本日の御題:中国は脅威である

◆中国脅威論
 民主党の前原代表に引き続き、麻生外相までもが公然と「中国脅威論」を展開している。尖閣諸島問題や潜水艦の領海侵犯、靖国問題での高圧的姿勢、そして17年連続で 毎年10%を越える軍事費の伸び。これは遅すぎた脅威論かもしれない。幸か不幸か、小泉首相の強行姿勢が、中国の脅威を日本人に際立たせた結果となった。

 それにしても、中国に対して「潜在的脅威」ではなく、「脅威」という言葉を使ったのは真新しい。米ソの冷戦時代でさえ、ソ連を潜在的脅威と表現していたこと を考えると、如何に国会内で中国を脅威とみなしているかが理解できる。
 しかし、実際に中国は「潜在的脅威」ではなく「脅威」なのだ。当時のソ連を上回る軍事力を持っているとは言わない。しかし、冷戦時代には東西陣営にはっきり 分かれていた。つまりソ連の侵攻に対しては、アメリカを中心とする西側諸国が黙っていなかったのである。
 しかし、今の中国に対しては違う。アメリカは、あるいは西側諸国は、どこまで日本の利益を守ってくれのだろうか? 諸国政府を支える業界団体は、中国の 市場を虎視眈々と狙っており、中国と本気で喧嘩をしたいとは考えていない。つまり、冷戦時代のような敵味方くっきり分かれての国際情勢ではないのだ。

 しかも、アメリカとしては、北朝鮮問題があるため、中国に対して強硬な姿勢をとりにくい状況だ。もちろん、アメリカにとっても、中国がアジアでの覇権を 握るには警戒しているはずだ。中国が望んでいる東アジア、あるいは東南アジアを含めたアジア連合(ヨーロッパ連合のアジア版)構想は、アメリカのプレゼンスを アジアから除こうとする意図が見て取れるからだ。

 その一方で、中国とロシアはかつてないほど友好な関係を築いている。それはロシアが天然ガスなどの資源の販売先として中国を最重要視していることと、 中国もまた今後のエネルギー需要の増加を踏まえてロシアと緊密な関係を築きたいという思惑が一致していることに他ならない。さらに両国は軍事的にも 強力に結びついている。中国軍の近代化は、ロシアなくしては語れないのだ。

 我々日本人、あるいはかつて西側諸国と呼ばれた国々が気をつけなければならないのは、中国にしろロシアにしろ、経済は資本主義を取り入れてはいるが、 その政治体制は旧態依然の一党支配が続いているということである。中国は言うに及ばず、一時は民主国家へ歩みだしたかに見えたロシアも、プーチンになってから 民間財閥の国営化など、確実に時代に後戻りしている。しかも、両国では政府の思惑が容易くマスコミに反映されてしまう(つまり国民への情報操作)ことでも 旧西側諸国とは異質な国家である。つまり民主主義・自由経済の仮面をかぶった独裁(的)国家であることを、我々は自覚しなければならないのである。

 私は小泉も麻生も好きではないが、その意味で、「中国は脅威である」という発言は正しいし支持する。今回の発言で何かが劇的に変わるということはないだろう。 中国とロシアは今後も結びつきを強くするであろうし、中国は経済的発展を元にして、軍事費を増加させつづけるだろう。
 しかし、諸外国の誰もがタブーとしていた「中国の脅威」をあえて口にしたことで、今後国際的な共通の認識になっていくことを期待したい。もちろんそれは、 中国を孤立させるためではなく、中国の軍事費を監視し、抑制するために。

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