(序   詩)



 辿った道のりは 遠く 視界に尽きて
足元の文字は 古く 読めない
(語り得ない言葉は既に意味を保たない)

灰色の岩の上で 僕は天空に 文字を描く
(一部の才に力貸すものがあれば
僕は 天空をさえ 形造れたかもしれない)

文字は やがて 意味を失くし
予言のまま 無辺の元に 朽ち果てる

僕の立つ この灰色の岩に記された
言葉と 変わること無く風に送られる

見上げれば 空は 更に高く―――
    ―――視界の端に立つ 硬質の人影

それは黒く鉱質に煌めいて…

知らぬ者はない 『影』
                
◇(序詩)◇完

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