本日の御題:正社員と非正社員
◆労働者の地位向上のためのリストラ
 厚生労働省は8月26日、「2003年版労働経済の分析」(労働経済白書)を発表した。
 その中で、正社員として働く人が減る一方、フリーターやパート、派遣労働者などが増える傾向がますます進んでいることが明らかになった。
 具体的に数字をあげると、1982年には約50万人だったこれら非正社員は、1992年には100万人を突破し、2002年では200万人を突破した。つまり約10年のサイクルで倍になるペースで進んでいる。
 1982年から1992年に関しては、日本が好景気に浮かれていた頃であり、必ずしも人件費削減のために企業が非正社員を雇用していたとは言いがたく、むしろ不足気味の労働力を専業主婦などに求めた結果と言えるだろう。

 しかし、1992年から2002年までの10年に関しては、労働市場が縮小に向かう中での倍増であり、それ以前とは全く性質を異にしている。
 大きな理由はおそらく3つ上げられるであろう。1つはリストラによってあふれた労働者が増えたこと、2つ目の理由としてはそれら労働者をより安価に雇用するために正社員の募集を企業が控えていること、3つ目の理由はそのような状況を目の当たりにした若年者労働者が企業に対して多くを望まずむしろ自らフリーターを選んでいることである。

 問題は、これら非正社員と正社員の賃金格差が拡大していることである。
 日本経済が成熟することによって社会が必要とするサービスも変化する。
 その過程では、国の中での労働力を再分配が必要不可欠であり、理由1も避けることができないであろう。
 また、理由3についても、各人の価値観の違いに起因していることであり、労働市場の多様化という意味では必ずしも批判されるべきことではない。
 しかし理由2については、大きな問題である。たしかに企業はアジア諸国等などから流入する安価な製品に対抗するため少しでも人件費を削減したいと考えている。しかし、そのために正社員に比べて明らかに劣悪な条件で非正社員を雇用することは許されないであろう。

 これまで労働組合は労働者の生活を守るためにリストラに激しい抵抗を見せてきた。
 しかし、それが結果として企業の正社員離れを加速し、比較的クビの切りやすいパート等の労働力を増やす結果をもたらした。
 しかし、これは労働者にとっては望ましいことではなく、むしろリストラを肯定的にとらえることで正社員の数を増やすことこそが労働者の利益に繋がると考えるべきである。企業の財務状態によっては正社員だろうが非正社員だろうがクビを切られることを免れることができないのなら、少しでも労働条件のいい正社員の数を増やすべきである。

 もちろん、リストラをただ推奨するつもりはない。日本のリストラの最大の問題は、リストラが定着しているアメリカ企業と異なり、経営者が責任をとらないことである。
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