#440 仕組みがわからなくても

2021/02/16

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 先日、息子が学校で受けた「情報」の小テストを見せてもらった。息子によれば、平均点は半分以下だったということで、確かに、今の高校生にとってはなかなか難しい内容であった。以下は、その試験で問われていたインターネットの仕組みについての概要である。

 インターネットを流れるデータは、基本的にはパケットと呼ばれる伝送上の最小単位に分割されて流通する。パケットにはデータの中身のほかに、差出人や送り先のアドレス、データ全体の中の通し番号などの情報を含むヘッダがついている。これらのデータのフォーマットやデータのやりとりの方法などは、すべてあらかじめ定められたプロトコルに基づいている。

 インターネットの中で、企業や団体が管理するネットワークの単位をドメインといい、ドメインネームは、ピリオドで区切られた複数の文字列で構成される。ドメインネームはあくまで人間が管理しやすい文字列で示されているが、実際のところはIPアドレスという、32ビットの数値(IPv4の場合)がインターネット上の住所を示すものである。ドメインネームからIPアドレスへの変換を行うのがドメインネームサーバであり、ドメインネームサーバへの照会と回答を繰り返すことで宛先のIPアドレスを特定し、パケットを送受信することが可能になる。

 とまあ、以上のような仕組みは、インターネットの黎明期から基本的に変わらずに用いられているものである。とは言え、インターネットが一般に普及していく中で、こうした複雑な仕組みを理解しなくても簡単にインターネットを利用できるようになってきたことも確かである。

 例えば携帯電話やスマートフォンなどは、携帯電話事業者と契約して端末を入手すれば、特別な手続きをしなくてもインターネットを利用できてしまう。家庭のPCやテレビなどの場合でも、プロバイダと契約すれば、難しい設定も不要でインターネットを利用できてしまう。インターネットへの接続やそれに伴う管理保守は、すべて事業者任せであり、それぞれの利用者がそのことを意識することはほとんどない。

 インターネット上で特定のWebサイトを探す場合でも、初期は目当てのサイトのドメインネームを知らなければ目的のページを参照することができなかった(そのため、わかりやすいドメインネームが高額で取引されていたこともあった)が、Googleのような高機能な検索サイトができたことにより、いくつかのキーワードをもとに目的のサイトやページを見つけることができるようになると、ドメインネームを覚えておく必要もなくなってしまった。

 メールをやりとりするために必要なメールアドレスは、個人を特定できるものであるが故に、不要な迷惑メールが来ることの無いよう、第三者に不用意に知られることの無いようにしないといけない。しかしながら、実際に日本の携帯電話事業者が利用者に提供しているメールアドレスは、迷惑メールの温床になってしまって、極端に長いユーザー名にしたり、ドメインネームによる受信許可/拒否設定をしたりしないとまともに使えない状況になってしまった。携帯電話のメールに取って代わり、LINEのようなクローズドなSNSが広く利用されるようになったのは、そういったことも一因かも知れない。

 基本的にインターネットは、中央集権的なサーバがあるわけではなく、プロトコルに従った分散管理的なサーバ群により、相互扶助的に運営されてきたものである。しかし今では、GAFAのような巨大企業をはじめとした一部の私企業の影響を色濃く受けているものだと感じる。利用者としては、そうした企業が提供するプラットホームの上でインターネットを利用する方がいろんな面で便利で楽だということは確かにある。一方で、そうした企業の経営方針の変更やミスが利用者に多大な影響を及ぼすこともある。大げさに言えば、そうした企業にネット利用の生殺与奪権を握られてしまっている状態であるということは、意識しておいた方がいいことだと思う。


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