2000年衆院選挙の考察 に対する投稿
地域経済分科会さんの感想
◆1.自公保にノー
 今回の選挙は、比例代表を見る限りはっきりと「自公保ノー」が着き付けられたと言えます。
 しかし、小選挙区ではどうしても候補者個人が前面に出てしまいます。例えば森さんは嫌いだけれど、 うちの選挙区のあの先生は道路を作ってくれたとか、そういうことで選んでしまう傾向があります。
 さらに、やはり、地域に根を張る創価学会票の威力が大きかったでしょう。
 自公勢力に対し、野党が割れていては、なかなか難しい。

◆2.社民躍進、共産後退には必然性がある
 社民党の躍進ですが、これは選挙戦後半での共産党の下手な路線転換が原因です。竹下首相が亡くなったときも なにか不破委員長の歯切れは悪く、土井委員長のように竹下政治を批判していなかった。これは、共産党やばいかな と直感しましたが。

 前回日本共産党13%、社民党6%という得票率でしたが今回は日本共産党11%、社民党9%であり、むしろ 「革新票」はやや増加しました。おそらく、社会全体の貧富の差の拡大などが背景にあると思われます。
 マスコミが言うような土井人気だけでは説明がつきません。
 沖縄での女性候補の当選、グリーンピース活動家だった女性の選挙区での当選は、偶然ではなくむしろ構造的に 「革新」(というと古臭いが)に一定の共感があつまっていることを示しています。

 競争社会を自民であれ、民主であれ進めて行く場合どうしても格差を放置すれば「革新票」は減る事はなく、 増えて行くでしょう。
 余談ですが、石原知事も一種の「革新」右翼であり、銀行への課税強化になどはそういった時代背景があるといえます。

 それはともかく、日本共産党が減らして社民党が増えたのは、結局、日本共産党のほうが社民党より「右」へ来てしまった からではないかと思います。
 現実路線を名目に、民主党などに秋波を送る姿勢が支持層の離反を招きました。そこで右へ寄ったところで、 そこは民主党が最大の焦点ですから勝てるはずがない。こうして必然的に日本共産党の後退と社民党の躍進がもたらされました。

 それが証拠に、自公はもちろん民主まで相乗りした候補を相手にした狛江市長選挙では共産党は圧勝しました。
 ここでは、民主党とも対決したので逆に、おおくの革新票を得る事ができたという按配です。別にこの共産党の 勝利も驚くべき事ではなく、民主党が自民と相乗りしたことで対決の構図が鮮明になり、必然的にもたらされたものです。

◆3.今後の野党の役割
 今後、野党はどうすべきか。一つは与党と話し合い、政策実現を図ること。
 もう一つは、あくまで対案を出しつづけ、自民党と対決する事。
 両方選択肢があります。大昔の社会党のようななんでも反対は問題外ですが。

 公明党は前者の道を選んでしまい、自民党の延命を助ける結果となりました。
 民主党は前者と後者の間をフラフラしてはっきりしません。

 わたしは民主党は目先の政策成果にこだわるよりは、自らの政策を磨き、愚直に訴えて行く。
 そして自民が失敗したとき、代わって天下を取るのです。天下を取る事を自己目的化してはいけません。
 そのために政策も理念も投げ捨ててしまえば、それでは大臣病にか掛かった旧社会党とかわりませんから。

 政策を政治家は訴え、選択は国民に任せるのです。
 政治家自身が保身のためころころ変わっては、有権者は戸惑ってしまいます。
 ともかく野党は邪念を捨てて、ひたすら力量を蓄える事です。

 これは全野党に当てはまります。
 とくに政権が今にもとれそうだと浮かれていたが見事に期待を裏切られてしまった、 民主、共産両党の執行部はこのことを深く肝に銘じるべきです。

管理人より
 選挙考察、ありがとうございました。

 今回の選挙は「史上最も口の軽い男」を首相再任してしまった選挙であったと言えます。
 度重なる自民党大物議員の死去と、世界一口の軽い男のお陰で争点が幾分ぼやけてしまった上、 天候はほぼ全国的に雨が降っており、21世紀最初の内閣を決める割には盛り上がりに欠けたと思います。
 この辺りは与野党、特に政権を獲りに行かねばならない野党の反省点と言えるでしょう。

◆自公保は承認されない
 地域経済分科会さんのご指摘どおり、自公保の枠組みは完全に否定さてた感がありますね。それは事前の 世論調査を見ても明らかで、今の内閣を支持している人は驚くほど少ない。
 与党三党が結果的に絶対安定多数を確保できたのは、あくまで小選挙区ごとの議員さんの力であり、 連立そのものが承認されたと考えることはできないでしょう。

◆共産党のゆくえ
 共産党はかつての社会党同様、政権党への色目は捨てておいたほうが支持は集まりますね。
 現実路線への転換は、これまで党が掲げていたことにあまりにも深い矛盾が生まれてしまうからです。
 悲しいかな、背負ってしまった宿命といえるでしょう。
 共産主義云々は時代錯誤としても、環境や年金など「弱者救済」的議題を得意とする 伝統がありますし、そちらで政府与党の姿勢をあくまで野党という立場から批判するのが最善の策でしょう。
 個々の政策では共産党を応援しても、共産党が政権を獲ることに不安を感じている国民は決して少なくないですからね。
 その辺の国民心情を察して、政権参加への野望は自粛すべきだと思います。
 永遠の中道勢力、世直し勢力という仕事も決してやりがいのない仕事とは言えないでしょうから。
 社民党に対しては共産党ほど拒否反応を起こす人はいませんが、やはり現実路線への急激な傾倒は支持層の離反と 党のカラーをなくすという点でマイナスに働きます。

◆万年与党と万年野党
 日本の政治をおかしくしている最大の原因、それは政権交代がないことでしょう。
 野党は政権担当能力がないのでしょうか?
 それとも政権を獲らせたら暴走してしまいそうな危険な集団なのでしょうか?

 いえ、どちらも賢い考察とはいえません。
 政界再編でかつて与党であった人の多くが野党にいるため、政権担当能力はもとより経験がないという指摘すら 当てはまらない。もちろん、危険な集団という点では、某宗教団体を母体とする某政党のほうが遥かに危険であり、 そこと連立を組んでいる与党自民党にこそ相応しい指摘でしょう。

 ではなぜ国民に選ばれないのか?
 そこを野党各党は考えるべきだと思います。

 私は国民の目が国会に向いていないことが大きいと思います。実際、国会中継は退屈で、議論もじれったいし 「質疑」に対して全く答えになっていない「応答」を無表情な顔でしていることが殆ど。
 議長は議員の名前を呼ぶだけで、テレビ討論会のように鋭い指摘をすることもない。
 どうにでも取れるあいまいな言葉だけで容易く逃げてしまえるのです。
 だから国民の関心は集まらない。

 そのため地域経済分科会さんの言われたような「対案を出しつづけること」を仮に野党がやっても、 そのいい部分を与党にパクられて法案として提出されると、国民はその法案の提出過程を知らないため、 あたかも自民党案のような錯覚に陥ってしまう。
 そこで野党も政策から与党の不祥事(森首相の問題発言含む)へ選挙の中心を移す。
 するとマスコミはそれを囃(はや)し立て、国民は「政策がない」とさらに無関心になる・・・。
 まさに政治関心度のデフレスパイラルです。

 民主主義は国民の注目があることが前提で作られているため、やはり形骸化した国会答弁を延々と 放送するようなことは止めて、もっと熱く生きた議論を放送してほしいと考えています。
 でなければ、政党間の実質的な政策調整の場である国対委員長会談を放送するべきでしょうね。

 今回はご投稿、ありがとうございました。

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