機関委任事務
Page 5
 前回は、地方自治体の財源面の問題である「国庫補助金」について解説した。
 そこで今回は、制度的な問題である「機関委任事務」について述べたい。

1.機関委任事務から自治事務への移行

 機関委任事務とは、国から地方に委任している各種の事務を言う。
 主な内容は、パスポートの発行、病院の開設許可、一級河川の管理などが挙げられる。
 これらを自治事務、つまり地方自治体の裁量に任せた事務へ変えることが、権限の分権に繋がる。

 地方分権をする際は、財源と合わせて権限も委譲されるべきであり、権限が地方に振り分けられた結果、 仕事が増え、地方財政を圧迫するのではないかという懸念が持たれている。

 しかしながら、すでに多くの地方行政サービスが地方自治体によって事実上行われているため、新たに仕 事が増えるとは考え辛い。つまり「機関委任事務」が「自治事務」に変わっても、仕事量・内容にはあまり 変化がないのだ。
 むしろ、事務事業に対する国からの関与が廃止・縮小されれば、国にお伺いを立てたり報告する義務など が薄くなるため、仕事量は減ると予想される。
(例えば、中央省庁への認可、承認の申請や事前説明のための資料作成、出張などの労力・経費の削減に繋がる)
 これは財政難に苦しむ国・地方自治体にとっては大きなメリットになるだろう。

2.法廷受託事務の問題点

 地方分権推進委員会は、これまで機関委任事務としてきた事を原則として自治事務にしたい考えてあったが、中央 官庁との折衝で、新たに「法廷受託事務」というものが新設された。

 法廷受託事務とは、法律によって国の仕事を地方が受託するものである。
 よって、なんてことはない、従来の機関委任事務と同様に、中央省庁の関与は残る形になる。
 つまり、「法律に定めのある自治事務」であるから、事実上は中央省庁の監督権が温存されるわけだ。
 機関委任事務が法廷受託事務に変更されたとしても、従来どおり「上乗せ、横出し」しかできず、真の分権には程遠い。
 第一次勧告では「自治事務」と「法廷受託事務」の振り分け比率は、およそ「6:4」であり、中央省庁の抵抗が如何に強 かったかが窺える。


前のページ
戻る