サヴェッジ・フロンティアDR1235
第二章 カヴァードホームの戦い
「オグロクの影」


●罠

カヴァードホーム戦力の半分以上が出ている時に、街が直接攻撃にさらされた。
街に戻っていた一行は南から来る敵を迎え撃つべく、守備兵たちと南門の外で敵を待ち受ける。

イノーラ: このでっかい塔、邪魔だな

ハンベイ: この町は守りやすい地形でもないからな
ハンベイ: 侵入されたら終わりかもしれん

ウルテン: …


敵は特に忍び寄っているわけではなく、盾を叩いたり大声を上げたりしながら近寄ってくる。

ハンベイ: これ見よがしなだけに、他の門が気になるとこだが……

ダーマン: 毎晩集まるだけ集まってこちらの集中力をすり切れさせる…とかじゃないでしょうね


敵が5、6人のグループになってこちらに向かってきた。
守備兵たちが弓を射る。
さらに接近してきた敵と、一行が戦闘に突入した。

ウルテン: !

敵はグループを波状的に送り込んでくる戦い方である。
一行は連携を取って戦う。

ダーマン: ずいぶん散発ですね

ハンベイ: 1匹は気絶させるつもりでな

ウルテン: ああ、なるほど

イノーラ: どうせなら偉そうなやつにしろよ


そうこうするうちに、大きな部隊が南の丘に姿を現した。

ダーマン: 本隊か

ハンベイ: きついはなしだ

ウルテン: なりふりかまっていられるか!

アーガイル : ありゃ、まだ終わってねえ
アーガイル : おい、お前らもいけよ


敵の大将らしき、一際大きなオークが大声で話す。
その声は一行にも聞こえるほどである。
しかも大将は、本隊よりだいぶ先行していた。

ダーマン: こいつで良いでしょう

一行は敵部隊を一気に突破して、大将の部隊を強襲する。
取り囲み、気絶を狙って叩きのめした。
今度は上手く手加減できて、一行は指揮官を気絶させる事に成功した。

大将を捕らえられた敵は、すぐさま敗走していく。

ウルテン: ふう

ダーマン: ずいぶんと引き際が良い?

ウルテン: 敵の首魁を取ったからじゃあないかな

ハンベイ: 頭をつぶしたからだと思いたいが……

ダーマン: …生け捕ったの本当にえらい奴だったかも
ダーマン: しかし、味方の被害も案外大きいですね


一行が敵大将を捕らえたことで、南門の戦闘は幕を下ろした。

●尋問

戦闘と、その後の諸々が片付いて一段落した頃、一行はシティホールでクロウィンと会っていた。

クロウィン ケルベン: …今回の君たちの働きには
クロウィン ケルベン: 本当に感謝しているよ

ダーマン: 殿下のご助力もありましたから

クロウィン ケルベン: それで、敵襲でごたごたしてしまって
クロウィン ケルベン: 忘れていたんだが
クロウィン ケルベン: 前回の報酬と、今回の報酬を合わせて渡そうと思う

ダーマン: ありがたい

クロウィン ケルベン: 殿下の救出、大将の捕獲、等の功績を考えて
クロウィン ケルベン: 色をつけておいた。今渡していくよ

ウルテン: 報酬?

グロック: ほーしゅーだ

ハンベイ: 独立採算制なんだ

ダーマン: まあ、補給品の現物が間に合わないんで各自で調達しているのですよ

ウルテン: そういうものなのか…

グロック: ほーしゅーはいいものだ

ウルテン: 自分の町を守るために戦って報酬をもらうなんて、ちょっとわからなかった

ダーマン: 特定の氏族が一括して物資の交換を行うドワーフ族とは違って、この方が効率良いという面もあるのです

ウルテン: なるほど…

グロック: どわーふ、ただばたらきか?

ウルテン: お金をもらわなければ戦わないようでは、家が滅ぼされてしまうだろう?

グロック: それに、まちがってる
グロック: ここおれの、まち、ちがう

クロウィン ケルベン: 王子も、ここでの滞在には金が必要でしょうから
クロウィン ケルベン: 同じように渡しておきます

ウルテン: ん…
ウルテン: (まあ、いいか…
ウルテン: 確かに… 何かと入用になるかも知れないな…

グロック: いらないなら、おれが・・・

クロウィン ケルベン: ええ、ここでの生活には必要なものですし
クロウィン ケルベン: 働きに応じて報酬をもらうのは当然のことと思っていただきたい

ウルテン: 包帯や薬を買うにも金は必要になりそうだしな
ウルテン: コアミアに入ってはコアミアに従え、か

クロウィン ケルベン: さて……君たちの捕らえたオークだが

ダーマン: なにかしゃべったかな?

クロウィン ケルベン: これから尋問しようと思っている。君たちも来るかね

ダーマン: 行った方がいいだろうな

イノーラ: 私は遠慮させてもらう

ダーマン: まあ、人数いればいいというものでないですしね

グロック: おれも、おーくとはなす

クロウィン ケルベン: ところで全員が一気に話すと、尋問も進まないので
クロウィン ケルベン: 話すときは順番に頼む

ダーマン: 殿下も来られますか?

ウルテン: ん…


一行は牢獄に向かう。
そこには一行が捕らえた大将が縛り付けられていた。

クロウィン ケルベン: 私は最後に尋問するとしよう

ダーマン: 大まかな事はもう聞いたんですか?

クロウィン ケルベン: いや、なにも

ダーマン: ふうむ

グロック: おれ、はなしてみる

クロウィン ケルベン: 最初に私が聞くよりは君たちが先のほうがよいかとおもって

ダーマン: 共通語はわかるのか?

クロウィン ケルベン: どうかな


グロックが呪文を唱えた。
チャーム・パーソンの呪文でオークを魅了してスムーズに情報を引き出そうというのだ。
呪文をかけてから、グロックはオーク語で話しかける。

グロック: おい、俺はお前の敵ではないぞ
グロック: 今は落ち着け

ウルテン: (オーク語か…

だがオークには魅了された雰囲気はない。
グロックの呪文が抵抗されたわけでもなく、ただ呪文が効かなかった。
その時の感じから、グロックはこのオークがすでに精神操作呪文に操られていて、その呪文が強力なため二重に呪文がかからなかったと分かった。

グロック: だーまん
グロック: こいつ、まほうかかってるな

ウルテン: つまり…誰かに操られているということなのかい?

グロック: だれか、でぃすぺるしてみないと

ダーマン: そうなります

クロウィン ケルベン: ディスペルが必要なのか?

ダーマン: うーん。僕らでは難しいですね
ダーマン: ああ、クロウィンなら大丈夫か

クロウィン ケルベン: 魔術師を連れてこよう
クロウィン ケルベン: いや、私もそれほどの腕前はないんでね
クロウィン ケルベン: 魔術は片手間にやってるだけだから

クロウィンも一応魔術の心得はあり、戦場では剣を振りながらファイヤーボールを使う事もある。
それを片手間と言うところに、自らの能力に裏打ちされた自信のようなものが見える。

しばらくしてクロウィンが魔術師を連れてきて、ディスペルによってオークにかけられた呪文を解除した。
オークは不遜な態度を取っていたが、呪文が解除されるとあたりをキョロキョロして落ち着きがなくなってきた。

グロック: さっきはずいぶんな暴れようだったな

ダーマン: 変な術でない限り、記憶があるのはわかっている。質問に答えてもらう
ダーマン: おとなしくしていれば命の保証はしよう


しかしオークは共通語を理解できないようだ。
グロックとクロウィンがオーク語が出来るので、他のメンバーとの会話は二人が通訳することにした。(ゲーム的な意味でも)

縛りつけられたアーガイル: お、おれは……わかった。命は助けてくれ

グロック: おとなしく全部喋れば助かる
グロック: わかるか?

縛りつけられたアーガイル: *うなずく

グロック: 何処の部族のものだ?
グロック: 名前も教えろ

縛りつけられたアーガイル: 一つ目の部族のものだ。名前はハリムク

グロック: 一つ目の部族のハリムク、だな

縛りつけられたアーガイル: そうだ。

グロック: お前の部族はなぜここにいるんだ

縛りつけられたアーガイル: なぜって……おれたちの長グロウトが
縛りつけられたアーガイル: そう指示したからだ
縛りつけられたアーガイル: それに
縛りつけられたアーガイル: もともと住んでいた山には食料が無く、部族を養いきれなくなったのが理由だと聞いている

ダーマン: 元はどこにいた?

縛りつけられたアーガイル: 人間たちが、世界の背骨と呼ぶ山の一角だ

ダーマン: やはり世界の背骨か…
ダーマン: 略奪にしては随分と遠出じゃないか?その間に相当死んだんじゃないか?

縛りつけられたアーガイル: ここ数年の良い気候で増えすぎたんだ。おれたちだけじゃなく、すべての生き物が
縛りつけられたアーガイル: そして去年の厳しい冬をこせなくなった
縛りつけられたアーガイル: 確実な飢えと死を待つより
縛りつけられたアーガイル: 動くべきだとグロウトは語った
縛りつけられたアーガイル: おれたちはそれに従った

ウルテン: …

グロック: ひとつめの、ぐろうと・・・あいつか

縛りつけられたアーガイル: グロウトは神より一つ目の名を与えられた者だ
縛りつけられたアーガイル: 逆らうことなどできない

ダーマン: 普段ならまずお前達同志で略奪しあうのに、今回に限って何故手を結んだんだ?

縛りつけられたアーガイル: 手を結んだ?

グロック: いろんな部族がこのあたりに来ているだろう

ダーマン: 他の部族も一緒になってるじゃないか

縛りつけられたアーガイル: ああ…おれたちからすれば
縛りつけられたアーガイル: お前達も手を結んでいるようにしか見えないな
縛りつけられたアーガイル: 事情はどこも同じということだ

ダーマン: 我らは普段からそうだが、お前達はそうではない

縛りつけられたアーガイル: みんながいっせいに動いた。それこそ山を覆うほどのオークがな
縛りつけられたアーガイル: すでに北の地はオークで溢れた

ダーマン: (独り言)またオークゲートでも開いたかのような騒ぎだな…

ウルテン: …

縛りつけられたアーガイル: だから他の部族が行かない地域を目指した…と聞いている
縛りつけられたアーガイル: 偶然、同じようにしてきたほかの部族とは
縛りつけられたアーガイル: 連合しているわけではない。お互いの出方を見ているようだ

ダーマン: 攻撃が散発なわけは一応成り立つか

ダーマン: どうやって山々を越えた?途中の要塞や町はどうやってやり過ごしたんだ?

縛りつけられたアーガイル: 他の多くの部族が、それらの拠点を包囲していたから、ただ避けて通ればよかっただけだ
縛りつけられたアーガイル: 無論、攻撃に協力を求めてくる部族もあったがグロウトはそれを無視した

ダーマン: 北のほうでお前達はなにかを探しているようだったが、何を探していたんだ?

縛りつけられたアーガイル: 知らない

ダーマン: 知らないのに探せないだろう

縛りつけられたアーガイル: 俺の部隊ではないから、知らない

ダーマン: お前に術をかけたのは誰だ?

縛りつけられたアーガイル: 術?
縛りつけられたアーガイル: ああ…
縛りつけられたアーガイル: そうか……
縛りつけられたアーガイル: おれは…もともとただの戦士だったが、重要な仕事があるとかオグログ様に呼ばれて……

グロック: !
グロック: それでなにがあった

縛りつけられたアーガイル: それで、まじないを……
縛りつけられたアーガイル: 記憶は残っている
縛りつけられたアーガイル: おれは自分をアーガイル様と思っていたようだな……

グロック: つまりアーガイルは別にいるのか

縛りつけられたアーガイル: アーガイル将軍はグロウトの弟で
縛りつけられたアーガイル: 部族で一番の戦士だ
縛りつけられたアーガイル: おれごときでは歯が立たない

グロック: 重要な仕事といったが内容は?

縛りつけられたアーガイル: しらない……内容は聞いてない…はずだ

ダーマン: 影武者作っておいて無駄に消費というのもわかんなしな
ダーマン: 町を襲ったのがその仕事ではないんだな

縛りつけられたアーガイル: 恐らくアーガイル将軍の影武者……だと思う
縛りつけられたアーガイル: だとすれば光栄なことだ
縛りつけられたアーガイル: おれの部隊の目的はここの侵攻
縛りつけられたアーガイル: その、おまえたちの言う、なにかを探していた部隊とやらがどんなやつらか俺は知らないが
縛りつけられたアーガイル: アーガイル将軍配下の部隊ではないとすれば
縛りつけられたアーガイル: グロウト直属か、あるいはオグロクの下ということになる
縛りつけられたアーガイル: おれは本来、アーガイル将軍の部隊だ。だから俺が知らないなら、そういうことだろう


次に今の人数について聞く。

縛りつけられたアーガイル: 一つ目部族の戦闘要員は250人
縛りつけられたアーガイル: そのほか、非戦闘員を含めれば1000人ほどの大所帯だ
縛りつけられたアーガイル: これには、この地にきて併合した部族も含まれている

クロウィン ケルベン: さて、もういいのかな?

ダーマン: こんな所でしょうね。思ったよりえらかったのかそうでもなかったのか

ハンベイ: 微妙なとこだな

ダーマン: まあ、今後を考えるにはちょうど良い所でしょうか


グロックはこっそりオグロクの居場所を聞く。

縛りつけられたアーガイル: オグロク様は我が部族の軍師どのだ。族長と一緒にいるはずだ

グロック: そうか
グロック: ・・・


それから他のメンバーのほうに向き直る。

グロック: あとなんかあるか?

ダーマン: 今は特に

ウルテン: …
ウルテン: ひとつ聞きたいことがある
ウルテン: お前の部隊か、あるいは交流した部隊の中で、
ウルテン: ドワーフの一団と遭遇したという話はなかったか

縛りつけられたアーガイル: …うーむ、たしか
縛りつけられたアーガイル: 誰かがドワーフがどうのこうの言っていた気がする

ウルテン: 「誰か」?

縛りつけられたアーガイル: しかしおれたちが、直接ドワーフと戦闘したことはない。ネザー山脈に入る前に
縛りつけられたアーガイル: ドワーフの一団と遭遇はしたが
縛りつけられたアーガイル: 誰かは覚えてない。食事の場での話しだから

ウルテン: 話がつながっていないぞ
ウルテン: お前たちはドワーフの一団とネザー山脈に入る前に遭遇して、その後はもう見ていないのか?
ウルテン: それともネザー山脈を越えた後で誰かがドワーフの一団と遭遇したという話をしていたのか?

縛りつけられたアーガイル: そうだ。この地域にお前のようにドワーフが住んでいることも知らなかった

ウルテン: …

縛りつけられたアーガイル: だが、どうもこの地域にドワーフが住んでいるんじゃないかとかなんとか……そういう話をした覚えがあるだけだ

グロック: おわりか

ダーマン: そうですね

クロウィン ケルベン: …他になければ
クロウィン ケルベン: あとは私が詳細を引き継ごう
クロウィン ケルベン: もっと詳細な数や軍隊の構成が知りたいが、それは私から聞いておけばいいだろうな

ダーマン: いいでしょう

クロウィン ケルベン: 君たちは少し休んだらどうだ?
クロウィン ケルベン: また、今回の情報で
クロウィン ケルベン: 新しい仕事を頼むかもしれない

ダーマン: 殿下もお休みになられた方がよろしいかと

ウルテン: …

クロウィン ケルベン: とりあえず、一度出ましょう。


クロウィンは考え込んでいるウルテンの肩を叩いた。

ダーマン: 殿下、参りましょう

ウルテン: ん??
ウルテン: あ、ああ…

ダーマン: とりあえず補給と休養をとって置いて下さい

ウルテン: *うなずく

ダーマン: 一息ついたら宿で会いましょう

クロウィン ケルベン: 明日、また顔を出してくれ
クロウィン ケルベン: もし私がまだ来てなければ、シティホールのどこかで待っててくれればいい


尋問を終えた一行は、シティホールを後にしていつものように戦利品の分配や補給を行った。
なお、このシーンでは捕虜になったハリムクがなんでもかんでも答えているが、それはどう頑張ってもこの状況では情報を引き出されてしまうだろうから、プレイ時間短縮のためにすらすらと知っている事は全て答えている。実際には色々とやった上で聞き出していると思っていただきたい。

●街に潜む毒

尋問を行った日の深夜。
一行は皆、宿で休息を取っている。
しかしグロックだけはシティホールの中で牢屋を見張っていた。

守備兵: う、うわっ、な、なんだ

牢屋を守る守備兵の声に、グロックはインビジリティの呪文で姿を隠して様子を見に行く。
牢屋の中には捕虜のオークがいるが、身体はだらんと脱力していて床に倒れている。
その腹部は明らかに異常な様子でボコボコと蠢いていた。

守備兵: これは……ど、どうしたら

グロック: クロウィンをよべ


グロックは姿を消したまま話しかけたが、守備兵は混乱しており、ただじっと見ている。
そこへ別の守備兵Bが現れた。

守備兵B: 何かあったのか?
守備兵B: うわっあっ


と、ちょうどそこで呪文が切れてグロックが姿を現した。

守備兵: !

グロック: くろうぃん、よんでこい

守備兵B: うわっ突然

グロック: いそげ
グロック: ひとりはのこれ


しかし突然現れたグロックに守備兵は不信感を抱き、その指示には従わない。

守備兵B: とにかくまず様子を見るんだ

グロック: まちがどうなってもしらないぞ

守備兵A: そうだな

グロック: ばかなやつだ・・・


ついに捕虜の身体が背中から折れ曲がり、膨張した腹部から血と肉を撒き散らせながら何かが飛び出して来た!
そいつは近くにいた守備兵Bに飛び掛り、その喉を食い破った。

グロック: てきだ!!

グロックはすぐにそれを知らせに走る。
作戦室には他のパーティーのリーダーがいた。

パーティーリーダー: なにか騒ぎがあったようだが、どうした?

グロックが事情を話すが……

パーティーリーダー: ……夢?

グロック: ばかめ
グロック: そんなわけはない
グロック: ならばこい


にわかには信じられない話だが、全く何も無いということでもなさそうなので、パーティーリーダーはグロックについていく。

パーティーリーダー: !

グロック: これをみろ


牢屋の中は酷い有様である。
殆ど胴体がちぎれたようになって死んでいる捕虜。あたりは血の海と化している。
そこに倒れた守備兵が二人。
一人は捕虜の近くに倒れている守備兵B。守備兵Aは牢屋の入り口あたりに倒れている。

パーティーリーダー: …死んでる
パーティーリーダー: …くっ

グロック: だからいったろ

パーティーリーダー: これは…いったい
パーティーリーダー: うっ、酷い死体だな
パーティーリーダー: においが酷い

グロック: まちのそとにでたかもしれない
グロック: おれひとりではむりだった

パーティーリーダー: このホールの中にはいないのか

グロック: わからない
グロック: あのへいたい、ばかだ
グロック: くろうぃんをよべといったのに

パーティーリーダー: ……

グロック: じぶんでみにいって、ああなった

パーティーリーダー: しかし
パーティーリーダー: 普通の出来事ではない
パーティーリーダー: 無理もない

グロック: おれはここからでた
グロック: そしてあんたたちのいたあのへた、はいった
グロック: あのへや、はいった

パーティーリーダー: ドアは開いているな
パーティーリーダー: その怪物は
パーティーリーダー: 君を追いかけたわけではないようだな

グロック: かもしれないな
グロック: だが、おれのつかいま、たおしていった

パーティーリーダー: とにかく、他のメンバーを集めよう
パーティーリーダー: 君はここに残ってくれ


というわけで、事件が起こりPC一行がそれぞれ休んでいる宿にも使いの者が来た。

ウルテン: ダーマン、
ウルテン: それにハンベイも

ダーマン: なにやら使いが来たとか

ハンベイ: なんだ?こんな時間に?

ダーマン: さあ

イノーラ: おはよう…

ハンベイ: 急ぐか

ウルテン: なにかあったに違いない

ダーマン: そうですね

ウルテン: いってみよう

ダーマン: 武器は持っておいたほうが良いですよ

イノーラ: わかった


宿にいたメンバーも急ぎシティホールに向かい、グロックと合流する。
作戦室にはクロウィンも来ている。

ダーマン: グロック、早いですね

グロック: おれ、ここでねてた

ウルテン: クロウィン、
ウルテン: いったいなにが?

クロウィン ケルベン: いや、私も今呼ばれたので
クロウィン ケルベン: なにがあったんだ?

イノーラ: (眠すぎる…

ダーマン: 呼んだのは貴方だと思ったが

ハンベイ: うむ

ダーマン: 誰か事情を知っている方は?

パーティーリーダー : 呼んだのは私だ
パーティーリーダー: その……信じがたい話なんだが
パーティーリーダー: 恐ろしいことがおこってしまった

ダーマン: ?

ウルテン: おそろしいこと?

グロック: みればわかる

パーティーリーダー: 事件を目撃したのはそこのグロックだ

グロック: こい

ダーマン: 地下から怨霊でも?

ウルテン: ??

パーティーリーダー: だから皆を呼んだ


作戦室に集まった全員は、牢屋に向かい、そこの惨状を見る。

ウルテン: !!
ウルテン: これは…!

ダーマン: これは?

イノーラ: うわ…

ハンベイ: なにがあった?

クロウィン ケルベン: なんだ、これは

ダーマン: …破裂したように見えますが…

グロック: そう、はれつした

イノーラ: 変な病気か?

グロックが見た事を説明する。

グロック: そのかいぶつは、はねがあって
グロック: どこかにとんでいった

ウルテン: 羽根…

グロック: あのかいぶつは、きょうふを
グロック: ふりまく

ダーマン: 羽?

グロック: ちかづいただけで、こいつらは
グロック: にげだした

ウルテン: !

グロック: あきらかに、まほうのちからだ
グロック: おれは、へいたいに
グロック: くろうぃんよべといった
グロック: でもきかないでしんだ

イノーラ: じゃあ触っても平気だな、それなりに

ウルテン: なるほど
ウルテン: グロックはだいじょうぶだったのかい?

グロック: おれ、にげるのうまい
グロック: おーくも、にんげんも、おれをよくおいかけた

ダーマン: まあそんな異常な事態では正確に動くのも難しいでしょうね

クロウィン ケルベン: こいつは……なんというか
クロウィン ケルベン: 身体の部品が足りなくないか?
クロウィン ケルベン: 肋骨とか、骨が足りなさ過ぎる

グロック: ほねか


ウルテンとダーマンも調べてみる。二人とも判定に成功してクロウィンと同様の判断である。

ダーマン: ふうむ
ダーマン: と言う事はその中にいたものが骨の代わりをしていたのか

ハンベイ: ……もしくは、食ったか

イノーラ: 出てきたやつの食料にされたのかもな

クロウィン ケルベン: …駄目だ。このにおいは耐えられない。一度戻って話し合おう


といわけで全員、作戦室に戻ってきた。

ウルテン: でもこんなもの、これまで見たこともない・・

グロック: ほねをつかって
グロック: なかのものは
グロック: からだをつくりあげたかも

ウルテン: そういう見た目だったのかい?

ダーマン: なるほど

グロック: はねがあって・・・ちょっとがーごいるににてたかも

ダーマン: ふうむ

ウルテン: …

グロック: ちかづくと、きょうふのまほうにかかるから
グロック: おれちかよらなかった

ダーマン: 大きさはどのくらいです?

グロック: そう、おおきくない
グロック: あれ、まほうのいきものだ
グロック: しりょうじゅつ、でつくる

ダーマン: アンデッドと言う事ですか?

グロック: ほねの、にんぎょうみたいな
グロック: もうじゃ、いうより
グロック: ごおれむかな

イノーラ: …ますます面倒なことになってるな

ダーマン: ふうむ

グロック: おれの、せんせいのいえ
グロック: あんなの、いたなあ・・・
グロック: Necromatic Golem
グロック: と、いうものだったきがする

ウルテン: ?

ダーマン: うーん?
ダーマン: つまり、アースエレメントの代わりに死霊を使うのですか?

グロック: あれは、じぜんに
グロック: まほうかけないと、できない
グロック: ちからのある、まほうつかいでないと

ウルテン: ということは、最初からあいつを使い捨てるつもりだったということか

グロック: あのじゅつがかけられるの
グロック: おれがしってるなかでは
グロック: せんせいくらいだ

パーティーリーダー: ちょっと待てよ
パーティーリーダー: 尋問の時、あの捕虜は敵の…オグロクとかいう軍師に呼ばれたと言っていたな
パーティーリーダー: ならばそいつの仕込みというのが普通だと思うが

グロック: とくべつな、やくめ、ある
グロック: そういってた

ダーマン: そうですね。その時にかけられたと見るのが自然でしょう

ウルテン: でも、何のために?

イノーラ: 口封じ…には遅いよな?

クロウィン ケルベン: いや、口封じの可能性は高いだろうけど
クロウィン ケルベン: それだけならいいんだが

グロック: おぐろくが・・・そこまでの、ちからを?!

ダーマン: 奴が少なくとも生前の力に近いものをもったアンデッドを作れる事は見ていますし…

ハンベイ: 強力な術者がいるとわかったわけだ

クロウィン ケルベン: ……みんな、それよりも
クロウィン ケルベン: そいつはどこにいったんだ?

ウルテン: 逃げたのではなかったのか?

グロック: わからない
グロック: おれは
グロック: ここで
グロック: くろにぃに
グロック: やつをとめさせた
グロック: おれはここからでた
グロック: そして
グロック: べつのいりぐちから
グロック: なかに、はいった
グロック: ここで、あのぼうしおとこ
グロック: であった
グロック: じじょう、はなした

ウルテン: クロニーは何も見ていないのかい?
ウルテン: どっちへ行った、とか


グロックは自分のプレーンに送り返されたクロニーを再び召喚する。

クロニー: わたくしめも必死でして
クロニー: なにをかくそう
クロニー: 負けましたもので

ウルテン: ああ、なるほどね

グロック: で、もどったら
グロック: いなかった

クロウィン ケルベン: とりあえず
クロウィン ケルベン: ここの入り口を守っていた
クロウィン ケルベン: 守衛を呼んである
クロウィン ケルベン: 聞いてみよう


クロウィンは怯える守備兵を作戦室に招きいれた。

守備兵: …あ、あれはなんだったのですか?

グロック: Necromantic Golem、だ

ダーマン: (ぼそ)とりあえず市民は追い出した方が

守備兵: 入り口から、飛び出してきた骨の化け物が
守備兵: 血や内臓や筋を撒き散らしていたので
守備兵: 私は恐怖のあまり逃げてしまったのです

ダーマン: 無理もないですね

守備兵: ですが
守備兵: ヤツが街の中に向かったのは見ました……

グロック: まちに、とんでったか・・・

ウルテン: !

イノーラ: 探さないとならないな

守備兵: 見えなくなるまで動けませんでした。すみません……

ダーマン: まだ町にいると?

ハンベイ: まずいな

クロウィン ケルベン: 冗談じゃない!
クロウィン ケルベン: 悠長に話してる場合じゃなかった!

ダーマン: 他の者に取り憑く力でもあれば大事ですね

クロウィン ケルベン: …それはぞっとしないな

ウルテン: まてよ、
ウルテン: そいつが筋や血をまきちらして飛んでいったなら
ウルテン: 足取りをたどれないかな

クロウィン ケルベン: それだ。

ハンベイ: 痕跡はのこってそうだが

グロック: やねのうえとか、あるければな

ダーマン: しかし、痕跡は残りそうではありますね

クロウィン ケルベン: 跳べるのであれば、難しいかもしれないが
クロウィン ケルベン: 痕跡はあるはず
クロウィン ケルベン: とにかく
クロウィン ケルベン: 街の中を探してみるしかない

ダーマン: イノーラと、それに殿下もそう言う道には詳しいはず

グロック: あいつのしごと・・・
グロック: このまちにはいる
グロック: それだけだったのか・・・
グロック: あとは、あのかいぶつが・・・

イノーラ: 楽しくない仕事だな…

ウルテン: それじゃ手分けして探したほうがいいな

クロウィン ケルベン: そうしよう
クロウィン ケルベン: 手分けして捜索するしかないが
クロウィン ケルベン: 十分気をつけてくれ
クロウィン ケルベン: 返り討ちはごめんだ


クロウィンがウルテンにタメ口を利いているが、動揺しているためだ(笑)

ダーマン: 入ればいくらでも仕事はありますからね

グロック: さがすか

ダーマン: …次からは敵の死体は燃やすようにしないと

グロック: だーまん

ダーマン: なんです?

グロック: あいつは、きょうふをふりまく
グロック: たいさく、とてもじゅうよう

ダーマン: 邪悪からの加護ならいくらか使えますが、効くとは限りません。

クロウィン ケルベン: じゃあ皆、街中を探してくれ


●捜索

一行はシティホールを出た。
夜が明けるまでは数時間ある。
街の人々が動き出す前に、発見してどうにかしたい所だが……

ウルテン: うーん…

イノーラ: どう思う?

ウルテン: 痕跡は残っている
ウルテン: それは確かだ
ウルテン: ただ、これだけだと方向は特定できないな

ダーマン: ふうむ

イノーラ: 南…だと思うのだが
イノーラ: 自信はないんだ

ハンベイ: 入り口とそこを結んだ方向を探してみよう

ダーマン: ではまずは南に行ってみましょう


ウルテンとイノーラの二人が痕跡を探しながら、一行は移動する。

グロック: みなみ、なにがある?
グロック: ねらい、なんだろう

イノーラ: この辺にはないな

ウルテン: ちょ、ちょっとまった
ウルテン: グロック!

グロック: なんだ

ウルテン: こまったな
ウルテン: ばらばらに行動すると、もし遭遇した時が危険だよ

ハンベイ: 短い間隔で探した方がいいと思うが?急に向きを変えることだってあるからな

ダーマン: 一応奴らの来た方角なので素直に帰った、と言う可能性も無いではないですが…

ウルテン: 二手にわかれよう

ダーマン: そうですね
ダーマン: 人選はお二人に任せます

ウルテン: おれはここから北周りに調べるから
ウルテン: 誰か一緒に来てくれないかな

ウルテン: そちらのお嬢さんが、南回りを

イノーラ: わかった

ウルテン: それじゃ、
ウルテン: ハンベイ、一緒にたのむよ

ハンベイ: うむ、そちらの眼力が頼りだ

イノーラ: いったん降りたほうがいいかな?

ダーマン: ですね


というわけで二手に分かれた一行は、それぞれ別の方角で痕跡を探す。

ウルテン: ここはどうかな

ハンベイ: この位置にないということは、すぐに向きを変えたか?

ウルテン: うーん…

ウルテン: 見落としている可能性もある
ウルテン: もう少し調べてみないとなんともいえないね

グロック: だれかみてたり、しないか

ハンベイ: こちらにきたとすると、出てきたほうと逆に飛んだことになるな

ウルテン: うん

ハンベイ: 司令部の北もあたってみたほうがいいいだろう


司令部=シティホール。

ウルテン: 司令部の北というと
ウルテン: ここの上かい?

ハンベイ: この上の段だな

ウルテン: とりあえずこの周囲には明らかになさそうだ
ウルテン: 上へいってみよう


カヴァードホームは元々の遺跡をそのまま利用した街である。
もとより階層構造になっていて、一番高い場所にシティホールが建設されている。

ウルテン: なにもないな

ハンベイ: さらに上の段も確認がいるか……

ウルテン: 少なくともこれだけ現場に近い位置で
ウルテン: 何も見当たらないということは
ウルテン: たぶん方角が違うということかも知れない

ハンベイ: こっちではない可能性がたかそうだな

ウルテン: グロック
ウルテン: そっちはどうだい?

グロック: おれ、わからない
グロック: かんがえてる
グロック: あいつ、なにをしたいか

ハンベイ: やはり、入り口と最初の痕跡を結んだ位置の周辺を調べるべきだろう


一方、ダーマンとイノーラは……

ダーマン: む
ダーマン: 血のあとが

イノーラ: この辺に血痕はあるんだが
イノーラ: どっちの方角かは…
イノーラ: 南東、かな

ダーマン: 宿の裏ですね


宿の裏のあたりを探ってみるが、ゴミしかない。

イノーラ: この辺じゃないな
イノーラ: 降りてみよう

ダーマン: はい

イノーラ: このへんにはあるな

ダーマン: ふむ


方角としてはイノーラ、ダーマン組のほうが合っていて、血痕などの痕跡を見つけつつ捜索を続ける。

イノーラ: 北はないとして、

ダーマン: この辺はどうかな…


ダーマンは街の壁に、下へ降りる階段を見つけた。
入り口は鉄格子で閉じられている。

ダーマン: さすがにこんな所に入ったりはしないか

するとそこへ、北方面では収穫ゼロだったウルテン、ハンベイ、グロックの三人がやってきて合流した。

ウルテン: この建物は
ウルテン: なんだい?

ダーマン: さあー
ダーマン: 人の出入りもなさそうですし
ダーマン: …ただの防風壁かと思っていましたが、違うんですかね?
ダーマン: まあ、今は関係ないか

ハンベイ: 地下があるのかもしれん
ハンベイ: ここをくぐってるなら流石に跡が残るだろう

ウルテン: うーん…

ダーマン: 一度ホールに戻りましょうか


そろそろ明るくなってきた。
一行はその後の情報がないか、シティホールに戻る事にした。
シティホールではクロウィンが眠い目を擦っている。

イノーラ: 発見は出来なかった

ウルテン: 面目ない

クロウィン ケルベン: …眠い
クロウィン ケルベン: 我々も探してみたのだが
クロウィン ケルベン: 特になにも見つけられなかった。

ダーマン: ここから南東に向かったのはわかったのですがそこからは…

クロウィン ケルベン: ふむ…

ハンベイ: 宿の南のあたりまでは飛んでいったようだが

クロウィン ケルベン: 結局朝になってしまったな
クロウィン ケルベン: この時間ならば異変があったらすぐにわかるし
クロウィン ケルベン: 家の中も捜索できるだろう
クロウィン ケルベン: それに人も使える

クロウィン ケルベン: とりあえず我々は休んだほうがいいかもしれんな

ハンベイ: とりあえず、最後の痕跡の周辺から探すしかない

クロウィン ケルベン: あとは他のパーティーや守衛に任せよう

ダーマン: ですかね

イノーラ: とにかく少し寝ないとな

クロウィン ケルベン: 君たちの捜索の結果は地図に書いて引き継いでおこう
クロウィン ケルベン: ……なにかあったら、また起こされるしな、寝ておこうじゃないか

ダーマン: 私たちも全員宿で待機しておきましょう

クロウィン ケルベン: なにかあれば宿に人をやろう

ダーマン: わかりました

クロウィン ケルベン: ご苦労だった

ウルテン: それじゃ、休ませてもらうよ

クロウィン ケルベン: 殿下もおやすみください


一行は捜索を引き継ぎ、宿に戻った。
送り込まれた怪物はどこに消えたのか。
その目的を真の意味で知る事ができるのは、ずっと後のことである……。


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