◆Windows XPが要求するスペック
今秋登場予定のWindows XPの発売を待っている方がいたら考えたほうがいい。なぜならばこの新OSは
おそらくパソコン史上最も傲慢なソフトウェアになるからだ。
その理由の一つは、前回のコラムで説明したとおり、煩雑なユーザー登録を一方的に押し付ける点にある。
ユーザーは一度インストールIDを打ち込んだ後、マイクロソフトに電話もしくはメールを送り、
インストールしたハードウェアに固有のインストールキーをマイクロソフトから発行してもらわなければならない。
もちろん、再度それを打ち込むことになる。
これは自作ユーザーにとっては致命的なことだ。マイクロソフトはハードウェアの一部を増設、変更するだけなら
問題ないとしているが、大幅なシステム変更を行った場合はWindowsXPが正しく動作しなくなることを認めている。
そして「大幅なシステムの変更」というものが具体的にどのようなものであるのか説明することもない。
これでは自作ユーザーはもはや自分のマシンに手を加えることが事実上できなくなり、結果としてPCのパーツ販売を
減少させることにもなるはずだ。たとえ不正コピーが減ってマイクロソフト社にとって利益があったとしても、
自作市場を縮小させるようなことがあれば、PC業界全体してはマイナスと言えるだろう。
私自身、自作マシンを使っているが、とても怖くてWindwosXPにはバージョンアップができない。
しかしWindowsXPにはもう一つ、致命的な欠点がある。ハードウェアに対する要求があまりにも高すぎるのだ。
CPUにIntel Pentium2 300MHz以上、メモリーに128MBを最低ラインとしている。もちろん、これはあくまでも最低スペックだ。
これまでの経験からいっても、最低スペックで動かすことは現実的ではない。
事実、あるテスターによればIEとOutlookを立ち上げただけで100MB以上のメモリーを浪費してしまったという。
そこから浮かび上がる実務レベルでの最低スペックは256MB以上のメモリーと、強力なCPUの組み合わせだろう。
実際、マイクロソフトがテスターに配っているハードウェアは、現在の最高クロックグループに属する高速CPUと
320MBのメモリーを積んでいる。これほどまでに金をかけなければ、WindowsXPは快適に動かないことを如実に説明していると
いえるだろう。
まさにWindowsXPは「傲慢な金食い虫」なのである。
◆Media Playerまでが...
さらに悪いことがある。Windows Media Playerの最新バージョン8.0がWindowsXPに「統合」されることだ。
マイクロソフトによれば、バージョン7まではWindows2000で使うことができるがバージョン8.0はOSと「高度に統合」
されることで、事実上WindowsXPにしか対応しないという。これは明らかにメリットの少ない新OSに付加価値をつけるための戦略
である。
また、これによってRealNetworks、Apple、CD-RやDVDドライブのバンドルソフトメーカーが打撃を受けるのは目に見えている。
「OSとのバンドル」という強力な梃入れによって、またもや果敢に市場を開拓したソフトメーカーが
巨人に飲み込まれることになる。これをマイロクソフトによるモノポリーと呼ばずになんと呼ぶのだろう?
◆ドライバの検閲
最後に、マイクロソフトはWindowsXP対応ドライバから、ドライバ作成会社に対する検閲を行おうとしている。大義名分としては
不完全なドライバをインストールされることでOSが不安定になることを防ぐため、と説明しているが、それでけではないだろう。
今後、ドライバソフトはマイクロソフトの認証を受けなければならなくなる。もし認証を受けていないドライバをインストール
しようとすると、ユーザーを不安がらせるとても不吉なメッセージが出るという仕組みだ。
このような検閲が一ソフトウェア会社によってなされるということは何を意味しているのか、想像は決して難しくない。
ドライバメーカーはマイクロソフトから認証を受ける必要が生じることから、同社に対して反抗的な態度はとれなくなるだろう。
「認証を遅らせる」などの意地悪をされる可能性がないとは言えないからだ。
マイクロソフトを頂点とするピラミッドはほぼすでに出来上がっている。これを崩すためには、インド独立の父ガンジーの言葉を
思い出さなければならないのかもしれない。
追伸
雑誌やネット上でWindowsXPやOfficeXPを賞賛する文章を目にしたとしても、それを素直に受け入れることは危険である。
なぜならばメディアもまた、マイクロソフトに対して公然と立ち向かうことはできないのだから。コンピュータ関係の出版社に
勤める知人がいたら尋ねてみるといい。マイクロソフト製品を酷評する記事を書いたとしても、たいていは編集長レベルで
修正が入る。同社の機嫌を損ねることを恐れているためだ。
もし製品を誉めつつもその一部に不満を滲ませる記事を見つけたならば、それはライターの抵抗の跡と考えてほぼ間違いない。