サヴェッジ・フロンティアDR1235
最終章
「決着」


●カヴァードホーム解放

ドワーフ軍と共に帰還した一行は、まずカヴァードホーム解放戦を戦う事となった。
ドワーフ軍参戦を予期していなかったオーク軍は不意を撃たれる格好となって、布陣が崩壊。カヴァードホーム軍も援軍に活気付き反撃へと転じた。
包囲を続けられなくなったオーク軍は撤退を余儀なくされ、ついにカヴァードホーム包囲は解かれたのだった。

※スノーリ王の長老と民への演説からここまで、GM一人芝居になってしまう事、すでに集団戦闘のような事は何度もやっている事、時間的な都合、により実際のセッションでも説明だけにした。

グロック: はげしいたたかい、だった!
グロック: はんべい、しにかけたしな!

ハンベイ: それはいつものことだ


そしてカヴァードホーム入りしたスノーリ王を交えて、一行はシティホールの会議室に集合していた。

クロウィン ケルベン: …というわけで、スノーリ王ならびにドワーフの方々のご尽力もあり我々は生き延びることができました
クロウィン ケルベン: 包囲網も解消できましたが、
クロウィン ケルベン: 敵軍の求心力であるリーダーを倒すことはできませんでした

スノーリ グリムボルト: しかしあれだけの被害を与えたのだから、すぐにどうこうはできまい

クロウィン ケルベン: …そうですね、しかしやがてまた一つになる可能性は高い、と見ています

スノーリ グリムボルト: あれだけの優位にありながら、街一つ落とせなかった将軍にオークが再び集まると?

ダーマン: 糾合はするでしょうね。しかし、まだ攻めてくるとは思いにくいのも事実

クロウィン ケルベン: ……まあ、普通に考えればそうなのですが…
クロウィン ケルベン: そもそもオークが多種族を取り込んで連合を作る事自体が不自然、と私は考えています
クロウィン ケルベン: ですから何かある、と見るのが妥当かと。

グロック: いせきに、そのかぎが、あるようなきがする

ハンベイ: ソレを言えば、オークをここまで組織立てて運用できるカリスマ自体が普通じゃ考えられん

グロック: そいつは、できればころしたいな

クロウィン ケルベン: そう。そしてダーマンたちの報告にある遺跡、というのも気になります

スノーリ グリムボルト: ……まあ確かに、一つ目のなんちゃら言うやつが本拠にしているのも似たような遺跡だからな

クロウィン ケルベン: …ご存知なのですか?


ここの会話は現状をPCに説明するためのものなので、続いて説明しておく。

クロウィン ケルベン: ダーマンたちにはまだ説明してなかったかもしれないな
クロウィン ケルベン: 敵の本陣を叩いて
クロウィン ケルベン: 一つ目含め、敗走させたわけだが
クロウィン ケルベン: それによって包囲していた敵オークもちりぢりになって包囲は解消された
クロウィン ケルベン: まだ街のすぐそとをウロウロしている連中もいるが、各個撃破できる状況だ
クロウィン ケルベン: 逃げた一つ目一行をそのままにはもちろんせず、跡をつけた
クロウィン ケルベン: やつらが逃げ込んだ山中の洞窟の場所はわかっている
クロウィン ケルベン: というわけでそこを本拠と睨んでいるわけだ

ダーマン: なぜそこに遺跡があると知っていたのです?

スノーリ グリムボルト: わしらはお前さんらがこの地に来るずっと前から
スノーリ グリムボルト: ここに住み、当然周囲を探索しておる
スノーリ グリムボルト: その中でいくつかの遺跡も発見しておるが
スノーリ グリムボルト: クロウィン殿から聞いたその洞窟というのは
スノーリ グリムボルト: 内部のほとんどが遺跡になっておる場所に繋がっている
スノーリ グリムボルト: かつてわしらはそこを調査したこともある

クロウィン ケルベン: …ふむ。では内部の構造もご存知なのですか?

スノーリ グリムボルト: まあ、だいたいはな

ダーマン: なるほど

スノーリ グリムボルト: わしらが住むにはあまり適さないと判断し、調査は中止になって
スノーリ グリムボルト: 地下からの侵入路は塞いだのだが
スノーリ グリムボルト: それを掘り起こすという手もあるかもしれん

イノーラ: じゃあ、遺跡が何のためにあったのかは、誰もわからないのか

スノーリ グリムボルト: まあ、遺跡に何かあったわけではないからのう
スノーリ グリムボルト: 魔法の道具が落ちていたわけでもないし
スノーリ グリムボルト: 危険な生物がいたわけでもなかった

ハンベイ: 調査もタダじゃできん、というとこだろう

クロウィン ケルベン: ……
クロウィン ケルベン: それは……すごく大切なことじゃないですか?

ダーマン: 出入り口がわかっているのなら火攻めという手もありますね

クロウィン ケルベン: となると
クロウィン ケルベン: 考えられる策はいろいろありますが
クロウィン ケルベン: この機に一つ目を倒しておくべきですね
クロウィン ケルベン: やつが生きている限り安心できない
クロウィン ケルベン: 現状は、敵が連合を組む前に一時的に戻っただけ、と私は見ます

ダーマン: グルームシュの目という名乗りが本当なら死んでも安心できませんしね

クロウィン ケルベン: 連合の求心力がやつならば、それを排除してしまえば同じことは起こらない

スノーリ グリムボルト: 同意だ
スノーリ グリムボルト: しかしその入り口なのだが、掘り起こすための工事は隠密に素早くせねばならんとした場合
スノーリ グリムボルト: もともとが6人程度のパーティーが通るためのもの
スノーリ グリムボルト: そんなに大軍を送り込める道ではない
スノーリ グリムボルト: 素早い用兵をしなければ、いりくぢでふさがれてしまう

クロウィン ケルベン: そうですか……
クロウィン ケルベン: となると考えられる手としては

ハンベイ: 入り口に攻め込んでもらって、その隙に、ってとこが順当か

クロウィン ケルベン: そうなるな
クロウィン ケルベン: 我々が正面から攻撃する
クロウィン ケルベン: その隙に精鋭を送り込んで頭を取る作戦
クロウィン ケルベン: ありがちですが、実際には侵入路が確保できないので使えない作戦です。
クロウィン ケルベン: 今回のような前提がなければ、ですが

スノーリ グリムボルト: ふむ?
スノーリ グリムボルト: では送り込む精鋭は我がほうから出そう。狭い場所での戦闘はなれておる

クロウィン ケルベン: ドワーフ軍の方々はスノーリ王、ウルテン王子を含めて正面から攻撃して欲しいところです。私もそうですが
クロウィン ケルベン: 敵にはかなり印象をもたれていると思いますので
クロウィン ケルベン: 囮にはよいかと。

スノーリ グリムボルト: わしが囮、か。

クロウィン ケルベン: となると送り込む部隊としては
クロウィン ケルベン: ……ダーマンたちに行ってもらうのが妥当、と言いたいが
クロウィン ケルベン: これは危険な任務だ。命令はできないな……

スノーリ グリムボルト: ……
スノーリ グリムボルト: 命令できない?

ウルテン : そういうやり方なのです。あとでご説明します

ダーマン: 我々は一応軍とは別の組織なのです

スノーリ グリムボルト: ふむ?

グロック: おれは、やってもいい

ハンベイ: 構わん

イノーラ: まあ、いいんじゃないか

ダーマン: ここで引くというのは性に合わないですねえ

クロウィン ケルベン: ダーマンたちは実力もそうだが、包囲戦ではそれほど睨みあいに参加していない。オークがこちらの顔を覚えてるとは思わないが。

ダーマン: その点は多少異論もありますが、向いているのは確かですしね

クロウィン ケルベン: 私たちがいなくなれば、怪しまれることもあるかもしれない
クロウィン ケルベン: ……ではすまないが、頼む。

グロック: おれたちなら、おしくないというのもあるしな

クロウィン ケルベン: そんな風に考えたことはないよ

グロック: しんじておいてやろう

ダーマン: 我らなら別行動取っていてもおかしくない分怪しまれにくいでしょう

スノーリ グリムボルト: では、さっそく侵入路を作るとしよう

スノーリ王、デリナール、ウルテンの三人は手順等について相談を始めた。

クロウィン ケルベン: 装備や物資については
クロウィン ケルベン: できるだけこちらでも用意するつもりだ
クロウィン ケルベン: 今回は単なる依頼、という範疇を越えていると思うしね

ダーマン: せっかくドワーフの方から「代用コーヒー」のレシピを手に入れたのですがお預けですねえ…
ダーマン: 物流が回復しないとコーヒーも飲めませんよ。お互い様です

クロウィン ケルベン: だが、出発までは時間がある。作戦開始までは休んでいてくれて構わないよ

グロック: こーひーって、のんだことない

イノーラ: あれは悪魔の飲み物だ

ダーマン: 代用コーヒーのレシピでいってみますか?材料は大豆と大麦だそうです

グロック: あまり、うまそうじゃないなあ
グロック: あくまの、のみもの、なのか

ハンベイ: 麦湯か

ダーマン: そうですねえ。それに塩とか書いてあるし…

グロック: まあいいや
グロック: まきものでもみてくる


一行は作戦に必要な物資の調達や、休息のために一度解散する事にした。

●反撃

前回の会議から数日後、一行は狭い地下道を通っていた。
やがて少し広くなった空間があり、そこには数人のドワーフ兵と、彼らが運んできた物資。そしてデリナールがいる。

ドワーフ工兵: ここに用意されたものは全て、この作戦のためのものです。あなた方は自由に使ってください。

デリナール: この先は侵入経路になっておる。準備はここで済ませておくように。

グロック: まきものは、いのーらに、あげよう

イノーラ: どうも

ダーマン: 作戦の内容を確認したい。

デリナール: 敵の本拠地である遺跡に侵入して、敵軍頭領"一つ目のグロウト"を倒す事だ。
デリナール: 迅速な行動が求められる。作戦が始まれば休む余裕はなかろう。
デリナール: 注意せねばならんのは、敵の将軍アーガイルとかいう輩だ。正面のホーム軍につられてくれれば良いのだが……。遺跡内で出会った場合、避ける手段はない。倒さねばならんだろうな。

ダーマン: ホーム軍の準備は?

デリナール: すでに陣を張り、待機しておる。行軍が始まれば知らせを受けることになっておる。

グロック: ふうむ

ダーマン: 準備は良いですか?

グロック: じゅもんを、えらぶよ


実際には外の行軍に合わせて地下のPC一行が動く、という流れだが、ゲーム的にPC一行がゲームを進行させると事態が進展するようになっている。

ダーマン: では行きますか

デリナール : 幸運を

ハンベイ: うむ


一行はドワーフの工兵に先導されて狭い穴を苦労して進む。
やがてドワーフ工兵が止まり、手で「この先がそうです」と合図してきた。
それから最後の壁を、できるだけ静かに壊す。
開いたところから出ると、どうやら物置のような部屋である。まだ遺跡の中ではないようだ。

グロック: くもか・・・

ハンベイ: 骨が出たな

グロック: ほねなら、おれもだせる
グロック: だそうか?

ダーマン: 蜘蛛にネズミですか…使われていない?


部屋に入った一行は飢えて凶暴化したネズミや巨大クモに襲われたが、それを撃退した。
さらに据え付けられた扉を開いて外に出る。
洞窟を利用した住居のような感じで、オークたちの話し声や物音が聞こえてくる。
通路を進むと、完全に武装を解除して雑談しているオークのいる部屋にやってきた。

グロック: 不意打ちできる

一行は不意を撃って、部屋のオークを倒した。

ダーマン: 意外と律儀にドア付けてますねえ

ハンベイ: 元からあったのかもしれん

グロック: おーくを、ぞんびにしてやったぞ

ハンベイ: いきなり御本尊とはいかんな

ダーマン: 地下に行くと思っていましたが上へ行く通路ですね


一行は上へと向かう通路を発見した。

グロック: てうすだな

ダーマン: いよいよ上に行くしかないか

ハンベイ: そうらしい


一行が上に行くと、広い空洞へと出た。
周囲の様子から、恐らくこの本拠地の正面入り口として使われていた場所だろう。
外へと続いていると思われる頑丈そうな扉の向こうでは、今まさにオーク軍が出撃しようとしているらしい声や気配がする。

ダーマン: こっちが本隊のようです
ダーマン: 奥に行きましょう

ハンベイ: 罠でも仕掛けておけば助けになるんじゃないか


もちろん敵軍に気が付かれてしまえば作戦が台無しになるので、一行は忍び足で正面入り口を通り過ぎて、さらに上へと進む。
正面入り口の上は広めの洞窟になっていて居住施設やら備蓄品倉庫やらが置いてあり、鍵の掛けられた扉も多いため、進むには回り道したり扉を壊したりという作業が必要になった。

※ダンジョンのシーンであまり会話がなく、OOCでの相談がメインがなので割愛。

一行は洞窟の外に出て、本拠地とされている山の外側に出た。
眼下では、今まさにカヴァードホーム・ドワーフ連合軍とオーク軍が戦っているところである。
その中にクロウィンやウルテンの姿も見える。
敵の頭上を取った一行は援護をしようかと考えるが、一行の姿に気が付いたクロウィンは「先に進め」と合図を送ってきた。
一行はその指示に従い、先に進む事にした。

一つ目のグロウトへの謁見の間と思しきところまで一行がやってくると、そこにはアーガイルが待っていた。
もはや勝ち目がないことは分かっているのか、おちゃらけたような雰囲気はなく、ただ武器を構えて打ちかかってきた。
アーガイルは強敵であったが、一行は全力を持ってこれを撃退し、謁見の間よりさらに奥へと進む。

●光る杖

さらに奥まで進んできた一行。

グロック: ふむ

ダーマン: ふむ

グロック: ここは・・・

ハンベイ: つながってるクチか?


今まで見てきた遺跡と同じような場所に出た。
やはり魔法のものと思しき光が、各所で輝いている。

グロック: ひかりに
グロック: さわるな
グロック: いやな、よかんがする
グロック: ひかりに、さわらずにいこう

ダーマン: 扉が3つ
ダーマン: 光がある物とない物

ハンベイ: ないのはここだけらしいな


扉を調べたあと、ハンベイが扉を開けようとするが魔法的なもので施錠されているようだ。

グロック: どうだ

ハンベイ: ダメみたいだな

ダーマン: うしろの光も気になりますね

ハンベイ: 誰か青い光のとこに立ってみるか?

グロック: あ・・・

イノーラ: あ、あいた

ダーマン: むう


扉はグロックが近づくと自然に開いた。

ダーマン: とりあえず先に行きましょう

グロック: なんで、あいたのかわからんけど、あいた


先に進むと、また扉の部屋に出た。
だがやはり、グロックが近づくと道を示すように扉が開く。

グロック: あく

そうしてさらに進んでいくと、広い部屋に出た。

グロック: ここは・・・

そこは今までにない魔法の輝きで満たされ、たくさんの光が踊っている。

ダーマン: いますね

そしてその光の中、その光景に驚いているオークが一人いた。
一つ目のグロウトである。

一つ目のグロウト : これは一体どうなっているのだ?
一つ目のグロウト : ム
一つ目のグロウト : 貴様らは……いったいどうやってここに
一つ目のグロウト : ここには入れないはず……

ダーマン: まあ、普通に入り口からですよ

ハンベイ: どうしてだろうな?

ダーマン: どちらでもかまいますまい。現に我らはここにいる

一つ目のグロウト : まあよい、この光の意味も、貴様らがここにこれた意味も、倒してから考えるとしよう
一つ目のグロウト : む、そのつえ……

グロック: おぐろくの、つえだ

一つ目のグロウト : オグロクの杖か、そうか、オグログとつながりがあるやつがそちらにもいて
一つ目のグロウト : それでここまで来れたのか。やつは何をたくらんでいる?

グロック: しんだよ、やつは
グロック: おれがくいころした

一つ目のグロウト : とぼける気が、まぁ良い

グロック: しんだのはじじつだ

一つ目のグロウト : 貴様を殺れば計画とやらも潰れるんだろう


グロウトは武器を構えると、一行に襲い掛かってきた。
アーガイルとの戦いで消耗していた一行にとってグロウトは強敵であったが、なんとか打ち倒す事が出来た。
そしてグロウトの死を確認しようとした時、突然にグロックが持っていたオグロクの杖が光り輝く。
その光は一行を包み込んだ。

●魂の世界

ハンベイ: どこだ?

イノーラ: なんだいったい

グロック: この、つえの、せいか


どことも知れぬ場所に一行はいた。
底のない空間の中に浮いているような場所である。
と、そこへ戸惑う一行の前に一人の人物が姿を現した。

アズフール : おっと
アズフール : やあ、どうもタイミングが微妙だったみたいだな
アズフール : ちょうど近くにいたオークも一緒にここに入れてしまったようだ

イノーラ: あんたは誰だ

グロック: ・・・

ダーマン: あー…

グロック: どういうこと?

ダーマン: 以前お会いしたときは彼の姿でしたからわかりませんでした

アズフール : そうか、そういえばそうだ
アズフール : 私はアズフール。グロッグやオグロクの師匠。前にあったときは死んでたよね
アズフール : まあ今も正確には死んでる

グロック: ここはどこなんだ

ダーマン: ということは我らも…ですかね?

ハンベイ: ……ずいぶんと軽い御仁だな……昔からそうなのか?

グロック: せんせいは、いつもあんなだ

アズフール : 君たちの場合は
アズフール : 半分死んでるって感じだろうね。おもしろいだろ
アズフール : そうでもない?
アズフール : まぁいいさ

ダーマン: 個人的にはあまり

ハンベイ: まだ死ぬわけにはいかんのだが

アズフール : オグロクが倒された時に私もここに飛ばされて
アズフール : いろいろとわかったことがある
アズフール : まず杖はあくまで制御装置に過ぎず、アーフィファクトの本体ではなかった
アズフール : アーティファクト。死んでるからかんじゃったよ

ハンベイ: ソレは関係ないだろう

ダーマン: 肉体ないのに?!

アズフール : あくまで本体は、この地域に点在する遺跡と、それをつなげたもの
アズフール : それらが起動したとき、範囲内に効果がおよぶんだ

ダーマン: で、遺跡の能力とはなんです?

アズフール : それは作られたポケットプレーンに、範囲内で死んだ者の魂を保管すること

グロック: ・・・ということは・・・

アズフール : つまり有効範囲内で死ぬと、神の所とか本来行くべきところにいけない
アズフール : 杖が全てを制御可能になるには、中央制御室、つまりさっきまで君たちがいたところにいく必要があった

ダーマン: ふむ…それにどんなメリットが?

アズフール : たぶん本来は、単に死なないようにするためじゃないかな
アズフール : 一時魂がここに保管されるけど
アズフール : 杖を使えば好きな肉体に戻せるし

グロック: まじっくじゃーの、じゅもんににているな

アズフール : なにかの手段で生前の肉体を復元できればそこに戻っても良い

ダーマン: しかし、制御できるのは杖の持つ者だけですか

アズフール : そうなる

ダーマン: ろくでもない装置だ

グロック: もっているのは、おれだけど・・・

アズフール : そして杖の使い方はそれだけじゃない
アズフール : このポケットプレーンにある魂は好きに使えるんだ。操ったり人格変えたりもできるし、単純に魔力に変換してしまうこともできる

ハンベイ: ……本当にろくでもないな

アズフール : 本来はそういう機能は制限されてて使えないようになっていたみたいだけど
アズフール : オグロクはいま必死にそれを使えるようにしようとしてる
アズフール : たぶんもうすぐ外れる

イノーラ: 今? 死んだんじゃないのか

グロック: やつは、いまどこに?

アズフール : 私がこのプレーンにいることは、まだ気がつかれてないんだけど
アズフール : それでちょっと杖の力を解放する瞬間を利用して君たちを呼んだ
アズフール : どうなるかわからなかったけど読みどおり
アズフール : 杖も二本になったね。

ハンベイ: 2本?

アズフール : ああー今現実世界だと
アズフール : グロックの身体をオグロクが使ってて、当然本来の杖をもってる

グロック: なるほど

ダーマン: まさにマジックジャーですか

アズフール : だけどこっちにきた精神体のグロッグは、やはり杖を持ってる
アズフール : だからそれを使って、オグロクの本体の場所を探したり、
アズフール : 君たちが操られたりしないようにできる
アズフール : 今はオグロクは、勝った気まんまんだから不意を撃てるかもしれないな

グロック: なるほど・・・

アズフール : というわけで、その杖を貸してくれないか


グロックは渋っても事態が進展しないと思ったのか、杖をアズフールに渡した。

アズフール : なるほど
アズフール : これなら使えそうだな
アズフール : 現実世界にある杖の、こちら側での本体があるらしい
アズフール : そこにオグロクがいるにちがいない
アズフール : そこの扉の先を、その場所とつなげておこう

グロック: たいしたことじゃないよ
グロック: ころすあいてが、ひとりふえただけだ

アズフール : ところで
アズフール : 言っておくけど
アズフール : 私はいかないよ

グロック: ずっとここに?

アズフール : 君らが負けた場合を考えておかないといけないじゃないか
アズフール : 自分で行く事ない

グロック: どっちでも
グロック: おれは、あいつをほろぼす

アズフール : まぁ、うまくやってくれ

グロック: すこしやすんでおこう

アズフール : 最近死んだやつは
アズフール : わりとそのままの感じで出てくるかもしれないから気をつけて

ハンベイ: いくか

ダーマン: ええ

アズフール : なにが出てくるかわからないからな。気をつけて


一行は扉を開いた。
一瞬のめまいのような感覚を覚えた後、地面に降り立つ。
巨大な樹を中心とした場所で、その根元にオグロクらしき人物が熱心に何かをしている。

イノーラ: 森か

一行は不意を撃つべく、こっそりと忍び寄る。

オグロク : なんだ?
オグロク : どうなってる?

ハンベイ: さてな?


オグロクが一行に気が付いて振り返ったとき、すでに一行はオグロクのすぐ近くにいた。
いかに強力な魔術師とは言え、なんの準備もなければただのハーフオークである。

オグロク : お前らは……なんだいったい
オグロク : 死者ではないのか?

ダーマン: まあ、何でも良いでしょう。とりあえずあなたの敵です


オグロクは逃げ出した。
そして何事か命じると、アーガイルとグロウトが現れた。
両者とも自意識はなく、一行に向かってくる。
オグロク、アーガイル、グロウトという強敵を相手に一行の戦いが始まった。
しかもアーガイルやグロウトは倒されてもすぐにまた新しいものが出てくる。
死力を尽くした戦いの果てに、ついに一行はオグロクを倒す事が出来た。

グロック: ほんたいもてにはいったな

アズフール : 終わった?


と、そこへ良いタイミングでアズフールが現れた。
むろん、このタイミングを計っていたわけだが。

アズフール : おや、死んじゃってるな

倒れたオグロクたちを見るアズフール。

アズフール : まぁ、死んだような気分になっただけで実際には死んでないんだけど
アズフール : あー、2回くらい死んでるね

グロック: どうする?

アズフール : また生き返る前に
アズフール : 杖を私に
アズフール : 私がこれを制御してみよう


アズフールは色々と調べ始めた。

アズフール : ふーむ
アズフール : へー
アズフール : なるほど
アズフール : ……この遺跡は、このままにしておくのは良くないな。
アズフール : 完全に制御下に置かないと、私もオグロクの二の舞がありうるからな
アズフール : とりあえず君たちは元に戻すことにするよ

ダーマン: 壊せるなら是非壊してください

アズフール : 遺跡はもう一度停止させておく。
アズフール : 私はここで、しばらくこいつを研究してみたいので残る事にするよ
アズフール : …まぁ、そういうことでいいかな

グロック: めんどうなことおこさないでくれれば・・・

アズフール : 杖はグロッグに預けておくよ。
アズフール : それでいいだろう?

ダーマン: それ以外に選択肢もないわけですし

ハンベイ: ここから帰るほうが問題だしな

アズフール : それじゃあ君達
アズフール : 面白いものをくれてありがとう。それでは、また。


いつもと変わらない様子でアズフールが手を振ると、一行は意識が遠のくのを感じた……。

●帰還

夢から覚めるように、一行は戻ってきた。
遺跡は再び沈黙しており、周囲は真っ暗である。
近くには一つ目のグロウトの死体もあった。
一行は証拠の品を手にし、遺跡を後にした。

グロウトが冒険者と相打ちになって死んだ、という一報はオーク軍を駆け巡り、ほとんどのオークは勝ち目なしと見て敗走した。
敵本拠地での戦闘は、カヴァードホーム・ドワーフ連合軍の勝利となり、一行もまた兵士たちと共にカヴァードホームに帰還した。

ハンベイ: 結局、この騒動は一体なんだったのかわからんな

グロック: そうだな

ダーマン: 全くですねえ

ハンベイ: 皆、何も語らないまま死んでいった

イノーラ: 私はいまだに理解できてないんだが・・・

ダーマン: 言いたいことだけ言ってこちらの疑問には答えてませんね

グロック: なにかたくらんでないといいけどな

ダーマン: 全く、迷惑だ

ハンベイ: ま、オグロクとやらの目的だけはなんとかわかったカンジはするが……


そして一行がシティホールに顔を出すと、クロウィンたちが待っていた。

クロウィン ケルベン: やあ、もどったか!

ダーマン: 戻りましたよ

クロウィン ケルベン: 奥にいったまま君たちが戻らないので心配したが
クロウィン ケルベン: 敵はちりぢりになって敗走していった
クロウィン ケルベン: グロウトを倒してくれたんだろう?

ダーマン: ええ
ダーマン: 奴の剣です

ウルテン : さすがだね

スノーリ グリムボルト: これで一安心といったところか

ハンベイ: 目的も何も語らぬまま死んでしまったが……

クロウィン ケルベン: しかし、そういったものじゃないかと私は思うよ
クロウィン ケルベン: もし私がオークに倒されるときに、自分の主義主張を語るとは思えないしな

スノーリ グリムボルト: まぁ、それはそうだが、しかし
スノーリ グリムボルト: やつがオークの部族を束ねて我々と争っていたのは事実
スノーリ グリムボルト: そして我々が勝利した
スノーリ グリムボルト: それでわしには十分だ

グロック: ・・・

ダーマン: まあ、グロウトについては考えなしの馬鹿なんじゃないかと思いますよ
ダーマン: そそのかされたふりをして、事態を操れるつもりで暴れ回りたいという欲求を満たしていたんでしょう

イノーラ: 話を聞いてなかったしな

ウルテン : 目的…というのは確かに気になるけれど、グロウトというのは遠目に見たところ
ウルテン : 体格も他のオークより大きかったし、やはりオークとしては実力のある指導者だったんじゃないかな
ウルテン : その武器にしたって、普通のオークがもっているようなものじゃない
ウルテン : やつが、神に選ばれた者だったというのは本当だったのかも……

デリナール : ウルテン、考えすぎだ

クロウィン ケルベン: ……いまは、この勝利を喜びましょう。
クロウィン ケルベン: 遺跡の話とか、どうなったのかそういえば聞いてないな

ダーマン: どうにもなっていません
ダーマン: 制御は出来ませんし、いつの間にか起動も止まってます
ダーマン: たぶんこれからもどうにか出来たりはしないんでしょう

クロウィン ケルベン: ホーム地下の遺跡はまた光が消えていた。

ハンベイ: そうだな、数寄者がいじってるだけだ

クロウィン ケルベン: そういうものか……

ダーマン: オークの侵攻以上にどうでも良いですよ。あんなもの

クロウィン ケルベン: まぁ、細かい話はまたあとで聞くとしよう。今日は好きに休んでくれ
クロウィン ケルベン: また、オークとの戦いは続く。今までのような脅威ではなくとも、ね

スノーリ グリムボルト: それでは、わしは退出するとしよう。
スノーリ グリムボルト: 今後のことは、また話し合わねばならん。
スノーリ グリムボルト: それまで、少し時間をもらうぞ。


そう言ってスノーリ王はデリナールを伴い、部屋を出て行った。
ウルテンも付いていこうとしたが、一行のほうに振り返る。

ウルテン : みんなはこれからどうするんだい?

グロック: とくにすることはない・・・

ウルテン : 俺は鉱山に戻って、またここに戻ってこれるように話し合いたいと思う
ウルテン : だからここにいるなら、また会えるとおもうけど

ダーマン: そうですねえ。しばらくは掃討戦に参加ですかね

ハンベイ: さてな、そのときが来るまでは生き抜かねばならんが……
ハンベイ: (……あの人が討ちにくるその時までは……

ダーマン: ふむ…

ウルテン : そうか。それなら、また会おう
ウルテン : 君たちが俺の命の恩人てことには変わりないし、その恩返しはまだしてないからね!

イノーラ: じゃあな

ダーマン: さようなら


ウルテンは再会を約束して、自らの王の後を追った。

クロウィン ケルベン: 私も疲れた。少し休むとしよう。
クロウィン ケルベン: それじゃあ、また明日。

ダーマン: ええ


そうしてクロウィンも部屋を出て行き、それに続いて一行もシティホールを出た。
カヴァードホームの街はだいぶ破壊されてしまったが、それでも戦いの日々がもたらす重い空気はすでに無かった。
再び活気を取り戻した開拓者の街は、失ったものを取り戻すためにまた前進を始めるだろう。

ダーマン: 全く嫌になりますねえ。明日からもしばらくは鎧を着て過ごすことになりそうです

グロック: おーくをころすのは、いいことだ

ハンベイ: ま、ソレも仕方がなかろう

ダーマン: なにより、それが片づかないとコーヒーも入ってこないでしょうからね

イノーラ: あんなもののどこがいいんだ

ハンベイ: 代用でなんとかしておけよ

ダーマン: イノーラの飲んだのは代用ですよ。本物はもっと深みのあるうまさです

グロック: あんなどろみず、なにがうまいんだ

ダーマン: …ふう。まあ、いいでしょう。事が全部済んだら本物を飲ませて差し上げますよ


<完>


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