本日の御題:日本の地方分権は経済特区方式で

◆概算予算の季節と陳情行政
この時期になると、来年の概算予算が各省庁(の官僚)から出される。
日本の政府の借金の額をご存知だろうか? 平成19年度末時点で547兆円。これは国内総生産のGDPの1.78倍に当たり、 政府の予算で見ると、10年分に相当する。

ちなみに主要先進国で、GDPを越えた借金をしている国は日本とイタリアだけで、そのイタリアでさえも120%程度で 1990年代初頭から比率を保っている。他の先進国は軒並み60%程度だ。

これだけの借金を抱えているにもかかわらず、中央官庁の体質は変わらない。特に国交省+道路族(暴走族の名称ではない、彼らは議員バッチを 一応つけている)は露骨だ。今後十年の計画(案)を出したが、地方の活性化という名目で、巨額の道路工事をしようとしている。

なぜこのようなことになるのか? ご存知の方も多いだろうが、自分達の既得権益を守るためである。
予算のない地方が何かを作ろうとするとき、国に陳情にくる。それでめでたく国の予算が下りれば、工事費を地方と国で折半するわけだが、 地方の長からしてみれば地元の企業に仕事を貰う事で次の選挙での得票を期待できるし、国の役人は自分達の天下り先を確保できるからだ。
まさに彼らにとってはいいコト尽くめ、である。

更に、この「陳情行政」こそが中央省庁の力の源になっている。彼らは膨大な予算を握ることで、地方を借金体質にし、国の意向を無視できないように 縛り付けているのだ。

◆官僚の体質は絶対に変わらない
初めに書いたように、日本の財政は危機的状況にあるにもかかわらず、官僚がそこに危機感を抱き、国家のために「良心的・控えめな」予算を 出すことがないのは、目に見えて明らかだ。しかも彼らは政治家と違い、選挙で落選することがないから、まさに官庁の箱の中で、やりたい放題である。
無駄な事業を量産してもし国民が怒ったとしても、それは政治家が責任を取るだけで官僚は取らない。
その頃は天下り先でぬくぬくと暇な毎日を過ごしているのである。

なぜこのようになってしまったのか?
ひとつには政治家の堕落があるだろう。内閣から官庁に送り込まれる大臣で、どれほど見識のもった人がいるだろうか? 幅を利かせているのは族議員 ばかりではないのか? 当選回数は多いかもしれないが、それに見合った政治的手腕もポリシーもない。ただ政界で生き残るすべだけを見につけた者達だ。
偉そうなことを言っているのをたまに見かけるが、それすらも官僚が書いた作文を読んでいるに過ぎないことは多々ある。これでは官僚が実権を握っても 当然だろう。

最近では、総理大臣や各省庁に派遣される大臣の指示を官僚が連絡しなかった(おそらく意図的に)なんて問題もしばしば起こっている。
ごくごく最近では桝添大臣の件は記憶に新しい。完全に舐められているのだ。
国交省の官僚が作った予算案を、ただカメラの前で読み上げるだけの国交省大臣。彼は政治家、少なくとも政党の中ではそれなりの位置にある人だが( でなければ大臣ポストに就けない)、その彼でさえ、このレベルなのである。

◆力の源を奪う
私は、もはや中央官庁のこの体質を変えることはできないと考えている。少なくとも、直接は。
国家防衛という国の基幹業務にさえ、山田洋行のような悪鬼が入り込んでいることからも分かるとおり、骨の髄までばい菌は侵食しきっているからだ。

では国民は彼らが作った借金のために、増税に耐え、苦しい生活に我慢しなければならないのか?
それでは日本の将来はない。

ここでようやく本頁の本題だが、彼らが握っている財源を地方へ委譲していく、ことがまず第一に必要であると考える。
力そのものを取り除かなければ、制度のどこをどう変えても、元の木阿弥である。
ただし、単に地方へ財源移譲といっても、経済基盤が弱い地域からは反対の声が上がるだろう。当然だ。
彼らは既に中央官庁の策にはまって、借金体質になっているのだから。

そこで同時に地方の経済を活性化するひとつの方法として、私は経済特区を提案したい。東京・大阪・兵庫・神奈川・埼玉・千葉・福岡(これらはいずれも例)といった 人口が過密しがちな都府県を除き、各道府県の一定箇所(郊外)に経済特区を新設する。そこでは税制面でのメリットを見せることで企業誘致を行うわけだ。
税制面でのメリットは、10年単位で数段階に、徐々に逓減化していくことが望ましいだろう。
当然、それまで原っぱだった場所に企業が誘致されるとなれば、そこにはゼネコンも動く。族議員や中央官僚にとっても悪い話ではないはずだ。
ただし、実際に一般企業が入ってくるとなれば、遊園地のような箱物を作っても意味がない。
誘致企業主導で経済特区を作ることで、予算てんこ盛りの工事を防止するのである。

このメリットは、ひとつはゼネコン業者にもある程度納得のいく工事を割り振れること、それでいて用途をより意義あるものに割り振れることである。
しかしこれは短期的に見た場合だ。
長期的には、地方が少しでも活性化していくことで、将来の地方分権に繋げていかなければ、結局はすべてを作り終えたところで再び無駄な工事が始まることになる。

ちなみに、この経済特区というのは、地方活性化、という目的で、実は既に沖縄で始まっている。
詳しくはJETROのホームページにも掲載されているので、興味のある方は、そちらをご覧ください。

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