夜会~橋の下のアルカディア~もう一度考えてみた
初日を見て、すぐに感想を書いたのがつい先日の更新。でもそのあとも、ずっと考えていた。でパンフを読んだらいろいろ分かってきた(笑)時代ごとのあらすじをまとめながら、感想を書いてみたい。
おっと、その前に。既にご存じの方も多いと思いますが、今月発売された中島みゆき「縁会」2012~3のブルーレイで、24bitで収録されているべきところが16bitで収録されていることが判明、ディスクの交換を行っているようです。期間が2014年11月17日(月)~2015年11月16日(月)なので、初回ロットを購入されている方は下記のヤマハのサイトをご覧ください。ちなみにDVD版は問題ないそうです。
http://www.yamahamusic.co.jp/news/detail.php?id=541
さて、この下はネタバレなので、ご注意ください。
追伸.....赤坂ACTの出待ちは入口の反対側。初日、みゆきさんが出られたのは23:40頃でした。二日目以降は23時頃出られているようですよ。
まず人間関係からおさらいしよう。これはパンフを見ないと全く分からないことが多数ある(笑) 特に村長はかなり衣装、メイクに手がこんでいたので、まさか脱走兵と同じ人が演じているとは…思わなかった(笑)
人物表は下にあります。
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●天保の時代、大雨が降って川が氾濫。そのため橋に人柱を立てることになった。村長は夫を通して人身を指名する。 ●村が個を捨てたということ。 ●夫は泣く泣くそれを受け入れる。 ●人身は子供のように可愛がっていた猫に危害が加わることを恐れ、夫に猫を託すと人柱になって亡くなる。 ●夫は自分の無力さ、悲しさのあまり濁流に中に飛び込み、後を追う。 ●籠の中に残された猫は、もしも自分が人間だったら人身を救えたかもしれないと嘆く。 |
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●太平洋戦争の時代、村長の生まれ変わりだった高橋一曜はゼロ戦の特攻隊に選ばれる。因果応報だろうか。 ●手紙を書く一曜。ただし、途中で手紙を紙飛行機にして飛ばし始める。とても楽しそう。何かから解放されたような雰囲気からして、彼が飛ばなかったこと→脱走兵だったことが分かる。 ●国が個を捨てたということ。 |
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●ママは、人身の旦那の生まれ変わりであるガードマンが好き。ガードマンはママの色気に心を奪われそうになりながらも、首を横に振って「いかんいかん」と誘惑を断ち切る。人身への愛を貫いているのだろうか。 |
天保の時代では加害者(捨てる側)だった村長が、太平洋戦争時は国から捨てられる側に回る。そして、誰かのために緑の手紙(零式戦闘機=ゼロ戦)を地下の格納庫に残す。この地は大雨が降ると水が溢れるから、二度と生贄にならないように、と。
魂が一本の数珠つなぎのように時代を渡るならば、村長は自らが国に捨てられる立場になったとき、自分の愚かさ、あるいは集団から捨てられる個の虚しさ、悲しさを思い知ったのかもしれない。
そして天保では妻を救えなかった夫(現世ではガードマン)は、祖父(村長の魂?)からゼロ戦の操縦にかかわるすべてを受け取る。それがゴーグル付きヘルメット。そして今度こそ妻(現世では占い師)を助けようと飛行機に乗せようとする。この時、自分を好いていてくれるママ(猫)はどうしても助けたいというほどではないように感じた。占い師が乗ったら、離陸してしまいそうだったから。つまり、ママを捨ててでも…。
3人は乗ることができないと感じたママは、占い師を助けるために籠ではなくごみのケースに入って自分はここに残ると言う。それは、天保の時代、母のような存在であった人身(占い師の前世)を救えなかった猫が、今度こそは自分の命に代えてでも救おうとしたのだろう。
でも、占い師はママ(猫)を今度は捨てることができなかった。
ただ、疑問も残る。上の人物関連図でも分かる通り、脱走兵(村長の生まれ変わり)が誰に手紙を書いていたのか、そしてなぜそれがママの手元にあるのか。村長が生贄にしたことを悔み、生まれ変わった時に緑の手紙を託すなら、占い師のほうじゃない? そこがパンフレットを読んだ後も分からない点。
パンフレットを読むことで、村長役の人が脱走兵を演じていたことをしったけれど、国に捨てられたエピソードがあまりにも短く、分かりにくいんだろうな。 一幕で天保の時代に飛んだように、太平洋戦争時代にも飛んで、そこの人間関係が分かるように描かれていたら、ラストのゼロ戦にみんなが乗り込むシーンがもっと感動的になった気がする。
初回、何も予備情報なしで見たから、ゼロ戦が現れた時は本当に「ほぇ?」ってなったもん。まあ、戦闘機好きですけれど(笑)使われてはほしくないけれど、純粋に空を飛ぶ姿は格好いいと思うし、人類の夢でもあったわけだからね。
そして、ラストシーン。ゼロ戦を操縦するガードマン。籠、というか檻の中にいる占い師とママ。ゼロ戦が舞台上で上昇して幕が下りるわけだけど、結局のところ、現世では3人は助かったのだろうか。僕は今度は助かったんだと思っていた。しかし、必ずしもそう解釈した人ばかりではないようである。
二度と生贄にならないための緑の手紙(手紙を紙飛行機にしていた。最後の手紙は緑の飛行機、つまりゼロ戦)であることを考えると、ゼロ戦に乗った三人は無事脱出できたように思える。
爆弾を積んで飛べる能力があったことを考えれば、定員オーバーであったとしても人間三人を載せる能力があっても不思議ではない。
ただし、籠に入ったみゆきさんと中さんを吊るしたまま飛べたとしたら、そもそも中さんがゼロ戦に搭乗することを拒否した理由がなくなるのも事実。
つまり、元々3人を載せる能力があるなら、初めから籠になど入らずに、三人ともコックピットに乗れば済む話なのである。
と考えると、ゼロ戦には2人までしか載せる能力がなかったから、中さんが搭乗を拒否したということになり、つまり三人はゼロ戦に乗ったものの、現実世界ではなく黄泉の世界へ飛び立ったという解釈も成立する。
この辺は、もしかしたらみゆきさんが意図的に解釈を分散させるための演出かもしれない。
ほかで気になったのが、唐突に流れたように感じる二隻の舟。あの状況で、みゆきさんがあの場所で歌う理由とはなんだろうか?
むしろ、不本意ながら猫を捨てざるを得なかったシーンで歌われたほうがしっくりくる気がする。この辺の意図がまだ分からない管理人でございます。
最後に、一番大切なこと。みゆきさんが今回の夜会で一番伝えたかったことはなんだろうか?
「捨てる者」「捨てられる者」という観点で考えると、一般的には捨てられる側が一方的に悲しい気持ちになるものだと考えられがちだけど、実は捨てる側も辛いんだということを、天保のエピソードからは感じた。
猫を捨てるみゆきさんも、みゆきさんを捨てる男も、共に苦しんでいる。
でも、たとえ憎まれ役になろうとも、そうしなければならない。苦渋の選択の結果と言うことはある。
パンフには「集団によって捨てられた個」というのがひとつのテーマになっているようだ。
みゆきさんが具体的なシナリオを書いていた時期は今年に入ってからだとしても、テーマ自体はもっと前から考えていただろうから、何がみゆきさんにこのシナリオを書かせたのだろうか?
たとえばイスラム過激派の自爆テロとか? 現代における、集団によって個の命が軽んじられている一例ではある。あるいは、現代の日本で、組織が個を使い捨てているといえば、真っ先に思い浮かぶのはブラック企業だが。いずにしても、組織によって捨てられた個が、それでも組織のために命がけで働く姿は、見るに耐え難いものだ。そんな組織ならば個から捨ててでも、別の生き方を探すべきだと訴えているのかもしれない。
とはいえ、それがもし当たっているなら・・・・・・みゆきさん~、今回の夜会でそれを感じ取るのは難しいすぎで~す!!(笑)
今回の夜会は、みゆきさんが男にうしろからはぐされたり、橋脚に沈んでいく姿が生々しくて見るのが辛かったり、みゆきさんを足蹴にするチンピラがいたり、そもそもみゆきさんの歌のパートが意外と少なかったり(覚えるのが楽?)、なかなかツッコミどころのありました。僕は楽日にもう一回見に行きます。
あと、中さんの歌声を初めて聴いたけど、すっごく綺麗なんだね~。みゆきさんとデュエット曲とか出してほしいとさえ思った。
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- LIVE CD『中島みゆき「縁会」2012~3-LIVE SELECTION-』 10月29日発売
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- 夜会VOL.18のタイトルが「橋の下のアルカディア」 11月15日~12月16日 23公演