サヴェッジ・フロンティアDR1235
第四章 ウルテン
「ウルテンの戦い」
●抜け道
ウルテン : 抜け道に行く前に、これを渡しておきたい
ウルテン : 抜け道で使うカギだ
ウルテン : 叔父さんは戦えないし、俺は叔父さんを守る
ウルテン : だから安全が確保されるまで叔父さんを守って動かないから
ウルテン : カギはみんなで持っていてくれ
抜け道はダンジョンになっており、ここでのルールを説明しているセリフ。
NPCであるウルテンとデリナールを護衛しつつ移動していく事になるため、PC達が安全を確認して呼ぶまで動かないということである。
逆に、呼ばれなければずっと待機してしまうため、そちらで何かあっても分かりにくくなる。
グロック: じゅんびいいぞおれは
ウルテン : じゃあ、いこう
ウルテン : ここから北西のほうだ
グロック: はんべい、いしになれ!
グロック: はんべいの、せきぞうだ
ハンベイ: 動けるがな
グロック: そこがいいところ
ストーンスキンの呪文のこと。
ハンベイ: 熊か、殺気だってるな
抜け道の入り口となる洞窟や、その内部にはドワーフ達が放った攻撃的な生き物もいる。
グロック: くまはすげえな
ウルテン : ここだ
ハンベイ: 入り組んでるな
グロック: わなとか、あるかな?
ダーマン: あるでしょうねえ
ウルテン : 安全が確保されたら呼んでくれ
グロック: わかった
ダーマン: 道がわかりませんね
ハンベイ: そうだな
グロック: あんぜん、かくほがやくめだろ
グロック: すこしさぐらないとじゃないか
ゲーム的にも道案内されてしまうとダンジョンの意味がないし、というのもある。
ともかく、PC一行はダンジョンを探索しつつ、放し飼いにされている虫やPCから反撃できない位置から射撃してくるドワーフの衛兵やらを相手にしつつ先に進む。
イノーラ: 何で虫なんか放し飼いにしてるんだ!
グロック: おれらの
グロック: じゃまするため?
ダーマン: 鍵があいません
ダーマン: ここまででOKなのかな?
ハンベイ: さあな
グロック: ちょっと、このさきいくか?
ダーマン: そうですね
ダーマン: とりあえず敵は見えません
ダーマン: 深いな…
グロック: どんどんしたいってるぞ
グロック: うるてんよぶか?
ハンベイ: そうだな
イノーラ: なんだか落ち着かなくなってきた
グロック: まよったらでられなくなるかも
というわけでウルテン達を呼ぶと、二人はすぐにやってきた。
グロック: みちはこっちでいいのか?
ハンベイ: 道はあってるのか?
ウルテン : うん
ウルテン : この先に
ウルテン : 遺跡があって
ウルテン : それをぶち抜いてるんだ
ウルテン : だからそのまま遺跡を抜ければ平気だ
グロック: じゃ、ここでまってろ
グロック: くろにぃ、おいていく
グロック: なにかあったらこいつころせ
グロック: おれにはわかる
殺さなくても……
ダーマン: となるとあの大きなトンネルはどこへ続いていたんです?
ウルテン : トンネル?
ダーマン: 一層にあった地下へのトンネル
ハンベイ: 開けたところの
ハンベイ: 中央の
ウルテン : ああ、二層目には扉を通過するものを見張る見張りの詰め所があるよ
ダーマン: ふうむ
というわけで再び前進する一行。
やがてウルテンの言う遺跡に到達した。
ダーマン: む?
ダーマン: これは…
グロック: なんか、あれに
グロック: にてる
ダーマン: ホームと同じタイプの遺跡?
グロック: うん、それだ
ハンベイ: 様式が似ている?
ダーマン: …様式どころか
ダーマン: あの光
ダーマン: こちらも起動している
カヴァードホーム地下の遺跡を小さくしたような遺跡で、魔法の光が各部に灯っている。
イノーラ: …この辺一体を支配していたんだな
グロック: おぐろくの、ねらいはなんだったのか・・・
ウルテン : これは…
ウルテン : なんだ一体?
グロック: ん
グロック: ここ、しってんじゃないのか
ウルテン : いや、こんなふうに光っているのは始めて見た
ハンベイ: ふむ
ウルテン : 叔父さんは見たことあるかい?
デリナール : いや、わしも始めてみるな
ウルテン : 俺が最後にここに来たのは
ウルテン : 1年くらい前だろうか
ウルテン : 見回りで来たけど特にいつもどおり真っ暗だった
グロック: これ・・・
グロック: おなじ「ような」、いせき、じゃねえ
グロック: おなじだ
グロック: おなじなんだ
ダーマン: なんと
ウルテン : 同じ遺跡ってことかい?
グロック: この、つえ
グロック: なんかかんけいあるかも
グロック: おなじだ
グロック: このひかり
グロック: このひかりが、そうだといってる
ハンベイ: つながってるのか?
ウルテン : この光、前の時もそうだったけど
ウルテン : 何か意味があるんだろうか
ウルテン : 適当な感じには見えないな
ダーマン: 少なくとも恋人達を和ませるためではないでしょうね
グロック: ぱたーんが、あるってことか?
イノーラ: オレンジ色のところだけ火が消えているが、何かあるのかな
デリナール : 気になるのは分かるが、今は先を急ぐときだ。見張りが倒されていればすぐに気づかれる
グロック: そうか・・・おってか
ダーマン: ふうむ
今はじっくり調べている時ではないので、一行はとりあえず遺跡を後にして先へ進む事にした。
●師匠との対決
遺跡を抜けた一行は狭い洞窟を進み、扉の前までやってきた。
ハンベイ: 終点か?
ウルテン : ここから先は
ウルテン : もう鉱山と言ってもいいくらいのところだ
グロック: おお
ウルテン : ……みんな、ここまででいい。ここから先は俺たちドワーフの問題だ。
グロック: ほんとにだいじょうぶなのか?
グロック: ころされたらそれまでだぞ
ウルテン : 必ず援軍を連れて行くと約束するから、追っ手が来ないうちに戻ってくれ
デリナール : ……わしはここまでしてもらって申し訳ないが、それでもお前さんたちを鉱山に入れるのは気が進まない
ダーマン: そうですか。では幸運を
ウルテン : すまない。この先は何があるかわからないから危険すぎるんだ
ハンベイ: じゃ、なおさら手がいるだろう
ダーマン: 危険なのなら置いていけませんが
ウルテン : ……たとえドワーフが鉱山に閉じこもる事に決めたとしても、俺は必ず行くよ
グロック: ・・・・
グロック: おーくが、ここをねらってるかもしれないよな
グロック: なんでって、あの、おぐろくが
グロック: いせきにいてなにかしてた
ダーマン: ここのことはつかんでいるでしょうね
イノーラ: 決めたのなら、あまりおせっかいを焼いてもしょうがないとは思うが…
イノーラ: 一人で帰るのも寂しいしな
ダーマン: 危険があるのなら置いてはいけません
グロック: いざとなったらおれ、へんしんするよ
グロック: どわーふに、ばけるよ
ハンベイ: ホームとここの遺跡がつながってるなら、ホームが落ちれば一蓮托生だな
ウルテン : ……しかし、みんなを巻き込むわけには……
グロック: ここまでまきこんどいて、いまさらだな
ハンベイ: もう巻き込まれてる、十分にな、釣りが出るくらいだ
グロック: まきこみたくないなら、さいしょから
グロック: こうざんにくるなよな
グロック: と、いうことだよ
ダーマン: グロックの言うとおり一蓮托生なのですよ
デリナール : 確かに、いまここで引き換えさせても追っ手と鉢合わせはあるかもしれんな……
デリナール : ここは、わしらのほうが覚悟を決めるべきかもしれん
グロック: とくに、おれはかならずころされるだろうしな
ダーマン: むしろ一般人のいる鉱山の方が手は出しにくいのではないですか?
ハンベイ: 軽々しく無法も働けまい
デリナール : 人間をホームに入れれば、もう後戻りはできない
ウルテン : 叔父さん……
ウルテン : そうだね
ウルテン : みんなの言うとおりだ
ウルテン : もうここまできたら行くしかない
ウルテン : 最後まで一緒に行こう
意を決したウルテンは、鉱山への扉を開いた。
ウルテン : では行こう。きっと待ち伏せがあると思うけど…
ダーマン: ふうむ
グロック: まちぶせか・・・
中に入ると少し広くなっている場所に出た。
そしてそこにはドワーフが8人ほど待ち構えていた。
ウルテンがここから来る事が分かっていた人物がいたのだ。
ウルテン : …
グロック: ほんとにまちぶせがあったか
アゴナル : やはりこの道を来たかウルテン…
ウルテン : …師匠
アゴナル : 事の真相は、全て聞いた
ウルテン : …では、解放反対派がアルテンを殺したことも?
アゴナル : うむ……
ウルテン : ならば、俺からも聞きたいことはあります
ウルテン : 師匠は解放反対派だ。そうですね
アゴナル : うむ
ウルテン : そして俺を殺すために……仲間を差し向けた
アゴナル : 否定はできん
グロック: !
ハンベイ: なんと……
アゴナル : 王子の死がやつらの謀殺であったことを知ったのは後からだったが
アゴナル : しかしわしの考えはかわらない
アゴナル : お前達若い世代は知らないだろうが
アゴナル : わしらがこの鉱山に居を築くまで
アゴナル : どんなに苦しい旅があったか
アゴナル : 今、この鉱山を失って、同じ苦しみを味わうなど耐えられん
ハンベイ: このまま座して見ていれば、そうなりかねんぞ
ダーマン: 失わないための同盟であると私は思うのですが
グロック: もう、おそい
アゴナル : 王子謀殺の件は事が済んだら王にきちんと報告して沙汰を待とう
アゴナル : だが今は、アルテン王子は自らの信念に従って行動し、命を落としたと伝えたい。
アゴナル : ウルテンよ、王子の兜を脱いでハンターに戻るのだ
ウルテン : …
ウルテン : …俺は
アゴナル : でなければ、わしらは剣を交えることになる
グロック: なぜ、あらそう
グロック: どうぞくどうし、ころしあうなど、おーくの、やることだ
グロック: ひげのはえた、おーくにすぎん、おまえらは
ハンベイ: 真実を知っていながら、あちらに戻れるのか?ウルテン?
ハンベイ: 師の間違いを正すのは弟子の役目だぞ
アゴナル : 何もわからぬ小僧が何を言うか。始めから何も持たないやつらだ。こいつらは。失うものも守るものも。
アゴナル : ただなんとなく、そういう選択をしているにすぎない
アゴナル : 確固たる信念などない
イノーラ: 何も持たないというわけではないと思うが
ハンベイ: ……失くしてしまったからこそ、語れることもあるのだ
ウルテン : ……
ダーマン: 失礼ですね。私は街で生まれ街のためにここに来たのですよ。それがドワーフ族の我らに対する礼儀ですか?
グロック: はなしはおわりか? しにたいやつから、こい
アゴナル : ふん。ドワーフ族などという言葉でひとくくりにすればわしがひるむとでも?
ダーマン: グロックの言った事は当たっているようです。ここにいるのは誇りある盾のドワーフではない。
ダーマン: 見た目が変わったオークです
グロック: おれは、おーくは、だいきらいだ
アゴナル : それ以上、わしらを侮辱するとどうなっても知らんぞ。ウルテンに免じていまここに足を踏み入れたことを許してやっておるのに
グロック: おれは、このさきをいくつもりだ
グロック: おまえらは、どうする?
ハンベイ: 無論
グロック: つまりはそういうことだよ
アゴナル : ウルテンよ、そやつらをここで引き返させれば命は助ける。兜を脱いでウルテンに戻るときだ
ダーマン: この地の主でもないあなたに言われる筋合いはありません。
イノーラ: やはり、一度決めたらやり通さないとな
ダーマン: もし我らに何か警告したいのではあればこの地の王の言葉を持ってきなさい
ウルテン : ……ここは俺たちドワーフの土地だ。そんな言い方はやめて欲しい
ウルテン : だけどダーマンのいう事には一理ある
ウルテン : 王に真実を話し、そしてどうするかは
ウルテン : 王が決めるべきことだ
ウルテン : 俺たちが、アルテンが……どう死んだとか
ウルテン : どんなやつだったとか……勝手に話を作っては
ウルテン : 王に対する裏切りだ
ウルテン : 俺は真実を伝えにやってきた
ウルテン : 王にだ。師匠じゃない
ウルテン : どうか我々を通してほしい。師匠!
アゴナル : ……
ウルテンの師匠アゴナルは迷いの表情を見せた。
彼自身も、今回の件について完全に納得しているわけではないのだ。
グロック: おーくは、いせきに、てをのばしはじめているぞ
グロック: ここが、やつらにせめられるのも、じかんのもんだいだ
ハンベイ: すべては王の采配が第一だろう
デリナール : …オークは長年わしらの敵だった。そいつらに王子を売り渡した謀、それだけでわしは許せん
ウルテン : オークはドワーフだけでも人間だけの敵でもない。共通の敵だ
ウルテン : 俺は人間の街で彼らが必死に、勇敢に戦うのを見てきた
ウルテン : 人間が戦っているのに、俺たちは鉱山に閉じこもるんですか?
ウルテン : それでいいんですか!
アゴナル : ……
両者とも沈黙したまま数分が過ぎ、折れたのはアゴナルのほうであった。
アゴナル : ……行くがいいウルテン。
アゴナル : わしは納得したわけではない。が、今はお前に賭けてやる
ウルテン : 賭ける…
アゴナル含むドワーフ達は道をあけた。
ウルテン : 行こう。いまのうちに
ダーマン: では
グロック: たたかわなくて、すんだか
ダーマン: まあ、それですんで良かったですよ
ハンベイ: なによりだ
グロック: きにいらないやつらだ
ダーマン: それはその通りですね
●ドワーフの王
一行が狭い通路を抜け出ると、石造りの立派に飾られた部屋へと出た。
グロック: ほう
ダーマン: ふむ
ダーマン: もう少し天井が低い物だと想像していましたが…
ハンベイ: ここは?
ウルテン : ここは王の部屋だ
ダーマン: …
ダーマン: ものすごいダイレクトですね
ウルテン : 本当の個室はまだ奥にあるけど
ハンベイ: ……いきなりとは
グロック: おうじ、きかんせり
グロック: てとこだ
ウルテン : ここから外に出ると
ウルテン : 確実にみんなに見つかる
デリナール : まずは王子の部屋に隠れよう
グロック: かくれないと、だめか
デリナール : いつか王がおもどりになる
デリナール : それをまってお話させていただこう
ダーマン: まあいきなり部屋に異種族がいたら交渉も何もないですしね
ハンベイ: 曲者扱いされておわる、か
デリナールとウルテンに案内されて、一行はこっそりと別の部屋に忍び込んだ。
さきほどの王の間と違い、質素で生活感のある部屋である。
デリナール : ここじゃ
ウルテン : なつかしい
ウルテン : 最後にここに来たときはアルテンと二人でいろんな話をしたな…
グロック: しばらく、おれのでばん、なさそうだ
グロック: ここでねるよ
イノーラ: 王の部屋に比べてずいぶんと狭いんだな
ダーマン: あちらは非公式な会談の場も兼ねているのでしょう
ハンベイ: 限られた空間を使うからなのかも知れんな
デリナール : わしは王が戻られるのを外で待とう
そう言ってデリナールは外に出た。
グロック: あるてん、ほんとに、しんだのかな
ハンベイ: それはわからん
ダーマン: こういっては何ですが…
ダーマン: 死んでいた方がまし、と言うことも
ハンベイ: あるかもな
ダーマン: オグロクは優秀なネクロマンサーでしたから何かに利用しないとも限らない
グロック: やつは、おれがころした!
グロック: したいも、こなごなにしてやったぞ
ハンベイ: まぁ、生かして確保していた方が価値がある存在なのは間違いない
ダーマン: ああ!しまった!
ダーマン: せっかく王にまみえるというのに僧服は貸したままだ!
ダーマン: なんということだ…
グロック: おう、とはいっても、おれたちの、しはいしゃじゃ、ない
グロック: そんなに、かしこまること、ないよ
ダーマン: あなた達はそうでしょうが、私は宗派上そうも行かないのですよ…
グロック: めんどくさ・・・
イノーラ: そもそも、ここで着替えるつもりだったのか
ダーマン: この場で全礼を欠くとはなんたる失態だ
そんな話をしながらしばらく待っていると、デリナールが戻ってきた。
デリナール : おもどりになられた
デリナール : 話が出来るようにはしておいた
グロック: よし、あいにいこう
ハンベイ: 非常時だ、仕方なかろう
ウルテン : …いこう
ダーマン: ええ
デリナールを先頭に再び王の部屋に戻ると、スノーリ王は眉間に深い皺を寄せて、椅子に腰を沈めている。
ウルテン : ……突然このようなことになってしまい、なんと申せばよいか……
ウルテン : ウルテンです。我が王
スノーリ グリムボルト: ……
スノーリ グリムボルト: よい、だいたいのところは聞いた
ダーマン: これ!王の前で何をしているのです!
ダーマン: 勧められ、王が座られてから座るのですよ!
ウルテン : みんな、きちんと例を尽くして
グロック: おれの、おうじゃない
グロック: きにいらなければ、ころしてくれて、けっこうだ
グロック: おれは、おーくだからな!
ハンベイ: 半分は、だろう
ウルテン : ……
ダーマン: 非常時の軍装ゆえ、全礼を欠くことお許しください
ダーマン: 我らはカヴァードホームより派遣された特使でございます
スノーリ グリムボルト: よい。見たところ礼儀を学ぶ機会のなかった者の様だからな。
スノーリ グリムボルト: …話を聞こう。
ダーマン: 寛大なるお言葉ありがたく存じます
ダーマン: では早速に。現在、我らカヴァードホームはオーク諸部族の連合によって攻撃を受けております
ダーマン: 奮闘しているものの、現在の所戦況は思わしくありません
ダーマン: そこで、この地より援軍を出していただきたく、お願いに上がった次第です
ダーマン: 古来よりオークは我ら共通の敵。これを討つ事に異論はないと拝察します
ダーマン: なにとぞご決断を
ウルテン : 我が王、アルテンの…いやアルテン王子の最後について知らされている事とは違う真実があります。
ウルテン : ハーリン・アイアンハイドの言葉は真実ではありません。やつは王子を謀って、私もろとも殺そうとして…
ウルテン : そして実際に王子は……
ウルテン : 行方がわかりません
スノーリ グリムボルト: ……そのようだな……
スノーリ グリムボルト: アルテンが、人間の街に興味を持っていたことはしっておった
スノーリ グリムボルト: そして鉱山の中に、開放思想をもった若者の集団があることもな
スノーリ グリムボルト: その筆頭がアルテンだったことも…
スノーリ グリムボルト: ……今回のことは
スノーリ グリムボルト: わしに責任のあることだ
スノーリ グリムボルト: わしは開放派と反対派が危険なところまで対立しているのもわかっていて
スノーリ グリムボルト: しかし、アルテンには何も出来まいとたかをくくっておったと同時に
スノーリ グリムボルト: 反対派の、この地を再び失うかもしれないという危ぐを
スノーリ グリムボルト: よくわかっておった
スノーリ グリムボルト: 結果的にわしは、内部の情勢に対しても
スノーリ グリムボルト: 外の情勢に対しても慎重になりすぎた
スノーリ グリムボルト: 気がついた時にはすでに全てが危機的状況になっておった
スノーリ グリムボルト: カヴァードホームの特使とやら
ダーマン: はい
スノーリ グリムボルト: すまぬが、援軍は出せない。
ダーマン: なぜです!
スノーリ グリムボルト: こうまでオークが有利な状況下で、うってでることはわしには……できん
グロック: かえるか
グロック: こしぬけにようはない
スノーリ グリムボルト: このまま鉱山で身を守るしか……
ダーマン: ですが、このままではこの鉱山も危険なのですよ!
グロック: ひとついっておく
グロック: おまえらが、にんげんを、みすてた
グロック: そのじじつは、どうつくろっても
グロック: かわらない
ウルテン : ……
ハンベイ: このままホームが落ちれば、ここも同じ事になりかねんとしても?
グロック: しってるか
グロック: おーくは、もう、いせきに、めをつけているぞ
ダーマン: オーク共は理由はわかりませんが、カヴァードホームの遺跡を狙っております
ウルテン : 同じものが、ここに来る途中にもありました
ダーマン: そして、その遺跡と同じ様式の遺跡がこの地にもありました
ダーマン: さらに言えばその遺跡は既に何らかの起動をしている模様です
グロック: おなじ、ようしき
グロック: そうじゃない
グロック: あれは、おなじなんだ
グロック: おなじ、いせきだ
ダーマン: この地は既に危険な状況にあるのです
ハンベイ: もしかしたら、他にも同じような場所につながっている部分があるんじゃないのか?
ウルテン : ……我が王、俺はまだ全てが遅すぎたとは思いません。
ウルテン : 俺はアルテンが生きていると信じているし
ウルテン : 人間を救うこともできると信じているし
ウルテン : 俺たちドワーフがオークごときに負けるとも思っていません!
スノーリ グリムボルト: ……
グロック: にんげんに、かしをつくれば、あとあと、とくだぞ
スノーリ グリムボルト: ……
その場にいる全員が、凍りついたように身動き一つせず、スノーリ王の言葉を待った。
やがてどのくらいか時間が過ぎ、スノーリ王は口を開く。
スノーリ グリムボルト: 臆病風に吹かれすぎたか……
スノーリ グリムボルト: そこの無礼な半オークの物言いを許すつもりはないが
スノーリ グリムボルト: たしかに腰抜けであったかもしれん
スノーリ グリムボルト: 人間を救うことも、遺跡がどうという話も
スノーリ グリムボルト: 今は、置いておこう
スノーリ グリムボルト: オークは我々の敵であり、もともとの故郷を失ったのもやつらが原因だ
スノーリ グリムボルト: 復讐すべき相手が目の前にいて
スノーリ グリムボルト: 我々は戦える
スノーリ グリムボルト: わしは、父と同じ過ちをするところであった
スノーリ グリムボルト: 自分たちの国は、戦って勝ち取らねばならん
ハンベイ: 故郷を失った苦境を乗り越えてここまでにした、それだけの力量をあなたはお持ちだ
ハンベイ: きっと、あなたならできるのでしょう
スノーリ グリムボルト: わしの力など取るにたりんが、そこの人間のいうようにわしらドワーフの力を見せてやるときだ
ダーマン: その思いは我ら人間も同じです。かつて三冠帝国を滅ぼされ、今また故郷を奪われようとしている、我らも
スノーリ グリムボルト: 開放派と反対派の争いは、今はいさめておこう
スノーリ グリムボルト: その話は、またオークどもをここから追い出してからするとしよう
ハンベイ: それがよいでしょうな
ウルテン : ああ、スノーリ王……それでこそ
グロック: おれたちは、かいほうしろとか、いうんじゃない
グロック: しにたくないだけのはなしだ
グロック: それなら、わかるはずだ
スノーリ王は覚悟を決めて立ち上がると、堂々とした王の威厳を取り戻してデリナールに命令した。
スノーリ グリムボルト: すぐに長老をあつめよう。
スノーリ グリムボルト: そなたたちがここにおることは、問題をややこしくするかもしれん
スノーリ グリムボルト: しばし隠れていてもらえんだろうか
ダーマン: は
グロック: うるてんの、へやにいようか
ハンベイ: 御意のままに
ウルテン : 王子の部屋をかりよう
グロック: でぃすがいずせるふ、おぼえてくればよかった
ダーマン: では、一度失礼いたします
一行はデリナールと共に部屋を去るスノーリ王を見送ってから、しばしの休息を得る事が出来た。
その後のスノーリ王の動きは素早く、すぐさま長老たちをまとめ上げ(長老たちが内心どう思っていたかはわからないが)、軍を編成して備蓄品を解放、一行はカヴァードホームへの案内役という名目で鉱山外にて合流。
ドワーフ軍と共にカヴァードホームへの帰路に着いたのだった。