サヴェッジ・フロンティアDR1235
第二章 カヴァードホームの戦い
「王子として」


●王子としての目覚め

偵察任務中に川岸で倒れているドワーフを保護した一行は、野営地にて治療を行う。

グロック: いますこしうごいた
グロック: いきてる

ウルテン: …
ウルテン: う…

グロック: おれのくろきち
グロック: くわせてやる!


グロックは焚き火の火で死んだ馬の肉を焼く。

グロック: んー
グロック: うまそうだぞ

イノーラ: …やめろ
イノーラ: そもそも目もさめてないだろうが

グロック: いまちょっと目あいたぞ

ハンベイ: 容態は安定しそう?

ダーマン: 傷についてはふさがってますが、その後はわかりませんね

イノーラ: しばらくここに足止めか

ウルテン: う…


ドワーフ(ウルテン)が呻いて目を開いた。

ハンベイ: ふむ、流石に頑丈だな、もう峠は越えたらしい

グロック: お
グロック: くろきちくうか

イノーラ: やめろって

ウルテン: …
ウルテン: !
ウルテン: オーク…!

ダーマン: 気がつかれましたが

ハンベイ: 気がついたか?


焼いた馬肉を差し出すグロックを、ウルテンは殴ろうとしたがそのまま倒れてしまう。

ダーマン: …無理に動くから

グロック: おれ、おーくちがう

ダーマン: 彼はハーフオークですが私たちの仲間です

ハンベイ: 落ち着け
ハンベイ: まだ動けるとこまで治っていない

グロック: くろきちくえ

ウルテン: く・・・・


さらに馬肉を渡そうとするグロックの手をウルテンは払いのける。

グロック: おれのくろきちを・・・ひどいやつだ

ウルテン: お、おまえたち…
ウルテン: …人間…?

ダーマン: ええ、そうです
ダーマン: カヴァードホームの偵察隊です

ウルテン: な、なんで人間が…
ウルテン: まさか、オークと手を…!?

ダーマン: オークの動向を探りに来ていたのですよ

ハンベイ: 逆だ
ハンベイ: 包囲されてる

ダーマン: どちらにせよまずは火の側へ

ウルテン: 包…囲…
ウルテン: ?

グロック: なにいっても、むだみたい

ハンベイ: とにかく、体を温めろ

グロック: さけ、わすれてきた
グロック: すまない

ダーマン: 兜もかぶらずに行くわけにも行かないでしょう?殿下

ウルテン: …
ウルテン: その声… ぼんやりと…
ウルテン: もしかして、おれ…
ウルテン: あんたたちに助けられた…のかい?

イノーラ: …めんどうくさいドワーフだな

ダーマン: まあそうなりますね

ハンベイ: 死に掛けて川原で倒れていた

グロック: だーまんたすけた
グロック: こいつ、とてもいいやつ

グロック: ししゃも、のそうりょ

ダーマン: シアモーフだよ。グロック

グロック: そうともいう

ウルテン: 川原…

ダーマン: 側にいたグリズリーが貴方を食べてなかったのが不思議なくらいでしたよ

ウルテン: そうだ!
ウルテン: 他に… 他に誰もいなかった?!

ハンベイ: あんただけだ

ウルテン: …そうか…

ダーマン: 残念ですが貴方の救命を優先しましたので

ウルテン: *うつむく

ダーマン: 一体何故あのような所に?

ウルテン: *どうやらうつむいて泣いているらしい

ダーマン: いずれにせよまずは休まれないと

ウルテン: ……

ハンベイ: もっと火に寄れ、体が冷えるぞ

ウルテン: …
ウルテン: !
ウルテン: この兜…!


ウルテンは傍らに置かれていたアルテンの兜を手に取る。

ダーマン: 貴方の側に落ちていました

ハンベイ: すぐ近くに落ちていた

ウルテン: …そうか…

ダーマン: 貴方の物ですか?

ウルテン: *うなずく*

ダーマン: なるほど
ダーマン: …つまり、鉱山は?

ウルテン: *飲み水を欲しそうに見る

ダーマン: これは失礼しました

ウルテン: あ、
ウルテン: ご、ごめん
ウルテン: …ありがとう

グロック: まだあるぞ、うまのにく

ダーマン: いえ、このような時ですからね

ウルテン: ええと、
ウルテン: *気まずそうにせきばらいする
ウルテン: まずは… 言うのが遅れたけど
ウルテン: 助けてくれてありがとう
ウルテン: おれは… ウルテン
ウルテン: さっきそこのあんたが言っていたとおり
ウルテン: 鉱山から来た
ウルテン: オークの調査と
ウルテン: …カヴァードホームへの友好と共闘の使者として
ウルテン: その途中でオークどもに襲われて
ウルテン: 河に…落ちたんだ
ウルテン: あとは、あんたたちの知っての通りだよ

ハンベイ: なるほど

ダーマン: それは大変でしたね

ウルテン: …
ウルテン: それで、あんたたちは?
ウルテン: こっちが名乗ったんだ、名前くらい教えてくれてもいいだろう?

ダーマン: 私たちはカヴァードホームの偵察隊です
ダーマン: 私はダーマン=アマーディアス。シアモーフの僧侶です
ダーマン: 以後よろしく

ウルテン: ダーマン・アマーディアス、

ダーマン: カヴァードホームも2ヶ月の間、オークに包囲されているのですよ

ウルテン: !!
ウルテン: それはほんとうかい?!

ダーマン: 実際にはそれより早く開拓地が襲われたりもしていました
ダーマン: それで、オークの陣を調査しに来たわけです

ハンベイ: 俺は、御子神 半兵衛 正孝

ウルテン: ミコガ… なんだって??

ハンベイ: 半兵衛でいい

ウルテン: ハンベイ、か

イノーラ: …おい、グロック

グロック: はっ!
グロック: ねむくなった
グロック: いっぱいくったから

ウルテン: けどダーマンに、ハンベイ、か
ウルテン: 解せないな

ダーマン: なにがです?

ウルテン: そう言う割には、なんであんたたちはオークと一緒にいる?

グロック: おれおーくちがうぞ
グロック: おーくみんなばか
グロック: おれは、あたまいい

ダーマン: 彼の血の半分はオークですが
ダーマン: 私などよりもよほど優しいいい男です

ハンベイ: 開拓村で一緒に働いていた奴だ
ハンベイ: 背中は預けられる

グロック: おーく、おれのしんゆうころした
グロック: りっく、いまうらにわのはかでねてる
グロック: ついでがあったら、はなをそなえて

ウルテン: (言われてみれば確かにいろいろ見た目が違うような気も…
ウルテン: (そういえば前に師匠が言っていたっけ??
ウルテン: りっく??

グロック: りっく、とてもいいやつ

ウルテン: ??

ハンベイ: ああ、死んでしまった友人だ

グロック: でもしんだ

ウルテン: !

ダーマン: 私たちの仲間です。今は安らかに眠っています

ウルテン: …

グロック: おれ、りっくのかたき、うつ

ウルテン: *うつむく

ハンベイ: ホームに逃げる途中でな

グロック: おぐろく、ころす

ウルテン: まあ、別にいいや
ウルテン: とりあえずあんたはオークだけど、敵じゃあないってことだね

グロック: おれ、おーくいがいころすのきらいだ
グロック: なぐってきたら、ころす

ダーマン: とりあえずはその認識で十分かと
ダーマン: しかしこうなると偵察どころではありませんね…

ウルテン: ああ… さっきは、悪かったよ

グロック: おれ、よくなぐられたから、いっぱいころした

ウルテン: ごめん、気がついたばかりで
ウルテン: 頭もぼんやりしていたんだ

グロック: いい
グロック: おれ、わかった
グロック: おまえ、いいやつ、そんなきがする

ハンベイ: 町に帰ったほうが安全だしな

ダーマン: 夜が明けたらすぐに引き返しましょう

ウルテン: …
ウルテン: 町には戻れるのかい?

グロック: まじないし、にがしたな

ハンベイ: そこまでは遠くない

ダーマン: おそらくは問題ないと思いますが、念のため日が昇ってから行動しましょう

ウルテン: いや、そうじゃあなくて、
ウルテン: 包囲されてるって言ってたじゃあないか

ダーマン: 攻撃は散発的ですから出入りくらいは出来ます

ハンベイ: 包囲の実情を調べるための偵察だ

ウルテン: ああ、なるほど…
ウルテン: みっちり取り囲まれているわけじゃあないんだね

ハンベイ: 流石に、完全に包囲されていれば、とっくにホームは餓死者の巣だ

グロック: あいつら、なにかさがしてる
グロック: なんだろう

ダーマン: そのようなそぶりなのですよ

グロック: ほりょ、つかまえる、しっぱいした

ウルテン: …

グロック: おれ、こおらせた・・・

ウルテン: 少なくとも、おれたちが襲われた時には
ウルテン: 有無を言わせず襲ってきたかたちだった

ダーマン: とにかく彼らには解せない事が多い

ダーマン: それはこちらもそうですね。何かを探してる割にはこちらを見たら必ず襲ってくる

ウルテン: …

ダーマン: 支離滅裂とも言える感じです

グロック: さきにとられたら、まずい
グロック: あと、さきにみつけてたら、ころして、うばう
グロック: かんぺき!

ダーマン: ふむ…
ダーマン: 行動原理としてはおかしくもないのか

グロック: うん

ダーマン: 消耗戦になるのが欠点ですが、奴らはその点にはまるで頓着していないし…

ウルテン: …

ハンベイ: とりあえず、体を休めよう

グロック: すこしねていいか

イノーラ: 私は見張りにたってくる

ダーマン: とりあえず今日は我々が交替で見張りにつきます。貴方はゆっくり休んで下さい

グロック: おれ、まほうのちから、もどす

ダーマン: そうですね。いまのうちに休んでいて下さい

ハンベイ: 馬に乗れるくらいまでは治してもらわねばな

ダーマン: 傷は呪文でふさげますが、疲労困憊ではどうにもなりませんからね


●ウルテン、カヴァードホームへ

翌日、一行はウルテンを馬に乗せてカヴァードホームへの帰路についた。
特に遭遇もなく、丸一日かけて到着した一行は報告のためシティホールへ向かう。

ウルテン: *きょろきょろ

ハンベイ: こっちだ

ダーマン: クロウィン殿

クロウィン ケルベン: ああ、すこし長かったようだな
クロウィン ケルベン: なにかあったのかと心配していたよ

ダーマン: まだ任務の途中だが…


ダーマンは偵察任務の途中でウルテンを救助した事と、彼の目的について話した。

ダーマン: と言う事でウルテン殿をお連れした

クロウィン ケルベン: !

ウルテン: …


クロウィンはじっとウルテンを観察する。
アルテンは半年ほど前まで、数ヶ月の間カヴァードホームに滞在していた事がある。
そのためアルテンと個人的に面識のある人物がいてもおかしくないのだが、誰と面識があるかウルテンは聞かされていない。
王子のふりを続けるなら、その点にウルテンは注意しなければならないわけだ。

ハンベイ: ご存知か?彼のことを

クロウィン ケルベン: これは…
クロウィン ケルベン: 失礼しました、ウルテン殿。お久しぶりですね


ウルテンはどう答えていいかわからず無言である。

クロウィン ケルベン: どうなされた?

ウルテン: た、たちくらみが…

ダーマン: 傷はふさいだが、体調そのものは良くない

クロウィン ケルベン: だいぶ具合が悪そうですね
クロウィン ケルベン: なにはともあれ無事でよかった。話も辛いでしょうからひとまず
クロウィン ケルベン: クレリックのもとで治療されてはいかがかな

ウルテン: そうさせてもらうよ
ウルテン: すまない、クロウィンどの

クロウィン ケルベン: いいえ。それと例の件なのですが……

ウルテン: ここでは…

クロウィン ケルベン: ……わかりました。後ほど話しましょう

ウルテン: *うなずく


なんとなく話を合わせているだけで、ウルテン自身は「例の件」と言われてもちんぷんかんぷんである。

クロウィン ケルベン: すまない皆、任務は中断して構わない
クロウィン ケルベン: いや、よくドワーフの王子を救出してくれた

ダーマン: では、現在の所判明した分を後ほどレポートします

クロウィン ケルベン: このまま王子をクレリックのところへ連れて行ってくれ
クロウィン ケルベン: イルメイターのクレリックが治療院をしてくれているはずだ
クロウィン ケルベン: 酒場の近くにある
クロウィン ケルベン: 南門の近くだ。行ったことはなかったかな?

ダーマン: あまり他の神の祭所には

ハンベイ: 行けばわかるか……

グロック : おれいったことある

ダーマン: とにかく行きましょうか

クロウィン ケルベン: まあ彼の世話になったことがないのは良い事だけれど
クロウィン ケルベン: では頼むよ

ウルテン: すまない、またあとで

クロウィン ケルベン: ええ


というわけでシティホールを退出する一行。
クロウィンの視線がウルテンの背中を追っていた事には誰も気が付いていない。

グロック : まちがえた

ウルテン: あいて

ハンベイ: しっかり

グロック : ここだった


とかなんとかで、司祭のいる家までやってきた。

イノーラ: なあ、先に酒場に戻ってても構わないか?

ダーマン: ええどうぞ

イノーラ: ありがとう


イノーラは先に一人で宿に戻る。

ハンベイ: こちらへ

ウルテン: ここが寺院??

ハンベイ: 臨時の施療院だな
ハンベイ: 間借りだろう

ウルテン: なるほど、

ダーマン: どの神も常にきちんとした祭所を持っているとは限らないのですよ
ダーマン: こちらへ

ウルテン: へえ…


一行は家に入る。

イルメイター司祭: なんだか騒がしいですね…

ダーマン: これは失礼しました
ダーマン: こちらの方の治療をお願いしたい

ハンベイ: この方の治療を

ウルテン: *ものめずらしそうに中を見回している

イルメイター司祭: これは……いけませんね
イルメイター司祭: 凍傷で組織が腐りかけている
イルメイター司祭: 早く治療しないと!

グロック : !!
グロック : ゆびがとれる!

イルメイター司祭: こちらへ

ウルテン: そ、それはぞっとしないね…

イルメイター司祭: そちらに横になってください
イルメイター司祭: 他の方は外に

ハンベイ: 後は任せておけば大丈夫か

ダーマン: そうですね


ウルテンは司祭の熱心な治療を受け、他のメンバーは戦利品の処分や分配などを行う。
そうこうして数日が経過した。

イルメイター司祭: ふう……
イルメイター司祭: もう大丈夫でしょう

ウルテン: ありがとう、
ウルテン: もうずいぶんよくなった

イルメイター司祭: あとは少し動いて身体を慣らされるとよかろう

ウルテン: そうするよ、ありがとう

イルメイター司祭: 私は休みますので……少し街の中でも散歩されてはいかがですか

ウルテン: …ん?
ウルテン: あ、ああ
ウルテン: それじゃそうしようかな

イルメイター司祭: では


だいぶ回復したウルテンは街に出た。

ウルテン: …
ウルテン: アルテン…


アルテンの目指したカヴァードホームに到着したウルテンは、街の様子や人々の暮らしぶりを見てまわる。

ウルテン: ん
ウルテン: お、あんたたち


そこへ買出しに来ていたダーマンたちに遭遇する。

ダーマン: 良くなられたようですね

ウルテン: ああ… おかげさまでね

グロック : ゆびとれたか

ウルテン: ちゃんと五本ずつついてるよ

ハンベイ: 顔色がよくなっているな


それからシティホールへ向かうウルテンを案内して、一行もシティホールへとやってきた。

クロウィン ケルベン: 王子
クロウィン ケルベン: 具合は良くなったようですね

ウルテン: 心配かけたね

クロウィン ケルベン: よかった。
クロウィン ケルベン: あなたを失えば、我々にも大きな損失ですからね
クロウィン ケルベン: …半年前より少しお痩せになった?

ウルテン: ?
ウルテン: そうかな
ウルテン: 筋肉はついたかも知れない

クロウィン ケルベン: まぁ、とにかく中へ

ウルテン: うん


シティホールにある執務室へと招き入れるクロウィン。
カヴァードホームの政治形態において、その中心であるシティホールに自分の執務室を持っているだけでもクロウィンが他のリーダーとは違った立場になっている事がわかる。

クロウィン ケルベン: さて、王子
クロウィン ケルベン: この時期にあなたが来る事は、私も知りませんでした
クロウィン ケルベン: いったいどういう事情なのですか?

ウルテン: うん、
ウルテン: 本当は先に使いが行くはずだったんだ
ウルテン: しかしオークに遭遇して…
ウルテン: *うなだれる

クロウィン ケルベン: 使いの方々が行方不明…と?

ウルテン: いや、
ウルテン: …全滅した

クロウィン ケルベン: それは……
クロウィン ケルベン: なんと申すべきか

ウルテン: 生き残ったのは
ウルテン: わたしだけで…

クロウィン ケルベン: 憎むべきはオークですな……

ウルテン: 友が… 逃してくれたんだ…

クロウィン ケルベン: それは心中お察しします

ウルテン: …
ウルテン: …それで、状況はどうなっているんだい
ウルテン: そちらの人たちに聞いた話だと、いま包囲を受けているそうだね

クロウィン ケルベン: そうですね説明しましょう
クロウィン ケルベン: まずカヴァードホームはご覧のとおり無事です
クロウィン ケルベン: 一度、門のところまで攻め込まれたこともありましたが撃退しました
クロウィン ケルベン: ホームの南にあった農園群
クロウィン ケルベン: 住民たちは村と呼んでいましたが、そちらは敵に蹂躙されてしまいました……

ウルテン: !

クロウィン ケルベン: 住民の大半はここまで逃げてこれましたが
クロウィン ケルベン: 犠牲は出てしまったようですね

ダーマン: …

ウルテン: そうか…

ハンベイ: ……くっ……

クロウィン ケルベン: 王子も知ってのとおり
クロウィン ケルベン: 我々の勢力圏と呼べるのは
クロウィン ケルベン: このホームの周囲と
クロウィン ケルベン: その農園群付近だけでしたから
クロウィン ケルベン: 敵オーク部族の通行を妨げるようなことはできなかった

ウルテン: いったいオークの狙いはなんなんだい?
ウルテン: この一帯を制圧しようとでも考えているのかな

クロウィン ケルベン: さあ……そもそも目的なんてあるのか私は疑問ですね

ダーマン: それについてですが…

グロック : なにかさがしてる
グロック : まちがいない

ウルテン: なにか?

ダーマン: ええ、彼の言うとおり何かを探しています
ダーマン: それがなんなのかは不明です。が、元の農園でも彼らが何かを探して山中を歩いているのが目撃されています

クロウィン ケルベン: ……

グロック : なにか、わからない
グロック : でも、さがしてた!

ウルテン: そういえば、確かに、
ウルテン: 我々の遭遇したオークも、こちらが山から下りてくる途中で
ウルテン: 偶然行き当たった、という感じだったかも知れない

クロウィン ケルベン: …
クロウィン ケルベン: 下から行き当たった?
クロウィン ケルベン: オークが山を登ってきたということですか?

ウルテン: いや、登ってきたわけじゃないと思う
ウルテン: 山の尾根に沿って進んでいたのかな
ウルテン: なにしろ先に偵察に出た斥候が…戻らなかったからな
ウルテン: あっちがどういう動きを最初にしていたのかはわからないんだ

クロウィン ケルベン: 王子……ネザー山脈のこちら斜面ははドワーフのテリトリーです
クロウィン ケルベン: ドワーフのハンターは山について詳しいはずですし、案内にハンターを入れていたのでしょう?
クロウィン ケルベン: それが、特に目的もなくうろついていたオークを避けられないことがあるんでしょうか

ウルテン: うーん…
ウルテン: しかしかれは私の護衛で
ウルテン: 離れるわけにはいかなかったんだよ…

クロウィン ケルベン: ……
クロウィン ケルベン: ともかく状況の話を進めます

ウルテン: *うなずく

クロウィン ケルベン: こちらはホーム以外の地域を勢力下にしているわけでないため
クロウィン ケルベン: オークたちを自由にさせてしまっています
クロウィン ケルベン: 結果、ホーム周辺の地域にオークの部族が拠点を持ちつつある
クロウィン ケルベン: 現状、我々に必要なのはそれらを各個撃破するために
クロウィン ケルベン: 情報がいるということです

ウルテン: 連中は元からこの辺りにいたわけではない?

ハンベイ: ……こちらも余裕があるわけでもない……

グロック : やつらとおくからきた

クロウィン ケルベン: ええ、やつらはネザー山脈を越えて北から来たのです

ダーマン: 信じがたい話ですが…彼らがネザー山脈の向こう側から来たという確たる証拠があります

ウルテン: ふむ…
ウルテン: となると、やはりなにか目的があって来たとしか思えないな

クロウィン ケルベン: 私にはそうは思えません

ウルテン: ?
ウルテン: どういうことだい?

クロウィン ケルベン: やつらはただの獣と同じです
クロウィン ケルベン: 私はスパインの山裾の小さな村で生まれました
クロウィン ケルベン: そこでは5年に一度くらいの割合でオークの数が増え
クロウィン ケルベン: 養いきれなくなると山を下りてきて村を襲ってきました
クロウィン ケルベン: 私にはやつらに、何か目的があるとすればそれは単に食い物にありつくことと
クロウィン ケルベン: 暴れてストレスを発散することしかないように思えます

ウルテン: しかし、かれらは連中が何かを探しているのを見たと言っているよ

クロウィン ケルベン: …確たる証拠がなければなんとも…

ダーマン: 確かにね。単に落とした財布を捜していただけかも知れない

ハンベイ: とりあえず、指揮官たるものが先入観に基づいて判断するのはやめてほしいとこではあるな……
ハンベイ: 何のための偵察だかわからん

クロウィン ケルベン: ハンベイ、オークの目的についてはもちろん気になるところだが、まずは安全確保が先だ。そのための偵察だよ

グロック : おれたち、一つ目みた
グロック : おぐろくにもあった
グロック : ただごとじゃない

ウルテン: おぐろく?

グロック : まほうつかいだ

クロウィン ケルベン: 彼らの農園を襲った部族のことです。また、その族長に従うハーフオークの魔法使いのことらしいのですが詳しくはわからないんです

ウルテン: ともかく、情報が必要ということか

グロック : いっぴき、つかまえる
グロック : しらべるほうほう、ある


グロックは指輪を取り出して見せた。それはリックを殺したアンデットが付けていたものだ。

ウルテン: これは?

グロック : これを、まほうでしらべろ

イノーラ: …

グロック : あいつ、したいうごかすのに、つかった

クロウィン ケルベン: ふむ……
クロウィン ケルベン: わかった。これは預かっていいのかな?

グロック : ちゅういして、あつかえ
グロック : ぎゃくに、おれたちのことばれるかも

クロウィン ケルベン: では調べておくように頼んでみよう

ウルテン: だいたい状況はわかった

グロック : こないだと、おなじだ
グロック : つかまえよう
グロック : おーく
グロック : しっぱいしたけどな・・・

クロウィン ケルベン: オークを捕らえるか…

ダーマン: あの程度の冷気でショック死するとは思わなかったね

グロック : おれも・・・

イノーラ: いや、私が急所に当てたから
イノーラ: だと思うが…

グロック : いのーら、わるくない
グロック : ゆみうまい

ダーマン: まあ、アレは予想外だった

クロウィン ケルベン: ちょうど今、ニケの丘にオークが陣を張っているとの情報で6パーティーほど出ているんだが
クロウィン ケルベン: 彼らに生け捕りを指示はしてないな……

ウルテン: ふむ


と、そこへ街の守備兵の一人がノックもせずに飛び込んできた。

守備兵: クロウィンさん!
守備兵: 大変です

クロウィン ケルベン: どうしたんだ?

ウルテン: ??

守備兵: オークの部隊が南門ほうめんに…集結中で

クロウィン ケルベン: !?

イノーラ: …

守備兵: すぐにホームまで到達しそうです…

ハンベイ: まずいな……

ウルテン: !

クロウィン ケルベン: …どういうことだ?
クロウィン ケルベン: むう…とにかく
クロウィン ケルベン: こちらも反撃の準備を

グロック : ちゃんすだ
グロック : いっぴきつかまえればいい

イノーラ: その暇もないかもしれないぞ

クロウィン ケルベン: 我々も出るしかないな
クロウィン ケルベン: 皆も出てくれ

ダーマン: 了解

ウルテン: わたしもいこう

クロウィン ケルベン: 王子は…まだ傷が癒えたばかりでは
クロウィン ケルベン: ここに残ってください

ウルテン: もとより、鉱山のドワーフの代表として
ウルテン: カヴァードホームの人間たちと共に戦うために来たんだ

クロウィン ケルベン: ……

ダーマン: 良いのではないですか。王族として素晴らしい覚悟です

ウルテン: この状況を見過ごすわけにはいかないよ

クロウィン ケルベン: …………
クロウィン ケルベン: くぅ、仕方ありませんね
クロウィン ケルベン: 皆、王子を守ってくれよ
クロウィン ケルベン: 頼む

ダーマン: もちろん

ハンベイ: 手が足らんのだ、使えるものは使わねばな

ダーマン: 殿下、武器は何を?

ウルテン: うん
ウルテン: 刀があるからこれを使うよ

クロウィン ケルベン: みんな、南門のほうがピンチになったら
クロウィン ケルベン: 我々を呼ぶように使いを出してくれ
クロウィン ケルベン: 我々は東門に布陣する
クロウィン ケルベン: 頼んだぞ

クロニー: では私が使いをしますかな

ウルテン: な、なんだあれ…

クロニー: ごきげんよう

イノーラ: 籠城戦は久しぶりだな

ダーマン: まああまり気にせずに。味方です

ウルテン: そうなのか…

グロック : くろにーはいいやつ
グロック : べじたりあんだ


こうしてカヴァードホームに辿りついたウルテン。
果たしてアルテンの望みを叶える事はできるのか。
しかし今は、攻めて来たオーク軍と戦うしか、出来る事はない。


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