終 着 の 浜 辺 |
目覚めるたび彼は穴をでて浜辺を歩く。 そのたびに波は死体をうち寄せている。 水にふくれてどこかを魚に食われている。 日にさらされかわけば鳥が来てついばみ、 波と砂にもまれやがて身体を崩していく。 骨が白くくだけ風がその最後をはこぶまでを、 彼はみちひく波ぎわに立ちつくすまま眺める。 ずっと、彼はそうしてきた。 そしてふたたび穴にもどり、 闇のそこに顔をむけて眠る。 終着の、浜辺。 ある日運ばれた死体はまだ生きていて、 それは顔をあげて彼を見そして死んだ。 彼の全身を映す目が焦点をひらく様を、 つねと変わらずに見おろしながら、 彼はそれにとらえられたまま居た。 魚と日と鳥と波と砂と風と彼とが、 つねと変わらずに死体を消しさる、 彼はそれにとらえられたまま立つ。 終着の、浜辺。 死体は同じ顔。 どれも彼の姿。 |
◇終着の浜辺◇完 |
このページの初めにもどる | 『懸軍万里』の扉へもどる |
TOP 「伽眺風月」へもどる |