#400 プレゼンツールをコンパクトに

2017/10/14

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 かつてプレゼンなどで写真や図表をスクリーンに映して説明するような場面において、スライドフィルムを使うのが主流だった時代がある。写真や図表を通常35mmのフィルムにポジ現像し紙やプラスティック製のマウントに収めたもので、これをスライド映写機にセットして、順繰りに投影していたのである。当然ながらスライドフィルムを作るには現像という手間がかかるし、できたフィルムは小さいのでセット時の間違いも生じやすく、裏表になったり向きが違っていたりというミスもたびたびあった。

 それにとってかわったのが、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)というもので、こちらはA4サイズの透明なOHPシートにプリントしたものを投影するものである。OHPシートは、パソコンのプリンタで印刷させたり、いざとなれば手書きすることもできるので、スライドフィルムに比べれば作るのも容易で融通が利くものであった。

 現在一番主流なのは、パソコン等を直接プロジェクタに繋いで投影する方法であろう。そういったプレゼンに用いるソフトとして、WindowsであればPowerPoint、MacintoshであればKeynoteと言ったソフトもある。自分のパソコンを持っていけば、それこそ発表の直前まで作成や修正が可能であるから、準備にかかる余計な手間はほとんどなくなっている。

 プレゼンによっては、プロジェクタはもとよりパソコンやソフトまで用意してくれていることもある。その場合、先方の用意しているパソコンやソフトがわかれば、それに合わせてプレゼンの資料をファイルで用意して、事前にそのファイルを先方に渡すだけでいいので、荷物も少なくて済む

 とは言え、例えばプレゼンツールとして最も一般的なWindowsPCとPowerPointという組み合わせであったとしても、OSのバージョンやソフトのバージョンにより、準備していた効果(アニメーションや動画など)が先方の環境でうまく動かない場合もある。そういった心配に加え、凝った演出をしようと思えばファイルも大きくなったりして、先方への送付も難しかったり、USBを介して渡すのもウィルス感染の恐れがあったり、場合によってはファイルを先方に渡したくないという場合もあるだろう。そんなわけで、たとえ先方が機材を用意している場合であっても、パソコンだけは自分のものを繋いでプレゼンしたいという人も多い。

 パソコン等の映像をプロジェクタに送る手段として、最近こそHDMIという規格ができたり、場合によってはWifiが使えるものもあったりするけれども、どんなに古いプロジェクタであっても間違いなく繋ぐことができる規格という点では、15pinのVGA端子が最も確実である。しかし一方で、VGA端子がついているようなパソコンはノート型にしても比較的大型のものが多い。最近のようにパソコンの方が薄型小型化してくると、幅と厚みがあるVGA端子は忌避され淘汰されつつあるのが昨今である。

 目下のところ、出張等の機会に持っていくモバイル端末の中で私が一番重宝しているのは、キーボードドックつきの10インチWindowsタブレットである。キーボードをつけた状態であればノートパソコンのような感覚で使えて、キーピッチもそれなりにあるので文字入力にもストレスがなく、WifiのほかLTEのSIMも刺さっているのでどこでも通信可能であり、利用頻度の高いファイルもクラウドサービスで共有して常に最新の状態で編集参照が可能な環境にあるからである。

 このタブレットは薄いので、VGA端子はもちろんないけれども、外部映像出力用にmicroHDMIの端子がついている。このため、microHDMIからVGAに変換するコネクタがあれば、それを介してプロジェクタに繋ぐことでプレゼンツールにもなると考え、購入して試してみることにした。Yahoo!ショッピングを通じ、880円也送料無料で購入したら、1週間ほどでメール便で到着した。

 タブレットにはMicrosoft Officeと互換性のある、LibreOfficeというフリーソフトを入れている。コネクタを介してプロジェクタに接続し、それをセカンドディスプレイに設定して、ソフトの方でも投影先ディスプレイを設定してやると、映像はプロジェクタから出力され、タブレットの方では、その映像に結びついたノートを参照することができる。PowerPointにも同じ機能があるが、個人的にはLibreOfficeのImpressの方が、ノートの文字が読みやすくプレゼンしやすいように思う。わずかな追加出費で、常用のモバイル端末がコンパクトなプレゼンツールにもなり、いい買い物だったと思う。


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