◆中国、韓国の歴史教育は正当か?
日本人から見ると、中国で起きている一連の暴動(デモとは呼びたくない)は不思議な光景に見える。確かに、戦前の日本が中国に、
あるいは韓国に多大な損害と僅かな功績を残したことは認識しているとしても、日本人との認識のズレという点では違和感を感じずには
いられない。
その最大の理由は、おそらく中国政府、あるいは韓国政府が散々口にしている「教科書問題」
というキーワードにあるのではないだろうか。日本の歴史教育は、大概明治維新、あるいは日清・日露戦争でほぼ終わっている。
いや、満州事変や太平洋戦争についてもないわけではないが、それは1931年だとか、1941年だとか、あるいは1945年だとか
といった年表と事件の名前をつき合わせるだけの単なる暗記問題である。少なくとも、鎌倉時代や戦国時代のような行数も頁数も
設けていない。
歴史は遠いものよりも近いもののほうが、人の心に強く残っている。そういう意味では、私はもっとこの身近な60年、あるいは100年の
歴史をしっかり学ばせるべきではないかと感じる。真実がそこにあるならば、それを我々は自国の歴史として認識しなければならない。
しかし、この教科書問題は決して日本だけのことではない。いやむしろ、中国・韓国の教科書のほうがはるかに問題ではないのか。
真実を教えるのが歴史教育だと言うならば、戦後日本が行ってきた償いの数々も真実として教えるべきである。
たとえば中国に対しては、1972年の国交正常化以来、実に3兆円もの援助を行ってきたという事実がある。その援助は中国の橋となり、
中国の道路となり、鉄工所となり、空港となり、ダムとなって中国のインフラを整備してきたのである。
この事実が広く国民に周知されない限り、両国の未来志向の関係も、友好関係もありえない。償いも永遠に終わらない。
そして、日本政府がよく口にする「友好的関係を築きたい」という言葉にも空しさを覚えてしまうのである。
◆愛国主義の下では犯罪も許されるという心理
さて、中国政府はデモと言ってきかないが、北京や重慶などで起こった暴動は、ついに国際都市上海にも及んだ。
上海での暴動はさらにひどく、領事館だけでなく日本の料理店など十数軒も内部まで完全に破壊された。
また、暴動の近くにいた日本人男性2人が暴徒に周りを囲まれ、パトカーに乗り込んで難を逃れたものの、パトカーのガラスは
割られ怪我をした。
問題は、彼らのスローガンである。反日の言葉の隙間に聞こえる「愛国のためならば犯罪も許される!」という言葉に
私は耳を疑った。法治国家としての未熟さを垣間見てしまった。
つまり今回の一連の暴動は「日本人(あるいは関係する場所)であれば、破壊しても構わない、傷つけても構わない」という
ことになる。実際、暴徒によって領事館のガラスが割られ様が、一般商店が破壊され様が、中国の機動隊は傍観してそれを止めようとは
しなかったし、さらに逮捕もしなかった。つまり、対日本に対しては、罪が罪にならないのである。
この点に関しては、日本政府はもっと毅然とした態度で中国に対応を求めるべきだ。多くの邦人が中国に住んでいるのだから、
その安全を守るのは当然の義務である。それができないのであれば、外交官の一時撤収、現在中国から大量に入ってきている輸入品の制限などの
経済的な何らかのペナルティさえやむを得ないだろう。言葉だけ交渉カードを持たない外交は不毛だ。
◆国連常任理事国入りの飴と鞭
中国は常任理事国の拡大について、日本に明確にノーを突きつけている。そして阻止のための戦略も明確である。
第二次世界大戦で日本同様枢軸国側であったドイツや、領土問題で度々紛争を起こしてきたインドの常任理事国入りに
賛成する一方で、日本に対しては名指しで「反省の念がない」として拒否している。
この明暗はっきり分かれる対応は、いかにも中国らしい。常任理事国の拡大そのものに反対すれば、現在の常任理事国である
中国が既得権益を失うことを恐れているために反対していると受け止められかねないし、常任理事国を目指す国々
全てを敵に回すことになる。
ならばむしろ、日本が常任理事国になるという最悪の事態を回避するために、ドイツ、インド、ブラジルといった国々の
理事国入りに賛成することで、敵の分断を図ったほうが得策である、という考えが見え見えだ。
蛇足だが、アメリカも最近になって、拡大に期限を設けることに消極的になっている。その最大の理由は、中国が言う
発展途上国の理事国入りが果たせされた場合、その一議席はかなりの確率でアラブの国に割り振られるからである。
日本のように親米路線の国であればアメリカの国益にもかなうが、アラブの国(あるいはもう少し拡大するならばアジアで
もイスラム社会であるインドネシア等)が常任理事国入りすれば、これまでのように石油のために戦争を起こすことも難しくなる。
日本をPKO、PKFにより積極的に参加させるために、あるいは同盟国として共にイラク戦争に(イギリスのように)参加して
もらうために常任理事国にするというのは話が別なのである。