サヴェッジ・フロンティアDR1235
第三章 北へ
「ドワーフの敵」


●ウルテンの事情

旅を続ける一行は、ついにターンストーンパスへと差し掛かっていた。
しかし人数は一人少ない。
ダーマンが火急の用で、駿馬に乗った使いの者と共にカヴァードホームまで戻ってしまったからだ。
(つまり、リアル都合である。)

グロック: だーまんひとりでかえして、よかったのか

ウルテン: このさきがターンストーンパスか
ウルテン: ここまでは特にノールの影も見当たらずにこれたけど

ハンベイ: どんな場所なのか……

グロック: いしがころがる、あぶない
グロック: のーるは、れんじゃーがおおいぞ
グロック: きをつけろ

ウルテン: とりあえず特に目立った形跡はないようだけれど

グロック: あいてもれんじゃーだ
グロック: ゆだんするな

イノーラ: まあ、どっちにしろ進むんだ

ウルテン: (やはりダーマンの離脱は痛いな…


そして一行はターンストーンパスの入り口に立った。

ウルテン: 誰かいる

ウルテンは岩陰に気配を感じて立ち止まった。

グロック: ?

ハンベイ: ?
ハンベイ: どうした?


相手もこちらに気が付いて、岩陰から姿を現す。
ドワーフである。

グロック: どわーふか

ヨイフ アイアンハイド: これは、ウルテン王子。お待ちしておりました
ヨイフ アイアンハイド: サンダバールに向かわれると聞いて、ここで待っておりました

グロック: うるてんのしりあいか

ウルテン: *うなずく


現れたドワーフ、ヨイフはウルテンと同じドワーフハンターの一人である。
年齢も近いため、訓練等では何度も顔を合わせている仲だ。
ヨイフが何者の差し金で動いているのか分かりかねたウルテンは警戒している。

ヨイフ アイアンハイド: ターンストーンパスのほうを見てきましたが
ヨイフ アイアンハイド: ノールの部族が戻ってきているようです

ウルテン: !

ヨイフ アイアンハイド: 今回の部族の長らしきものが、なにやら立派な剣を持っておりました
ヨイフ アイアンハイド: わたしは、皆さんがパスを越えるまでお供します

ハンベイ: ありがたい話だが……

ヨイフ アイアンハイド: なにか問題でも?

イノーラ: で、この方は一体誰なんだ?

ハンベイ: 確かに、面識があるお人のようだが


ヨイフは自分から一行に自己紹介するような事はせず、ウルテンの対応を待っている。
ウルテンは身振り手振りでヨイフにその場で待機するように伝えると、一行を誘って少し離れた所に行く。

ヨイフ アイアンハイド: ?

グロック: なんだなんだ

ウルテン: ええと、

ハンベイ: どうした?

ウルテン: 実はなんだけど、
ウルテン: あれはアイアンハイド族のヨイフという名前で、
ウルテン: まあ、見ての通り、知り合いなんだ
ウルテン: ただ、
ウルテン: うーむ…

グロック: じつはどっぺるげんがーか?

ウルテン: いやいやいや、

イノーラ: 物事ははっきり言ったほうがさっさと進むぞ

ウルテン: ま、そりゃそうだ。

グロック: いのーらいいことゆった

ウルテン: それじゃあさ、
ウルテン: この前、
ウルテン: カバードホームで、おれを訪ねてきた
ウルテン: 少し歳の行った人、おぼえているかい?

グロック: あんまりおぼえてない

ウルテン: ありゃ、

グロック: どわーふみなおなじにみえる

ウルテン: そうか

グロック: ひげが、ちょっとちがう

ハンベイ: 守役か?

ウルテン: そう、それ!

イノーラ: ああ、来たなぁ

ハンベイ: それは苦手だろう

ウルテン: ま、ともかく、
ウルテン: それで、今回の件は
ウルテン: おれが勝手に、こっそり抜け出して
ウルテン: 人間の町に来たんだ
ウルテン: それで、何かとやりづらいところがあってね
ウルテン: あのヨイフっていうのは、おれとそれほど歳は変わらないんだけれど
ウルテン: たぶん、おれが勝手に抜け出したことやらなにやら、ぜんぶ聞いているだろうから
ウルテン: もちろん、見た目の上では出さないけど
ウルテン: きっとかなり怒ってると思うんだよ
ウルテン: はっきり言うと、ちょっと苦手なやつでね

イノーラ: ふむ

グロック: じゃあうめていくか?

ウルテン: そういうわけで、いちおうみんなに紹介はしたから
ウルテン: おれはできるだけ静かにしておくから、
ウルテン: ひとまずは、先導には従って一緒に行くことにしてほしいんだ
ウルテン: いちおう、信用はできるはずだからね
ウルテン: それじゃ、そういうことでよろしくたのむよ!

グロック: そうか
グロック: あやまればすむんじゃないか
グロック: めんどうだからどっちでもいいぞ、おれは

ハンベイ: ……ほんとに一応、だな……
ハンベイ: ま、暗殺される、とかはないだろうな、正気なら


このセリフにはDMとしてかなりびっくりした(笑)

グロック: よくわからないけどついていけばいいんだな
グロック: それなら、もんだいない

ウルテン: ノールたちを迂回して
ウルテン: 安全にサンダバールへいけるはずだ

グロック: しゅっぱつか?

ハンベイ: よろしくお願いする。

イノーラ: だな

ヨイフ アイアンハイド: ところで王子。今回の件はデリナール殿に聞いていますので安心してください。
ヨイフ アイアンハイド: ではいきましょう

ウルテン: がくっ!
ウルテン: *頭を振る

ハンベイ: 大変だな

ウルテン: (それを先に言ってくれよなぁ…


ウルテンは、ヨイフが事情を知っているのか知らないのか分からないので、知らない前提で行動したわけだが、ヨイフは訳知りである事をデリナールの名前を出す事で告げた。
他のメンバーはそれを、ヨイフがお目付け役として送り込まれたのだと解釈したのだろう。
この辺、DMとしては面白いやり取りになっている。

●ターンストーンパス

さて、ヨイフを加えた一行はターンストーンパスへと入った。
山肌を進む細い道と谷で出来た道である。

グロック: ここ、のーるでるのか?

ヨイフ アイアンハイド: はい

ハンベイ: 地元じゃないのか?

グロック: おれやじんとちがう
グロック: おれ、がくしゃだ

ハンベイ: ま、それはそうか

ウルテン: ふむ…

イノーラ: 崩れてるみたいだな


一行が進む道が崩れて通れなくなっている。

ヨイフ アイアンハイド: この道を真っ直ぐ行くのが順路なのですが
ヨイフ アイアンハイド: 皆さんの地図にも書いてあるはずです

イノーラ: トコトンついてないな

グロック: のぼってこえられないのか?
グロック: おれにはむりかもしれないけど・・・

ヨイフ アイアンハイド: 無理そうですね

ウルテン: これは… 明らかに人為的なものだ

ヨイフ アイアンハイド: ですね


ウルテンはそれが人為的に道を封鎖したものだと判断した。
ヨイフもそれは知っているかのような物言いであるが、実際、この細工をしたのはヨイフ自身である。

グロック: のーるか

ウルテン: 自然に崩れてこうなったわけじゃあないよ

イノーラ: ノールだろうなぁ

グロック: じゃあ、どこかでまちぶせがあるぞ!

ヨイフ アイアンハイド: とりあえずどけている時間はありませんから、回り道でしょうか

ウルテン: フライパンの中に飛び込むようなものだけれど
ウルテン: この場合、他に選択肢はないね

ヨイフ アイアンハイド: 確か、こちらから回れたはずです
ヨイフ アイアンハイド: ここを北にいけば
ヨイフ アイアンハイド: あそこから下りてもとの順路にもどれるはずです

グロック: あの柵
グロック: なんだ

ヨイフ アイアンハイド: …

ウルテン: 焚き火も見えるぞ

ヨイフ アイアンハイド: できれば皆さん隠密行動でいきましょう

グロック: ふーむ


ヨイフに先導された一行は上れそうな崖から細い道に出て進む。

ヨイフ アイアンハイド: …

イノーラ: 発見

ヨイフ アイアンハイド: ノール…ですね
ヨイフ アイアンハイド: みるからにバリケードはって待ち伏せです


その細い道しか通り道がないのが分かっていたかのように、ノールはそこを柵で閉鎖して待ち構えている。

ウルテン: !

イノーラ: 殺す?

ウルテン: まった
ウルテン: うん、柵のむこうにシャーマン
ウルテン: 崖の上には弓兵もいる

ハンベイ: 弓使いか
ハンベイ: 厄介な

イノーラ: どうしてこう、うまく行かないんだろうな

ウルテン: まわりこんで一つ上の尾根に上がれないかな

ヨイフ アイアンハイド: それがよさそうですね
ヨイフ アイアンハイド: さすが王子
ヨイフ アイアンハイド: こちらから上がれます

ハンベイ: こちらに道があるな

ウルテン: ふむ
ウルテン: もう少し上にあがれそうだ
ウルテン: それなら高台を取って
ウルテン: 逆にこちらから射掛けてやるのも良さそうだ

ヨイフ アイアンハイド: *うなずく

グロック: つっこむな

ウルテン: わかってる
ウルテン: とりあえずここへ引き込もう


一行は尾根を上手く使って高所を取り、ノールと戦ってこれを撃退した。

イノーラ: オークとの攻防を思い出すなぁ

ウルテン: ふう、うまくいった
ウルテン: ま、とりあえず滑り出しは上場だね

グロック: すべるすべるー
グロック: みごとだ
グロック: おれたちすごいぞ

ハンベイ: 地の利は大きいものだな

ヨイフ アイアンハイド: まだいます
ヨイフ アイアンハイド: この向こうですね

グロック: まだいるのか?

イノーラ: ああ、いるな

ヨイフ アイアンハイド: 谷を渡る道に、さっきバリケードがありましたね

ウルテン: こちらから
ウルテン: しかけよう

グロック: ふぁいあぼーるもってくるんだった


一行は谷を封鎖しているノールのバリケードを突破する作戦に出た。
バリケードの隙間にある通り道を逆に利用して敵を一人ずつ倒す作戦である。
ウルテンの目論見どおりに、ノールは自分たちの設備を逆に利用された倒されてしまった。

ウルテン: ふう、
ウルテン: 大丈夫かい、ヨイフ

ヨイフ アイアンハイド: …なんとか

グロック: うるてんけっこうあたまいいな
グロック: おれのつぎくらい

ウルテン: へへっ、ノールがばかなだけさ

グロック: それもそうだ

ハンベイ: む?
ハンベイ: 手紙?

ヨイフ アイアンハイド: ?

ハンベイ: 魔法の大剣もか

ウルテン: これは…

ヨイフ アイアンハイド: ノールが持つには、ちょっと考えられない剣ですね


ゴブリン語で書かれた書面。
内容が読めなくても、何かの契約書的なものだと推測できる。
内容は、以下の条件をクリアした場合に報酬が支払われるというもの。

1、一つ目族の紋章を身に付けたオークを無事に通行させた場合。
2、通行しようとする人間、ドワーフ、エルフを殺害した場合。

それぞれ1人につき50G支払われる。


ウルテン: それにしても手紙の文面を見る限りだと
ウルテン: どうもノールたちはオークと手を組んでいるみたいだ

ハンベイ: 律儀なやつらだな

グロック: のーると、おーくがか
グロック: ふうむ

ヨイフ アイアンハイド: オークたちもネザー山脈を越えるときにこの道を通りました
ヨイフ アイアンハイド: それは我々で確認していたことです
ヨイフ アイアンハイド: その時に、同盟を結んだのかもしれませんね

イノーラ: じゃあ、相当な金が支払われたわけだ

グロック: なぜ、ごぶりんご
グロック: なんだろうか
グロック: おーくが、のーるあてに、ごぶりんのことばを?

ヨイフ アイアンハイド: しかし、オークにもゴブリン語を書けるものがいるのが驚きですね

ウルテン: ありえない話じゃあないよ
ウルテン: どうもオークたちの中に
ウルテン: かなり頭の回る奴がいるみたいで

ヨイフ アイアンハイド: ふーむ

ウルテン: そいつ、たぶん死霊術使いなんだけれどね

グロック: !

ヨイフ アイアンハイド: 共通言語としてゴブリン語しかなかったんでしょうか

ウルテン: 手紙を書いたのがそいつかどうかはわからないけど、そういう奴がいてもおかしくはないということだ

イノーラ: どっちも手下にゴブリンを持ってたりするんじゃないか?
イノーラ: よくわからないけど

グロック: ごぶりんだけならわかるけど、ほぶごぶりんや、ばぐべあもいるし・・・

ヨイフ アイアンハイド: ノールとゴブリンが手を組むことはありますね

グロック: さきへいけば、わかるかもしれない

ウルテン: ま、ここで考えていてもしかたはないね

ハンベイ: ま、行くしかないのはかわらんか

ヨイフ アイアンハイド: ええ、まあ、そろそろ日も傾いてきたし、急いでここを越えましょう


一行はボスを倒されたノールの残党を蹴散らしつつ、谷を抜けてネザー山脈北側に出た。

●ドワーフの敵

グロック: ふー

ターンストーンパスを越えた一行は、ちょうど岩山の影になっているところを野営地とした。

イノーラ: とりあえずひと段落だな

グロック: じゅもんいっぱいつかった
グロック: おれ、がんばった

ウルテン: ああ、グロックのおかげさ

グロック: みんながんばった
グロック: おれすこしねる

ウルテン: うん、見張っておくよ

ヨイフ アイアンハイド: ちょっと、周りを見てきましょう


ヨイフは立ち上がり、ウルテンの横を通り過ぎる時、こっそりと「後で話があるから二人きりになってくれ」と告げる。
それからしばらくして、偵察からヨイフが戻ってきた。

グロック: さきはどうなってた?

ヨイフ アイアンハイド: だいじょうぶ。周りに敵の気配はありませんでした

イノーラ: いいことだ

ヨイフ アイアンハイド: 明日早朝にここをたてば、ターンストーンパスは越えられますよ
ヨイフ アイアンハイド: あとはネザーを下っていけば、サンダバールが見えてくるでしょう

グロック: のーるの、なわばり、ぬけたか?

ウルテン: それじゃ、あっちで見張りに立つよ

グロック: さんだばーるか・・・
グロック: おもったよりはやく、かえってきた・・・

ヨイフ アイアンハイド: 私はあちらの見張りに立ちます

イノーラ: 先生に会う決心はついたか?

グロック: ついた

イノーラ: それはよかった

グロック: せんせいなら、きっとしってる

ハンベイ: ならいいが

グロック: おれがかってにでてったの、おこってないといいなあ・・・

ヨイフ アイアンハイド: みなさんは休んでいてください
ヨイフ アイアンハイド: 私はもう一回りしてきましょう

ハンベイ: 休まんと体がもたんのではないか?
ハンベイ: 行ってしまった

イノーラ: 次戻ってきたら代わってやろう

グロック: あのふたり、へんなくうきだな

ハンベイ: 守役なんて、世話される側にとっては煙たいものだ

グロック: なんか、そういうこと、よくわかるのか?
グロック: はんべーもえらいひとか

ハンベイ: いや、……昔の知人が、そう言ってた

グロック: むかしのしりあいか

ハンベイ: うむ

グロック: おなじふるさとか?

ハンベイ: 同門だった

グロック: はんべーとどっちつよい

ハンベイ: さて……


一方その頃、野営地から少し離れた崖の上で見張りに立つウルテン。
見回りに出ると言って野営地を出たヨイフは、ウルテンのいる場所に現れる。

ヨイフ アイアンハイド: ウルテン

ウルテン: ヨイフ

ヨイフ アイアンハイド: アルテン王子の消息はわかったのかい

ウルテン: …
ウルテン: *頭を振る

ヨイフ アイアンハイド: そうか。
ヨイフ アイアンハイド: 一つ、聞きたいんだけど

ウルテン: ?

ヨイフ アイアンハイド: 王子と最後に会ったとき、なにか変わった話をしてたかい

ウルテン: 変わった話?

ヨイフ アイアンハイド: うん。普段しないような話

ウルテン: 普段しないような話…
ウルテン: どうして?

ヨイフ アイアンハイド: いや、特になければいいんだ
ヨイフ アイアンハイド: 興味があったから聞いてみただけだ

ウルテン: …そうか

ヨイフ アイアンハイド: ウルテン、デリナールさんはサンダバールに行けと言ったらしいけど
ヨイフ アイアンハイド: 俺たちにとっては、行かれると困るんだ

ウルテン: ?
ウルテン: なぜ?

ヨイフ アイアンハイド: ウルテンがウルテンとしてなら、いいんだが
ヨイフ アイアンハイド: 王子がサンダバールに生きているというのはマズイ
ヨイフ アイアンハイド: というわけで

ウルテン: ヨイフ!


ヨイフは武器を抜いた。
その気配は冗談ではない。

ヨイフ アイアンハイド: 死んでもらうよ。ウルテン

ウルテンがヨイフに斬りかかられ、ピンチに陥っている頃、野営地では……

グロック: うるてんおそいな
グロック: だいじょうぶかな

イノーラ: あの二人、戻ってこないな
イノーラ: 見てきたほうがいいか?


その時、ハンベイは風に乗って何か声が聞こえた気がした。
何と言っているかは分からないが、緊迫感のある声である。

ハンベイ: なんだ?言い争いか?

グロック: ん、なんかあったか

ハンベイ: なにか、言い争いのようなものが聞こえたんだが

イノーラ: ともかくみてみよう

グロック: みんなでいこう
グロック: きけんなきがする


その時、ウルテンとヨイフは武器を抜いて戦っていた。
しかしウルテンは防御に専念しており、自分からは手を出していない。
そのため一方的にヨイフが攻撃している状況である。

ウルテン: やめろ! おまえと戦いたくない!
ウルテン: まてったら!
ウルテン: こんなことをして何の得があるっていうんだ!

ヨイフ アイアンハイド: どうした?
ヨイフ アイアンハイド: …戦士として戦って死んでほしかったな


剣術ではヨイフのほうが上のようだ。
ヨイフは必殺の構えである。
その時、ちょうどハンベイ、グロック、イノーラが現れた。

ウルテン: !

ヨイフ アイアンハイド: ちっ

ハンベイ: どうした?

ウルテン: 来るな!

グロック: なにしてんだ?

イノーラ: (ああ、また面倒なことだ

ヨイフ アイアンハイド: けりをつけなきゃ、俺の仕事なんだ

ウルテン: まてったら、ヨイフ!


ヨイフは感情の全く無い表情で、ウルテンの命を奪うべく剣を振り払う。

ウルテン: !

ヨイフ アイアンハイド: あっ


その時、グロックがホールドの呪文をヨイフにかけた。
ウルテンに必殺の突きを放とうとしていたヨイフは突然身体の動きを封じられたため、その勢いのままに……

グロック: なにしてんだ

ウルテン: グロック!
ウルテン: た、助かった…

ハンベイ: なにがあった?


その勢いのままに転倒すると、崖から落ちてしまった。

グロック: あ・・・

ウルテン: ヨイフ!

グロック: おっこちた

イノーラ: …

グロック: ふぇざーふぉーる、おぼえておくんだったな


切り立った崖を、まったく受身も取れないまま数十メートル下まで滑落したヨイフ。
崖から下を覗き込むと、岩に打ち付けられ砕けたヨイフの姿があった。

グロック: うるてん、あれはころしやか
グロック: うーん、よいことをした

ウルテン: ヨイフ…
ウルテン: …

イノーラ: まだ生きてるかどうか、見に行くか?

ウルテン: …この高さじゃ、無理だ

グロック: あれでは、いきてるはずないな

ハンベイ: いったいナニが?

ウルテン: ヨイフは野伏だ
ウルテン: このまま自然に帰しておこう…

グロック: ・・・もしかしてころさないほうがよかったのか?

ウルテン: きみのせいじゃあないよ、グロック

グロック: ・・・

ウルテン: …助けてくれてありがとう

グロック: おれ、ころそうとしたわけじゃなかった
グロック: ・・・
グロック: ま、いいか・・・

ウルテン: ……


一行はショックを隠せないウルテンを連れて野営地へと戻る。

イノーラ: 私が見張りに立つから、休んでろ

ウルテン: ……

グロック: けっきょく、あいつ、なんだったんだ?
グロック: てきか?

ウルテン: ……
ウルテン: わからない

グロック: わからない?

ウルテン: なんでそこまでするのか、わからない

グロック: ???

ウルテン: グロック、

グロック: ん?

ウルテン: おれは、みんなが楽しく暮らせればそれでいいと思うんだ
ウルテン: それが、なんでこうまでして…

グロック: ??

ウルテン: 兄弟を手にかけてまで、しようとするのか
ウルテン: ぜんぜんわからないよ

グロック: おれにはわからないけど
グロック: あるひとにたのしいことが
グロック: ほかのひとにはおもしろくないこと、あるぞ

ウルテン: …

グロック: おれが、いきしてるだけで
グロック: たのしくないやつ、たくさんいた
グロック: そういうもんなんだ

ウルテン: 息をしているだけで?

グロック: そうさ
グロック: おーくといっしょの、くうき、すえるか、ってな

ウルテン: …
ウルテン: すまない、ハンベイ
ウルテン: どうやらノールに遭遇したのはヨイフの先導のせいだったみたいだ

ハンベイ: いや、いったいどういういきさつがあったのか気になってはいるが

グロック: そうだったのか・・・
グロック: ねらいは、なんだ
グロック: きまってるか・・・
グロック: うるてんだな

ウルテン: それは…
ウルテン: …そうだ、ともいえるし、違う、ともいえる

グロック: ・・・

ウルテン: …
ウルテン: すまない、グロック
ウルテン: …いつか話すよ

グロック: おう

ハンベイ: 何かに操られでもしてたのか?あいつは?

ウルテン: そうだったら、むしろ良かったよ
ウルテン: ・・・

ハンベイ: ……話が見えんな


しかしウルテンはそれ以上何も説明しようとはせず、毛布に包まって横になってしまった。

●ネザー山脈を離れて

翌朝、一行は野営地を片付けて出発する。

ハンベイ: いくか?

ウルテン: ま、悩んでいても仕方がないか
ウルテン: 行こう!

グロック: 火を消そう


グロックがレイオブフロストの呪文で焚き火を消す。

イノーラ: …冷やしすぎだろ

グロック: ごめん

ウルテン: でも山火事になるよりはいいさ!

グロック: そう、おれそうおもった


下山中は特に何も起こらず、もう少し行けば山を下りられるというところで……

ウルテン: ン
ウルテン: みんな気をつけろ

グロック: どした

ウルテン: オークだ

グロック: ・・・

ウルテン: あれはなんだ? バリケードか?

ハンベイ: 野営地があるようだな

グロック: おーくか?

ウルテン: うん、たぶんオークのバリケードだな

イノーラ: あいつらも先回りが上手だな


一行の前方にある下山道をオークが封鎖して野営地を作っている。
この一団はPC一行を待ち伏せするつもりでここにいたわけではないが、ネザー山脈の登山道を封鎖して人の行き来が出来ないようにしている。

グロック: よし、いこう

ウルテン: ここは突破するしかないね


一行は封鎖されたバリケードを破壊するのは諦めて回り道する事にしたが、そこには当然のように敵の見張りがいる。
気付かれないように素早く倒せる人数でもない上、離れたところに歩哨も立っているので正面突破しかない。
一行は戦闘を開始した。

ウルテン: !
ウルテン: 助かった、グロック!

グロック: まえでるな


見張りと戦っているうちに敵の増援が現れて乱戦状態になってしまった。

ウルテン: ひとまずこの岩陰にかくれよう
ウルテン: まだ回りに敵の姿はある

グロック: そうか
グロック: せんりひんだ

ウルテン: おれはもうつけているから
ウルテン: いいよ

グロック: まほうつかいきったなおれ

ウルテン: おかげで助かったよ

グロック: くすりのんでなぐりあうか

ウルテン: でもとりあえず近くの奴をなんとかしないと
ウルテン: 呪文を覚えなおすのは無理そうだね

グロック: いっぱいいるか、まだ

ウルテン: どうだろう
ウルテン: ちょっと狙撃してみる

イノーラ: 普通にやられてる…


岩陰から見える範囲のオークを狙い撃つ二人。

ウルテン: あとひとつ!
ウルテン: これでとりあえず目に付く限りは最後のはずだけど


一行は隠れていた場所から出て、道を塞いでいるバリケードの前まで来た。

ウルテン: わざわざ待ち伏せていたのかな

グロック: じゃまだ、こわそう


こうして封鎖線を突破した一行は、サンダバールの街を目指すのであった。


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