本日の御題:民主党再生に向けて
◆都議戦は健闘であっても勝利ではない
 この夏の参議院選挙の前哨戦として位置付けられた都議戦では、改選前13議席だった民主党は23議席まで伸ばし、 鳩山代表は高らかに勝利宣言をした。
 人気沸騰中の小泉内閣に支えられた俄か自民党支持者を考慮すれば、菅氏が言われたようにこの結果は 「善戦」であったと結論付けていい内容だった。では鳩山代表の勝利宣言は妥当だろうか?
 野党第一党としてライバル視すべき自民党の議席は51議席で僅か1議席を落としただけである。その差は 倍以上である上、民主党が増やした議席は他の野党から奪ったものであるから、参議院選挙での野党共闘は これでだいぶ難しくなっただろう。

 しかも得票数を見るとさらに惨憺ため結果である。民主党は多くの選挙区で辛うじて当選した議員がいたため 効率よく議席を得た計算になる。逆を言えば得票率では議席数ほどかせいでいないのである。
 逆に自民党は多くの選挙区で一位当選し、しかもその得票数が過半数に達していたところもあった。 これが何を意味するかといえば、今回は1人しか候補者を出してしなかった3〜4議席ある選挙区でも 2人以上の当選が数字上は可能であったことということになる。

 さらに、23議席というのは当初の勝利ライン26を下回っている。小泉内閣の人気を考慮に入れて目標を 下げたのだから、クリアしても当然であろう。そこには執行部の責任逃れの意思がはっきり表れていると 言っても過言ではない。

  ◆優柔不断な体質では小泉内閣に勝てない
 思い起こせば鳩山代表になってからの民主党は、実に歯切れの悪い印象が付きまとう。党内に護憲と改憲の 両派がいるために「論憲」などという訳の分からない言葉を持ち出すあたりは、もはや意思決定のできない 優柔不断そのものである。未だに私は思う。「論じた結果は出たのだろうか?憲法について民主党の道筋は 定まったのだろうか?」と。
 現在では小泉内閣に擦り寄ろうか、あくまでも野党として与党と対決していこうか思案中である。しかしおそらく 明確な戦略が立たないまま、参議院選挙に突入していくだろう。その時、野党は一丸となることもできず、 国民に対する決定的アピールもないまま、おそらく敗北するのである。
 小泉総理にしろ、田中外相にしろ、善し悪しは別として自らの意思をストレートに国民にぶつけ、また行動している。 その姿に国民の多くは変化を期待しているのである。
 しかし今の民主党は自らがどこへ進むべきか明確なポリシーを持っていない。そしてその優柔不断こそが 党の存在感をさらに薄めていることを執行部は軽視しているのではないか。

◆民主党はこうあれ!
 そこで優柔不断な民主党に代わって民主党が今後どう歩んでいくべきか、ここにポリシーをもって記したい。

 最近、野中が静かだ。マイクを向けられても口をへの字にしたまま答えようとしない。若い橋本が田中外相について 不満をぽつりぽつり言うのとは対照的だ。私は無口な野中に、復讐・逆襲の意思を見た。おそらく彼の腹は決まっている。 「選挙が終わるまでは、俺は何もしゃべらない」
 そしてその強い意志の裏には、当然ながら「選挙が終わったら...」という野望が隠されている。
 国民の支持率が80%以上の小泉内閣であるから、選挙後も野中陣営は動けない、と楽観視している人は意外と多い。 確かに民主主義のシステムが正しく機能している国ではそういうこともあるだろう。ただし、日本のように制度としてではなく 国民の成熟度がまだ途上の国では、私は楽観できないと思う。
 小泉内閣の人気の一つは田中外相であるが、もしその外相の首を小泉氏が切らねばならない状況を作り出すことができれば、 おそらく小泉内閣の支持率は20%は落ちるだろう。そして田中外相の素行を見れば、それは決して難しいことではない。
 こうしてまず外堀を埋めてから、じわりじわりと小泉内閣への圧力を強めていったらどうだろう?私は「加藤の乱」を思い出さずには いられない。ご承知のとおり、小泉氏は森派である。一時期森派会長になっていたこともある小泉氏だが、当然派閥内の 人心を掌握しているわけではない。それは宮沢氏から加藤氏が派閥を引き継いだために求心力に欠け、結果として加藤派の分裂を 招いたように、小泉派もまた野中の裏工作によって分裂する危険が非常に高いということだ。
 ちなみに数は少ないものの、山崎派は山崎氏が作ったものであったため、加藤の乱の時、一人の裏切り者も出さないという 纏まりのよさを見せている。

 では自民党総裁選で身内森派の造反に遭い過半数を得られなかった小泉氏が最後にたどり着くのはどこであろうか? YKKトリオの離党は考えられないだろうか?
 そしてYKKトリオの離党によって国会での議席を減らした自民党に代わって新しい内閣を作ることができるのは 他ならぬ野党連合なのである。

 ということで結論を言いたい。民主党は小泉改革を支持すべきである、と。小泉内閣がどんなに識者を集めたところで、 問題の山積している日本ではもれる議題が多くあるはずだ。例えば、所沢のダイオキシン問題では民主党は他のどの党よりも 熱心であった。民主党は小泉内閣が掲げる政策に合った具体的な問題点を(もちろん、正当と思われるものを選んで)指摘する ことで、小泉内閣のお尻を叩くと共に民主党の存在感を世間強く印象付けることができる。
 そしていずれ来るであろう共闘の時に備えるべきである。

 ではもし、野党第一党という意地のために小泉内閣と戦う姿勢を貫いた場合どうなるだろうか?
 少なくとも小泉内閣が掲げている大枠は今の日本にとって必要なことである。それに反対しようとすれば、 たちどころに「党利党略」「なんでも反対の旧社会党の亡霊」というレッテルを貼られるだろう。
 民主党は改革を妨害する勢力、と国民に思われてはならない。小泉氏に「自民党よりも民主党のほうが 私の考えに近い。共に改革できる」と思わせることができなければ、彼の離党を誘うことも政界を再編し利権まみれの古株 を国会から一掃することもすべては夢物語である。

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