本日の御題:鳩山民主党に勝算はあるか?
◆展望なき戦い
 民主党大会が開催されたのは今月の16日だった。場所は神戸市のポートピアホテルである。
 昨年、党首選で見事代表の座を得た鳩山由紀夫氏は「2000年に新しい政権を作る!」と豪語し、 舞台のバックに鎮座する巨大スクリーンに「奪」の字を映して見せた。つまり政権を奪うというわけである。
 その光景はまるで幕張で開催されるWindows Expoの基調講演のようであり、実に華々しく、 そしてオシャレなものであった。

 また同時に鳩山氏は、【1】選挙区で250人以上の候補者を擁立する、【2】比例代表で2000万票を獲得し80人以上を 当選させる、といった極めて耳障りのいい目標を掲げて場を盛り上げた。

 しかし、それ以上のことは同氏の口からは終に出なかった。つまり政権を奪うために具体的にどういうことを実行して いくのか、それをあの講演で聞き取れた人は恐らくいなかっただろう。
 結局のところ、今の民主党は1998年の参院選での大勝後から何も進歩していないのだ。
 当時、公明党、自由党と連立を組むことで参議院で野党は過半数を取ったが、衆議院では相変わらず自民党が多数で あったため、勝利の酔いが終わった時、何もすることはできなかった。
 「衆議院を解散総選挙に追い込みたい」と当時民主党代表だった菅氏は意気込んでいたが、歴史的敗北をした直後に 与党自民党が解散総選挙をやるはずがないことは、誰の目にも明らかだった。
 結局、自民党は頭を取り替え、野党連合を崩すことで野党に失望した人々をうまく取り込むことに成功する。

 その後現在に至るまで、民主党には筋書きを書ける人間が育っていない。その結果、当時よりも遥かに厳しい状況に 置かれているにも関わらず、そして特に訴えるべきものもないにも関わらず、無謀にも単独で政権を取るなどと言い始めて いるのだ。

 言葉が構想より先行している今の民主党は、まさに絵に描いた餅に歓喜している愚者のようである。

◆宗教団体の票
 しかし、全く悪いことばかりというわけでもない。自民党が創価学会を母体とする(と考えられ)公明党と連立政権を 築いたことにより、その他の宗教団体から総スカンを喰らったのだ。
 その結果、これまで民主党と関係の薄かった宗教団体が民主党を応援するようになり始めている。

 それを如実に表しているのが党大会での鳩山氏の発言である。同氏は講演の中で、「市民団体」や「宗教団体」との 協力関係構築・強化に非常に熱弁を振るっていた。
 ちなみに少々穿った見方をすれば、市民団体はおまけである。宗教団体の名前のみ挙げることには抵抗があるため、 「市民団体」という耳障りのよい言葉を一緒に挙げているとも受け止められる。個々の市民団体は規模が小さいため、 一部の地域を除いて選挙の大勢を決するほどの力はまだもっていない。特に比例代表では影響は皆無だろう。
 鳩山氏が宗教団体の組織票に大きな期待を寄せていることは間違いない。

◆憲法改正論議が民主党を押し上げる!?
 最後に、鳩山氏が党首選の頃から盛んに憲法改正について問題提起してきたことについて話したい。
 確かに国民の70%以上が日本国憲法の改正に基本的に賛成しているという事実を考えれば、他に先ん出てこの議題を 取り上げることは大きなプラスポイントになる気がする。
 ただし、民主党には旧社会党から流れてきた議員が多くいることを忘れてはならない。憲法改正論議は、一歩間違えば 民主党を空中分解させかねないパンドラの箱なのだ。
 それでも鳩山氏に求心力があるうちはいいだろう。
 しかし例えば衆院選挙で思いのほか苦戦するなどの事態になれば、必ず党内から批判の声が上がる。
 なぜならば、現在の日本で最も要求されているのは「景気回復」であるからだ。もし選挙が思わしくない結果を残した 場合、景気回復という最重要課題に力をいれずに実生活からかけ離れた場所にある憲法改正に力点をおいたことが原因と 指摘され、批判の対象になることは目に見えている。
 その時、鳩山氏がどういった弁明をするのか、私には想像もつかない。

劉表さんからの感想(2000.01.19.投稿、01.22掲載)

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