サヴェッジ・フロンティアDR1235
第三章 北へ
「対決」


●ヤルルンシュの遺跡

一行がポータルから出ると、そこはどこかの遺跡らしき建築物の中の一室である。
アズフールの言葉通りならヤルルンシュというビホルダーの住処であり、入り口をオークが守っていた事からして、すでにオークが使っているはずだ。

一行は警戒して部屋を出る。
すると目の前をオーク達が普通に闊歩していた。
最初は一行が不意を打った形になったものの、遺跡はかなりの広さがありそうだ。
一行が鍵の掛かった扉などに阻まれつつ探索しているうちに、オーク側も迎撃準備を整えて一行に襲い掛かってきた。

(このシーンは、キャンペーンで最も本格的なダンジョンになっており、PC達の会話もグラフィックやアクションが付いていないと断片的で分かりにくい。一行の進行具合を全てDMで補完する事も出来ないため、割愛させてもらいます。)

●ヤルルンシュ

遺跡を占拠しているオーク達や、元々この遺跡に住んでいたと思われるモンスターを退治しながら、一行はついにヤルルンシュの住処と思しき区画までやってきた。

ウルテン: 確か、
ウルテン: 冒険者だ、って最初に言うことが肝心…だったな
ウルテン: グロック?

グロック: なんだ

ウルテン: なんだ、って
ウルテン: 相手はビホルダーなんだから
ウルテン: そういうのの相手はきみのほうが心得ているんじゃあないかい

グロック: なにもしらないんだな
グロック: びほるだーは、まほうをうちけすんだ
グロック: なぐりあいできるやつが、さきにいかないでどうする

ダーマン: 知る限りどうしようもないですねえ

ウルテン: それににらまれると危ないね
ウルテン: だいたい戦いに来たわけじゃあないだろう

グロック: ぼうけんしゃだと、しらせて
グロック: むこうがおそってくるかもしれないぞ

ウルテン: そうかなあ
ウルテン: きみの師匠の話を聞いた限りだと、そうはならない感じがするけれど

グロック: ま、さきにいくか

ダーマン: まあこのうちのどこかにいるんですよね

イノーラ: しらみつぶしに行くか?

ウルテン: とりあえず片っ端から調べてみよう


一行は部屋を一つずつ調べて行く。
どうやらこの区画にはオーク達を立ち入らせてない様子である。

ウルテン: !
ウルテン: 動くな! 冒険者だ!


部屋の一つで奇怪な怪物を発見したウルテンはすぐさま、教えられたように叫んだ。

ヤルルンシュ : !?

ウルテン: 両手を頭の上に揚げて、床の上に腹ばいになれ!

ハンベイ: ……手、ないだろ

ダーマン: 冒険者一行です

ヤルルンシュ : な

クロニー: さよう
クロニー: アズフールのつかいのものでございます

ヤルルンシュ : え…ここオークが守ってるはず…
ヤルルンシュ : あ、いやいや…ごほん
ヤルルンシュ: むむ、貴様ら我輩の要塞に侵入するとはなにやつだ


不意を突かれたうえ、"冒険者恐怖症"のため動揺してしまったヤルルンシュであったが、なんとか体裁を保とうとする。

グロック: ちょくせつこっちみないでくれな

ダーマン: まあ、細かい経緯は良いじゃないですか

グロックは魔法の壺を床に置くと、アズフールの魂を呼び出した。

アズフールの魂: うむ
アズフールの魂: もうついたのか
アズフールの魂: はやいな

ダーマン: こういうことでして

ウルテン: ほっ、これで話がはやいね

アズフールの魂: やあヤルルンシュ

ヤルルンシュ: ……
ヤルルンシュ: うーむ、そなたはどうも死んでいるように見えるが
ヤルルンシュ: 我輩の友人、アズフールの気配がする

アズフールの魂: まあ、死んでいるというか
アズフールの魂: なんというか
アズフールの魂: ここいる冒険者諸君は私を助けようとしてくれているんだ

ヤルルンシュ: えっ、冒険者って本物?

ウルテン: 冒険者に本物もニセモノもあるのかな??

ダーマン: さあ

ハンベイ: 本物も偽者もないような気もするが……

ダーマン: まあ、ごろつきと変わらない連中も多いですしね

ヤルルンシュ: こ、困るな勝手にここを教えちゃ
ヤルルンシュ: 我輩の大帝国を建設するにはまず冒険者を一掃しなければなら…ないのだ

アズフールの魂: ふむ、それでオークと手を組んだのか?

ダーマン: ああ、そりゃ駄目です。冒険者を排除したいなら正当な行政機関でないと
ダーマン: わりと行政の言うことは聞きますよ。冒険者

アズフールの魂: カヴァードホームは冒険者の街だからな

ヤルルンシュ: むう、相変わらず鋭いのう

ウルテン: ふむ

グロック: おーくとくんでも、だめじゃないかな

ヤルルンシュ: ギョウセイはたいてい冒険者どもを支援するから駄目だ
ヤルルンシュ: あいつらも我輩の敵である

アズフールの魂: まあ、それはいいとして

ハンベイ: ……いいのか?

アズフールの魂: あまり時間がないようなんで聞くけど
アズフールの魂: オーク軍にオグロクというハーフオークがいるはずだが
アズフールの魂: どこにいるか知りたい

ヤルルンシュ: オグロクか
ヤルルンシュ: あやつはオーク軍にはなんの忠誠心もないようだな
ヤルルンシュ: もともと、我輩はオークどもが我が帝国に近づいてきたときに
ヤルルンシュ: 滅ぼそうと思っていたが
ヤルルンシュ: オグロクの提案を飲んで一時協力することにしたのだ

グロック: ていあん?

ヤルルンシュ: 自分の目的を達成したあとは、配下のオーク兵を我が帝国の兵としてよい、というものだ

アズフールの魂: なるほど……
アズフールの魂: それでたぶん
アズフールの魂: 未来の君の兵なんだから、武器や防具は今渡しておいてもいいんじゃないの、とか言われた?

ヤルルンシュ: ……

ウルテン: あんな顔して、意外と人がいいやつなのかな?
ウルテン: このビホルダー

イノーラ: …馬鹿なだけだろ

ハンベイ: 俺たちが見ても区別つかんだろ、目玉の

ヤルルンシュ: で、そのオグロクだが
ヤルルンシュ: なんでも目的のポイントを見つけたとかで数日前に出撃したようだ

ウルテン: !

グロック: どこにだ

アズフールの魂: 出撃って…一人ででかけたんじゃないのか

ヤルルンシュ: うむ、我が帝国の脅威となるであろうカヴァードホームとかいう人間の街は
ヤルルンシュ: 今現在オーク軍に包囲されているのは知っていると思うが
ヤルルンシュ: どうもその街がポイントのようだな

ウルテン: あっ!
ウルテン: そういえば町の地下に
ウルテン: 遺跡が
ウルテン: あれがそうだったのか!

ダーマン: ああ、あの廃墟

ハンベイ: 面倒な

イノーラ: あー…そんなものも

ヤルルンシュ: すでに何か準備をしているようだ

アズフールの魂: わかるのか?

ヤルルンシュ: うむ、どことなく信用できないところもあったから監視はしている
ヤルルンシュ: それにあの杖はもともと我輩のものだったわけだからな
ヤルルンシュ: もし力を解放などして、なにか強力な魔力が手に入るなら返してもらうぞ

アズフールの魂: もちろんだとも
アズフールの魂: ではオグロクを追わないといけないので
アズフールの魂: 我々はこれで失礼しよう

グロック: ・・・

イノーラ: ついたと思ったら取って返さないとならないのか

ウルテン: たいへんだ、いそいで後を追わないと

ダーマン: とはいえ、オーク全軍がカヴァードホームに向かう訳じゃないでしょうしね

イノーラ: わからんぞ、オークだから

ダーマン: いやいや、冬をしのぐ食料目当てに進軍してると騙してるのに一つ所には集められないでしょう

ヤルルンシュ: ……オグロクのいる場所の近くにポータルを開くこともできるが?

グロック: ほお

アズフールの魂: うーん

ハンベイ: ……

ダーマン: 敵本陣の真ん中とかじゃいでしょうね?

ヤルルンシュ: オグロクの親衛隊はいるようだが
ヤルルンシュ: 本隊からは離れているな


という提案だが、アズフールは一行に問う。

アズフールの魂: どうするんだ?絶対なにか条件があると思うんだが

グロック: やつを、しまつする、いいきかいだな

ウルテン: でもこうなったら、逆に敵本陣の真ん中へ出て
ウルテン: 一点突破という手もあるかも知れない
ウルテン: ヘビもあたまをつぶせば…というやつだ

グロック: ひゅどらじゃないといいけどな

ダーマン: まあ、最悪杖を壊してしまえば私ら死んでも目的は達成ですし。ね?

アズフールの魂: 君が冒険者に協力するというのはどういう風の吹き回しかな?

ヤルルンシュ: むろん、これは取引である
ヤルルンシュ: まず第一に
ヤルルンシュ: この場所を秘密にすること
ヤルルンシュ: 2つめ、このあと戻ってきて我輩に攻撃するというパターンはナシにすること

ウルテン: それで全部?

ヤルルンシュ: うむ

イノーラ: 私は飲んでもいい

ヤルルンシュ: まあ、不可侵条約ということだな

ダーマン: ふむ

ウルテン: 仕方ないな、ほんとうなら悪のビホルダーを許してはおけないところだけど、どうしてもということなら、言うことを聞いてやろう

グロック: ふかしんじょうやく、だな
グロック: それなら、そちらが、さきにこうげきしてきたばあいは
グロック: じょうやくは、はき、だな
グロック: かヴぁーどほーむを、こうげきしたら、はなしはべつだが

ヤルルンシュ: うーむ、まあそうなるか

グロック: それをしないあいだは、のんでもいい
グロック: いずれにしても、せんせいこうげきは、あんたのけんりになる

アズフールの魂: (しかしこの条件だけだと不可侵にできないな……まぁ黙っておくか

ヤルルンシュ: むろん、わしも若くはないのでな。勝てる戦いしかしない。もう、絶対に、完全に勝てるとはっきりするまで戦うつもりはない

グロック: あんたに、とくなとりひきだ
グロック: そういうことで、だれも、もんくいわないなら、おれも、かまわない

ヤルルンシュ: そもそも、これはそなたらにとっても良い提案ではないか

ダーマン: 話は決まりですね。じゃ、さっそくポータルを

アズフールの魂: ……
アズフールの魂: なんだかダルいな……私は戻るよ


アズフールは壺の中に戻った。

ウルテン: そうそう、早くポータルを開かないと気が変わって襲い掛かるかも知れないよ

ヤルルンシュ: そなたらの後ろの部屋にポータルを開いてある
ヤルルンシュ: 勝手に使うがいい

ハンベイ: 準備がいいことだ


一行はポータルを開いてあるという部屋に入った。

ウルテン: やっぱり意外といいやつかも知れないな、あのビホルダー

グロック: そうはおもえない

ウルテン: どうしてだい、グロック

グロック: あのていどのとりひきで、しんようするのか?

ダーマン: ぼけちゃってるんじゃないですか?

ウルテン: ともかくいそいだほうがいいね


そして一行は再びポータルへと飛び込んだ。

●対決

一行が運ばれた場所は、何度か来ているカヴァードホーム地下遺跡である。
地上に直接抜ける出口側の通路だ。
この通路を一行が発見した後、クロウィンと共に塞いでいたはずだったが、掘り返されている。

グロック: もどってきた

ウルテン: 掘り返されたのか


さらに足跡を調べたり聞き耳したりする必要もなく、通路の先(遺跡のほう)からオークの声がする。

ウルテン: いる

ウルテンが偵察すると、大盾を持ったオーク兵が二人で通路を守っている。

ウルテン: 二匹だ
ウルテン: とりあえず突っ込んでみるよ


一行はオーク守備兵の防御に手を焼いたものの、これを倒した。

ウルテン: あいかわらずいい装備だな
ウルテン: 盾が大きすぎるんだ、まったく!

グロック: や、あるぞ


一行はさらに進み、遺跡の内部に侵入したが、そこにはアンデットと化したオーク兵が待ち構えていた。
敵を倒す一行。

イノーラ: 時既に遅し、かな

ウルテン: 防壁をはっておいてよかった


遺跡の内部は以前に来た時と違って、魔法の光が所々に輝いている。
通路には魔力が満ちており、煤けていた魔法陣も機能しているように見えた。

ウルテン: この光の道筋の先にオグロクがいる?

一行は以前と雰囲気の違う遺跡に戸惑いながらも、アンデット兵やオーク守備兵を倒して先に進む。

ウルテン: このあたりの石や柱はなんなんだろう
ウルテン: グロックわかるかい?

グロック: ちゃんとしらべるじかんがないかな

ウルテン: そうか
ウルテン: それにしてもオグロクの姿がみあたらない
ウルテン: なんなんだろうこの光は


遺跡の中を探す一行はついに、オグロクを発見した。
部屋の中にいるオグロクには手ごわい守備兵が付いていて、一行を近寄らせない。
グロックは単身、インビジリティの呪文で姿を隠してこっそりオグロクに近づく。
オグロクがグロックに気が付いた時には、すでにグロックは十分に近づいていた。

グロック: おぐろく、ひさしぶりだな

ウルテン: なんだあのドラゴン?!


グロックはドラゴンに変身してオグロクに殴りかかる。
オグロクはドラゴンの爪で引き裂かれ、何も言わずにそのまま絶命した。
一行がオグロク守備兵を倒して部屋に入った時には、すでにオグロクは倒されていた。

ウルテン: グロック?!

グロック: おれだおれ

ウルテン: やっぱりグロック!
ウルテン: やったな!

イノーラ: …今度は派手だな

ウルテン: そんな奥の手があったなんて

グロック: これが、やつのつえだ

ウルテン: 「例の」杖だね

ダーマン: ほうほう
ダーマン: でもそこまでの魔力とも思えないような

ウルテン: 遺跡の何かを呼び覚ます鍵のようなものだったのかな

ハンベイ: さて?

ウルテン: オグロクが死んでしまったから、それももうわからないけれど…


グロックは変身を解除すると、魔法の壺からアズフールを呼び出す。

グロック: せんせい、これか

アズフールの魂: ああ、オグロクはどこだ?

グロック: おれが、くいころした
グロック: あかい、りゅうに、へんしんしてな

アズフールの魂: ……そうか
アズフールの魂: 残念だったな、見込みがあったのに

グロック: あいつは、おれのゆうじんころしたからな
グロック: せんせい、つえは、それほどのものにはみえなかったが
グロック: あれが、それほどだいじなのか?

アズフールの魂: うむ

ダーマン: そういえばこれがあれば成仏できるんでしたっけ?

アズフールの魂: あれの魔力の本質は……まだよくわかっていなかったが
アズフールの魂: オグロクはそれを突き止めて、使おうとしたのかもしれないな

グロック: このばしょと、かんけいがあるのか

アズフールの魂: あるんだろうな

ダーマン: 謎は謎のままですか…

ハンベイ: 行動からするとそうじゃないか?

アズフールの魂: 何か魔力に満ちている感じがする

ウルテン: …

ダーマン: しかも、オーク軍去ってないし…

ハンベイ: ま、あっちはあっちで別の理由で動いてるんだろう

グロック: ・・・

アズフールの魂: ところで杖を貸してもらえないか?

グロック: つえを
グロック: どうするんだ?

アズフールの魂: もっと詳しく調べる
アズフールの魂: 今の状態なら、もっとよく本質に迫れるかもしれない


杖に手を触れたアズフールは、集中していくつかの呪文を唱えた。

アズフールの魂: ……
アズフールの魂: ……ああ、そうか
アズフールの魂: …この杖って
アズフールの魂: た

ウルテン: た?

アズフールの魂: ……

ウルテン: ??


アズフールは何か話しているようだが、声がよく聞こえない。

ダーマン: なんです?

グロック: せんせい?

ハンベイ: 薄くなってないか?

アズフールの魂: グロックこれを手放さないように……

グロック: なぜ

アズフールの魂: 持っていないと……
アズフールの魂: たいへん

グロック: せんせい?!

ウルテン: あっ!


アズフールの霊体は、ふっと消えてしまった。

ダーマン: むうう

ウルテン: きえてしまった
ウルテン: …

グロック: ・・・

ハンベイ: 謎は謎のまま、になったな

ダーマン: 持っておくようにとしか聞こえませんでした


そして魔法の壺はひとりでに砕けた。

グロック: あ・・・
グロック: せんせい、しんだか
グロック: これでかんぜんに

ウルテン: …

グロック: きずが、なおってきた

ウルテン: 杖の力か

ダーマン: で、結局の所どうなるのでしょう?

グロック: わからない

ハンベイ: さて、当初の目的ははたせてないか

ウルテン: オークたちもまだ去っていないし

ダーマン: まあ、オーク達は騙されているわけですしね

イノーラ: オグログがいなくなれば戦いも少しは楽になるな

ハンベイ: ならいいがな

ダーマン: そうでもないでしょう。元々戦争にはあまり手を出していなかったんですし
ダーマン: あのオークの兄弟の方が危険ですよ

ウルテン: (それに…鉱山のほうも気になるな…

グロック: りっくのかたきは、うった


こうして一行はオグロクを倒し、グロックの言うようにリックの仇を取ることができた。
しかしオークとの戦いがこれで終わったわけではない。
ひとまず街に戻ろうと上に向かう一行の背後で、遺跡の輝きは、まったく衰えを見せていなかった……


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