“聖 夜”   

 
          寂寞―――
           
           闇に凍て乾き 照り返す 砂の連なり
           雷 かたどる長い槍携え 髪乱し足を引き 急ぐ女
           背に残す足形を うねる並がかき消す
           
           振り返る視界に 憶えある気配
           満身で振りかざし 狙い定める 武器の先に
           穏やかに座り在る 陰
           造作なく組む脚 置く指の色の柔らかさ
           飾り石の赤 わずかに傾ぐ貌
           とどくものない 内に座り在る者の まなざし
           
             ずっと そこに居たの?
             ―――お前がそう思うなら そうかもしれん
           
           白い闇 音なく襲い来る砂 終着なき波の狭間
           
           突きあげる 鼓動と息に
           目に見えた総てが 刹那 崩れ滅ぶ 
◇“聖夜”◇完


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