はなんでもない普通の人で、PCの反応を見るために登場させた。また、安全な旅路で緊張感を取り戻してもらうためでもある。結果としてまあいいやと流されてしまったが(笑)

フンディン: とりあえず出発しましょう

アル: 別になくなってるものはないけどなぁ

スキールニル : まあいいさ
スキールニル : ミラバールにつけばいいんだ

アル: 見張りの間、あの男も寝てたし

エル: ああ、見張りたてるからって心配はしなかったんだ



●小さな冒険者

*一行はさらに2時間ほどトンネルを進んできた。

フンディン: おや?

スキールニル : なんだ?


エル: なんだろな

*一行は前方に、こそこそと歩いているドワーフの子供2人を見つけた。

フンディン: こんにちは

子供A : あっ

アル: なんかあんまり素行のよくない雰囲気だな

エル: 勘だけど、なんかありそうだ

スキールニル : ああ確かに

子供A: あ、あの…

フンディン: ?

子供A: そのう…

フンディン: どうしたのですか?

スキールニル : あれ
スキールニル : 武装してるのか?

フンディン: このような場所で
フンディン: こら、スキーニー!

フンディン: 子供を怖がらせてどうするのさ!

子供A: いや…

フンディン: そうやってにらみつけるのはよしなよ

子供A: これは違うんだよ!

スキールニル : にらんでねえよ

子供B: 違うんだよ!

フンディン: あんなに怖がっているじゃあないか

子供A: えーと…

フンディン: 私はフンディン・アイアンビアードと申します
フンディン: これは私の友人スキーニーと
フンディン: エルドリック・アルドリックの双子です

ラミ(子供B): 僕はラミレス。そこの砦に住んでるんだ

スキールニル : 礼儀にうるさいワリには人の名前は正式にいわないんだよなコイツ

フンディン: とりで?

ラミ: いま友達のレミールと冒険に…

レミ(子供A): あっ

フンディン: ?

レミ: 言うなよ!

スキールニル : ほう
スキールニル : 面白そうだな

レミ: いや、違うんだ

フンディン: このあたりにとりでがあるのですか?
フンディン: 違う??

レミ: そ、そう。すぐその先だよ
レミ: 案内してあげるよ

フンディン: おお、それはありがたい
フンディン: せっかくですからお邪魔しましょう

スキールニル : アル、なんか変じゃないか?

アル: 何が?

スキールニル : わかんね

エル: 別に砦なんぞ行きたくないけど


*一行は二人に案内されて砦への道に進む。やがて広い空間の先にいくつかの建物が(ほとんど天井についているドワーフサイズのものだ)見えてきた。

ラミ: ここがそう

フンディン: この先の道も聞いておきましょう

ラミ: 地図にも載ってない小さな砦さ

フンディン: なるほど


*一行は、砦への門をくぐった。

●小さな砦

アル: こんにちは
アル: いや、おはようか


*砦に入ってすぐのところに、女性のドワーフ二人と武装した男性のドワーフが一人、三人でなにやら話し合っていたようだがすぐに一行に気が付いた。

ラミの母 : あっ、ラミ!

レミの母 : あらまあ、ほんとだわ

ベリナス ワッケル: む


*武装したドワーフ、ベリナスは一行のほうにやってくるが、二人の女性はラミとレミに駆け寄る。

スキールニル : お

ベリナス ワッケル: おや、旅の方と一緒か?

アル: どうも

スキールニル : やあ

フンディン: こんにちは
フンディン: はじめまして

レミ: 僕ら案内してあげたんだよー

スキールニル : ありがとな!

ラミの母: この子はっ
ラミの母: 砦の外に出たらいけないって
ラミの母: あれほど言ったのに!

フンディン: 私はフェルバールはムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します
フンディン: こちらは私の友人スキーニーと
フンディン: アルドリック・エルドリックの双子
フンディン: お会いできて光栄です


*フンディンの挨拶もそっちのけで、一通りしゃべったあと。

ラミの母: あ、あら…すみません
ラミの母: あなたたちがうちの子供を連れてきてくださったんですか?

フンディン: いえ
フンディン: 坑道でちょうどラミレス君とレミール君に出会いまして
フンディン: こうしてこの砦へ案内していただきました

ラミの母: ほう…坑道でねえ…(じろりとラミを見る)

ラミ: ばっ、バカ言うなよ…

フンディン: ??

アル: 外と言ってもすぐそこですよ

スキールニル : 冒険したい年頃だ

ラミの母: ラミ…こっちいらっしゃい

スキールニル : 俺もよくガキのころは悪さをしたもんだ

アル: 悪いな…しかられて来い

エル: フンディンのせいで怒られてるな

フンディン: ??


*というわけで子供たちが叱られている間に…

ベリナス ワッケル: 旅の方だそうですな、ようこそ13号砦に

フンディン: お邪魔致します

ベリナス ワッケル: わたしはベリナス
ベリナス ワッケル: ここを任されているものです

フンディン: お会いできて光栄です、ベリナスどの
フンディン: 私どもは故合ってミラバールを目指しております

ベリナス ワッケル: あの二人は、すぐに決まりを破って外に出てしまいまして

フンディン: まあ…小さな頃というのはみんなああしたものですよ

ベリナス ワッケル: 今は特に、出てはいけないのですが…聞かなくて

フンディン: ?
フンディン: なにかあるのですか?
フンディン: 道には特に危険はないと伺っているのですが

ベリナス ワッケル: 旅を続けるなら
ベリナス ワッケル: その話もしたほうがいいでしょうね

フンディン: ぜひお聞かせ願えませんでしょうか

ベリナス ワッケル: こちらへ、


*一行は門のすぐ近くにある建物へ案内される。子供たちはまだ叱られているようだ…

ベリナス ワッケル: ここが
ベリナス ワッケル: この砦の兵舎です
ベリナス ワッケル: 私はこの二階に住んでいます

スキールニル : (12人か)


*スキールニルはベットの数から兵舎の人数を予測したようだが、実際には半分ほどしか使われていない。

ベリナス ワッケル: どうぞ

フンディン: お邪魔します

ベリナス ワッケル: 大したおもてなしもできませんが
ベリナス ワッケル: ようこそ、13号砦に

フンディン: いえ、おかまいなく
フンディン: それで…早速ですが

ベリナス ワッケル: こういった小さな砦は、この先いくつもお目にかかるでしょう

スキールニル : 13号?

フンディン: お話とは一体?

ベリナス ワッケル: いえ、実は

アル: 何処から数えてなんだろうね

スキールニル : さあねえ

ベリナス ワッケル: この砦のあるこのトンネルは現在
ベリナス ワッケル: スパイン山脈に沿って進んでいます。ご存知と思いますが

フンディン: はい

ベリナス ワッケル: そして、地上への出口もいくつもあるのです
ベリナス ワッケル: それぞれの出口の近くにはこういう小さな砦があり
ベリナス ワッケル: 名前をつけるまでもないので番号で呼んでいます
ベリナス ワッケル: この砦が守っている出口は
ベリナス ワッケル: スパインのふもとにある洞窟に繋がっているのですが
ベリナス ワッケル: そこに最近オークが住み着きましてね

スキールニル : ははーん

フンディン: !

アル: オークか…危険だねぇ

スキールニル : あのガキどもの言ってた冒険てそのことだったりして

アル: そりゃまずい

ベリナス ワッケル: いや、トンネルの出入り口は見つからないはずです
ベリナス ワッケル: ですが、そのままにも出来ないので
ベリナス ワッケル: 援軍を待って攻撃する予定になっているのです

フンディン: ……

ベリナス ワッケル: さきほどミラバールまでとおっしゃいましたが

スキールニル : 面白そうだな

ベリナス ワッケル: そういうわけですので地上には出ないように

フンディン: 面白くなんかないよ、スキーニー

アル: いや、手伝いたいって意味だろ

フンディン: ……

ベリナス ワッケル: この下の兵舎のベットはいくつもあいていますので
ベリナス ワッケル: どうぞそこでお休みになってください
ベリナス ワッケル: 野宿で疲れたでしょうし
ベリナス ワッケル: ここでゆっくり休んで出発なさるといいでしょう

スキールニル : オーク退治に加わるのもいい修行だ
スキールニル : フェルバールの恨みを忘れたわけじゃないだろう

フンディン: それではお言葉に甘えさせていただきます
フンディン: では

ベリナス ワッケル: では。


*一行はベリナスの部屋をあとにして、一階の兵舎へと降りる。適当に使われていないベットをそれぞれ確保したようだ。

アル: 援軍がいつ来るのか聞かなくていいのか?

フンディン: ……

スキールニル : なんだ助けてやらんのか

アル: まっ俺には関係のない話だけどさ

スキールニル : 実戦の機会がおおいほど腕が上がるんだが・・・
スキールニル : なんとしてもあのミョルニルから一本とりたいもんだ


*アルとスキールニルがこそこそ話をしている。

アル: (フンディンなら絶対のると思ったんだけどね

スキールニル : (なんだか静かだな
スキールニル : (そのほうが気が楽でいいけどさ


*そのまま思い思いにゆっくり休んでいると…

ラミの母: こんばんは

*ラミの母が兵舎を訪れた。

ラミの母: さきほどはお恥ずかしいところをお見せして…

スキールニル : おやコレはコレは

ラミの母: うちの子がお世話になりました
ラミの母: みなさんに見つけてもらってよかった
ラミの母: それで、ちょうどお昼ですし
ラミの母: うちで食事でもどうかと
ラミの母: どうでしょう?

アル: そりゃありがたい

スキールニル : ぜひ伺おう

フンディン: お申し出はありがたいのですが…

アル: えぇ!?

フンディン: すみません、私はちょっと気分がすぐれないので
フンディン: ここで休ませて頂きます
フンディン: 皆さんは伺ってきてください

ラミの母: そうですか…わかりました

アル: 勿体ない…

スキールニル : 保存食がおおいもんでホントにありがたいなあ

エル: な


*フンディンを置いて、他の仲間たちはラミの母についていく。家の前まできたところで、ラミの母は振り返る。

ラミの母: 皆さん一つだけ…あまりラミの前で冒険や旅の話をして欲しくないのです

アル: うんうん

エル: む

スキールニル : あー

エル: それは困った

スキールニル : なるほど

エル: 子豚の歌にするしかないな

アル: ないな

スキールニル : あの年頃はそうかもね

ラミの母: この砦は何もありませんし、狭いところですから
ラミの母: 仕方のないことだと思っています
ラミの母: でも今は時期が時期ですし

スキールニル : 俺も廃坑に迷い込んで出れなくなったりしたなあ

ラミの母: それに主人が戻ったら、ラミとレミはミラバールの親戚に
ラミの母: 預けるつもりでいます

スキールニル : へえ?

ラミの母: ここは、子供が暮らすには狭すぎますからね

スキールニル : うん確かに


*ラミの母は先に家に入る。一行は招き入れられるまで少し待った。

アル: 俺も野いちご積んでて迷子になったりしたよ

スキールニル : 毒キノコくって死にかけたこともあるよ俺

アル: キノコはやばいね

アル: 俺も二日笑い続けたことある

スキールニル : 採掘用の機械に細工して大目玉くらったなあ

ラミの母: どうぞ

アル: おじゃましま〜す

ラミの母: あまり大勢の方を招いたことがないので
ラミの母: 椅子が足りませんが…


*まあ単にDMが椅子を設置し忘れただけだ。

スキールニル : いやいや

アル: よぉ

スキールニル : 俺たちは床でもいいですよ

ラミの母: どうぞくつろいでください

アル: なれてますから

スキールニル : よう!

ラミの母: いま料理をだしますね


*アルとスキールニルはラミに声をかけるが、すねているらしく無反応だ。

スキールニル : おお!
スキールニル : コレが家庭料理ってやつかあ!

アル: いただきま〜す

スキールニル : ミョルニルのつくるごった煮はホントまずいんだよな

エル: うまい

アル: うわっウマイ


*というわけで食事が始まった。

ラミの母 : ラミ!

スキールニル : うめえ!

ラミの母: みなさんに挨拶しなさい
ラミの母: こら!

スキールニル : ミスラルホールのパイにも負けないな

アル: このサッパリとしていてそれでいてまろやかでしっかりとした味付け…

スキールニル : あれ

アル: イイ仕事してますねぇ


*ラミは黙ったまま、二階へとあがっていってしまった。

ラミの母: …

アル: あっ…

スキールニル : いっちまった
スキールニル : 探してきたほうがいいかな

ラミの母: 今はオークが来ているのはあの子も知っているはずなのに

アル: そうだね

ラミの母: いえ、自分の部屋にいったのでしょう

スキールニル : ああそうですか

アル: それならいいけど…

スキールニル : 心配だな

アル: 俺も結構抜け出してたりしてたからなぁ

スキールニル : 俺だったらキット見にいってる

ラミの母: どうして言うことを聞かないのかしら

アル: 俺もそうだ

スキールニル : まあ俺には親がいなかったから
スキールニル : 誰にも文句言われなかったけどな

アル: 男の子なんてそんなもんですよ

ラミの母: そうなんでしょうか…

アル: とにかく見てきます

エル: 持って行ってやろう


*エルの言葉はフンディンへ、という意味だ。

ラミの母: 料理は、お持ちになって

エル: もう持ったよ
エル: 兵舎に戻ってる


*エルは、料理を包んでもらうとそれを持って兵舎に戻った。アルとスキールニルはラミの様子を見に行く。

スキールニル : 部屋に閉じこもってるのかな

アル: お〜い

スキールニル : まさか窓から抜け出したなんてことはないよな

アル: あんまり親を心配させちゃ駄目だぞ〜


*扉越しに声をかけても反応はない。

アル: 考えられるな

スキールニル : (親がいるだけでも幸せってもんだよな)

アル: 俺なら抜け出してる

スキールニル : うん俺も

アル: 見に行こう


*二人は一度外に出て、窓の見える裏手に回った。見上げると窓は閉まっていた。しかしその気になれば子供でも降りてくることができそうにも見える。

アル: う〜ん、こりゃ子供でもいけるなぁ
アル: ヤツの相棒を探してみるか

スキールニル : 危険のない程度に冒険できる環境ならいいんだけどな

アル: そうだねぇ


*二人は話しながら、レミの家(この砦に建物は3件しかないので自動的にどこかはわかる)に向かう。

スキールニル : やるなといわれると
スキールニル : やりたくなる

アル: うんうん

スキールニル : よう

アル: おっ

レミ: あっ


*ちょうど、レミが自分の部屋から抜け出しているところだった。

レミ: またお前達かよう

スキールニル : さっきは悪かったな

アル: ごめんな

レミ: お母さんに言うつもりじゃないだろうな?

スキールニル : 告げ口する気はなかったんだよ

レミ: 大人は信用できないんだ
レミ: ラミもそう言ってた

アル: いいはしないけど

スキールニル : 俺たち結構若いんだぜ

レミ: 脱出作戦失敗かよう…

アル: オークは本気で危険な奴等だ

スキールニル : どうかな
スキールニル : 脱出作戦決行中かも

アル: …人の話は最後まで聞けよ…

スキールニル : あっはっは
スキールニル : アルだって聞かなかったくせに

レミ: だって、長いんだもん

アル: フンディンほど長くはないぞ!

スキールニル : オークを見たいのか?

レミ: 当たり前だろ
レミ: おれは見た事あるけどね

スキールニル : へえ?

アル: へぇ

スキールニル : どこで見たんだ?

レミ: お父さんが、ばったばったと倒してた

スキールニル : ほう!

レミ: 影から見てたんだ

スキールニル : お前の父ちゃん強いんだな!

レミ: あいつらが弱いんだ

アル: それは違うぞ
アル: 弱くはない
アル: 脅かすつもりはないが
アル: 1対1なら俺でも負ける

レミ: おまえ弱虫だなー

アル: あぁ弱虫さ

レミ: 弱虫毛虫はさんで捨てろー!

アル: だから今まで生きてこられた

レミ: もうお前の話なんか聞かない


*子供にアルのいう事は通用しない。レミはさっさとラミの家に向かって走っていってしまった。二人は追いかける。

スキールニル : こりゃあ聞かないなあ
スキールニル : おい

レミ: ついてくんなよー

スキールニル : 俺もませてくれ

レミ: やだね。大人は混ぜてやんない

スキールニル : 混ぜないんならおふくろさんにいうぞ?

レミ: …

レミ: き、きたないぞ

アル: それ卑怯…

レミ: セイジとかいうやつだなー

アル: (でも効果的)

スキールニル : そうともいうね
スキールニル : お前結構頭イイナ

レミ: トリヒキは大人のやることなんだ

スキールニル : ああそうだな!

レミ: ……

スキールニル : 俺もきらいだよ取引とか
スキールニル : めんどくさいしな

レミ: いいよ、もうラミも出てこないし
レミ: 今日はやめた!


*レミはラミがやってこないので、一人で家に戻っていった。

スキールニル : さてホントかね

アル: 結果オーライ…かな?
アル: う〜ん

スキールニル : 俺たちの目を盗んで抜け出すなありゃ
スキールニル : ガツンといっていいものかな

アル: 出口が1か所なら見張ってるんだけどな


*残されたアルとスキールニルが話をしていると、エルがやってきた。

スキールニル : お

エル: なにしてんだい

スキールニル : エル
スキールニル : いやあのガキども
スキールニル : やる気らしいよ
スキールニル : ほっとくのもなあ

アル: 危険すぎる

エル: ふむ

スキールニル : かといって話して聞くようなやつじゃないしな

エル: それじゃ先回りして、オークを全滅させるってのは??

アル: 少なくとも俺には無理だね、説得は

スキールニル : お前頭いいな!

エル: そしたら安全だ

アル: 数が分からないと…

スキールニル : とはいえ援軍待ってるくらいだ
スキールニル : そう簡単にはいかないな

エル: ついでにオークの頭の皮剥いでさ
エル: オークのふりして脅かそう

スキールニル : それ面白いけど

アル: それは楽しそうだけど…

スキールニル : そううまくいくかな
スキールニル : 兵舎のおっさんに相談してみるか

アル: とにかく偵察に行くのには賛成かな?

スキールニル : よそ者があまりでしゃばるのもなんだしな

エル: 一度戻ろうか

スキールニル : かといってほうっては置けない

アル: 俺は出口を見張ってる


*アルは入ってきた門のところに腰を下ろした。エルとスキールニルはとりあえず兵舎の二階に向かう。途中フンディンを見ると、具合が悪いのかまだ横になっている。

スキールニル : あのおっさん何てったっけ名前

エル: 忘れちゃった

スキールニル : まあいいや
スキールニル : いってみようぜ


*スキールニルは扉をたたく。

スキールニル : えーと・・隊長!

ベリナス ワッケル: はい

スキールニル : 失礼

ベリナス ワッケル: どうしましたか?


*ベリナスは二人を招き入れる。

スキールニル : 実はオークのことで聞きたいことが

ベリナス ワッケル: なんでしょうか

スキールニル : 数はどのくらいいるんですか

ベリナス ワッケル: そうですね…ざっと15-20

スキールニル : それで増援を待ってるわけか

ベリナス ワッケル: 洞窟と、その周辺を根城にしてしまっています

スキールニル : 増援はいつ来ることになってるんです?

ベリナス ワッケル: この砦には戦士は私を含めて5人しかいませんしね
ベリナス ワッケル: おそらく、明日か明後日にはつくでしょう

スキールニル : 5人か


*その頃、下で寝ていたフンディンは…

フンディン: ん…
フンディン: もう夕方か…
フンディン: ?
フンディン: スキーニーの声?


*ベリナスの部屋では話が続いている。

スキールニル : 5+4で今なら9人だな

ベリナス ワッケル: 何を考えてるんです?

スキールニル : 増援が何人来るかな?

フンディン: おはようスキーニー
フンディン: それにエルドリックさん

エル: おはよう

スキールニル : 起きたのか


*ベリナスの部屋にフンディンも顔を出す。

ベリナス ワッケル: おそらく二小隊

スキールニル : なるほど

フンディン: 何を話しているんです?

スキールニル : オークについての話
スキールニル : (さてどうしたもんかな

フンディン: ……

ベリナス ワッケル: もし、手を貸してくれるという申し出なのであれば
ベリナス ワッケル: お断りします。これは我々の仕事です

スキールニル : む・・・そうか
スキールニル : (こいつはあまり話が通じそうにないな・・・)
スキールニル : わかった
スキールニル : それじゃ失礼します


*と、部屋を出ようとした時、ラミの母が入れ違いにラミの母が飛び込んできた。

ラミの母: あ

フンディン: ?

ラミの母: 失礼

スキールニル : おや

ベリナス ワッケル: おや
ベリナス ワッケル: どうした?

ラミの母: ラミが…部屋にいると思ったんだけど

スキールニル : まさかラミのやつ・・・

ラミの母: いま行ってみたら、いないのよ!

フンディン: スキーニー??

エル: ふぁあ

ベリナス ワッケル: な…

エル: もう行くしかないね

フンディン: ????

ベリナス ワッケル: まさか…


*スキールニルは兵舎を飛び出して大声でアルを呼ぶ。

スキールニル : アル!

アル: ん?
アル: あれはスキールニルの声か?

アル: よんだかい?

スキールニル : ヤツはとっくに抜け出したみたいだぜ!

アル: げっ


*一方、ベリナスの部屋では…

ラミの母: どうにかしてよ!
ラミの母: あの子はオークを見に行きたがってた

フンディン: ……

ラミの母: もし行っていたら…どうするのよ!

ベリナス ワッケル: …落ち着け
ベリナス ワッケル: なんとかしよう

ラミの母: 当然だわ!

ベリナス ワッケル: 失礼、フンディンさん


*状況がわからず立ち尽くすフンディンを残して、ベリナスも外に出て行く。外では、スキールニルがレミの家に行ってみたがレミもいなくなっていた。

スキールニル : レミ!
スキールニル : いるか!

アル: 嫌な予感はしてたんだよな

スキールニル : あいつもか、まさか
スキールニル : よし


*スキールニルは走って兵舎に戻る。

スキールニル : おいフンディン支度しろ
スキールニル : ガキを探しに行くぞ

アル: とにかく急がないと

エル: OK


*そこへベリナスも戻ってくる。

ベリナス ワッケル: どうやらレミもいないようですね
ベリナス ワッケル: 見張りは、誰も通ってないと

アル: 子供が抜け出すとしたらどこから?

スキールニル : 体が小さいからな
スキールニル : 思わぬ抜け道があるはずだ

ベリナス ワッケル: かもしれません
ベリナス ワッケル: …

フンディン: ……

ベリナス ワッケル: こうなれば
ベリナス ワッケル: 援軍を待つなどとは
ベリナス ワッケル: 言っていられなくなりました

アル: とにかく外への出口に行きましょう

スキールニル : あの二人はオークを倒しに行きたがってたな

ベリナス ワッケル: いますぐ洞窟に向かいます。
ベリナス ワッケル: もしよければ…手を貸してください
ベリナス ワッケル: いや、是非

アル: 勿論

スキールニル : 勿論いくとも

エル: おー

ベリナス ワッケル: 手早く説明します。
ベリナス ワッケル: 洞窟には抜け道があって
ベリナス ワッケル: それがトンネルと繋がっています
ベリナス ワッケル: 道は3つ
ベリナス ワッケル: 二つはそれぞれ洞窟の中の部屋に出られます
ベリナス ワッケル: もう一つが、外に出て、洞窟の正面の入り口に回りこめます
ベリナス ワッケル: 我々が一つ、みなさんで一つ…
ベリナス ワッケル: 分かれて進むしかありません

アル: そうですね

スキールニル : わかった

ベリナス ワッケル: 少ない戦力でも、抜け道から奇襲すればなんとかなるでしょう

スキールニル : とにかくガキを助けないと話にならんな

ベリナス ワッケル: よろしくお願いします
ベリナス ワッケル: ともかく出口に


*慌てて準備をすると、砦の戦士たちと一行はトンネルに出て、地上への出口へと向かった。

●二つの命

*一行は地上への出口となっているゲートを抜けて、洞窟への出る隠し通路のところまでやってきた。

ベリナス ワッケル: おまちを
ベリナス ワッケル: ここから分かれましょう
ベリナス ワッケル: 右手の通路が外
ベリナス ワッケル: 正面の分かれ道がどちらも洞窟の中に出られます
ベリナス ワッケル: 私達は
ベリナス ワッケル: 洞窟の中を探して見ます

アル: 分かりました


*砦の部隊は細い隠し通路を正面へと進んでいく。一行は任された右手の通路を進む。隠し通路とはいえ、壁の向こうはオークがいる洞窟だ。こっそりと進んでいく。

フンディン: なんだか…まだ頭がぽやっと…

スキールニル : 寝すぎじゃないのか?

エル: おやおや

フンディン: *ぼー*

アル: どうしたんだよ、フンディン
アル: 病気か?

スキールニル : いつもなら真っ先にガキを助けに行きそうなもんだぞ

フンディン: みんなに迷惑はかけられないから

エル: ああ

フンディン: 先に行ってください
フンディン: あとからついていきます…

エル: 今は仕方ないね

アル: 無理はするなよ
アル: さぁ行こう

スキールニル : エルのやつはりきってるな

エル: 急がなくていいのかい?

アル: あぁ

スキールニル : 急ぐよ

アル: おいおい
アル: 大丈夫かよ?

フンディン: 気にしないでください…

アル: うわっつめてえ


*隠し通路を抜けると、洞窟の西側の斜面へと出られた。まだあたりには雪が残っている。近くにオークは見えないが、洞窟の正面入り口のあたりから気配はする。一行はゆっくりと南側の洞窟正面へと回りこむ…

スキールニル : (しっ!
スキールニル : いるぜ

アル: どこに?
アル: 見えないけどなぁ

スキールニル : 一匹確認した
スキールニル : もたもたしてる暇はないからな・・・
スキールニル : やるしかないな

アル: 気をつけて

エル: うん


*スキールニルは武器を構えて進もうとするが、すぐに立ち止まる。

スキールニル : まった
スキールニル : 結構いるな

フンディン: …!
フンディン: あ、あれ?
フンディン: 何か見える・・

アル: 無茶すんなよ〜

フンディン: なんだろう…?
フンディン: *ごしごし*

スキールニル : 敵だよ馬鹿!

フンディン: ちがう
フンディン: スキーニー、あそこに
フンディン: 誰か…
フンディン: 倒れてる?

アル: まさか…

スキールニル : む!

フンディン: よくみえない

スキールニル : とにかく今はうかつに手を出せないな


*フンディンはもっとよく見ようと近づいてしまう…

フンディン: オークが…向かってくる…

*オークは一行の接近に気が付いて向かってきた。そのまま乱戦に突入してしまう!

フンディン: !

*オークたちの目的はわからないが子供たちは縛り上げられ、焚き火の近くに転がされていた。一行の奇襲でオーク側もパニックになっている。乱戦の中で、オークの放った矢が縛り上げられていた子供たちに突き刺さる…!

エル: 子供らが

フンディン: くっ…
フンディン: ………

アル: くそっ

アル: 馬鹿共め

スキールニル : オークどもめ!!


*一行は、外にいたオークをすべて倒した。

フンディン: …………

エル: 間に合わなかったか

アル: とにかく中の人たちの援護に行こう

フンディン: 治療を…

スキールニル : もう遅いな・・・

フンディン: 矢がささっているよ

アル: 何してる?

フンディン: スキーニー
フンディン: エルドリックさん
フンディン: 傷の手当てを…

スキールニル : 死んだよ

アル: 犠牲者をこれ以上増やさないように

フンディン: ………

スキールニル : 皆殺しにしてやる


*一行は押し黙ったまま、洞窟に突撃し、入り口にいたオークたちを切り倒す。

スキールニル : しねええ!

フンディン: ……


*入り口のオークを倒したところで、ベリナスたちが奥からやってきた。

ベリナス ワッケル: む
ベリナス ワッケル: 入り口のやつは片付けましたか…
ベリナス ワッケル: 我々も、部屋のやつは片付けました

スキールニル : すまん

エル: 子供らが

スキールニル : 二人は・・・・

ベリナス ワッケル: ?

スキールニル : 外に・・・遺体がある

ベリナス ワッケル: !!

ベリナス ワッケル: …
ベリナス ワッケル: ……
ベリナス ワッケル: …いまは…オークを退治しましょう
ベリナス ワッケル: 二度とここに近寄らないように

スキールニル : ゆるさねえ・・・

ベリナス ワッケル: 皆殺しに!


*合流した一行は、そのまま残ったオーク達を探し出して全滅させた。

スキールニル : ・・・・
スキールニル : こんなことをしてもあいつらは帰ってこないんだな

アル: やらないよりましさ

エル: だが悲劇を繰り返さなくて済む

ベリナス ワッケル: どうやら片付いたようですね…

フンディン: ……

ベリナス ワッケル: 帰還しましょう

エル: ああ

ベリナス ワッケル: 我々は、遺体の確認と
ベリナス ワッケル: 見回りをして戻ります

アル: お気をつけて

ベリナス ワッケル: 先に砦に戻っていてください

アル: はい

スキールニル : くそ・・・・

アル: いくよ


*ベリナスに指示された通りに、一行は先に砦への帰路についた。

●失意の帰還

フンディン: スキーニー…

スキールニル : 気が重いな

アル: だろうなぁ…

フンディン: …

スキールニル : 俺には言えねえ

アル: 遺体が確認できたら
アル: ベリナスさんが言うだろ

フンディン: ……
フンディン: スキーニー

スキールニル : 何だ

フンディン: 一発
フンディン: 殴ってくれ

スキールニル : 何でだ

フンディン: わたしのせいだよ…
フンディン: 子供が捕まっていたかも知れなかったのに
フンディン: わたしがのこのことオークどもに近づいたから…
フンディン: こんなことなら無理についてくるべきじゃなかったんだ…

スキールニル : お前は殴られたことで気が晴れるかもしれないが
スキールニル : 死んだ二人は帰らない

アル: 自業自得だよ、ラミも…レミも…

スキールニル : そんなことのためにお前を殴ってなどやるものか

フンディン: ううっ…
フンディン: *グスッ*

スキールニル : ・・・あんなことはいつでもどこででも
スキールニル : 起こっていたことだ

フンディン: ………

スキールニル : フンディン、お前の周りでは起こってなかったろうけどな

アル: ・・・・・・

スキールニル : 俺はガキのころ、あんなふうに死んでくヤツをたくさん見てきた

アル: せめて正面から出ようとしてくれれば…

スキールニル : お前がいっちょまえに責任を感じるだと・・・?
スキールニル : 笑わせるな!

アル: おい

フンディン: スキー…ニー…


*話しているうちにベリナスたちが戻ってきた。戦士たちはそれぞれの持ち場に戻り、ベリナスは黙ったままラミとレミの家に向かっていった。一行が門のところで待っていると、ベリナスが戻ってきた。顔が赤くなっている。殴られたのかもしれない。

ベリナス ワッケル: 母親には私から話しました

アル: あっ、すみません

エル: 悲しい出来事だね

ベリナス ワッケル: しばらく放っておいたほうがいいでしょう

アル: 流石に僕らからは言えませんでした

スキールニル : (俺が迂闊だったな・・・クソ

アル: えぇ
アル: その方がいいでしょうね

ベリナス ワッケル: あとでみなさん私の部屋に
ベリナス ワッケル: いらしてください

アル: あっ…あはい


●残されたもの

*ベリナスの部屋。

ベリナス ワッケル: あの二人のことはおきになさらず
ベリナス ワッケル: 無謀な行動をしたのはあの子たちです
ベリナス ワッケル: そして危険をきちんと教えられなかった、この砦の大人たちのせいです

アル: そうやって割り切れれば楽なんでしょうけれどね…

ベリナス ワッケル: 私は声を上げて泣くことなんてできない
ベリナス ワッケル: この砦で、わたしは常に指揮官なのです

エル: けど子供ってのはそういうもんだしな

アル: 辛い…立場ですね

フンディン: …

アル: フンディンの親父さんとかも…そうなのかな?

フンディン: ……

スキールニル : ・・・あいつ等のおふくろさん・・・大丈夫か

ベリナス ワッケル: 皆さんには我が砦の子供達のために

スキールニル : ・・・なわけないよな

ベリナス ワッケル: 命の危険を冒して闘ってもらった
ベリナス ワッケル: その報酬を受け取ってください

スキールニル : いらねえ

アル: 僕もいりません

フンディン: わたしも受け取れません

エル: おいおい

フンディン: その資格はありません…
フンディン: 皆さんで分けてください

エル: 旅するにはあったほうがいいぞ

ベリナス ワッケル: 旅をするには金が必要なはず

スキールニル : お前は貰え

エル: すいません、ありがたく受け取ります

ベリナス ワッケル: はい

スキールニル : 俺は受け取らない

アル: すみませんが仲間が心配ですので…僕はこれで


*フンディン、スキールニル、アルは部屋を出て行ってしまう。

エル: どうも

ベリナス ワッケル: 少ないですが、これで皆さんに

エル: 二度とこんなことが起こらないようにしなければね

ベリナス ワッケル: 受け取ってくれてありがとうございます

エル: うん

ベリナス ワッケル: 報酬を払うのも私の責任の一つです

エル: わかるさ

ベリナス ワッケル: …すみませんが、一人にさせてください。

エル: ・・・ああ

ベリナス ワッケル: 砦では、何日滞在なさっても結構ですので


*エルは一階に戻る。

エル: 君らのことだから、何としてもこのお金は受け取らないんだろうな

フンディン: すみません…

エル: 俺があずかっとくから、気が変ったら言ってくれよ

アル: ・・・・・・

*アルは外に出て行ってしまったスキールニルを追いかけて外に出る。スキールニルは砦の中心部あたりに立っていた。アルは声をかける。

アル: 生意気だったけど…憎めない奴等だったな

スキールニル : あいつ等今頃どんな気持ちでいるのかな

アル: あいつら?

スキールニル : 死んだ二人だよ

アル: 死んだらオシマイだよ

スキールニル : そうかもな

アル: もう美味しい食事を食べる事は出来ない
アル: 笑うことも親を困らすことも…
アル: 友達と遊ぶことも喧嘩することも

スキールニル : あいつら・・・ホントに困ったやつだったな

スキールニル : ま、俺はあんなモンじゃなかったけどな

アル: だからこそ…助けたかった

スキールニル : ああ
スキールニル : 絶対助けられると思ってたよ
スキールニル : だが駄目だったな

アル: そうだね
アル: 僕も…少し慢心してたかもしれない
アル: 僕らには出来ないことなんてないって思ってたかもしれない

スキールニル : 俺も思ってたな

アル: 僕達が行けば大丈夫だって楽観的に考えてたかもしれない

スキールニル : ふう

アル: 少しは…落ち着いたかい?

スキールニル : 少しは気が楽になってきた
スキールニル : ありがとな

アル: 良かった

スキールニル : フンディンにも言ったが・・・いつでも起こっていることなんだ

アル: そうだね

スキールニル : 俺も惨めに死ぬガキはたくさん見てきた
スキールニル : 俺が孤児だったって話したっけ?

アル: あぁ

スキールニル : 飢え死にしたり病気になったり・・・ダチもそうでないヤツもずいぶん死んだっけな

アル: それを…見てきたんだね…スキールニルは
アル: 少しでもそういう事をなくしていきたいね

スキールニル : そうだな
スキールニル : できることは少ないが

アル: いっぱい訓練しなくちゃね

スキールニル : ああ
スキールニル : あんな状況になっても
スキールニル : 一瞬で皆殺しにできればいいわけだしな!
スキールニル : そうだった、素振りしてなかったぜ

アル: ・・・・・・

スキールニル : ふっきれたら腹が減ったな
スキールニル : 飯食おうか

アル: そうしよう

*その頃、兵舎に残っているフンディンとエルは…

エル: フンディン、体調はどうだい?

フンディン: わたしは…
フンディン: もう大丈夫です、たぶん…

エル: 念のためかけとくか

フンディン: すみません…


*エルは魔法でフンディンを治療する。

フンディン: エルドリックさん

エル: うん?

フンディン: エルドリックさんは
フンディン: 子供のころからずっとアルドリックさんと一緒だったのですか?

エル: うん
エル: 離れた事はほとんど無い

フンディン: そうですか…
フンディン: 楽しかったですか?

エル: 楽しい・・・か
エル: 楽しいってのとはちょっと違うのかなぁ
エル: そりゃ楽しいけどさ、なんていうか
エル: いるのが当たり前なんだよ
エル: 今みたいに少し離れてても、ぼんやりと何してるか感じるし

フンディン: …

エル: 誰かを心配してる感情が伝わってくる、多分スキールニルと話してるんだろう

フンディン: スキーニー…か…
フンディン: どうしてかわからないんですが

エル: うん

フンディン: 小さな子供のころからずっと
フンディン: 誰かと一緒にいることがなかったんです
フンディン: 年の近いものはみんな
フンディン: 「お前みたいに話すのは変だ」って

エル: いじめられてたのかい?

フンディン: よくわかりません

エル: じゃあ、今回の旅は珍しい経験だな

フンディン: はい
フンディン: でも訓練で
フンディン: 年が上の人たちとはいつも話していたんですよ

エル: ああ

フンディン: ただ… あの二人のように
フンディン: ああいうことはなかったんです
フンディン: それが…


*と、そこへスキールニル達が戻ってきてしまった。フンディンは少し慌てて話をやめてしまった。

スキールニル : あー腹減った

フンディン: す、スキーニー

スキールニル : ん?

フンディン: …

スキールニル : なんだまだ暗くなってるのか

フンディン: スキーニー

スキールニル : ?

フンディン: ちょっと付き合ってくれるかい

スキールニル : 何だ一体

フンディン: 久しぶりに
フンディン: 手合わせしてもらえるかな

エル: 何かいろいろ悩んでるみたいだよ

アル: えっ?

スキールニル : 珍しいな

アル: あっ、ごめん…フンディンの話かな?

フンディン: 騒いでも大丈夫な場所へ行こう


*スキールニルとフンディンは、そのまま外に出て行く。

●フンディンVSスキールニル

*二人は砦の外のトンネルまでやってきた。

スキールニル : まあこの辺でいいか

フンディン: うん

スキールニル : いつでもいいぞ


*それぞれに武器を構えて向き合う。少しして、フンディンから攻撃を仕掛ける。二人の武器がぶつかり合って火花を散らす。

フンディン: くっ
フンディン: くう…っ!
フンディン: このっ!

スキールニル : もうやめとけ

フンディン: まだ…
フンディン: まだやれるよ!


*一進一退の攻防だが、わずかにスキールニルが有利か。だがスキールニルの攻撃もフンディンはほとんど防いでいる。

フンディン: くう…

*ほどなくして、二人は同時に剣を引いた。お互いに決定打は入っていないが傷だらけだ。

スキールニル : わかったか?

フンディン: や、やっぱり
フンディン: スキーニーは強いや…

スキールニル : お前どういうつもりだったんだ?

フンディン: スキーニー…
フンディン: ごめん…

スキールニル : 何かいいたいことでもあるんじゃないのか?
スキールニル : じっくり聞いてやるから話せよ

フンディン: 強くなるよ
フンディン: スキーニーが何と言っても
フンディン: 悪かったのはわたしだと思ってるよ

スキールニル : そうか
スキールニル : だけどな
スキールニル : そう思ってるのはお前だけじゃないし
スキールニル : ベリナスのことも考えてみろ・・・

フンディン: …

スキールニル : 仕方ないですむ問題じゃないが
スキールニル : だからといってそう思わないと進めないだろう?

フンディン: それでも悪いのはわたしだ

スキールニル : それでどうするんだ?
スキールニル : これからどうするんだ
スキールニル : 悪いのはお前でもいいけどさ

フンディン: 父上がさ、

スキールニル : ん?

フンディン: 父上があの戦いから帰って来られて
フンディン: しばらくずっと泣いていたわたしを
フンディン: あの時もスキーニーは引っ張ってさ、
フンディン: 「お前がそうしていてどうなるんだ」って
フンディン: 訓練場で叩かれたの、覚えてる?

スキールニル : そんなことあったっけ?

フンディン: あれからわたしは
フンディン: ああやって身の回りの大切な人が
フンディン: 傷つかないようにするために
フンディン: 自分が強くなろうって決めたんだ
フンディン: でもわたしは頭が良くないから
フンディン: すぐそのことを忘れてしまう
フンディン: スキーニーにそれを思い出させてもらいたかったんだ

スキールニル : そうか

フンディン: 今日はもう寝るよ

スキールニル : ああ
スキールニル : ・・・そうだ
スキールニル : 言い忘れてたけどな
スキールニル : もうちょっと踏み込みを深くしろ
スキールニル : 斧は腹で振れ

フンディン: こう?


*フンディンは言われたようにやってみせる。

スキールニル : 腹だって腹

●小さな手かがり

*フンディンとスキールニルが出て行ってから、双子は歌作りをして遊んでいたが夜も更けてきたため床についた。しかしベットについても眠れないアルが兵舎の外に出てみると、門のところでベリナスと出会う。

アル: こんばんは

ベリナス ワッケル: こんな夜更けになにをしているんです?

アル: なんとなく眠れなくて
アル: ベリナスさんは見回りですか?

ベリナス ワッケル: いえ
ベリナス ワッケル: 考え事をしながら歩いていただけです

アル: そう…ですか
アル: まだ…外は危険なのでしょうか?

ベリナス ワッケル: 出ないほうがいいでしょう

アル: そう…ですね

ベリナス ワッケル: スパイン山脈はあなたが思うより危険な場所です

アル: はい…


*と、門の外にフンディンとスキールニルを見つけて二人はそちらに向かう。

アル: おいおい

フンディン: アルドリックさん
フンディン: それにベリナスどの

アル: お前ら傷だらけだぞ

ベリナス ワッケル: お二人とも、だいぶお疲れのようだ
ベリナス ワッケル: 訓練ですか?

スキールニル : まあ決闘のほうが近いかな

フンディン: 少し喝を入れていたところです

アル: ちゃんと手加減してやれよ


*アルは二人を魔法で治療する。

ベリナス ワッケル: ほう、エルドリックさんは神官なのですね

フンディン: ベリナスどの
フンディン: こっちはアルドリックさんですよ

アル: いえ、僕はアルドリックです

ベリナス ワッケル: 失礼…

アル: いえ

スキールニル : そうか
スキールニル : まだ見分けはつかないね

ベリナス ワッケル: ところでフンディン殿は素晴らしい鎧をお持ちだが、
ベリナス ワッケル: どなたから譲り受けたのですか?

フンディン: これはわたしのお師匠様である
フンディン: ガーリン・アイアンフォージ師から譲りけた品です

ベリナス ワッケル: ほう…するとあなたも鍛冶師?

フンディン: まだほんの見習いですが…
フンディン: *といって頭をかく*

ベリナス ワッケル: 私も多少志したことがありました

フンディン: !

ベリナス ワッケル: 以前子供達に鎧を作ってくれと頼まれたことがありましたが私には無理で…

フンディン: そう…でしたか…

ベリナス ワッケル: 防具を作る職人は、命を守れる素晴らしい仕事だと思っています
ベリナス ワッケル: あなたは専門は武器?防具ですか?

スキールニル : 俺もいい武具ほしいなー

フンディン: いえ、まだほんの手習い程度で

アル: 充分硬そうなの来てるじゃないか、スキールニルは

フンディン: まだ何かを作り上げることはお師匠様には許されてもおらず…

ベリナス ワッケル: そうですか…

スキールニル : そうだけどなんかもっとこう
スキールニル : ばこーん!て感じのやつがいいな

アル: 普通とは違うヤツ?

ベリナス ワッケル: 時が来たら、きっと何か生み出せるでしょう

フンディン: そう願っています

スキールニル : 剣ももっとこう

アル: ばごーん…ね

スキールニル : がひょーん!て感じのヤツがいいな

ベリナス ワッケル: そういえば、フンディンという同じ名前の武器職人がいましたね

フンディン: ベリナスどの…
フンディン: えっ?!

アル: へっ?

スキールニル : なんていったらいいのかなあ・・・

アル: ちょっと待ってスキールニル

スキールニル : ?

フンディン: ガイーンの話はまた後で…
フンディン: いまなんとおっしゃられました??

ベリナス ワッケル: 素晴らしい武器を作った方と聞いています
ベリナス ワッケル: フンディン?同じ名前ですね

フンディン: フンディン・アイアンビアード、と…
フンディン: どこでその名前を聞かれたのです、ベリナスどの?!

ベリナス ワッケル: 私は生まれも育ちもミラバールですが
ベリナス ワッケル: 近所に代々鍛冶師をしているものがおりまして
ベリナス ワッケル: アイアンハンマー
ベリナス ワッケル: という家なのですが

アル: アイアンハンマー…

ベリナス ワッケル: そこの先代がフンディンという鍛冶師の武器を
ベリナス ワッケル: 大変褒めていましたね

スキールニル : アイアンハンマー・・・どっかで聞いたような

アル: 俺もそうなんだけど…思い出せない

フンディン: それは… 大変貴重な情報です

ベリナス ワッケル: 息子は私と同じ年頃なんですが、そっちは戦士の道を志していて
ベリナス ワッケル: その弟が、今はアイアンハンマー鍛冶店をやっています

フンディン: それは
フンディン: ミラバールへ行けばすぐに所在もわかりますでしょうか?

ベリナス ワッケル: そうですね、鍛冶屋に聞けばわかります
ベリナス ワッケル: いろいろな意味で、話題性のある一家でしてね

フンディン: なるほど

アル: 他所者でも入れてもらえるのかな?

フンディン: 入るんですよ!

ベリナス ワッケル: 今から行かれるのなら
ベリナス ワッケル: ちょうど今年最初の
ベリナス ワッケル: 市場が開かれているはず

フンディン: !

アル: そりゃいい

スキールニル : 市場かあ
スキールニル : 楽しそうだな

ベリナス ワッケル: アイアンハンマーも店をそちらで出していると思いますよ

アル: 市場なら誰でも入れるだろう

ベリナス ワッケル: ええ、ドワーフ以外の種族にとっては、年に2回の
ベリナス ワッケル: 取引できる場ですからね

フンディン: なるほど…

アル: 何とかそれに間に合うように行かないとね

スキールニル : そうだな

ベリナス ワッケル: 1ヶ月は開いていますから大丈夫です

アル: そりゃいい

フンディン: 早速
フンディン: 明日にでも発とうと思います

スキールニル : とにかくアイアンハンマーに会えば何かわかりそうだな

アル: あぁ、そうだね

ベリナス ワッケル: 今晩はもう遅い。戻りましょう


*皆、砦の兵舎へと戻る。

スキールニル : エルのやつぐっすりだ

フンディン: ふう…

アル: それなりに戦ったからね

エル: Zzz

スキールニル : さて寝るか・・・

アル: うん…

*そして全員、眠りにつく。


●悪夢?それとも…

フンディン: …*すーすー*

スキールニル : ・・・・ん・・・うう


*スキールニルは夢を見ている。今日あった戦いの夢だ。間に合わず、二人の子供は死んでしまった。スキールニルが近づくと、その二人は…アルとエルの双子だった…

スキールニル : うおおおおおおおおおおおお!!

アル: !

エル: ??

アル: なんだなんだ?

エル: どしたどした

アル: 寝言かよ

エル: うるさいなぁ

スキールニル : う・・・うう
スキールニル : (はっ!
スキールニル : はぁ・・・はぁ

アル: おきたのかい?

スキールニル : ・・・・夢か

アル: 随分うなされてたよ

スキールニル : ?!


*スキールニルの枕元に、ファイアービートルの内蔵が置いてある…

スキールニル : 何だこの干からびた
スキールニル : 物体は

アル: これの所為かもしれないけど
アル: えっと…昆虫の内蔵

スキールニル : なんでこんなとこにあるんだよお

アル: ちなみにミスリルホールへの道でいたやつ


*スキールニルがうるさくて起こされたエルが、こっそり置いておいたものだ…。スキールニルはそれをつまむと、仕返しにエルの枕元に置く。

スキールニル : よし寝なおす

アル: しょうがないなあ、エルもスキールニルも
アル: 止めない俺も俺だけど…


*近くで騒いでいる間もフンディンはぐっすり寝入っていた。そしてフンディンも夢を見る。誰かが、どこかわからない暗い場所で一心に槌を振るっている。そこから発する火花だけが、周囲を赤く彩る。フンディンは、その姿を師匠ガーリンだと思った。だが、違う人物のようだ。その人物の顔が見えたが知らない人物だ。すさまじい形相で、その目に宿る光は狂気さえ感じさせる。あまりの迫力に、フンディンは恐怖は覚えた…。

●旅立ちの朝

フンディン: はっ…

アル: ふわぁぁぁ

エル: ふぁあ

フンディン: …はあ…はあ…

エル: 昨日はうるさかったな

スキールニル : よし素振りだ

フンディン: なんだろう…

エル: 早く寝たからいいけどさ

フンディン: なにか… すごく怖い夢を…見たような…

エル: 何時ごろ戻ったんだい?

アル: さぁ?23時くらいかな?

フンディン: あ

アル: なんかあのあと、フンディンも寝言言ってたよ

フンディン: おはようございます、皆さん

スキールニル : ふう

エル: おはよう

フンディン: ?
フンディン: なにをです?

エル: 兄者もいつも寝言言うよな

アル: えっ?

スキールニル : そうだな

アル: そう?

スキールニル : もうくえなーい
スキールニル : っていつも言う

アル: あらら

ラミの母: おはようございます


*と、そこへラミの母がやってきた。目が腫れていて、おそらく泣き明かしたのだろうと思える。

エル: おや

アル: お…おはよう…ございま…す

フンディン: おはようございます

ラミの母: …まだいらして、よかったわ…

スキールニル : ・・・助けられなくて・・・すまなかった

ラミの母: あの子のために闘ってくれたのに私は挨拶もせず…

アル: いえ…そんな…ことは…

フンディン: ご婦人
フンディン: あなたのご子息が亡くなられたのは
フンディン: わたしのせいです

ラミの母: !

フンディン: どうぞ殴ってください

アル: おい…フンディン
アル: 余計なこと言うな

ラミの母: いいえ…それは…それは違いますわ
ラミの母: ただあなたがそう思ってくださるなら
ラミの母: あの子のことを…背負ってくださるなら
ラミの母: それで…いいと…思います…

フンディン: ではその証をわたしの体に刻み込むためにも
フンディン: どうぞご遠慮なく
フンディン: 力一杯殴ってください

ラミの母: 実は…わたし、ベリナスさんを殴ってしまいましたの…

エル: ああ

フンディン: 存じて…おります

ラミの母: 何度も何度も殴ってしまって…もう手も腫れてしまって…
ラミの母: 殴れませんわ…*悲しげにほほえむ*

フンディン: では代わりにベリナスどのに殴っていただくことにしましょう

ラミの母: 待ってください

エル: わがままなやつだ

ラミの母: その前に
ラミの母: これを持っていってください

アル: (ごくり…)

ラミの母: あの子の好きだったパイです
ラミの母: 皆さんに…

エル: ありがたく頂くよ

フンディン: ……

ラミの母: 遺品を拾ってきてくださったんですってね

アル: えっと…ありがたく…いただきます

ラミの母: そのお礼です

スキールニル : ありがとう

ラミの母: あの子の弟も、このパイを好きになるのかしら…

スキールニル : 弟?

ラミの母: ええ…私のお腹の中に…

アル: (もごもご)きっと好きになりますよ

スキールニル : きっと
スキールニル : きかん坊になるね!

アル: (もぐもぐ)こんなにおいしいんですから


*もう食べてる。

ラミの母: それでは、皆さんお元気で…
ラミの母: またいつか、立ち寄ってください

アル: あなたも

スキールニル : 必ずまた来る

ラミの母: …はい


*ラミの母は立ち去った。

アル: うまいなぁ…

スキールニル : うまいな

フンディン: では行きましょう

アル: (ぐすん)

フンディン: ベレナスどのに挨拶を
フンディン: それから出発です

エル: お、発つのか

スキールニル : 俺たちのぶんも挨拶しといてくれ


*といって出て行こうとするスキールニルだが、フンディンに襟首をつかまった。

スキールニル : あ

フンディン: スキーニー!
フンディン: 挨拶もちゃんとできないような人は
フンディン: 大人じゃないよ!
フンディン: ほら、行くよ

スキールニル : しょうがねえな

フンディン: ほら
フンディン: 二人も!


*というわけで一行は二階のベリナスの部屋に。

フンディン: おはようございます

スキールニル : 出発するよ

ベリナス ワッケル: おはようございます
ベリナス ワッケル: 出発なさるのですね

スキールニル : そう
スキールニル : いろいろありがとう

ベリナス ワッケル: いえ、何もしていません

スキールニル : いいんだ
スキールニル : ただの挨拶さ

フンディン: これよりミラバールへ向けて発とうと思います

ベリナス ワッケル: はい
ベリナス ワッケル: 道中気をつけて

フンディン: お世話になりっぱなしで大したお礼もできず
フンディン: 本当に心苦しく思っています

ベリナス ワッケル: いえ、ここは旅人には解放していますから
ベリナス ワッケル: 特別なことは何もしていませんよ

フンディン: いえ、こうして二晩の宿を貸し与えていただいただけでも
フンディン: 身に余るご厚意でした

ベリナス ワッケル: むしろご助力、感謝しております

フンディン: それでは…

ベリナス ワッケル: あのお金をあなたたちに渡すのも私の責任の一部、旅の役に立ててください
ベリナス ワッケル: それでは…

フンディン: 行きましょう


*と、砦の門まで来てフンディンは一人でベリナスの部屋にもどる。

フンディン: ベリナスどの
フンディン: ひとつ

ベリナス ワッケル: はい?
ベリナス ワッケル: なんでしょうか

フンディン: ほんとうならば
フンディン: あの子供の母君に殴られるべきはわたしでした
フンディン: 体調の不良など言い訳に過ぎず
フンディン: わたしの軽率な行いがこの結果を招いたも同然です

ベリナス ワッケル: あなたは責任を感じることはない…

フンディン: わたしを殴ってください

ベリナス ワッケル: そうですか…
ベリナス ワッケル: ですが
ベリナス ワッケル: あなたはもう十分に殴られてるようですね
ベリナス ワッケル: 拳ではなく、自らの責任感に
ベリナス ワッケル: 打ちのめされているように見える

フンディン: ベリナスどの
フンディン: わたしの中にたまったこの思いは
フンディン: 発散しなければならないのです
フンディン: どうか
フンディン: ムンディン・アイアンビアードの息子
フンディン: フンディンの名にかけてお願いします

ベリナス ワッケル: …仕方ありません


*仕方なく、いや本当に仕方なく(笑)ベリナスはフンディンを殴る。ただし本気で。踏ん張ったフンディンだが体が振られるほどの勢いだ。

フンディン: ぐっ…
フンディン: ありがとう…ございます…

フンディン: ベリナスどの
フンディン: もしわたしが
フンディン: その、、、

ベリナス ワッケル: はい

フンディン: いつか一人前の鍛冶士になれたら
フンディン: この砦に… 鎧をひとつ
フンディン: 送らせて頂いても…
フンディン: よろしいでしょうか?

ベリナス ワッケル: もちろん、よろこんでいただきましょう

フンディン: あ、ありがとうございます!

ベリナス ワッケル: その時は、この拳の痛みと共にあなたと子供たちを思い出すことにします

フンディン: それでは…!

ベリナス ワッケル: それでは


*こうしてフンディン達は小さな砦を後にし、ミラバールへの旅を続ける。…おっと、フンディンがベリナスに会っている間に待っていた仲間たちはというと…

スキールニル : あー遅いなあ
スキールニル : ベリナスもかわいそうに

アル: やれやれ…だよ

スキールニル : 今頃殴ってくれ攻撃してんだろうな

アル: なにやってんだかね

スキールニル : 少しは察してやれよ・・・

アル: でも…ちょっと羨ましかったり…(ぼそ)

スキールニル : ん・・・なんだって?

アル: いや…なんでもない

スキールニル : そうか

アル: うん

エル: なにしてんだろな


*フンディンが戻ってきた。

フンディン: おまたひぇしました

アル: あれ?

エル: 何か怪我してるな

スキールニル : ベリナスもかわいそうに

フンディン: 行きましょう

アル: その傷は…治さない方がいいんだよな?

フンディン: いずれ…治ります
フンディン: でも今はこの痛みが…

アル: 分かってる…つもりだよ


*名もない小さな砦での事件がそれぞれに何を残したのか…それはDMにもわからない。ともあれ、一行はミラバールへと向かう。ミラバールまではまだ距離がある。果たしてこのまま何事もなく到着できるのだろうか。


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