本日の御題:小泉氏は優柔不断?
◆狂い始めた歯車
 田中真紀子外相と野上事務次官の更迭は意地を張り合った者の行き着く場所としてはよくあることだ。言った言わないの水掛け論は、最終的には 喧嘩両成敗にならざるを得ない。少なくとも、国会を長時間に渡り空転させた責任は大きい。
 しかしそうはいっても、このタイミングで更迭というのは解せない。過去のコラムを読んでもらえればわかるとおり、私は当初から田中氏の外相登用 には疑問を投げかけていた。少なくとも全世界で愛されている帝王学の観点から言えば、彼女のやり方は明らかに問題があり、とても人心を掌握して 大事を成す人柄ではないからだ。
 そういう意味では、私は世論の反応とは逆になってしまうが今回の更迭劇を歓迎している。株価が下がらねばならない意味も思いつかない。 官邸からも省庁からも孤立し、すでに行き場所もなかった大臣を廃したことは非常に好感の持てるニュースだ。
 そんな私が感じる違和感は、なぜこのタイミングなのか? という一点に尽きる。

 結論から言おう。もし田中氏を更迭するのが本心であったならば、小泉氏は彼女が指輪事件を起こした時に決断すべきであった、と。
 今回のNGOの排除問題では田中氏に非はない。明らかに鈴木宗男のほうがきな臭い匂いを漂わせているだろう。にも関わらず喧嘩両成敗と言うのは、 (私は嫌いなのだが)国民から圧倒的支持を集めている田中氏を切るにはあまりにも心もとない口実だ。
 小泉氏と田中氏の間がかなり前から気まずくなっていたのは過去に書いたとおりだが、それをこのタイミングで行動に移すというのは、 駆け引きの才能が重要な要素である政治家としての小泉氏のセンスを疑わせる。

◆今後の人事
 さて気になる今後の人事だが、小泉総理は野上以外の外務省幹部には手をつけないつもりらしい。果たしてスケープゴートは一人で十分だろうか?
 もし田中氏を切るならば、それ相応の血を外務省にも流してもらわねば国民も納得はしないだろう。田中氏と外務省の間で起こった数知れないいざこざは 何も野上の一人舞台ではない。これは外務省の体質そのものの問題だ。そして体質を変えるための最も有効な一手は、人の刷新である。
 この機に乗じて、いっそ局長以上の幹部を全面更迭しては如何だろうかと、私は小泉氏に提案したい。もちろん、理由はある。

 まず第一に、新しい外務大臣に自らの手で事務次官以下を任命してほしいからだ。過去の慣習に習って、残ったメンバーから年功序列で選ぶ必要はない。 大臣の股肱となる人たちだ。面接して自分で選ばせればいい。官僚の側からすれば、自分を引っ張りあげてくれた人間になら少しは協力したいと思うのが 人情だろう。幹部としての旨みを知っていないうちでないといけない。

 第ニに一罰百戒を省庁の中であぐらをかいている高慢ちきなエリート達に教えるためである。たった一人の更迭では明らかにインパクトがたりない。 しかし幹部全員が更迭となれば、今後、ある一部の幹部が大臣と揉め事を起こそうとしたときに官僚の内部からそれに対する抑止力が働くだろう。
 野上だけを更迭しただけでは官僚へのメッセージとしては非常に限定的な効果しかもたらさない。大枚を叩(はた)いて手に入れたものが 安っぽいものというのは、無駄な公共事業に湯水の如き資金を流し込む族議員の姿を髣髴される。

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