「うーん・・・」
 気が付くと、そこは薄暗い部屋の中だった。
 大はふらつく頭を抱えながら、懸命に記憶の糸を手繰り寄せようとする。
「・・・っ!?」
 ようやく時広に捕まったことを思い出し、大の心を不安という名の暗雲が
支配してゆく。
(・・・ダメだダメだ。弱気になっちゃダメだ。)
 その暗雲を断ち切るように、大は今自分の置かれている状況を把握す
ることだけに専念しようとする。
 そして―――
 ふと自分が今座り込んでいる場所が、ベッドの上であることに気付く。
 柔らかく、とても清潔感のあるベッド。
 捕らわれたにしては、えらく待遇がいいかもしれない。
 もっとよく周りを見回すと、この部屋は6畳ほどの洋室で、ベッドの他に
はパイプ机と書棚があるだけの簡素な部屋だった。
 ベッドの左斜め前方に、別の部屋に続くであろうドアが1つ。
 窓はどうやら机の前にあるらしいが、今は閉め切られてカーテンがかけ
られている。
 部屋には時計1つなく、今が果たして何時なのか・・・大はそれすらもわ
からない状況にいた。
 当然、携帯などの私物は、カバンごとどこかに持ち去られてしまってい
た。
(これからどうしよう・・・?)
 とりあえずここから出なければならないが、あの時広からそうすんなり
と逃げられるとは到底思えない。
(でも行くしかない!)
 大は意を決して、ベッドから一歩を踏み出した。
 その瞬間―――
 ガチャリと向こう側からドアノブを回す音が部屋に響いた。
 ハッと息を飲む大。


 そうして大の運命を決める扉が、今、開かれたのであった・・・。






  『捕らわれた太陽 2』






 その日―――
 明凌連内は、騒然としていた。
 理由は、朝日奈大の無断欠席によるもの。
 彼がそんなことをする人間でないことは、仲間の誰もが知っている。だ
からこそ、突然の大のこの行動に、言い知れぬ不安が皆の心を捕らえて
離さないのであった・・・。





 昼休みになり、宗近が「我慢できない!」と大の自宅に行くと言い出し
た。
 それを止めたのは、松尾だ。
「下手に自宅に押しかけて、朝日奈のご家族が心配されるかもしれない。」
というのが彼の言い分だった。
 しかしそう言いながらも、松尾はもう1つの可能性についても考えてい
た。
 そう、もしも大が今朝の登校中に何らかのアクシデントに遭ったのでは
なく、昨日の帰りに遭っていたとしたら・・・すでに大は1日無断外泊して
いることになる。
 とすれば―――
「宗近、自宅に押しかけるのはマズイけど、とりあえず自宅に電話してみ
ることはどうやら必要なことのように思う。携帯も通じない今、それしか調
べようがない。」
「えっ?それってどういう・・・」
 松尾は先程の推論を宗近に伝えた。
「うむ、一理あるな。」
「なるほど。」
「さすが頭脳派。」
 いつの間にか他の明凌連の面々も2人の周りに集まってきていた。
 代表で松尾が自宅に電話し、電話に出た母親にそれとなーく大のこと
を聞いてみると、意外なことがわかった。
 携帯を持つ松尾の手が微かに震えている。
「ど、どうした!?」
「松尾?」
 松尾はお礼を言って携帯を切り、1つ小さく息を吐いてから、
「大変なことがわかった・・・」
 と切り出した。
 そして―――
 大が夕べ遅くに友人の家に泊まると連絡してきたこと。
 しばらくはその友人宅に泊まり、そこから学校にも行くので心配しない
でくれと言ったこと。
 などを要領よく皆に伝えた。
「何だって!?朝日奈が自らそう連絡してきたというのか?」
「んなバカな!今は俺たちにとって大事な時だっていうのに・・・。」
「それならそれで、俺たちに連絡の1つもあっていいんじゃないか?」
「そうだ!朝日奈に限ってそんな無責任なことするわけがねぇ。」
「それに今日学校に来ていないということが、その電話の内容をすでに
裏切っている。」
 皆の意見はもっともで、『朝日奈大は誰かに脅され、電話をかけさせら
れた』という結論に落ち着いた。
 つまり―――
「朝日奈は誰かに拉致されたってことか!?」
「って、一体誰に!?」
「ま・さ・か・・・」
「百鬼か!?」
「そっ、そんな・・・」
「いや、待て。それなら朝日奈を狙うというのは少し変じゃないか?」
「そうだな。どうせなら明凌連のヘッドを狙うはずだ。」
「つまり東堂か・・・」
「朝日奈だって明凌朝日奈派の立派なヘッドだ!」
「いや、宗近。それはわかっているが、今は置いといてだな〜」
「なっ、何だと!?」
 気色ばんだ宗近に、松尾大明神の鶴の一声がかかった。
「朝日奈のことを思うなら、くだらないことにこだわってんじゃないっ!」
「うっ・・・わ、わかったよ。でもくだらなくなんてねぇんだからな!」
 わかったと言いつつも、そこだけは譲れないらしい。


 そうして昼休みいっぱいを使った話し合いの結果―――
 今日の放課後、数組に分かれて大の行方を捜すこととなった。




 今はまだ誰も、大を拉致した犯人が時広であることを知らない・・・。






                                       【3へ続く








[途中書き2]
グハッ・・・おーわーらーなーいー(パタリ)。す、すみません!また続いて
しまいました。大君、大丈夫かなぁ?<オイオイ
一体大君はどこに捕らわれているのでしょう?時広っちって金持ち?(笑)
自分で書いておきながら、疑問だらけです<いっぺん死んできなさい
またまた続きの展開をな〜んにも考えてなかったりしますが(爆)、やっぱ
りこの次はアレでしょう!『時広&大、愛のマンション同居生活』(激違)。
時広っちは一体大君をどうするつもりなのか!?そして明凌連の皆は無
事大君を捜し当てることができるのか!?自分で煽りつつ(笑)、誰か続き
を書いてvv・・・とか思ってみたり(エヘッ)<ぶっ殺
最後になりましたが、「1」をアップした後、続きを読みたいと言って下さった
皆様、本当にありがとうございましたvvおかげさまをもちまして、まだ続いち
ゃっております(笑)。もうしばしお付き合い頂ければ幸いです。




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