◆復活の兆しを見せる橋本派
小泉内閣は組閣以来、ほぼ一貫して80%近い支持率を保持している。国民は小泉氏のリーダーシップに裏づけされた聖域なき構造改革を期待しているのだ。
その一方で、自民党最大派閥ながら日の当たらない場所に追いやられてしまったのが橋本派だ。党首選でまさかの敗北を喫して以来、めっきりお茶の間に
その姿を見せるのが少なくなった。
小泉内閣は国民の期待によく応えているようだ。自民党が母体となっている内閣としては異例なほど与党・自民党に根回しすることなく様々なことを決めている。
しかし最近、高支持率に油断しているのか小泉氏およびその周辺の対応は幾つか非常に大きな失敗があった。
たとえば人事である。今月の8日決まった副大臣・政務官といった有力ポストでは、橋本派の復権が非常に目立った。その一方で元々小泉氏に近いとされてきた人は
冷遇されている。
これはよくないサインを自民党議員に与えるものだ。橋本派による自民党支配が強まるのは目に見えている。
派閥に議員が属するのは、何も選挙の時に人と資金の応援が期待できるからだけではない。派閥に入らなければ出世が難しいからである。企業から献金を集め、
党員を増やして自分の力を誇示し、やがてふかふかの大臣椅子に座るためには、派閥の領袖もしくは有力者になるか、あるいは彼らに可愛がられなければなない。
一時は抵抗勢力から距離を置いていた若手議員だが、結局のところ派閥の論理で有力ポストが決まるのであれば、派閥に従順に振舞ったほうが得だと考えるように
なるだろう。
こうなってしまっては、もはや若手議員の蜂起は期待できない。
もちろん、小泉氏自身、抵抗勢力が副大臣等ポストにつくことで内閣の機動性が低下することを危惧しているだろう。しかしもし今回の人事が、橋本派を懐柔するための
小泉氏の戦略であったなら大きな間違いである。副大臣ポストを得た橋本派が次に望んでくるのは間違いなく大臣職だからだ。
もちろん、地元の土建屋が喜ぶ国土交通省の大臣職などは垂涎の思いで手を出してくるはずだ。それでは小泉氏の言う構造改革は小泉内閣の間にはできなくなるだろう。
いやいや、小泉氏は圧倒的な支持率を背景にしているためいざとなれば衆議院を解散できるし、抵抗勢力の言いなりにはならないと言う人もいるはずだ。
しかし、仮に衆議院を解散して総選挙をしたとしても、結局自民党の大勝すれば橋本派の大躍進にしかならないのである。なんということはない。
抵抗勢力を喜ばせるだけなのである。
ならば自民党を飛び出して新党結成をすればいいと思われるかもしれないが、地方の各選挙区1つ1つに候補者を立てバックアップをしていくのは容易なことではない。
しかも後援会組織などまで考えるとそう簡単ではない。
結果として小泉氏は自民党にへばりついたまま、英気を妖怪たちに吸い取られていく運命にあるのかもしれない。
◆迷走する最大野党民主党 と 連立与党
一方、野党第一党の民主党も情けない。あえてここは苦言を呈したい。今の同党は様々な議題について結論を出せない状況にある。
例えば自衛隊派遣に関しては、前向きな鳩山氏と社会党上がりの横路氏の対立は根深い。しかもそれに菅氏が加わると、もはや3人3色、すべての議題に党としての
明確な結論が出せないのが現状である。
元々、寄り合い所帯の民主党には強いリーダーが存在しなかった。当初人気の高かった菅氏が代表の頃が唯一例外であろうか。しかしそれもご存知のスキャンダルに
よって打ち砕かれてしまった。
代わった鳩山氏は由緒正しい家柄ということもあり椅子に座って黙っていれば品格もあったが、小泉氏他との国会質疑では口下手さを存分に披露してしまった。
金持ちのボンボンである彼の性格らしく、時に気前よく小泉氏にエールを送るなどして自民党と内閣の分断を謀ったが、逆にうまくかわされて自己の責任問題にまで発展
してしまったことは記憶に新しい。
政治家として頼りない印象ばかりブラウン管に映し出されるものだから、最近では鳩山氏では次の選挙を戦えない、という意見が身内の中から囁かれるようにまでなっている。
また、他の野党との選挙協力ひとつとってみても、共闘したい菅氏と安易に組んで足並みが乱れるのを恐れる鳩山氏の間には、相当埋められない溝がある。
菅氏にしてみれば民主党は最大野党なのだから、野党連合を築くことができれば反自民の浮動票は民主党に流れるはずという計算があるだろう。
一方の鳩山氏は、民主党内でも意見が揃わないのに他の政党と連合してさらに収集がつかなくなる事を恐れている。
残念なことに、今の民主党はネクストキャビネットの総理大臣と官房長官でもあるこの二人の意見が分かれただけで、たちまち結論先送りの迷子になってしまう。
このような状況で、「日本の将来を担う政権交代可能な野党」を謳うのはそもそも間違いである。
しかし与党・自民党、公明党も状況は同じである。例を挙げれば有事法制の制定に対する考え方だろう。山崎氏らは北朝鮮の不審船事件があった今制定しなかったら、
今後数年変えることができないと制定に非常に前向きである。
しかし連立与党の一方の雄公明党は難色を示している。おそらく首を縦には振らないだろう。
するとここでも棚上げ・先送りが起こる。政治家の官僚化とでも言うのだろうか?事なかれ主義はなにも省庁だけの専売特許ではないらしい。
考察するに、与野党共に再編が必要なのではないだろうか。既得権益や親からもらった地盤のみの結びつきから、政策の是非による結びつきへのシフトが急務である。
今は与党にも野党にも右もいれば左もいる。この組織の構成は現状維持には適しているが、変革をするには効率が悪い。