本日の御題:テロのリスクは参議院選挙直前
◆テロに屈したと受け止められたスペイン
 スペインの政権が交代した。原因はアメリカ偏重の外交政策と、それに伴って起こった国内のテロが国民に支持されなかったためだと 言われている。思えばスペインは英国と並んで、イラク戦争へ強引に舵取りするアメリカの最大の理解者であった。ロシア、フランス、ドイツ といった主要国が反対する中、ヨーロッパの西岸に位置するかつて無敵艦隊を誇った小国は、滅私奉公とも言うべき態度でアメリカ追随外交に 徹したのである。
 しかしスペインは民主主義の国である。テロの不安と軍隊の派遣による経済的・心理的負担は、選挙によって「数」として証明された。 新政権は選挙公約どおり条件付ながらもイラクからの撤退を公言しているが、問題なのは列車爆破テロと時期が重なったことだ。
 新政権の思惑とは別に、スペイン軍の撤退というニュースはテロリストが自分達の手法が間違いではなく、効力があり、そして継続的に 多角的に遂行できる方法であると自信を深めたに違いない。

◆日本は本当に危ない
 日本人はイラクに自衛隊を派兵したあとも、なおイラク情勢を対岸の火事として見ている節がある。なぜなら、遠いイラクよりも 北朝鮮の核や中国船の日本の領土への不法侵入などのほうが、遥かに恐ろしく身近な問題だからである。人は危機感に順番をつけたがる習性が あるもので、実はどちらも深刻な問題であるにも関わらず、2番目というラベルを貼ってしまうとあたかもその危険度が低いと錯覚してしまうのだ。

 しかし、テロに国境はない。弾道ミサイルと異なり、距離も精度も関係ない。遠い国の出来事だから大丈夫と高をくくるのはあまりにお粗末な 考えなのだ。
 私はスペインでの爆破テロが必ずしもこの時期に偶然起こったとは考えていない。つまり、選挙の時期を狙って起こされたと考えるのが 妥当だろう。それはアメリカのような国に対しては火に油を注ぐ結果になるかもしれない。しかし国民と政権の間に認識の溝がある場合は別だ。 スペインも日本も9.11の事件は国内では起こっていない。
 しかも、多くの国民がイラク派兵を憲法違反だと感じている日本のような国に対して、選挙時期を狙ったテロは極めて有効な手法である。 つまり、暗に国民の中に潜んでいる派兵への疑問をテロに巻き来れるということによって顕在化し、その矛先を原因を作った現政権へと向かわせて 国内から政権を崩壊させる、というものだ。
 テロリストがどんなに多くの武器を持っていたとしても、とても海を渡って外から日本を攻撃することはできない。ならば内側から政権を 転覆させるべきだと考えるのは、兵法を知っている者ならば誰でも思いつくことだ。
 この場合、日本の政府機能を停止させることは必ずしも問題ではないから(スペインが国防省ではなく列車が狙われたように...)、自衛隊基地 や国家施設が狙われるとは限らない。むしろ人が集まる場所が危ないだろう。思えば、新宿にも今となっては不気味に思えるツインタワーが あるではないか・・・。

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