2002年10月・12月

ミゾソバ 2002.10.1.  ミゾソバ

雑草にも名はあるのだといっても
その名で呼ばれても嬉しくないだろう
こぼれた種からたくさんの芽を出し
力たくましくどんな場所でも花を咲かせる
精一杯のよそおいを凝らした
その姿はこんなにも優しく美しく
いつまでも見つめていたくなる

溝に咲くソバなんて言わないで
わたしたちはわたしたち
畑で実を結び人の食を満たさなくとも、
咲いている意味はあるのだと
ひそやかに主張する
一面に群れ咲くミゾソバという名の花
パイナップルセージ 2002.10.30.  パイナップルセージ

赤い花は目を引く 赤い花は鮮やか
秋のまぶしい朝日の中 燃え立つように
次々と枝の先に炎をあげる
鉢植えの中で窮屈そうにしていたから
小さな家から出してあげた
意を得たりと どんどん根をはり
伸びる 伸びる 上へ 横へ
陽射しをあびて 今を謳歌しているけど
凍える冬の寒さには耐えられまい
それでも 窮屈な鉢にはもう戻れない
今がすべてと燃え盛る この秋限りの生命の炎
冬の種差海岸 2002.12.13.  空と海のあいだ

夏の間、見渡す限りの緑の絨毯だった芝生
今はすっかり色を失い、春を待つ
雪でお化粧もされないこの季節は
ただ寒々しい風が通っていくばかり
はるか水平線は
重たい雲を映した海の色なのか
海まで下りてきそうな雲の色なのか
混ざり合ってひと色になる
その空と海の間には
いつの季節にも変わらず進む船たちが
ゆったりと吸い込まれていくのだ

2002.12.25. 学校坂道

この坂道のぼったら ぼくの学校があります
子ども達が歌う小学校への坂道
雪で覆われたその朝
学校のうしろから朝の光が溢れだし
いっそう雪の白さを輝かせ
ほんのいっときの幻想を引き起こす
朝日の魔法が
坂の向こう側にあるような気がするから
「心臓破りの坂」だって滑りながら駆けのぼろう