本日の御題:メーカー直販の光と影
◆ネットによるメーカー直販体制の始まり
 すでにパソコンではお馴染みになっているインターネットを使ったメーカーの直販が今、揺れている。
 家電メーカー大手のソニーと松下電器産業が本格的にネット経由で受注を受けようと試み始めているからだ。
 当然、量販店はこの動きに対して警戒を強めている。
 これまでは販売商品はパソコン中心であった。しかし今後は家電製品一般にまで取扱商品を増やすという。

◆メーカーの狙い
 なぜメーカーは量販店を刺激してまで直販体制を敷くことに躍起になっているのか。その理由はやはり価格競争にある。
 日本屈指のブランドを持つ両社であっても、AV機器分野では思いのほか利幅を稼げないのが実情だ。それは量販店の 価格競争が熾烈化しているためであり、高級品として販売したいメーカーの思惑とは裏腹な価格で販売されることも しばしば起こっている。
 この現状を打開する一つの方法が、まさにインターネットを使ったメーカー直販なのである。
 販売店を通さないことで価格の決定権を手中に収めるチャンスなのである。
 もちろん、ライバル他社に先駆けてネットで受注を開始することにより、企業イメージの向上、安価で利便性の高い 販売形態による売上の増加と、流通を通さないことでの利幅の確保などが達成できる。

◆量販店との摩擦
 もちろん、量販店も黙って見過ごすわけには行かない。メーカーからしてみれば量販店は顧客であり、その売上は 決してインターネットだけで回収できる金額ではないのが現状だ。
 ソニーのはじめた直販サービスも量販店に配慮して、取扱商品は小型テレビなど限られたものとなり、しかも価格は 直販であるにもかかわらず量販店よりもやや高めの設定がなされている。
 松下電器産業では、インターネットで受注した商品についても、引渡しは近くの系列販売店を指定することで、店舗に 配慮した形をとっている。
 いずれも「安い価格で自宅にいながら買い物ができ、また商品を手にすることができる」というネット販売のメリット を活かしきれていない。
 おそらく、インターネットでの販売額が量販店経由の販売に引きを取らない程度にまで拡大しない限り、今後も このような傾向は続くだろう。

◆メーカー直販のデメリット
 最後に、メーカーの直販体制が今後強化された場合について記したい。
 インターネットによる安価で利便性の高い商品の購入は確かに利用者・消費者に多大な恩恵をもたらすだろう。
 しかしそこには見落としてはならない落とし穴があることも忘れてはならない。それは「販売業者の寡占」である。
 現在、量販店が日本各地に跋扈していることで競争が促進され、価格も安価になる傾向がある。どこの店よりも安い、 とモットーに掲げている量販店が多いのは周知の事実であろう。
 しかしもしメーカー直販が今後進み、量販店の力が弱まった場合、メーカー間でこれらの競争が起こることはあまり期待しないほうが いいだろう。
 なぜならばA社の製品は日本のどこで購入しても(運賃を除き)同額であれば、A社は価格を引き下げる努力を必ず怠るからだ。
 もちろん、ライバル会社B社との価格競争は続くだろうから、完全に競争がなくなるわけではないが、これまでのように 「どこどこの店ではここより安かった」という言葉を消費者は使うことができなくなり、メーカーの言い値で購入するしか方法が なくなるのである。

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