本日の御題:太陽は朝鮮半島を照らさない
◆米国抜きという手法
 韓国に誕生した盧大統領は、前大統領から太陽政策を引き継ぐようだ。つまり、引き続き「核開発」を 行う北朝鮮を「脅威」だとはみなさず、融和政策を取るという事だ。
 それは決して悪いアイディアではない。しかし、韓国の安全保障を「日中韓」でやろうというのは大きな間違いである。
 中国が韓国を守ってくれるだろうか? あるいは平和憲法ボケしている日本が単独で韓国を守るだろうか?
 ありえない。
 中国の首都北京は既に北朝鮮の弾道ミサイルの射程内なのだ。あえて中国が韓国のために、北朝鮮に喧嘩を売ることはないだろう。
 もちろん、日本人ならば誰でも知っていることだが、国連の名の下の集団的自衛権すら危うい日本が、隣国の戦争に単独で首を突っ込むとは考えられない。

 ならば韓国が北朝鮮に単独で勝てるかというと、通常兵器だけならともかく、核弾頭の搭載可能なミサイルを使われたら敗戦色は濃厚になる。
 この状況下で盧大統領の米国へ非常に冷たく当たるのが私には理解できない。それは一市民が取る行動であっても大統領の行動ではないからだ。

 確かに、韓国は以前から反米感情が強い国だ。アメリカに原爆を落とされた元祖悪の枢軸として今に語り継がれている日本より遥かに反米感情が強い。
 その原因のひとつには韓国はナショナリズムが強いことがあげられるだろうが、それでも今までの大統領はあえてアメリカと距離をおこうとはしなかった。
 アメリカの軍事プレゼンスが抑止力となり、確実に機能していたからだ。

 しかし盧大統領は違う。東アジアのマハティール首相とでも呼ばれたいのかと思うほど、東アジア地域という枠組みにこだわっている感がある。
 逆を言えば、海の向こうにいるアメリカは別文化の国であり、地域連合からは除外したい存在なのだろう。
 これはアメリカにとっても日本にとっても、勿論当事者である韓国にとっても決してよいことではない。

 韓国は太陽政策(北朝鮮を敵視しない、脅威とみなさない)を続ける方針だが、つい最近、日本海に対艦ミサイルを撃ちこむという軍事的示威行動に出てみたり、 経済制裁は即宣戦布告だとけん制し、さらにミグで韓国の領空を侵犯するなど、太陽政策が現実を正しく反映していないのは誰の目にも明らかだ。
 しかも太陽政策という「アメ」は北朝鮮の核開発を止める事ができないばかりか、日米韓という協調体制までも崩そうとしている。これは政治的には 明らかに失敗であろう。

 北朝鮮が金一族の独裁国家であり極めて厳しい情報統制がしれている限り、太陽政策が両国の国民同士の不信感を取り除き融和・統一という方向に 向かうとはとても考えられない。

◆戦後体制はまだ残っている
 また、盧大統領は東アジアの団結を強めたいと考えているようだ。ヨーロッパ風の名称をつけるならば、「東アジア連合」とでも言うべきだろうか。
 しかしこの構想は少なくともここ十年は決して日の目を見ないだろう。
 確かに、韓国は先進国の仲間入りを果たし、中国に至ってはG7並みの経済力を身につけていると言っていいだろう。少なくともカナダやイタリアが 抜かれるのは時間の問題である。
 この点から言えば、たとえば域内の貿易障壁の撤廃というのも、ありえない話ではなくなりつつある。確かに中国通貨の元は安すぎるであろうが、 おそらくそれも長くは続かないだろう。
 しかしこの地域にはまだ問題が残されている。台湾だ。台湾はIT産業では世界的に優良な工場だが、これをどのような立場で東アジア連合に 組み込むかは困難を極める。経済的に発展していても政治的には太平洋戦争直後の状態を未だに維持しているのである。
 北朝鮮とそっくりだが、中国もまた、示威行動の一環として台湾近海にミサイル発射実験を行っているのである。
 正式な中国という地位で争う中華人民共和国と中華民国。38度線を境ににらみ合う韓国と北朝鮮。
 さて、この図式が塗り替えられるのはいつの事になるのだろう。


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