本日の御題:MS帝国の不気味な拡大
◆体験と銘打ったOffice/Windows XP
 ご存知の読者も多いだろうが、PC市場のOSでほぼ市場を独占しているMS社は今年中にOfficeファミリーと Windowsファミリーに新しいバージョンを追加する予定である。共に名称の後に「XP」(MS社の発表では「体験」 を意味するものらしい)が付いたこのバージョンにはこれまでにない斬新な(?)機能が追加される。
 それは不正コピーを防止する機能である。この機能はパッケージ版(店頭で売られている商品)にのみ付加され、 我々ユーザーは面倒な作業をしなければならなくなる。
 パッケージ版のOfficeもしくはWindowsを購入した場合、インストール後一定期間内に電話もしくは インターネットにてユーザー登録を行わなければならない。その後に送られてくる正規のパスワードを入力することで ユーザーは一定期間後も同製品を使いつづけることができるようになる。この作業を怠れば、使用できなくなる。
 ただし電話でのユーザー登録は回線の混雑もあり殆ど不可能に近いだろう。つまりネットに繋がる環境が前提条件として あるといって過言ではない。
 新しく配布されるパスワードはユーザーのハードウェア環境によって配布されるため、 他のPCへのインストールはできなくなる。つまり不正コピー(ここでいうコピーとは物理的なコピーだけではなく、 インストールの意味も含む)を防止できるわけだ。

 MS社のOfficeは北米だけでも20%以上が不正コピーと言われており、それが中国では90%以上に跳ね上がる。 こうした現実を考えればMS社のこの新しいユーザー登録方法も理解に難しくない。
 しかし我々ユーザー(少なくとも律儀なほど正規版のパッケージを買い続けている)はそれを快く思わないし、盲目的に 従うべきなのだろうか?

「不正コピーがあるために、ソフトウェアの値段は下がらない」

 かつてソフトメーカーはこう弁解していた。
 それでは不正コピーの激減が望める新しいOffice/Windowsバージョンの価格は下がるだろうか? 答えはNoである。少なくとも、MS社が同商品の市場で独占的な立場にいる限りは。
 我々ユーザーは顧客でありながら、独占メーカーの意向には従わざるを得ないのである。

 ちなみにOffice XPであるが、専門家の間ではOffice2000との機能(不正コピー防止機能を除いて)の が違いがあまりないと指摘されている。MS社は我々に何を「体験」させるつもりなのだろうか?

◆ブラックホールと化したWindowsファミリー
 Windows XPでは、デスクトップ上にはごみ箱以外のアイコンは表示されなくなるらしい。見た目はきれいだが 使いやすいかどうかは別問題である。オフィスでは、Windowsファミリーだけでも95/95OSR/98/98SE/ME/WIndows2000と 複数のUIが存在し、微妙にネットワークなどの設定方法が異なるためプログラマーは勿論、企業のシステム管理者泣かせ な点がある。そして今回のWindows XPである。MS社によれば「Windows95が出た時と同じぐらいの革新」 らしいが、確かWindows2000の発売に際しても同じ事を言っていた記憶があるのは筆者の気のせいだろうか。
 そもそもMS社が体験させたいのは、煩雑なユーザー登録であろう。金をかけ誇大広告なプロモーションをやってでも XPへユーザーを移行させてしまえば、その後はたとえユーザー登録が面倒であっても、ユーザーは新しいバージョンが 出る度にソフトを購入していくことになるからだ。最も不快感/抵抗を感じるのは、初めの1回なのだから。

 また同社の体質は根本的に変わっていないらしい。ネットスケープ社との間で争われているブラウザ戦争と同じ事を MS社は再びやるのかもしれない。Windows XPから、CD−Rのライティングソフトも標準で装備されるよう になることがすべてを物語っている。もしハードウェアメーカーがMS社の圧力に屈し、Windows XP付属のライティングソフトとの 親和性を深めたならば、市場を開拓したライティングソフトメーカーは窮地に追い込まれるだろう。それはMP3の再生 機能やAVIファイルの読み込み機能などでも同じ事が言える。
 MS社にとってみればWindowsという巨大なソフトウェアを売り続けることで収益をあげることができるため、 これらのソフトウェアを無料で添付することなど痛くも痒くもない。しかし同ソフトウェアを製造するメーカーに とっては死活問題である。このようなことは今後も繰り返されていくだろう。そして最後にはMS社しか、PC業界には 残らない事態に至るのである。
 まさに、Windowsはすべてを吸い込んでいくソフトウェア業界のブラックホールと言えるだろう。

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