本日の御題:情報化社会の「買ってはいけない」
◆特許による業界支配
 この世に存在する企業を勝ち組と負け組に区別するようになったのはいつ頃からだったろうか。今ではすっかり定着したこのような考え方も 遡ってみると意外と歴史の浅い概念であることがわかる。
 さて、競争が妨げられた環境下でも勝ち組負け組は実は存在していた。ただしそれは個々の企業ではなく業界単位であった。 今日のような同一業界内で勝者と敗者がはっきりと区別されるようになったのはウィンテルの台頭が誰の目にも明らかになってからである。

 他者を寄せ付けない圧倒的なシェア。それを可能にしているのは「互換性」とそれを独占できる 「特許」に他ならない。
 1980年代、欧米が発明し世に送り出した自動車や多くの家電製品は日本のお家芸と呼ばれる勤勉さと自動化(あるいは機械化)、そして小型化によって 世界市場で窮地に立たされた。当時、彼らは日本を「自分たちが考えたものを真似て、安く大量にダンピング販売する東洋のウサギ小屋に棲む住人」と とらえ、苦々しく思っていた。
 そこで彼らが考えたウルトラCが「特許」であったのは、識者の間では常識となっている。つまり真似をしては安く売りさばく日本を封じ込めるには 「特許」という盾が最も有効だと考えたわけだ。
 この目論見は見事にあたり、パソコンのソフト/ハードから携帯電話に至るまで、おおよそ成功を収めているのは自分の規格を業界の デファクトスタンダードにできた企業である。

 今日では、(少なくと情報分野に限って言えば)ひとつの業界のうち勝ち組として生き残れるのは上位1〜2社であり、残りの数社には負け組として 生きるか、でもなければ店をたたむことしか選択肢は残されていない。

◆勝ち組商品は危険がいっぱい
 さて、当初この欧米の戦略変更に全く対応できなかった日本企業もようやくここにきて特許の重要性とデファクトスタンダードの力を理解 するようになった。
 携帯電話ならばNTTの子会社NTTドコモが圧倒的なシェアをもっているが、これもiモードとそれを可能にする通信技術がNTTドコモ 固有のものだったからに他ならない。
 たとえライバル他社がiモードに対応したハードを作ったとしても、それをNTTドコモに無断で売りさばくことはできないし、 似たサービスを始めたとしてもすでにユーザーをかかい込まれている上、iモード対応アプリケーションが使えないなどの問題が 他社製品の普及を大きく妨げる要因になっている。

 では消費者は勝ち組商品を購入すべきなのだろうか? こと情報技術分野に限って言えば、私の見解はNoである。
 なぜならば、勝ち組商品は必ずターゲットにされてしまうからだ。

 例えば携帯電話を見てみよう。NTTドコモ以外にもauやJフォンなど大手は存在するが、そのうち迷惑メールの配信が最も多いのは NTTドコモだ。理由は簡単で、ユーザーの絶対数が多いことから、DMを送りたいと考えている広告主にとって、最も魅力があるためである。
 というのも通常、迷惑メールの配信者は受信者のアドレスが分からないことから、「a」から「z」まで順々に並べ立てて全ての組み合わせを ひとつひとつ実行してメールを送るわけである。
 一方、メールのアドレスはその携帯電話サービスによって@マーク以下の文字は固定されている。
 つまりNTTドコモなら「@ntt.co.jp」、Jフォンならば「@jp−t.ne.jp」といった具合だ。
 この状況下で送信業者が最小の労力で最大の結果を得ようとするならば、Jフォンのドメイン名よりもNTTドコモのドメイン名を使った方が より多くユーザーのアドレスとしてヒットする可能性がある。
 よってNTTドコモに迷惑メールの配信が集中するわけだ。

 またパソコンに目を移せば、IntelベースのPCに搭載されるOSで限りなく100%に近いシェアをもっているのがマイクロソフト社であるが、 彼らが製造販売しているブラウザIE(インターネットエクスプローラ)とメーラーOE(アウトルック)は常にどの他社競合製品よりも ウィルスに感染する危険をはらんでいる。
 彼らのビジネスマナーに問題があるのはもちろんだが、特許と互換性、その結果の市場独占が人の妬みや反感を買い、 また時には支配されるのではないかという恐怖心を煽ることは、人の情をもった者ならば十分想像できる。
 結果として、勝ち組の商品、特にネットワーク関係の商品については危険度が増すというわけだ。

 私が読者の皆様に是非とも勧めたいのは、自分が入る会社ならば勝ち組が最もよいが、自分の手元に置いておく商品を 同じ基準で選んではいけないということである。

◆インスタントメッセージ(IM)にはお気をつけを
 今、インターネット人口以上の猛スピードでユーザー数を増やしているものがある。IMソフトだ。これまではAOLが圧倒的なシェアを占めていたが、 MicrosoftがオリジナルのIMに本腰を入れ、WindowsXPをその登竜門にしようと企んでいることから今後更なるユーザーの増加が予想される。
 簡単に言えば知人が今インターネットに接続しているかどうかが分かり、繋がっているならばリアルタイムでメールのようなやり取りが できるソフトである。
 これは非常に便利なソフトではあるが、もし読者の中にMicrosoft社のIMを使用しようと考えている方がいるならば、是非とも この場で再考していただきと思う。
 どんなソフトウェアにもバグやセキュリティホールは存在するものである。事実AOLも最近、重大なセキュリティホールをあるプログラマーから 指摘され、修正パッチを配信している。
 幸運なことにこれまでIMを媒体としたウィルスは報告されていないが(少なくとも私は知らない)、マイクロソフト社がこの市場に参入してきたから には平穏は長続きしないだろう。ましてWindowsを梃子にこの市場のシェアを伸ばそうというこれまでと同様の手法を用いようとしている限り、 決して使うべきではない。彼らのソフトのアイコンを自分のPCのデスクトップに貼り付けるということは、鍵のない家に泥棒を招きいれるような ものだからだ(門を開けて虎を招き入れるという表現のほうが三国志ファンには親しみが湧くだろうか?)。
 マイクロソフトをよく思っていない人は決して少なくない。特にコアにユーザーほど、彼らの独善的で傲慢で、しかも時に 高圧的な振る舞いに反感を抱いている。
 もしそのようなプログラマーがIMを(しかもマイクロソフト社の)媒体としたウィルスを作りばら撒いたらどうだろうか? その被害はメール を完全に凌駕するスピードで広まるはずだ(まさに一瞬である)。

 しかもPassport機能にウィルスが感染すれば、ユーザー情報を売りさばく人間にとっては打ち出の小槌のようなものだ。
 我々は携帯電話やブラウザ、メーラーといった先例から多くを学ぶべきである。今後、IMユーザーの相当数がマイクロソフト社製を使うことに なると予想される以上、同ソフトを買ってはいけない使ってはいけない (同製品は非売品であった・・・)と断言したい。

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