本日の御題:9.11の衆院選は自民大勝の予感?

◆迷走する民主には、失望感さえ感じる
 小泉総理が衆議院を解散する前、民主党の岡田代表や菅前代表は、もし小泉氏が衆議院を解散すれば我らは勝てると豪語していた。
 もしそれを本当に信じていたならば、解散前になぜそのようなことを口走ったのか私には理解できないが、彼らの望んだとおり自民党の 造反議員によって参議院での郵政民営化法案は否決され、めでたく衆議院の総選挙と相成った。しかも日にちは忌まわしい事件を髣髴させる9.11。
 これは小泉氏の趣味だろうか?

 いや、そんなことはどうでもいい。私は政界再編、あるいは政権交代を願っているが、どうも民主党の幹部クラスは考えが甘いようだ。
 まず岡田代表、「今回の選挙の勝敗ラインは民主党の単独過半数」などと、解散直後、いきなりテレビ記者の質問にぶちまけてしまった。きっと本当に勝つつもりでいる のだろう……と思ったが、彼は自分の立場がよく分かっていない。小泉の相手がもしも石原都知事のようなカリスマを持った人ならば(私は嫌いだが)、 民主党は勝てたかもしれない。しかし、小泉が戦っているのは亀井を中心とする悪代官ヅラした面々である。抵抗勢力のレッテルを貼られた人々だ。
 今回の解散は、ブッシュ米大統領風に言うならば「悪の枢軸との戦い」であり、日本人の気質からしても、「裏切り者」である亀井らと正々堂々 戦う小泉に支持が集まるのは当然だ。それが読めない彼らの無能さに、私は落胆せずにはいられなかった。

 民主党にとっては、さらに悪いことが続く。亀井たちが新党を立ち上げたことだ。これで自民党分裂選挙的な風味は薄らいでしまった。
 さらに受難は続く。長野県知事の田中氏が、新党「日本」の顔となり立ったことだ。これは民主党にとって大きなダメージである。有権者は「郵政民営化の是非」 という比較的分かりやすいキャッチフレーズを毎日のようにステレオスピーカー的に聞かされている。その上で、自民でも民主でもない第三の選択肢として、 人気のある田中氏が立ったことで(自身は立候補していないが)、確実に混乱し始めている。つまり小さな政党の乱立によって争点がぼやけ、結果として分かりやすい キャッチフレーズを持っている自民党に票が流れるのではないかという懸念だ。
 ドラマを書くプロの脚本家は、登場人物の心の葛藤やぶつかり合い、つまり「争点」を明確にする。それなくして、大衆をひきつけることはできないという ことを知っているからだ。さて、民主党に敏腕脚本家はいるだろうか?

◆ない争点は作れ
 私がもし民主党のために脚本を書くならば、「道路公団」をあげるだろう。委員会の殆どのメンバーが逮捕されると言う異例の事態に陥っているにもかかわらず、 天下り体質は温存されていることに国民はジレンマを感じている。事実、天下りを規制する法案は見送られたはずだ。赤字垂れ流し+有力な天下り先+税金無駄遣い(ゼネコンの大得意先)である諸悪の根源は、郵政ではなく 道路公団であるとなぜ訴えない!? その上で小泉氏の無能さを訴えたならば、郵政一辺倒の今の風向きは容易く変わるだろう。
 郵政民営化には道路公団民営化をぶつければよいのだ。
 もっとも、今の民主党に私は残念ながらあまり期待をしていない。その理由は次の項を見て欲しい。

◆曖昧な民主党のジレンマ
 民主党の最大の弱点は、寄り合い所帯によるポリシーのあいまいさである。憲法問題ひとつにとっても、「改憲」に動く自民と「護憲」を掲げる共産、社民に対して 「論憲」などという詭弁を鳩山氏が使ったことは記憶に新しい。現在の国際情勢を考えれば、北朝鮮拉致問題、常任理事国入り問題、中国・韓国との緊張関係など 郵政より確実に重要な問題があるにも関わらず、そこに焦点を当てることができない。特に東アジアにおけるナショナリズムの高揚は、危険なレベルにまで 達している。
 少子化問題については、女性候補者の少ない民主党は残念ながら今ひとつ熱心ではない。選挙の争点にしないと言っていた郵政民営化についても、 その後とってつけたような段階的縮小などというどっちつかずの政策を掲げるものだから、有権者の注意はとても集められない。つまり何につけ中途半端なのだ。
 その最大の理由は、党首(代表)にカリスマ、あるいは求心力がないためである。小泉があれだけ自民党の造反議員に対して強く出ることができるのも、 有権者の支持を背景にした求心力があるからである。だからこそ、思い切ったことをしても、大多数の人はついてくる。議員の個人的なポリシーと小泉路線が 異なっていても、賛成票を投ずる。
 しかし、民主党にはそのような人物がいないのだ。私は断言する。私は民主党を支持しているが、今の状態では仮に与党になれたとしても(今回の衆院選で単独過半数を 取ると言う事は、絶対にありえないと断言してよいが)、間違いなく日本を変えるような思い切った政策は実行できないであろうと!
 今回の選挙は参議院ではない、衆議院である。この戦いに勝つことができれば政権を取れるのである。にも関わらず、この体たらくさに、私は嘆かずには いられない。

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