子供の四季

第三回目 童戯 三 
色々な遊びの紹介をしています。

     ☆スガ走り(氷滑り)

 雪が降るようになり、それが幾度か続くと根雪になる。大寒のころともなると、水の張ってあった通し苗代や家の後ろにあるフカ(古河)の氷は日増しに厚さを増して、程よい天然のスケート・リンクになる。子供達は、申し合わせた様に大勢集まって、早速スガ走りを始める。
 最も単純なスガ走りは、助走した勢いで途中から滑るのだが5〜6メートルも滑れたら良い方だった。
 滑り用具には、下駄カスガイと太い竹を二つ割にしたものがあった。自作できる初歩的な下駄カスガイは、約15センチの長さに切った、八番線位の太い針金か五寸釘の両端を曲げて、歯を抜いた下駄の甲羅の裏に縦に打ち付ける。これより上等なものは、建築に使うカスガイの様な形のものを薄肉に造り、溝を付けたものを鍛冶屋に頼んで造ってもらい、歯を抜いた下駄の裏に打ち付けるとできあがる。
 下駄の爪先に短い釘を数本打ってスパイク代わりにすると自由に歩けるし、爪先で助走し底部の金具に重心を移すと暫くの間気持ちよく滑る事ができた。金具の底に溝を掘ったものは、横滑りも防止でき、なかなか調子がよかった。
当時、売り出されていたスケート靴は、現在と同じ様なものだが靴と一体化したものでは無く靴の乗る部分があり皮バンドで靴に固定する方式のものだった。最高の贅沢品で、持っているのは村全体でも数える位しかいなかった。
 部落では、区長の子息が持っていて自在に手足を振って左右にカーブしたり、直線的に滑ったりする格好のよさは、見ている者の羨望の的だった。

     ☆スキー

 木製のスキーと竹製のスキーがあった。
 木製のものは厚さが12〜15ミリ・幅7〜8センチ・長さ1.5メートル位に切り取りカンナを掛けた後、先の部分を削り取る。
 先を曲げる方法は大きな釜でお湯を沸かし、曲げる箇所より深めにお湯に入れて半日以上煮立て、熱い内に縁側の土台などに挟んで少し多めに曲げ、一日以上そのままにして置く方法と、曲げる部分を中心に機械油をにじませて置き、火を付けて油を燃やし火が板に燃えつく直前に土台などで曲げる方法があったが、両方法ともなかなか思い通りに曲げる事は出来なかった。

     ☆雪ダルマ

 初雪は、大降りなることはなく、当たり一面うっすらと白く覆われる程度である。2〜3度雪が降るうち、数センチ積もると早即雪ダルマ作りをした。
 少し湿った雪の方が作りやすいので、陽に当たって溶け掛かった頃、雪を転がしながらだんだん大きくする。目・鼻には消し炭を使った。
 初めの頃の雪ダルマは、小型のものが多かったがお正月になると大きなものを作った。そのころは、積雪量も多いので雪を転がして玉を作ることができないので、スコップで雪をかき集めて積み重ね小山を作り、水をかけて固めた後に、彫刻をするように削って作るのである。
 このような、要領で作り相当大きい物ができると、友達同士が競争して大きい物を作り自慢しあった。

     ☆雪合戦

 思い出して見ると、雪合戦は余りしなかった様な気がする。始めるとつい夢中になって、手加減することなく戦い、後に遺恨を残すような事があるからかもしれない。
 ある時、ある人が雪玉に小石を入れて使うらしいと評判になった。その人の雪玉は、小型だが時々いきよいよく飛んで来るのがあったので、不思議に思い後から調べたら小石が入っていたそうだ。それ以後、雪合戦に使う雪玉は、絶対水で湿らせたり、中に小石を入れたりしてはいけないと決められた。

     ☆雪玉釣り

 2メートル位の竹の先に、細い縄を結び、縄の先に雪を固く握って付ける。
 それを、小川の水で湿し、そっと雪の上に落とし雪をまぶす様にする、雪が付着したら又小川で湿し雪をまぶす。これを、繰り返し雪玉を太らせ大きさを競って遊んだ。

     ☆雪うさぎ

 粘土で色々な物を作る様に、雪でも色々な物をつくった。主に、女の子の遊びなのだが年上の姉妹が多かったせいか、この遊びも結構した。
 雪は、無限の様にあるので失敗しても幾らでも作り直しができた。
 雪の作品は、ウサギが代表的な物であった。先ず雪を盛ってウサギの格好を作り、目に南天の実を使い、耳には緑の葉っぱを付けると完成である。その他、小さいダルマ・犬・猫・キツネ・タヌキ等々の形をつくり、南天の実・葉・大豆・松葉・ピーナツの殻等を利用して、耳・目・口・ひげに見える様にした。

       今回は、ここまでです。
              次回は、「植物を利用した遊び」を紹介します。

 

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