そしてついに、運命の日(2月14日)はきた――――。 その日は朝から、明凌連(他)の内部は、一様に異様な盛り上がりをみ せていた。 前日の13日に、大にチョコの催促をした者たち全てに、大本人から連絡 があったのである。 内容は、『明日2月14日、石黒さんの喫茶店にてお待ちしています。』と いうもの。 その結果、今日は午前中から石黒の喫茶店内は、幹部連中で占拠され ていた(とは言っても、もちろん前もって石黒が臨時休業にしておいたため、 被害は最小限に抑えられている)。 異様な興奮状態の中、時間は刻々と過ぎてゆく。 そして―――正午。 ついに石黒とともに、大が店の奥から姿を現した。何故か隣りの石黒同 様、大も愛らしいエプロン姿である。 「朝日奈っ!」 「これは一体どういうことだ!?」 「何故、石黒の店なんかに!?」 口々に喚き立てる皆を制したのは、ここの主こと石黒太平である。 「まあまあ、静粛に。ここからは俺が説明しよう。」 「何!?」 「何で石黒が?」 「どういうことですか?石黒さん。」 皆が殺気立つ中、石黒は飄々と話を続ける。 「え〜、今日集まった諸君は、皆朝日奈からのチョコレートが目当てなわけ だな?しかし、よーく考えてみてくれ。本来バレンタインとは何のためにあ る?そう、それは『本命チョコ』だ。本命があるからこそ、義理チョコというも のが存在する。お前らは義理チョコが欲しくてここに来たのか?違うだろう。 だったら、自らの力で本命チョコを勝ち取れ!ただし、本命というからには、 もちろんそれはたった1つしかない。どうだ?お前たちは今から勝負をして、 オンリーワンを目指す気はあるか?」 「ったりめーだ。俺は負けねぇぜ!」 「勝負事と聞いちゃー背中を見せるわけにはいかん。」 「ああ、その勝負受けたぜ。」 皆が口々に同意する。 すでに石黒の巧みな話術で、罠に嵌っているとも知らずに・・・。 「よし、じゃあ勝負の説明をする。ルールは至って簡単だ。今から俺からの バレンタインチョコを全員に食べてもらう。言うまでもないことだが、全て義 理チョコだ。1番早く残らず食べ切った者に、朝日奈からの手作りチョコが 渡される。いいか、もう1度言うぞ!朝日奈の手作りチョコだ。欲しかった ら・・・さあ、コレを食え!!」 デデーンと皆の前に出されたのは、見目麗しきチョコレートケーキである。 鮮やかな手付きで切り分けていくパティシエ石黒(笑)。 均等に切り分けられたその量は・・・1人分の推定が『直径16cm×1/4 個』といったところだろうか(多)。 「よし、じゃあ全員に行き渡ったな。では只今から、『朝日奈の本命チョコ争 奪戦』を開始する。―――レディー・・・ゴーッ!!」 石黒の合図とともに、皆一斉にケーキを食べ始めた。 と思ったら、約1名食べていない者がいる。 本人曰く、「俺様はアリンコじゃねぇ!」ということらしい。 その後は、さながら地獄絵図のようだった・・・。 以下、簡単に結果のみを書き連ねる。 御堂茜→不戦敗 導明寺照宇→開始0.5秒、瞬殺 神南晃介・四方且之→開始3秒、文字通り秒殺 白波信武→開始8秒、目を開いたまま気絶 小野田Bro.→開始11秒、兄弟仲良く旅立つ(どこへ?) 高里悠介→開始25秒、お花畑で大とデート(夢の中) 導明寺壱茶→開始30秒、弟の意地を貫きつつフリーズ 宗近和寿→開始4分39秒、石黒への敬意と大への愛で大健闘・・・も虚 しくブラックアウト そして、当然といえば当然の結果。 勝者はもちろんこの人、明凌連の頭(ヘッド)こと東堂一成である。 最後まで黙々と食べ続け、挙句に『おかわり』までして、 「うまかった、ごちそうさん。」 とのたまう姿は、さすがの一言に尽きる。 大から、 「はい、これどうぞ。」 と本命チョコを手渡され、滅多に見せない極上の笑みを浮かべて受け取 る様は、ある意味石黒のケーキよりも恐ろしい。 しかし東堂はそれだけで終わるような器の男ではなかった。 こともあろうに、彼は大にこう言ったのである。 「これから2人でどこかに出かけないか?」 少しの沈黙があって。 「はい、喜んでvv」 大が笑顔でそう返したとき、それに「却下!!!」と叫べる者は、その場 にもはや1人もいなかった。 そうして2人は、誰に邪魔されることもなく、悠々と店を後にした。 皆はただただ心の中(というかすでに意識の最下層)で、 『来年こそリベンジだーーーーーっ!!!』 と虚しく叫ぶだけだった・・・。 その頃店の奥では、石黒と松尾が、まんまと思惑どおりに運んだ賭けの 成功を祝し、乾杯をしていたとか、金勘定をしていたとか・・・(笑)。 今年のバレンタインデーの本当の勝者は、東堂ではなく石黒なのかもし れない――――。 【END】 [後書き] バレンタインSS『鬼組(大総受)』(アンケート第1位より)でした。 いや〜なんとか間に合いましたね(ホッ)。大総受ということで、できるだけ たくさんの人(=攻君ズ/笑)を出したい!!と思った結果、なんだかダラダ ラと長くなってしまいました(汗)。しかもドタバタコメディー風(?)だし(遠い 目)。ここでこっそり謝っておきます。中城さん、岩塚さん、出せなくってすみ ません(笑)←何故笑う? あと、ほんとは夕凪ちゃんとか時広っちとか南雲会長とか・・・etc.敵役さん も出したかったんですけど、もういっぱいいっぱいでした(苦笑)。 そして大総受なのに、最後は東堂×大になってしまって、本当にすみませ ん^^; オチ(東堂さんは甘い物がお好きネタ?/笑)もめちゃありがちなもの になってしまいましたし(反省中)。しかも石黒さんが何故か黒くなってしま って・・・石黒だけに?←ビシッ!(独りツッコミ) 注).作中でも少し触れましたが、石黒さんは大君狙いではありません。紅 月的には、石黒さんだけはあくまで大君の保護者(お父さん)ってかんじな ので!(←年齢的にはお兄さんのハズなんですけどねぇ/苦笑) いつも以上にヘタレた文章(とも呼べないようなもの)でしたが、本人かなり 楽しんで書きました♪(笑)読んで下さった皆様も、一緒に少しでも楽しんで 頂ければスッゴク嬉しいですvv特に石黒さんと松尾の密談(?)シーンは、 書いててかなり楽しかったです(笑)。こうやって明凌連以前(石黒派時代) には、松尾がけっこう石黒さんの手足となって陰で動いてたのかなぁ?と か(そしてもちろんそのことを宗近は知らない←酷っ)。 賭けの1番人気は誰だったのか?とか、皆なんの文句も言わずに石黒の (殺人)ケーキをパクつくほど大君への愛に狂っていたのか?とか(笑)、 数々の謎を孕みつつ・・・終わります(←オイ)。 最後になりましたが、アンケートに投票して下さった皆様、このSSを読んで 下さった皆様に感謝の気持ちを捧げます―――。 (ご感想など頂けましたら、とっても嬉しいですvv) |