4月17日


ひっそりと


はじめて見たとき、変わったスミレだなあと思った。
「カタクリの花」というんだよ、と近所の小学生が教えてくれた。

「ほらこうやってね、蜜を吸うと甘いんだよ。」
目の前でおいしそうに蜜を吸って見せた子も、
初めて学校に入って、上級生から教わり、
「お母さん、知ってた?あのね、この花ってね…」
と息せき切って教えてくれた我が子も、
今ではそんなことすっかり忘れ去ったかのように、
大きな図体で道をゆく。
道端の小さな花に目を止めることもなく。

それでもこの花は、今年もこうしてひっそりと花を咲かせる。
そして、今年も、
そっとひとつだけ摘み取って、
大事に蜜を吸う子はちゃんといるのだ。