サヴェッジ・フロンティアDR1235
第一章 オーク、来る
「ミルズ農場の戦い」
●出発
各自の家で準備をしたPCたちは、早く戻ってこれる事を願いながら家を出た。
ザクに頼まれたとおりミルズ農場に寄って手伝いをする予定のため、ひとまずリックの家に集まる事となった。
リック: さてと、それじゃ
リック: 火の元よし
リック: 戸締りよし
グロック: ひ、つけるかっ
リック: 違うよグロック
グロック: そうか
リック: いない間に火事にでもなったらこまるだろう
グロック: おれ、ひつけるのうまい
リック: この家が燃えたらグロックだって帰るところがなくなってしまうよ
ハンベイ: ここでは不要だと思うが?
グロック: あたまいいもん、おれ
ダーマン: それはうらやましい。私など毎朝、がっくり来てますよ
グロック: うらやま?
ダーマン: あー、かっこいいなあと思っているという事です
グロック: むつかしいな
イノーラ: …そういえば私も読めないな
グロック: おれはよめる
イノーラ: 尊敬するよ
リック: それじゃ出発しよう
というわけでリックの家を出た一行。
雪道を進みながらミルズ農場を目指す。
●遭遇
ダーマン: うー寒い
ハンベイ: この雪というやつはどうもいかんな
グロック: さむいな
やがてミルズ農場が見えてきたが、どうも様子がおかしい。
雪に埋もれた農場入り口の門をリックがくぐると……
リック: えっ??
ダーマン: !
突然、雪の中に潜んでいた何者かが飛び出して来て、一行に襲い掛かってきた。
いきなりだったので混乱する一行だったがリックが攻撃を避けている間に倒す。
リック: な、なんだ?!
リック: どこから…
ハンベイ: いきなりか
イノーラ: 唐突だな?
襲撃者はオークであった。
グロック: おーくだ・・・
ダーマン: これはまずい
ハンベイ: 襲撃か?
イノーラ: こんなところまで来てるなんてな
驚いている一行だが、農場にある家の中からも物音や声が聞こえてきた。
ダーマン: 早い所、無事を確認しないと
リック: 大変だ
ダーマン: どっちからにしますか
農場には母屋と納屋がある。
一行はミルズ家の人々を心配して母屋のほうに足を踏み入れたが…
リック: う…
玄関にはオークが二体、靴箱やら何やらをひっくり返して略奪行為をしている。
普通に入ってきた一行に驚きつつも、すぐさま戦闘態勢を取って襲い掛かってきた!
二体のオークと戦っていると、その物音を聞きつけたのか家中のオークが集まってきた。
さらに数体の援軍が居間から玄関に入ってくる。
戦いの訓練していると言っても実戦経験は少ないリックは、オークに囲まれて殴られ、昏倒してしまう。
パーティーとしても始めての戦闘で連携を取ることも出来ず、ピンチに陥る一行。
しかしなんとか、撃退することが出来た。
(敵の強さと数が、PCと比べてバランス悪かったのは間違いないのでDMとして援助した)
リック: い、いてて…
イノーラ: 死ぬかと思った…
リック: ふう…
リック: ようやく何とか
しかし一息つく暇もなく、ばりばりと大きな音が地下室から聞こえてきた。
一行は居間を横切り地下室に降りる。
リック: !
地下室に下りると、通路の先にある扉の前にオークが二体いて、扉を破ろうと武器を叩きつけている。
その作業に夢中だったのか上での戦闘には気が付かなかったらしい。
一行はその二体のオークを倒すと、扉を調べた。
リック: 鍵がかかってる
しかし扉はほとんど壊れているので、少し力を入れるだけで壊れてしまった。
ミルズ : !
扉の中の小さな物置には、身を硬くして恐怖に目を見開いた一人の男性が立っていた。
ミルズ氏である。
リック: あっ!
リック: ミルズさん!
ミルズ : リックか…本当に助かったよ…
ダーマン: ああ、無事でしたか
ハンベイ: む?無事だったか
リック: よかった…
ダーマン: 助かったかどうかはまだ判断できませんよ…
イノーラ: 子供たちは?
ミルズ: それが逃げるときに逸れてしまって
ミルズ: 妻が外に逃げていったのは見えたんだが…
ミルズ: そのあとは…わからない
ミルズ家は父親と母親と一人息子の三人である。
イノーラ: どうも探しに行かなければならないらしいな
ハンベイ: 無事ならいいが
ダーマン: ではもう一つの建物かな
グロック: たべられたかな
リック: そ、そんなこと言うなよグロック!
ミルズ: …
ハンベイ: 希望は捨ててはいかんが、最悪の事態も考えておいたほうがいい
ミルズ: 外にはまだオークがいるのか…?
ダーマン: わかりません
リック: 僕らもさっき外で襲われたんですが
ダーマン: 見た限りではいないようでしたが…
ミルズ: 頼む、息子と妻を捜してくれ!
ダーマン: 無論です
ミルズ: 息子は裏口のほうに走っていった
リック: とりあえず見に行こう
イノーラ: まあ、ザグから引き受けたしな
ミルズ氏を連れて一行は上に戻る。
そのまま、まずは裏口を見に行った。
裏口のドアを開けて外の様子を伺ってみたがオークはいないようだ。
ハンベイ: む?
裏口を出てすぐのところに、足跡を見つけた。
リック: どっちへ向かってるんだろう、この足跡…
ミルズ: 足跡?
リック: ええ、ここに小さい足跡が…
グロック: そんなのみえないぞ
ミルズ: 良く分かるな…
リック: たまたま目に入ったんだ
ダーマン: こっちにもなにか…
ハンベイ: 追ってみるか
イノーラ: そうだな
リック: ダーマン、続いている先がわかるのかい?
ダーマン: いえ、私では…
というわけでレンジャーのイノーラが足跡の追跡を試みる。
イノーラのプレイヤーは今回初参加なので、能力値やスキルで判定する方法を説明する。
またDMとしてもここは自動で判定するように仕込んでおいたものが上手く動かず、少し混乱したので、ちょっとプレイが中断してしまう。
グロック: のどかわいたな
リック: グロック、足跡があるかも知れないんだから
リック: あまりそのあたりを荒らしたら駄目だ
グロック: あらしてない あるいてる
リック: 足跡の上に乗ってしまっているかも知れないだろ?
グロック: それはどうみわける?
リック: イノーラが探しているんだから
リック: 邪魔したらだめだ
グロック: おれじゃましない
ハンベイ: ここは待つしかあるまい
判定の結果、足跡があるのはわかるもののどこに向かっているのかはわからない。
(今思うと、雪の上を子供が歩いて1時間も経っていないのだから、判定の必要もなく分かっても良かった)
グロック: よんでみたら
と、ここでさらに子供の名前を考えてなかったので急遽、命名する。
リック: アイクー!
グロック: いどは?
ミルズ: まさか…
ミルズ: 井戸に入ったら死んでしまいますよ
グロック: いどで、おぼれる、よくある
ハンベイ: この寒さじゃ、見つかる前に凍死だろう
ダーマン: うーん。
ダーマン: そっちか?
ダーマン: このあたり…
ダーマン: と思うんだが?
農場の隅に積み上げられた木箱の辺りを探すダーマン。
リック: あっ
ミルズ少年: わ
ミルズ少年: わわ
木箱の中にいた少年を発見した。
少年は驚きに声も出ない様子だったが、一行の中に父親を発見して安心したようだ。
ミルズ少年: あっ、お父さん!
グロック: ここ、かくれる、いい
グロック: いったろ?
ダーマン: そういえばグロックさんが探してましたね
ハンベイ: む?グロクの言ってたことがあたりだったか?
グロック: おれあたまいいもん
ダーマン: これはお手柄ですね!グロックさん
ミルズ少年: オークは…
リック: もう大丈夫
リック: オークならどこかにいったよ
ミルズ少年: 本当?
リック: グロックはオークじゃない
リック: 心配いらないよ
ダーマン: ああ、そうか。ぱっと見ならグロックさんもオークに見えるかも
グロック: あいつらみたいに、ばかじゃないんだ
ハンベイ: さっきの地下室にこもってもらっておいたほうがよさそうだな
ミルズ: アイク、お母さんは?
ミルズ少年: …お母さんは…
アイク(ミルズ少年)は、わからないという風に首を振る。
ミルズ: …そうか
ミルズ: 恐らく妻はもう…
「死んだか、連れ去られたのだろう」と言おうとしたが、実はこの段階でDMはかなり混乱していて上手く話が出来ないでいる。
ちなみにこの段階の設定では、連れ去られたのが正解。
後のシナリオで救出する展開も一応あった。
ミルズ: みんな、おれたちを
ミルズ: その…村まで連れて行ってほしいんだ
ダーマン: そのために来たんですしもちろんです
イノーラ: 元々連れてく約束だろう
ミルズ: すまない…頼むよ…
ミルズ: 村までは君達の指示に従う。地下室に隠れていたほうがいいのか?
リック: いや…
リック: まだオークがいるかも知れない
リック: ここはみんなで一緒に動いたほうがいい気がするよ
ハンベイ: 守るのは大変だと思うが?
ダーマン: もう一つの建物にはなにが?
ミルズ: あそこは納屋で
ミルズ: 道具などがしまってあるだけだが…
ダーマン: 扉が開いていましたから潜んでいる可能性はありそうですね
ダーマン: 相手の陣容がわからない以上、なるべく早めに移動したいですが…ここにまだいるならまずいですしね
ミルズ: 家の中で待っていたほうがいいなら、呼びに来るまで待つよ
リック: うーん……
イノーラ: 私も残していくのはあまり歓迎できない
リック: オークがいなくなったかどうかもわからないし、残していくのはちょっと心配だなぁ
グロック: むら、かえろう
グロック: もっと、おーく、くるぞ
グロック: あいつら、1ひきいたら、30ひきにふえるんだ
ダーマン: そうですね。おそらくはさっきのは偵察でしょう
ダーマン: まずは村を目指しましょうか
ハンベイ: このまま村まで引くか
リック: それじゃ移動しよう
ミルズ: わかった。着いて行くよ
グロック: おくさんは、いいのか?
グロック: ほね、もってかえるのは、あとでか
ミルズ少年: おかあさんは…
イノーラ: いいから、行くぞ
ミルズ少年: うん…
リック: …
子供とは言え、事情はわかる。
この場面、プレイヤーは納屋を捜索するかどうかで悩んでいるわけだが、ゲームとして行ける所は調べておきたいという気持ち(アイテムとか経験値とか)と、ロールプレイ的にミルズ親子の安全を優先するかとのジレンマがあるのかなと思う。
それとは別にパーティーとしてまとまっていない、ただの集団に過ぎないため意思統一が出来ないという面が良く出ていて面白いが、それはロールプレイとしてやっているだけでなくリアルにまだお互いのやり方がわかっていないためでもある。
ダーマン: さ、はやく
一行は農場を離れて村に向かって道を下っていく。
リック: あっ!
リック: オークだ!
リック: やっぱりまだいたんだ
道の途中にオークを発見。
ダーマン: 隠れていて下さい
ミルズ親子を下がらせるダーマン。
ダーマン: どのくらいいます?
ハンベイ: 3か?
リック: ここからだと…
リック: 四匹は少なくともいるようだ
ダーマン: ふうむ…
リック: 行くしかない
オークたちは目的地があるというよりは、この付近をうろうろしているだけという感じで一行に気が付いていない。
ミルズ親子を隠れさせて、一行はオークになるべく忍び寄り、一気に襲い掛かって倒した。
リック: ぜーぜー
ダーマン: OKです。来て下さい
ミルズ親子に合図を送って呼び寄せる。
また同時にリックの傷を魔法で治した。
リック: ありがとう
イノーラ: 私が先に行こうか
ダーマン: そうですね
リック: き、気をつけてね、イノーラ
レンジャーで目が利くイノーラが先頭に立つ。
しかしTRPGと違ってコンピュータゲームなので、実は敵を上手く発見できるかどうかはキャラクターの能力だけでなく画面のカメラコントロールなどが重要だったりする。そのため初心者のイノーラのプレイヤーにはちと難しいかもしれないと思う。
リック: そういえば…グロック
グロック: ?
リック: さっきから何か…
リック: おまじないのようなことをやっていたように見えたけど
ダーマン: ああ、そのことはあとにしましょう
リック: ???
グロックは自分が魔法使いである事を秘密にしていて、リックは魔法に関する知識をほとんど持っていないのでグロックが魔法を使っていると認識できない。
グロックも、レベル的に出来ないというのもあるにせよ、派手な魔法は使っていないのでリックとしては"おまじない"という感じなのだろう。
これはロールプレイ的な発言だが、プレイヤー的には「魔法使いである事を明かしてもらわないとそれを前提に連携するような動きをリックがするのはおかしいので出来ないよ」という事を暗に示しているのだ。
しかしダーマンは呪文学のスキルを持っていて、系統は違うにせよ魔法に関わるクラスなのでグロックが何をやっているか理解している。
ダーマン: とりあえず急がないと
イノーラ: 緊張感のないやつらだな
●悪い知らせ
特に何事もなく、一行は村までやってきた。
リック: ああ、よかった
ハンベイ: さすがにここはまだ無事か
村にオークがやってきた様子はない。
ザクの避難指示を受け入れた人々が、幾人か荷車を引いて村に入ってきている。
ダーマン: とりあえずは酒場へ
ミルズ: ありがとう、ここまでくれば
ミルズ: 大丈夫だ
ミルズ: 私達は集会場に行くよ
集会場=ザクの酒場。
ミルズ親子は集会場に向かって歩いていった。
イノーラ: (私も寝たいなぁ…
リック: グロック、寝るなら集会所へいこう
グロック: ねるこはそだつぞ
リック: 中のほうが温かいよ
ダーマン: さっきのは偵察か、拠点確保の連中でしょう。本隊はまだのようです
リック: とりあえずザクに報告しよう
一行もミルズ親子を追うように集会場へ向かう。
集会場の中にはさっそく避難してきた人が数人見られた。
ダーマン: テリウスさん、ザクさんは?
テリウス: 窓際にいるよ
言われたとおり、ザクは酒場の窓から外を見ている。
ザク: お
ザク: 戻ったか…
リック: オークに襲われたんだ
ザク: オーク?オークだって?
ダーマン: ええ。
ダーマン: まずい事になりました。オークの動きは早いようです
ハンベイ: 警告が現実のものになったらしい
ザク: どこでだ?
イノーラ: ミルズのところでな
ザク: ミルズの農場だって? 村のすぐ近くじゃないか!
リック: ミルズさんの家がオークに襲われていて
リック: なんとかやっつけたんだけど
リック: ダーマンが言うにはこれで終わりじゃないって
グロック: おくさんくわれた
ザク: …なんてことだ
ダーマン: 数から考えるに、偵察か拠点確保の面々かと
ハンベイ: 討ちもらしもあったと思われる
グロック: おれはおもらししてない
グロック: おれあたまいいからだいじょぶだ
リック: おもらしじゃないよ、グロック
リック: 打ちもらし、だ
グロック: もちふらし?
リック: やっつけていないオークってことさ
グロック: もっと、わかりやすくいわないとだめ
とりあえずリックとグロックは無視して…
ザク: …そうか
ザク: 困った事になった…
ハンベイ: 実際、どれだけ減ったものかわからん
ザク: そうだな…警告に従って皆を集めておいてよかった
ダーマン: テリウスさん、ネザー山脈ではどのくらいいたかわかりますか?
テリウス: 正確にはわからないが…その…
グロック: たくさんだねっ
テリウス: 言っていいものか…
イノーラ: 言うべきだろう
ダーマン: …もう言ったも同然ですよ
テリウス: 見間違いと思いたいが…恐らく数百…
リック: えっ!?
テリウス: でなければ、ほぼ峠越えで死んだということになる
ハンベイ: 軍隊でも派遣してもらわねば無理な数だな
ダーマン: これは厳しい事になりそうですね
ザク: まあ…それでも
ザク: 全部がこの村を目指してくるわけじゃない
ザク: …だが、最悪の場合は考えておかないとな…
ダーマン: 奴らの目的が全くわかりませんからねえ…
ハンベイ: 他にめぼしい標的でもこの近隣にあったか?
ダーマン: 略奪ならわざわざ山を越えたりはしないでしょうね
ザク: とりあえず今日は休んでおいてくれ
ザク: お前さんらにはまた働いてもらわないといかんだろうしな…ここでまとまって行動してくれ
ザクは厳しい表情で窓の外に視線を戻して、そのまま黙ってしまった。
ザクの言うように、とりあえずは休むことしか出来そうにないので、一行は思い思いの場所を陣取って休息を取る。
リック: ふう…
リック: 大変なことになったね、イノーラ
イノーラ: そうだな
リック: や、やっぱり一人で森へ帰っていたら危なかった
イノーラ: …かもな
そっけなく背を向けたイノーラからリックは視線を窓の外に移して、それから横になって眠った。