サヴェッジ・フロンティアDR1235
第一章 オーク、来る
「名も無き戦い」


●不吉な知らせ
森からPC一行が帰還した翌日、偵察に出ていたテリウスが戻ってきた。
ザクは再び主要な村人を集め、テリウスの報告を聞くことになった。

ハンベイ: 右も左もわからん状態から開放されればいいのだがな

グロック: (こっくり

ザク: それでテリウスよ、外の様子はどうだった?

リック: *ごくり*

テリウス: …そうですね、ある意味予想通りでした
テリウス: もちろん、悪いほうで…ですが

ザク: …聞かせてくれないか

テリウス: まず、この地域に入り込んでいるオークは
テリウス: 前回襲ってきた部族だけではありません…

リック: ?!

テリウス: 私の知らない、大小さまざまな部族が
テリウス: この地域に流れ込んでいるようです

リック: な、なんだってー!?

ハンベイ: 黙って聞け

リック: ごめん、ちょっとびっくりして

テリウス: それぞれの部族同士に、連携は見られません
テリウス: 強力なリーダーに率いられた一群である…ということはなさそうでした

リック: ??

ハンベイ: ……となると、解せんな

リック: わけがわからないよ… 誰かに率いられているわけでもないのに
リック: どうしていろいろな部族がいっせいに??

ダーマン: 連携はないけど、一斉に世界の背骨山脈から仲良くやって来たと?

テリウス: そういうことになる

グロック: おーく、きけばいい
グロック: みんなかんがえるいいぞ

ダーマン: 彼ら同士での小競り合いなどはあるんでしょうか?

テリウス: うむ。いくつかの、今までこの地にいたオーク部族と小競り合いをしているところもあるようだ
テリウス: 土着のオーク部族から見れば、同じくよそ者だからな…
テリウス: 利害が一致しなければ争うこともあるだろう
テリウス: それから、前回
テリウス: この村を襲った部族についても確認してきた
テリウス: やつらの部族は思ったより大きく、まだ半数ほどの戦闘要員が残っていて
テリウス: 観察したところ、戦いの準備を進めていた。恐らく、また来る

リック: !

ダーマン: ふうむ

イノーラ: やれやれだな

リック: あいつらはこの村を狙っているのかい…??
リック: それとも、通りすがりに…ってこと?

テリウス: 始まりはわからん
テリウス: ただ、やつらの半分を葬ったことで
テリウス: ここが目標になっているのは間違いないと思う

リック: そんな…

テリウス: 問題は…

ハンベイ: そこをつぶしたところで、まだ他にもいるんだから、いかんともしがたいな


テリウスはハンベイの意見にうなづいた。

ダーマン: 元は単に食い詰めただけ、と言う可能性はありますが族長が残っているなら報復をしないというわけにはいかないでしょうね

リック: そういうものなの…?

テリウス: ダーマンの言う可能性は、高いかもしれない
テリウス: 我々は難しく考えすぎているのかもしれないな…
テリウス: ただ、前回と同じ規模なら
テリウス: 我々に勝ち目がある
テリウス: 前回も、それほどの窮地ではなかった…と私は見ている

テリウス: 問題なのは
テリウス: やつらが他の部族と連携して動いた場合だ
テリウス: 同盟を結んで襲ってきたとしたら…
テリウス: まだ例の部族が連携しているような動きは見えなかったから心配しすぎるのもよくないが…

ハンベイ: 大きい集団を撃退したと言う事実が残れば、小さい部族は攻め控えるかもしれんな

リック: それって
リック: 連携して動いてるってことは、実際に一緒に行動してるということなの?
リック: 単に…
リック: たとえば、
リック: 行き先だけが一緒で、それに向かって移動はしているけど
リック: 横のつながりはない、とか
リック: そういうことではないの?

テリウス: どこかを目指している、というようには見えなかった

テリウス: それともう一つ
テリウス: ハンベイの言うように、今回勝てても
テリウス: 他の部族が来るかもしれないという可能性
テリウス: 今のように篭城したような状態でいつまで持ちこたえられるのか
テリウス: もし小さな部族でも、いくつかが
テリウス: 連続して襲ってきたらどうするのか…

ハンベイ: 打って出て、ここにとどまると危険だという方向に持っていければいいんだが……

テリウス: ザク、私は今決断の時が来たように思うが…


テリウスはザクを見つめた。ザクもテリウスの言わんとしている事はわかっているようだ。

ザク: …
ザク: ……
ザク: ………
ザク: とりあえず、そういう状況なら
ザク: トランにも知らせてやる必要があるだろう
ザク: その上で、やつがどうするかは、もうヤツに任せるしかない
ザク: ログウッドに行ってもらおう。ログならトランも話を聞くだろう

ログウッド: …やれやれ、あの頑固者を説得するんですか?

ザク: 説得はしなくていい…そこまでする余裕はもうないかもしれない
ザク: 状況を知らせてすぐこちらに合流してくれ

ログウッド: わかりました。

リック: …

ザク: 他のもので、戦える者は戦闘の準備だ
ザク: 今は、こちらに向かっているオークをどうにかするのが先決だ

リック: うん

ジグニード: ザク
ジグニード: それはもちろん構わないけど
ジグニード: 今回の戦い…あんたは外れてくれよ

ザク: …なぜだ?

ジグニード: いま、もしあんたに何かあって
ジグニード: リーダーを失うと、我々は路頭に迷うことになるかもしれん
ジグニード: それに、テリウスの話を、まずは考えて欲しいんだ

ザク: …しかし…

ジグニード: ダーマンもそう思わないか?

ダーマン: そうですね。今の状況から言えば我らは頭を失えばおしまい。相手は1人でも残れば勝ちです

ジグニード: …ということだ。

ダーマン: ならば、後ろにいてもらう方が戦う者もやりやすい

ザク: …わかったよ…そうしよう
ザク: それじゃあ、皆頼んだぞ

ダーマン: ええ。


集会は解散となり、村人たちはそれぞれ忙しく動き始めた。

ザク : 薬や包帯はあるか?

リック: いちおうあるけど… どれくらいの戦いになるかわからないからな…

ザク: もう残り少ない物資だが…必要ならいくつかある

ザクはテーブルの上にいくつかの物資を並べた。

グロック: おれもらう
グロック: おーくこわい

イノーラ: 私は薬は余り使わないから、多少あまってるぞ

ダーマン: 私も7回分ほど


薬や治療道具などの分配をして、戦いの準備を進める一行。
敵オーク部族も全戦力を持って、村に向かってきていた……。

●決戦

ジグニード : 聞いてくれ
ジグニード : 敵はいつ来るか分からない、警戒を怠るな
ジグニード : 北門にはロン、テリウス、サリーナ
ジグニード : 西門にはおれ、ヴァネッサ、ラークがいる
ジグニード : 東門は、リックたち5人とロウランに任せる

ダーマン: 前と同じ配置でいけそうですね

ハンベイ: 前回は東が攻められなかったからな

ジグニード : 前回の戦いを教訓にして
ジグニード : 判断は各自に任せる
ジグニード : 以上だ、みんな、村を守るぞ!


戦闘要員はそれぞれの場所に陣取る。

リック: ダーマン

ダーマン: なんです?

リック: いったん扉を開けてくれないか?
リック: とりあえず今回は出ておくよ
リック: 押さえきれなくなったら
リック: 門の中へ退避するさ
リック: それでいいかな


しかし作戦を話し合っている間に、森の木々の間からオークが盾を打ち鳴らし進軍してきた。
リックとハンベイ、ダーマンは門の外で戦う事に決めて門を閉ざす。
敵の攻撃部隊は門破壊のために両手斧を持ったオーク数体と、そのオークを守るためにラージシールドを構えた者、そして遠隔攻撃に対処するための弓兵という構成だ。
門破壊を狙う敵を食い止めながらの戦いではあったが、PC一行もかなり戦い慣れしてきている。
上手く連携を取って撃退した。

イノーラ: …この目の前の岩が邪魔だな

門の前にある岩で射線を取りにくいようだ。
イノーラがそうつぶやいた時、西門のほうで戦いの音が聞こえてきた。
門に取り付かれているらしく、門を叩く音が響く。

リック: ここは
リック: 守っておくよ
リック: 二人は西門を


リックに言われてハンベイとダーマンは西門に向かう。
二人を送り出した後、今度は北門から戦いの声が上がった。

リック: まずい
リック: グロック!
リック: 援護にいってくれ


しかしリックたちのいる東門方面にも、ちらちらと敵の影が見える。
敵は包囲して戦力を小出しにし、村を疲弊させる作戦のようだ。

リック: はあ…はあ…

イノーラ: 大丈夫か?

リック: お、おれは大丈夫
リック: イノーラ、行って!

イノーラ: いってくるよ


結局、東門担当のPC一行が西門、北門に敵が来るたびに誰か援護に行くという戦いをする羽目になってしまった。
しかしこのPC一行の奮闘が、この戦いの勝因だと言えよう。

リック: ちぇ、きみは気楽そうでいいな、クロニィ

クロニィ: 私もコレで苦労しどうしでありますよ

リック: あっ
リック: イノーラ
リック: 北門は大丈夫だった?

イノーラ: ああ、平気そうだったから戻ってきた

リック: よかった…
リック: イノーラ

イノーラ: 何

リック: な、なんだかさ

イノーラ: さっさと言えよ

リック: 元気が…戻ってきた気がする

イノーラ: ? それは良かったな

リック: …
リック: 静かになった
リック: そこから敵は見えるかい?

イノーラ: いいや


一時の静けさを取り戻した東門には、リックとイノーラ、そしてグロックの使い魔クロニィがいるだけだ。

リック: …このまま何事もなく終わればいいんだけど…

しかしリックの希望はかなわず、敵の主力部隊が西門を攻め立てる。

リック: 西!?
リック: まずい、イノーラいってくれ

イノーラ: わかったよ

リック: あ、き、気をつけて…


立ち去るイノーラの背中に掛けたリックの言葉は、恐らくイノーラには聞こえていなかっただろう。
戦いは西門で決着を見て、人々は村を守りきったのだった。

●ザクの決断

ジグニード : ひとまず…なんとかなったようだな…

戦場になった村の有様を見て、ジグニードの表情に勝利の喜びはない。

ダーマン: あのサイズの模様、見ましたか?

サイズ=両手鎌。

ハンベイ: あまり気にしてなかったが?

ダーマン: 以前の盾と違う模様が

ハンベイ: 連携を取り出したのか、減った戦力を他部族を吸収して補ったのか……

ジグニード : 敵の姿は見えないようだ…一度集会場に戻ろう。


サイズに付いていた紋様の話はジグニードに遮られて、一行はひとまず集会場に向かって歩き出す。

リック: あ、あのさ
リック: イノーラ
リック: 今日は…ありがとう

イノーラ: どういたしまして

リック: イノーラのおかげで…あの時やられても、立てた気が
リック: ってグロック!?
リック: いたのかよ!

イノーラ: さっきからいたぞ


さて集会場に戻ってきた一行は装備を外したり傷の具合を見たり、休憩を取ったりする。

テリウス: ん、これはなんだ?

リック: ああ…敵が持っていたんだ

テリウス: …


サイズについている紋様を調べるテリウス。

リック: この前のやつとは違うみたいだけど

テリウス: そうだな…明らかに違うと思えるよ…

ハンベイ: 連携を取り出したのか、減った戦力を他部族を吸収して補ったのか

ダーマン: せめて後者であってほしいですね

ハンベイ: そうだな

テリウス: …ザク、どうするんです

ザク: う…む
ザク: ログ、トランは?

ログウッド: こちらに合流するそうです。さすがに…この状況では

ザク: そうだな

リック: *安堵の表情*

イノーラ: 良かったじゃないか

ザク: みんな聞いてくれ
ザク: 今回はなんとか撃退できたが、明らかに戦力がましていたように思う
ザク: この二つの違う紋章の入った武器でもわかるように
ザク: おそらく、同盟を組んだのだろう…
ザク: テリウスの見立てが正しいなら
ザク: この…斧のほうの部族はもう戦う力はあるまい

リック: …

ザク: こちらのサイズの部族に関しては、まだわからんが
ザク: 相当な打撃を与えることはできたとおもう
ザク: 問題は…生き残った部族が他の部族に吸収されることだ。そうなれば
ザク: 村のことが伝わってしまう

イノーラ: 今でも十分ややこしいのに、もっとややこしいことになってきたな

ザク: …それで、わしは
ザク: 村をすててカヴァードホームに避難する事に決めた

ジグニード: …

ダーマン: こうなってはそれが賢明ですかね

ログウッド: …

村人: そんな…

ハンベイ: 持ちこたえられる保証はない、しかも、賭け金は全員の命とあれば仕方あるまい

村人: …

ザク: 全員の賛成を、待っている時間がない。おそらくすでに事は一刻を争うのだ
ザク: 皆の賛成を得るまで、待つ事はできそうにない…
ザク: 明朝までに、各人で決めて欲しい
ザク: 一緒にいくのか…それとも残るか…だ
ザク: …
ザク: …以上だ。


ザクの決断に集会場は静まり返った。反論の余地はなく、残ることを選択すれば死ぬだけなのだ。

リック: そんな…
リック: ……

グロック: かばーどほーむどんなところだ、りっく
グロック: うまいもの、あるかな

イノーラ: (そろそろこの土地を離れる頃合かもしれないな…

リック: …知らないよ
リック: 昔、父さんに連れられて何度か行ったくらいなんだ

ダーマン: このあたりでは一番大きな町ですね

グロック: まちか

ダーマン: ええ

グロック: おれ、まちでうまいものくう
グロック: りっくいこう

ダーマン: 今回はそういう暇があるかどうか…

リック: けど…
リック: せっかくみんなでこの村を少しずつ
リック: 大きくしていって
リック: やっとここまで来たのに…

グロック: ここいるとしぬ
グロック: おーく、とてもざんこくだ

リック: まだ…まだそうだと決まったわけじゃ…

ハンベイ: 持ちこたえられるかどうか、保証はない。そして、この賭けの代償はみなの命になる
ハンベイ: 妥当な判断ではあるな

ダーマン: 相手はまだ1/10程度しか減っていないわけですしね

リック: ……
リック: それにしたってさ
リック: こんな
リック: こんな簡単に
リック: それじゃこの数年は何だったんだ

ハンベイ: 当人の気持ちも考えろ
ハンベイ: 決して簡単に下した判断ではあるまい

グロック: りっく、おーくぜんぶころせるか
グロック: それならのこるいいぞ

リック: ……

グロック: おれ、もうおーくつかまるのいやだ

リック: それでも…
リック: それでも俺はそんな簡単に割り切れないよ!


リックは拳を壁に叩きつけると、そのまま集会場を出て行ってしまった。

グロック: いのーら

イノーラ: なんだ

グロック: りっく、いのーらがこい、いうと
グロック: きっとくる

イノーラ: そんなわけ、ないだろ

クロニィ: それはちがいますよ
クロニィ: 試してみてはいかがです

イノーラ: 言う気になれない。
イノーラ: 私だって森をはなれたくはない

クロニィ: それはそれは・・・リックどのもお可哀想に

ダーマン: やれやれ、困った人だ
ダーマン: 昨日、トランさんに避難を勧めた同じ身で今度は逃げるのは嫌だ、と言われては

クロニィ: 若さゆえですなあ

ダーマン: クロニーさんは案外落ち着いた方ですね

ハンベイ: 生きていればまた戻れるのだ

グロック: おれはかばーどほーむいく

ダーマン: そうですね。その方がいい

ハンベイ: 首に縄をつけてでも引っ張っていけばいい
ハンベイ: 今が己の命を賭けるべき時かどうか、考えることだ


1時間ほど経過し、他の村人たちもぞろぞろと出て行った頃……。

ダーマン: ふう。そろそろ頭も冷えましたかね
ダーマン: 撤退するにしても彼の剣の腕は必要ですし…


ダーマンは集会場を出てリックを探した。

ダーマン: ここでしたか

リック: …
リック: ザクの言ってることも
リック: みんなの言ってることも
リック: わかるんだよ

ダーマン: ふむ


ダーマンは村の高台にいるリックの隣に腰を下ろす。

リック: でも納得なんかできない
リック: ある日突然
リック: 前触れもなくさ
リック: どうしようもない力でそれまで築き上げてきたものがなくなってしまうなんて

ダーマン: それは昨日トランさんが思っていた事と同じではないですか?
ダーマン: それでもあなたは彼に避難を勧めた。何故です?

リック: それは…
リック: そうしないと死んじゃうと思ったからだよ

ダーマン: トランさんが死ぬのは嫌でしたか?

リック: 俺は別に…そこまで考えてはいないけど
リック: 親父さんが死んじゃったらロウランはきっと悲しむ

ダーマン: 友人が悲しむのは嫌だというならあなたが死んだ時、友人達がどう思うか、考えてみて下さい

リック: …
リック: まだ
リック: まだ死ぬって決まったわけじゃ…

ダーマン: 残念ですが死にますよ
ダーマン: 次は明らかにこの村を守る人が減る。今までが楽な戦いだったとお思いですか?
ダーマン: そして、あなたがいなければ避難をする人たちも生き残るのは難しいでしょうね
ダーマン: その中にはあなたの友人も、家族もいるのですよ

リック: ……
リック: 俺
リック: ちょっと前まで
リック: ほんのひよっこだと思ってたんだ、自分のこと
リック: そりゃさ、
リック: ザクやログとかにしょっちゅう若造扱いされると腹は立ったけど
リック: でも実際、みんなに比べたら自分じゃ何もできないのはほんとのことだし
リック: 仕方ないとは思ってた
リック: でも
リック: …

ダーマン: まあ、これは受け売りですが
ダーマン: 一人前の人間というのは力のある人間ではなく
ダーマン: 自分の出来る事をきちんとこなせる人間の事だそうですよ
ダーマン: どうかその意味を考えて下さい

リック: 俺に出来ること…
リック: …

ダーマン: さて…


ダーマンは立ち上がり、その場を後にした。

ダーマン: では…

一方その頃、集会場では……。

グロック: いのーらもいくのいやか

ハンベイ: 感情に流されて命を無駄にするのは簡単だぞ
ハンベイ: 今が命を賭けるべきときかを考えてみろ
ハンベイ: ……まぁ、もっと無駄な命の使い方をした奴もいたがな……

イノーラ: 森がオークに蹂躙されるのは見たくない
イノーラ: でも私一人の力ではどうしようもないだろ

グロック: ぐんたいひつよう
グロック: つよい、ぐんたい

イノーラ: そうだな
イノーラ: だから私はホームに行くよ
イノーラ: 守れなくても再生はできる。

グロック: そしてあいつら、もっといっぱいころす
グロック: おれ、あいつらころす、すきだ
グロック: あいつら、みんな、しねばいい

イノーラ: 私もそう思うよ

グロック: だから、おれ、いくぞ
グロック: あいつらころすため
グロック: にげる、ちがう

イノーラ: 戦略的撤退ってやつだな、正しくは

グロック: ・・・むつかしいことばだな
グロック: それいい、おもう
グロック: いのーら、いいやつだな

イノーラ: そうか?

グロック: うん
グロック: きっと、うまくいく

イノーラ: そうか、ありがとう

グロック: うん
グロック: おれも、できたらいいやつ、なる
グロック: でもむつかしいぞ

イノーラ: そうか? もう十分いいやつだと思うが
イノーラ: 贈り物も貰ったしな

グロック: うん、あれきれいだな
グロック: いのーらにあうおもった

イノーラ: そういうこといわれるとちょっと照れるな…

グロック: そうか
グロック: じゃあなにかたべるか
グロック: たべる、おちつく
グロック: げんきなる
グロック: やきにく、なくなったな
グロック: じゃあおれすこしねる

イノーラ: お休み
イノーラ: …私も少し寝るか


二人が横になってすぐに、ダーマンが集会場に戻ってきた。

ハンベイ: どうだ?あいつは?

ダーマン: 彼なりに考えているようです

クロニィ: 若者はよいですなあ

ハンベイ: そうだな


そして翌朝。

ザク: さて…
ザク: ん、リックはどうしたんだ?

グロック: りっく、いくのいやみたい
グロック: おれもどってきたら、
グロック: りっく、はかたてる

ダーマン: それは気の早い…

グロック: そうか
グロック: すこしりっくにたべものおいていくか

そこへリックが集会場に入ってきた。

ザク: 来たか

リック: な、なんだよ、まだ出発しないのかい?

ハンベイ: ……決まったようだな

グロック: りっく、げんきでな

リック: なに言ってるんだよグロック
リック: 俺も行くよ
リック: 決まってるだろ!

グロック: ???


ザクは村人全員の意見をまとめた。村に残る人間は一人もいないようだ。

ザク: …ということは、全員ホームに向かう、ということだな

グロック: りっく、くるか

ハンベイ: 無事町までたどり着けるか、か……

グロック: おれ、しんぱいした
グロック: りっくのはか、どうしたらいいか
グロック: なやんだ

リック: なにばかなこと言ってるんだよ

グロック: しんぱい、いらなくなってよかった

リック: まったく、グロックは相変わらずだなあ

ザク: まず、村を出るためにしておくことがある
ザク: テリウスとログウッドで、村の周りを偵察してくれ。我々が村を出るところを見られるのはよくない

ダーマン: (本当なら村に火をかけるべきですがここでいうのはあまりにむごいですね…)

ログウッド: わかりました。

テリウス: はい。

ザク: 他の者は荷物をまとめて出発の準備を
ザク: それから…最後まで村に残る者が必要だ
ザク: 万が一、オークがやってきたときに村が空っぽだと
ザク: 追撃してくる可能性がある
ザク: 村はいつもどおりでいなければならないから
ザク: 火を消したり、でかけるようなそぶりはできない

イノーラ: …私がやろう

リック: それじゃ…オークが来ても、それなりに撃退できるような者が残らないといけないってことだね

ザク: だから数人残って、様子を見て欲しい

ダーマン: まあ、適任は我々ですね

ハンベイ: そうだな

ザク: 我々が発ってから、少なくとも…半日から1日は残って欲しい
ザク: もしその間にオークがきたら、できだけひきつけて逃げてくるんだ

ダーマン: わかりました

ザク: …すまない、一番危険な任務だが…

リック: ザク
リック: ちょっと待ってくれよ

ザク: うん?

リック: 気になることがあるんだ

ザク: うむ

リック: あのさ
リック: 確かに後に戦える者を何人か残すのも必要だと思うけど
リック: そっちにあまり人を割いちゃったら
リック: 万が一、先行した他の村のみんなが
リック: 別のオークと鉢合わせてしまうような場合
リック: 危険じゃないかな


ザク: そうならないように、テリウスに先導してもらうつもりだ

リック: つまり、その…
リック: ヘンベイとダーマン、それにグロック
リック: 俺と…
リック: イノーラは
リック: この前の戦いでもそれなりに動けるってことがわかってもらえたと思うんだ

ザク: うむ

リック: ただ、5人全員で村に残ってしまうと
リック: 先行する部隊が少し心配なんだ
リック: だからさ、俺たち五人も分かれたほうが…良くはないかな?
リック: 村に残る方も最後まで戦うわけじゃなくて、適当なところで引き上げれば良いんだから
リック: そんなに人数はいらないと思うし
リック: その分を守りに回したほうがいいと思うんだ

ログウッド: なるほど。一人前のことを言うようになったものだ

ザク: たしかに、今お前さんらのチームは我々の戦力の…そうだな
ザク: 半分というところだろう

イノーラ: (チームになったつもりはないんだが…

ザク: だから、一番危険で重要な任務を任せるんだ
ザク: 先行する我々の危険度は、そうでもない。森の中を進むわけでもないし
ザク: 突然鉢合わせする可能性は低いが
ザク: 先日の生き残りのオークが村に攻めてくる可能性は
ザク: 高いとわしは見ておる

リック: そうか…

ハンベイ: そのための偽装だな

ザク: だから…本当なら
ザク: わしらが残りたい…が、お前さんたちを信じる事にする
ザク: …頼んだぞ

リック: ああ
リック: ザクのほうこそ、もう若くはないってことはわかったろ? 無茶しないでくれよ
リック: *にやり*

ザク: ふん
ザク: さぁ、みんな、準備だ。手早くな


村を捨てる、という決断に至って村人たちはカヴァードホームに逃げ込むため移動する事になった。
果たして村人たちは無事カヴァードホームにたどり着けるのか……。


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