本日の御題:増えるフリーター志望
◆積極的にフリーターを選ぶ若者達
 今月(2004年6月)の調査によれば、雇用が若干回復傾向にある中でもフリーターの数は決して減っていないようである。実際、 フリーターになった動機について、自分の目標に向かって「やりたいことがある」など積極派が約4割を占め、「会社が倒産したため」といったやむを得ず フリーターになった人を上回っていることが、人材派遣大手パソナなどが設立した調査・研究機関「日本雇用創出機構」の調べで分かった。

 フリーターは全国で417万人に達するとされ、積極派が多いことは、今後、景気回復で雇用環境が改善されても、「フリーター志望」が減少しないことを 示唆している。これは税金、年金政策に大きな影響を与えるだろう。日本の会社にはそれほどまでに魅力がなくなってしまったのだろうか。

 確かに、フリーターは時間の使い方を自分で決めることができるという点で、正社員よりもよい労働条件と言えなくもない。人は決してパンのためだけに 働くのではない、と欧米のある経済学者が言ったが、まさに最近のフリーターの増加はその言葉が正しいことを物語っている。
 また、正社員と違いサービス残業も基本的にはない。給料が時給あるいは日給であると言うことは、働いた時に働いただけもらうことができるということであり、 退職金という形で現在の労働の対価の支払いを将来に先延ばしされる正社員にはない特権だ。
 さらに、責任という重圧も感じないで済む。社員同士で度々起こる煩わしい人間関係に悩まされることもない。もし嫌な思いをしたならば、 悩む前に辞めてしまうこともできる。フリーターは確かに収入面で正社員に劣る面もあるが、自由を求める若者にとっては決して悪い労働条件では ないのだ。

 もし政府がフリーターを抑えたいと本気で願うならば、これらは全て政策に反映されるべきよい道しるべになるだろう。たとえば、自由な時間がほしいと 願うフリーターには、ワークシェアリングという考え方が有効的ではないだろうか。日本にはサービス残業がはびこっているために たとえば80時間の労働時間を必要とする仕事をやるにしても、10人の社員に各8時間仕事をさせる(給料は80時間分)より8人の社員に 各10時間仕事をさせるほうが(給料は64時間分)、安上がりである。(法的には2年まで遡って社員は残業代を請求できる)
 しかしこのシステムは、社員の時間を縛ることになるから、フリーター志望の人には敬遠されやすい。
 ワークシェアリンクの徹底は、子供を持つ働く女性にとっても(もちろん男性にとっても)非常に有効であり、子供が学校から帰ってくる前後に仕事を 終えることができれば家族と触れ合う時間も増えるだろう。

 さらに、有給休暇を消化せずに消滅させてしまう社員が、日本には非常に多い。有給休暇を取ることは社員の正当な権利であるにも関わらず、 正社員がそれを使い切ると、大手企業を除く多くの経営者は「仕事に責任感のない社員」という評価を往々にして下してしまいがちだ。
 これは一度フリーターを経験してしまった人には、かなりの苦痛になるだろう。現状を考えると、国が半ば強制的に有給休暇を消化させるシステム (たとえば違反した企業に罰則を設けるなど)が必要かもしれない。周知徹底させるためには、会計監査と同様、労働時間や休暇について監査すること も必要だ。

 最後に、フリーターと言う名前は非常に悪いイメージが、特に30代以上の世代にはあるだろうが、似ている言葉で「フリーランス」や「SOHO」 という言葉もある。これらはいずれもプロフェッショナルな特技を持つことで、企業に勤めることなく個人で仕事をする人たちの総称であるが、 フリーターがもし本当に、上記のアンケート調査の結果のように「やりたいことがあるために」積極的にフリーターになっているとしたら、 彼らはいずれ特殊技能を身に付け、「フリーランス」と呼ばれる人たちへと成長するかもしれない。
 日本の経済力を底上げしたいと考えるならば、政府はフリーターがフリーランスになるための学校卒業後の教育システムを構築すべきである。
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